F1チームシミュレーションプロジェクトF
ジャンル:レースシミュレーション
媒体:SuperCD-ROM
発売元:日本テレネット/レーザーソフト
発売:1992年9月2日
価格:6980円
商品番号:TJCD2026
◆「走り」が一切無いF1ゲーム!?
空前のF1ブーム期とかち合ったため、PCエンジン界だけでもかなりの数があるF1ゲーム。その中でとりわけ個性派なのがこの「F1チームシミュレーション・プロジェクトF」(’92)だ。やたら長いタイトルだが、本来は「プロジェクトF」だけのつもりだったんだろうな。それだけじゃ何のゲームかわからないから前の部分をつけたんだろうけど、今にして思うと「プロジェクトX」に遥かに先駆けたタイトルだった!?(笑)
「シミュレーション」とついているように、本作はF1ゲームでありながらマシンを操作するなどのアクションプレイが全く無い、純然たる「シミュレーションゲーム」である。PCエンジンのソフトカタログ類でもスポーツやレーシングではなく「シミュレーション」部門に分類されている。似たような立場のゲームとして、高校野球の監督SLGであるアートディンクの「栄冠は君に」(’94)も挙げられよう。あと「F1サーカス」でも1作目には監督シミュレーションをするモードがついていて、やってることはこの「プロジェクトF」と似ていなくもなかった。
ほかのF1ゲームは基本的にレーサー役をつとめて遊ぶわけだが、本来F1というのはレーサー一人で戦うものではない。チームごとに2人以上のレーサーがいるわけだし、他のゲームでもたびたびお世話になるピットクルーが大勢いるし、その背後には各部門のメカニックマンがおり、マシンを設計するデザイナーがおり、そしてチーム全体をまとめる監督がいる。さらには莫大な費用を必要とするモータースポーツでは企業イメージの向上のためにチームに資金を提供する、あるいは技術のフィードバックと宣伝のために機器を提供するスポンサー企業の存在が不可欠だ。
こうしたF1というスポーツの「集団性」「企業性」に着目してゲームを作ったらこうなっちゃった、というのが本作「プロジェクトF」である。その思いつき自体は悪くはなく、恐らくは開発スタッフに濃い目のF1マニアがいたのではないかと思えるほど凝りに凝りまくったゲーム内容となっている。ただレーシングを期待したい向きにはまるっきり不向きなゲームだ。
◆「リアル」を追及しまくって
ゲームを起動すると、SuperCD-ROM2ならではのアニメデモがちょこっと入ってタイトル画面になる。ここで「DEMO」というメニューがあるので何だろうと思って選択してみると、ゲーム本編とまるきり変わらないプレイが始まる。しかしこれは「練習モード」なのであってセーブなどはできないようになっている。しかし練習といえどもやたらに時間を食う(後述)のは本編と同じなので、気軽に練習できるというわけでもない。はっきり言って無意味なモードである。
「NEW GAME」選ぶと、自分の名前とチーム名、そして4種類ある監督タイプ(イタリア・イギリス・フランス・日本から選べ、それぞれ一長一短あり。それにしても監督のタイプって国籍で決まるのか?)を決めてゲーム開始。まずビジュアルデモが流れ、あるオーナーがF1チームを結成し、プレイヤーに監督を依頼するストーリーが語られる。いきなり1年2年で勝てとは言わないが、10年の期限のうちに世界一のチームに仕立てるという課題が示される。
デモが終わると、経営シミュレーションっぽいメニュー画面に入る。ここでレースのためのさまざまな準備作業やセーブなどを行うことになる。
まずチームを作らなければならない。「テクニカル」というメニューを選ぶと、ここでマシンのデザイナーとの契約、メカニックマンの交代、そしてマシン各部分のチューニングが出来るようになっている。F1マシンのデザイナーなんてまるっきりこちらに知識が無いが、マニュアルには全6名いるデザイナーの特徴が顔画面入りで詳細に出ており、恐らくはみんな実在のモデルが存在するのだろう。デザイナーにはそれぞれ「メカニカル値」と「エアロ値」、そして「レベル」が設定されていて、最初のうちは自チームのレベルが低いため高レベルのデザイナーは雇えない。
これはマシンのチューニングでも同様で、各部品(これが実に細かい)ごとにメーカー名・特性・価格・レベルが設定されており、こちらのレベルが低いと選べなかったりもする。またメーカーに供給スポンサーになってもらうこともできるが、それなりに金はかかるのだ。また、部品の中には自チームの中で開発しなければならないものもあったりする。
マシンセッティングが終わったらドライバーを雇う。ドライバーはマニュアルに顔入りでズラリと紹介されているが、いずれも実在人物がモデル(一文字だけもじったりしている)。「シューナッハー」って「天才新人ドライバー」が紛れ込んでいるあたり、時代を感じますねぇ(偶然ながらこの文を書いてるうちにモデル当人の引退表明のニュースが飛び込んできた)。ドライバーもやはり特性とレベルが設定されており、こちらのレベルが低いうちは高いレベルの人は雇えない。ここでレースのドライバー2人とテストドライバー1人を雇うことが出来る。
いかにも経営シミュレーションっぽい項目が「マネージメント」というやつで、これはチーム資金を得る為にスポンサー交渉を行う部分だ。やはり実在企業の名前をもじった企業がいろいろ設定されており、資金提供型、あるいは技術提供型に分かれている。これだってこちらのレベルが低いうちはほとんど門前払いである。
「テスト」という項目もある。ここはマシンや部品のテストと開発を行うところなのだが、選択してIボタンを押すと「性能が上がりました」とか出るだけで、何が起こったのかまったく実感がないのが困ったところ。
困ったといえば、この設定部分の操作系がいまいち不統一で、とくにキャンセルをするのにどのボタンを押せば良いのか困る場面が多い。細かい設定が売りなのではあろうが、マニュアルも含めてかなり不親切さが目立つのだ。
こうした各種設定を終えてメニュー画面から出ると、いよいよグランプリが始まる。
◆リアルも度を過ぎた!?延々と続く観戦モード
最初はブラジルグランプリ。マニュアルによるといつもあるわけではないらしいが、最初に台数を絞り込む「予備予選」をやらされる。「予備予選」ではコースを3周してそのタイムを競うことになるのだが、画面内で走るのは自チームの2人だけだ。
レースモードはわりとカッコいいデザイン。マニュアルの画面写真を見てもどのコースもクォータービュー気味に描かれ、結構リアルである。このコースを自チームの2マシンが点滅する光点となって走っていくのを、こちらはただただ見物することになる。もちろんプレイヤーは監督なので「ペースダウン」「ペースアップ」「ピットイン」などの指示を出せるようになっているのだが、予備予選や予選でその必要はない。ただただタイムがいくつになるかを見守るしかない。
一周あたりだいたい2分弱。恐らくはこれも実際のデータをもとに再現しているのだろう。「F1サーカス」なんかだと40秒程度で一周しちゃっていたが…あれはプレイヤーが走るほうだったからちょうどよかったのだが、このゲームでは何もしないでただただ見守るだけの2分弱なのでかなり長く感じる。BGMは飽きさせないよう気を使ってる感じもあるが…それにしたって3周はするんだから、それだけで5分以上は待たされることになる。
予備予選を突破すると予選になるわけだが、その前に「フリーラン」がある。コースを走ってみることでメカニックが問題が無いかチェックするということになってるのだが、自分で走ってコースを覚えるのと違って、この「フリーラン」はただただ待つだけだ。問題があればパーツの交換などのメンテナンスをすることになっているのだが…
そしていよいよ予選。これは5周することになっており、実際のレースと同じく2度行われる。またまた2つの光の点が蛍のようにゆっくりとコースを回っていく様子を見物しつづけることになる。一周2分弱の5周だから、9分程度は待たされる。一度目の予選で突破が決まると2度目をする必要はないらしい。
それから決勝になるわけだが、その前にまたフリーランを行う。もういい加減こっちも疲れてきた(笑)ころになって、やっと決勝レースが開始される。ようやく他のマシンもコース上に登場して、まずは「ウオーミングアップ」ということで、20個の光の点がコース上をゆっくりと走っていく。一周すると予選タイムに従ったボックスに入ってやっとレース開始だ!
おお、さすがに2つの光点だけがウロウロしていた予選に比べ、決勝は見た目にも賑やか。序盤から追いつ追われつが展開されこちらもようやくただの見物モードから脱却、レースに見入ることになる。自チームのマシンが他のマシンを追い抜くときは中央にビジュアルシーンが表示されて雰囲気を盛り上げる(右図)。
…と書くと、なんだか楽しそうに見えるのだが、正直なところここまで20分以上光点の走行を眺め続けたプレイヤーは、決勝レースが始まるとゲンナリしちゃっうはず。だって「いよいよ決勝スタート!周回数は21周です」って表示されるんだもん。21周ということは1周2分弱としてピットイン等の手間もあるから、あと40分以上は待たされるわけだ。各種指示などやることがないわけではないが、いくらなんでも長すぎる。予備予選から数えると1時間以上ただただレースの模様を眺めているしかない。
作り手のリアルさ追及姿勢の結果であろうとは思う。21周するのも実際のレースに従ったものだし、長期戦では他のF1ゲームとは違ったリアルな戦略や逆転劇が起こるということもあるのだが…それにしたってプレイヤーがあまりにも置いてけぼりである。その後の3DゲームなんかだとTV中継並みに表現が発達してただ観戦してるだけでも結構面白くなったのだが、本作ではただただ蛍のごとき光の点が明滅しつつゆっくりと回っていくのを眺めているだけである。開発中にプレイしてみて問題を感じなかったんだろうか。せめて短縮モード(早送り)を作るとかすればよかったのに。たまに入って場を盛り上げるつもりらしい追い抜きビジュアルだって3パターンを使い回しているだけでちっとも盛り上がらないし。
デザイン面ではなかなか凝っていて、一見すると作り込みが激しく、悪くない硬派ゲームのように見えるのだが、プレイしてみると大問題。人気のある業界のシミュレーションゲームには多いパターンかもしれない。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.769
| 3.923
| 3.384
| 3.307
| 3.384
| 3.307
| 21.076
第333位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 4
|
ウォルフ中村
| 4
|
東千里
| 6
|
びいず羽岡
| 4
|
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
浜村通信
| 5
|
水ピン
| 3
|
渡辺美紀
| 4
|
TACOX
| 2
|
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