ガンヘッド  
ジャンル:シューティング
媒体:HuCARD(3M)
発売元:ハドソン
発売:1989年7月7日
価格:5800円
商品番号:HC89019


◆映画とタイアップ(?)したキャラバン認定STG

商品外見1 本作「ガンヘッド」(’89)はその説明書表にデカデカと書いてあるように、1989年夏休みにハドソン主催で展開された「全国キャラバン」(第4回)の公式認定ソフトだ。この「全国キャラバン」は1986年からハドソンが毎年開催していたもので、公式ソフトは「スターフォース」「へクター’87」そして「スターソルジャー」と、ファミコンSTGが続いていたが、1988年の「パワーリーグ」を皮切りにPCエンジンソフトがしばらく続くことになる。PCエンジンの実質主催者はハドソンだったから、これは当然と言えば当然だったろう。
 「ガンヘッド」はその「パワーリーグ」に続くキャラバン認定PCエンジンソフトで、キャラバンの原点に戻って縦シューティングゲームとなった。ただしキャラバン認定で使用されたのはこのゲームの第3面をベースにした時間限定のもので、それについてはそのソフトの記事をお読みいただきたい。

 ところで「ガンヘッド」といえば知る人ぞ知る、「ガンダム」などリアルロボットアニメで名を上げたサンライズと、「ゴジラ」シリーズをはじめとするSF特撮を得意とする東宝映画が組んで製作したロボット特撮映画のタイトルでもある。その公開は1989年7月22日で、まさにこのPCエンジンソフトとほぼ同時。これは当然「タイアップ」あるいは「メディアミックス」というやつで、当時「サンライズと東宝が組んだ巨大ロボット特撮!」と話題を呼んでいた同作に便乗、およびそちらの宣伝もしてあげる、という関係で世に出たものである。そういう企画は今だって続いているが、ファミコンが物凄い勢いで普及した80年代後半当時にあっては映画やTV番組とのタイアップゲームがかなりの数送りだされていた。そしてその大半がタイアップとは名ばかりだったり、なまじ内容を関連付けたためにダメゲーと化していたものだった。

 本作「ガンヘッド」は幸いにして「タイアップとは名ばかり」の好例だ。説明書に「TOHO/SUNRISE」のクレジットがあってロゴも映画と一緒、発売当時のTVCMも映画の1シーンを使ったものだったが、ゲーム内容自体は全くの無関係。映画の方は荒廃した未来都市を舞台に展開されるハードなメカもので、メカ描写に定評のある川北紘一特技監督が特撮を手掛け(この部分はそこそこ好評だったように思う)、本編はアメリカで修行した原田真人監督ということもあって日本映画ばなれしたタッチの映画だったが、暗い雰囲気の中でゴチャゴチャと進むよく分からない話の映画となってしまい、結果的に事前の期待を裏切って大コケした。
 おかげで映画の方は特撮映画史上の黒歴史となってしまっているのだが、ゲームの方は映画とは全然関係ないことが幸いし(?)、純粋に宇宙が舞台のSFシューティングとして名作扱いされている。余談ながら「ガンヘッド」の主役を演じたのは高嶋政宏だが、その彼が主役をつとめた映画「ZIPANG」もPCエンジンでタイアップゲームが発売されている。これまた映画とは全く無関係の内容、しかも実はファミコンの「ソロモンの鍵」のリメイクであった。

 さてこのゲームの発売元は当然ハドソンだが、実際に開発にあたったのはあの「コンパイル」である。まだ「ぷよぷよ」爆発ヒット以前の話で、ファミコンやMSXでマニア受けするシューティングの数々でコアな一定のファンがついていた、という時代だ。
 コンパイルが開発し、MSXやファミコンディスクシステムで発売された名作STGに「ザナック」がある。表向き無関係になっているものの、この「ガンヘッド」は「ザナック」の流れをくんだものとなっていて、プレイ感覚やデザインがよく似ていると指摘される。実際、コンパイルは「ガンヘッド」と「ザナック」を組み合わせた「ガンナック」(笑)というタイトルのシューティングをファミコンで出しているほど。
 コンパイル自身はPCエンジンに参入せず下請けに徹しているが、ナグザットから出た「精霊戦士スプリガン」「スプリガンmarkII」の2作もコンパイル製STGで、裏設定として「ザナック」続編の「アレスタ」と世界観を同じにしていることになっていた。他にもマイナー作ながらトンキンハウスから出た「シルフィア」というファンタジーSTGも実はコンパイル製。一連のコンパイル製PCエンジンSTGワールドを続けて遊んでみて、その歩みを振り返ってみるのも一興だろう。


◆緻密なグラフィックに派手な演出

 というわけで、ゲーム内容以前に多方面での歴史的背景の多いゲームであるが、ともかくゲームそのものについて。
 コンパイル開発とは言え、ほんらいハドソンキャラバン用STGなので、「スターフォース」「スターソルジャー」からつながるハドソン製縦STGの流れは汲んでいる。傾向として連射が命の多方向撃ちまくりタイプ、キャラバン用ということで点数稼ぎを意識したキャラやアイテムが多い。そこにコンパイル流の派手なパワーアップと高速スクロールする緻密なグラフィックが加わって、ほどよい難度設定になったところで「ガンヘッド」が誕生する。
 当時ハドソンの看板的存在と言えば高橋名人で、「1秒間16連射」のキャッチフレーズがあったように、「スターソルジャー」などキャラバン用ファミコンシューティングでは「連射」が物を言うゲームが多かった。そんな時期に開発されたPCエンジンでは機械的に連射状態を可能にする「ターボパッド」が発売され、人間技での連射にはあまり意味がなくなってくる。それを反映してかこのPCエンジン初のオリジナルSTG「ガンヘッド」は「ボタン押しっぱなし」で常時連射状態になっていて、そのためボタンを押して撃つ作業に気を取られる必要がなくなり、自機の操作に専念できるようになった。当然そのぶん動きのある敵が多くなり撃ちまくられる敵弾をかわす技術がより求められるようになっている。

 どのシューティングゲームでも、すべてのプレイヤーをゲームにいざなうための「1面」の演出には凝るもので、そのゲームの世界観を示す自己紹介的存在だ。この「ガンヘッド」でも1面の印象が非常に強い。
 ゲームを開始した途端、凄まじい高速スクロールが度肝を抜く。すぐに遅くなってそれからプレイになるんだけど、「おおっ」と思わせるものがあるのは確か。そしてその背景に描かれた緻密で立体感のあるメカ描写がたまらない。巨大宇宙戦艦の一部らしくどういう全体構造になってるのか疑問もあるが、とにかく大きく細かく描きこまれていて当時はかなりのインパクトがあったはず。自機もそれまでのシューティングに比較すれば大きめだし、戦艦上にある砲台やアンテナ類も大きく、それを破壊した時の爆発もハデでかなり爽快だ。
 大きく描かれていると言えば、このゲームのプレイ画面はTVサイズより若干左右に広く作られていて、左右の端にいくと少し横スクロールする。このため右へ左へと自機が動きまわると背景のメカが左右にユラユラと揺れる。それでいてステージ背景の星空はそのままなので、ちょっと酔うような感覚がある。それも何やら「宇宙酔い」みたいでカッコよかった(笑)。狙ってやったことかどうかは知らないが。なお、自機の速度は好みに合わせて四段階に調整できるようになっていて、プレイ中もSELECTボタン一発で変更できる。
プレイ画面
 パワーアップアイテムの種類がやたら豊富なのも本作の特徴。まず武器タイプに「I」「II」「III」「IV」と四種類あって、敵を倒すと出てくるローマ数字のユニットをとるとその武器に切り替わり、同じ数字をとるたびにレベル6までパワーアップする。この辺が「ザナック」っぽいところ。
 「I」が「フォトン・ブラクター」で通常弾で最終的に四方八方に撃てるもの、「II」が「ディスラプト・ウェーブ」で操作に合わせて左右前方に波動を送って敵をなぎ倒すタイプ。「III」の「フィールド・サンダー」がかなり独特で、強力なレーザー攻撃をするのだがパワーアップしていくとやたら多方向に曲がりくねって攻撃をかけるようになる(この武器とフルファイヤーアイテムが組み合わさると、勝手に敵を追尾攻撃してコントロールがきかずやっかいなことになるけど)。「IV」は「リングブラスター」といって自機の周囲をグルグルと回り防御壁の役割をすると同時に周辺の敵を破壊していくタイプだ。

 この四種類の攻撃に加えて「H」「M」「S」「F」の文字が書かれたパワーアップアイテムもある。「H」は「ホーミング・ミサイル」で、敵を自動的に追尾する便利なサブウェポン。「M」は「マルチ・ボディー」で自機のサポートにつくいわゆるオプション、3機までつけることができる。「S」は「シールド」でその名の通りの防御壁。「F」は「フル・ファイヤー」で「I」〜「IV」の攻撃をそれぞれ強化してくれる。
 これらパワーアップをすると「ディスラプトウェーブ…」「ホーミングミサイル…」「シールド…」と素敵な英語発音でつぶやくような声がする。HuCARDで声がするのはこのソフトだけではないが、その中でもかなりクリアに聞こえてカッコいい(声を入れたのはハドソンの海外社員だったとの話がある)
 しかし「マルチ・ボディー」をとると、どう聞いても「おーぱいぱい」と聞こえてしまうのは超有名(笑)。本当にマルチ・ボディと言っているのかすら怪しい。「オプションパーツ」とか言ってるんじゃないかと思うのだが…

 この「I」〜「IV」と「H」〜「F」を組み合わせることで実に多彩な攻撃法が生まれる。プレイヤーはそれぞれの好みや戦略に応じてこれらパワーアップアイテムを取って行けばよく、またこれらがしょちゅう出てくるので自機が裸状態であることはほとんどない。さらに敵機を破壊するとピンク色の「ジェル」が出て来て、これを一定数とることで自機が6段階までレベルアップする仕掛けで、まさにいたれりつくせり。当然敵もそれなりに強くガンガン撃ってくるので、画面内は敵機と砲台と敵弾とパワーアップアイテムが入り乱れて大変なことに。慣れないうちはどれが敵やら味方やら、という混乱状態である(笑)。

 さらにこのころのSTGからお約束になっていた、一定範囲の敵を一気に破壊する「ボム」もあって、これが「H」〜「F」を連続で取ることで一気に増えるので惜しみなく使える。しかも「I」〜「IV」で最高段階まで強化したところでさらに同じ数字を取ると、ガガーン!と画面全体の敵を破壊してしまう大ボムが炸裂する。こんな調子で頭からシッポまでとにかく派手で、説明書にもある「PCエンジンパワー全開」というキャッチフレーズにウソはない。まだまだ世間的にはファミコン時代のことだから、このゲーム画面は相当インパクトがあったんじゃなかろうか。

 グラフィックだけでなくBGMも評価が高い。HuCARDというと音声がショボいと言われがちだが、このゲームでは先述のパワーアップ音声もクリアだし、宇宙的透明感のあるメロディーと破壊衝動をかきたてるようなドラム音とが見事に組み合わさったBGMも聞き応えがある。説明書に「このソフトはサウンドサンプリングを使用のため、通常のゲームソフトより音量を小さめに調整してあります」と書いてあり、これがドラム音部分のことなのだろう。


◆多彩な全9ステージ

 各面には中ボスと、ラストの巨大ボスとが待ち受けている。とくに各面ボスは合体・分裂タイプのものが多く、それぞれに個性的な攻撃をしかけてくる。こちらもパワーアップしていて用心しつつ撃ちまくって戦えばまず大丈夫なものばかりだけど。
 
 宇宙戦艦タイプの1面をクリアすると、2面は「スターソルジャー」を思わせる鉄骨タイプの宇宙基地が舞台。さらに3面は破壊可能のメタリックなブロックが散りばめられ、やたらにパワーアップアイテムとジェルが出るにぎやかなステージ。この3面をベースにしたものが全国キャラバンのタイムアタックに使われている。
 4面は打って変わって生物の内部を思わせるステージで、目玉やら脳味噌やらが襲ってくる。5面は砂漠と荒野の遺跡ステージで、ピラミッドやモアイなどが敵砲台になっている。6面が宇宙に出て氷と小惑星ステージ、7面は再び巨大宇宙戦艦(色違い)で、8面は巨大な泡があふれる謎のステージ。この8面で泡がブワッと拡大したり、シャボン玉のように小さい泡に分裂して飛んでくる演出は、拡大縮小機能がないはずのPCエンジンにおいては出色で(スプライトを高速で書き変えている)、当時のプレイヤーを驚かせたと言われている。

 9面はいよいよ敵の本陣に斬り込むラストステージ。敵要塞内を超高速スクロールで進みながら、これまで倒してきたボスが次々と再登場する。ラスボスはタワー状の構造物の中に待ち受けていて、そのタワーの外壁を撃つと壁が一枚一枚回転しながらはがれてゆく演出も素晴らしかった。全てはがし終わるとなぜか女ボスが登場、これを倒すと真のラスボス登場という展開で、このラストが何段構えにもなってるところはハドソンのRPGを思わせるものがあった(笑)。ノーミスでプレイしたとしてもクリアまで1時間はかかるとされ、シューティングとしてはかなり長い。だからちょっとお手軽に、というわけにはいかないゲームでもある。
最終面ボスオンパレード 世界観についていえば当時のSF系シューティングのお約束を踏襲していて(縦シュー「グラディウス」な感もある)、泡ステージを除けば特に目新しさはない。だが大きく緻密に描かれたキャラや背景、各種攻撃や爆発の派手さでは当時のアーケードシューティングにひけをとらない見栄えで、ハドソンキャラバンシューティングシリーズほか、その後の縦STGの数々に多大な影響を与えている。

 実はこのゲームは裏技で難易度調整が出来るようになっている。「裏技」といっても雑誌等で周知公表されるもので、コンティニュー無限で当時のSTG基準でいえば易しいレベルのこのゲームを、腕に覚えのある人はこっちにアタックしてみてくれ、ということだったようである。この裏技でプレイできる難度最強の「ゴッド・オブ・ゲーム」は腕自慢のシューターたちをキリキリ舞いさせたと伝えられる伝説のモードだ。
 
 この「ガンヘッド」、海外版PCエンジン「Turbo Grafx 16」では映画とは完全に縁を切った「Blazing Lazers」のタイトルで販売されていて、あちらでも「TG-16」を代表する屈指の名作として高く評価されている。
 「ガンヘッド」のままでは映画との関係から問題があったようで、2008年6月からのWii向けバーチャルコンソール、2010年7月からのPS向けゲームアーカイブスでは海外版のタイトル「ブレイジングレーザーズ」の名前で配信されている。ハドソンが発売したキャラバンシューティングコレクションには収録されていないのでご注意を(タイムアタックモードがなかったからかな?)



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.041
4.096
3.887
4.175
4.104
3.794
24.100
第54位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

ドーピン和樹
10

★「ファミコン通信」クロスレビュー
合計30点
(国会図書館にバックナンバーがなかったため各評者の点数が不明。情報求む!)

★「ファミコン通信」誌「’89ベストヒットゲーム大賞」
批評家賞受賞


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