アシモフ未来史目録
凡例
◎版本により日本語版の各タイトルに多少の異同があるが、ここではほぼ全作品を発売している早川書房版の訳題に従った(「聖者の行進」「暗黒星雲のかなたに」は創元SF文庫のみ)。原題も表記しておく。なお内容紹介中の単語についても早川版に従った。

◎作品の順番は発表順ではなく、基本的にアシモフ自身が明記しているシリーズの年代の順番に並べてある。明記のない長編「ネメシス」「永遠の終わり」については内容から私が勝手に決めている。発表年は単行本発売年に限った。

◎短編については時代の前後関係が特定できるものもあるが、収録されている短編集ごとにまとめる方法をとった。原書のアシモフのロボット短編は「ロボット集成(The Conplete of Robot)」に収められているのだが、日本ではこのスタイルの出版が2004年8月にようやくなされた状況であり、普及度の高い旧来の収録スタイルで並べることにした。なお、ロボット小説でも本HPの趣旨から「未来史」に属するとはっきりしているもののみを選抜し、それ以外のものは外してあるので注意していただきたい。

◎各作品の内容を簡単に紹介しているが、アシモフ一流の「どんでん返し」に触れる部分は巧みにカットしたつもりだ。「カットしすぎでよくわからん」という未読の方は、深入りしないで実際に作品を読むことをお勧める。その場合、解説なんか先に読まず、ちゃんと最初からじっくりと読むこと。アシモフ作品では絶対である。

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われはロボットI,ROBOT.(1950)
短編集。ロボット工学の先駆者キャルヴィン女史が語る、ロボット発達史。アシモフ発明の「ロボット工学三原則」が確立した作品。アシモフのロボット小説の初期作品を集める。
「ロビイ」Robbie(1941)
時は1990年代、子守用ロボット「ロビイ」と少女グローリアの交流を描くロボット小説の第一作。
「堂々めぐり」Runaround(1942)
2015年、水星探険に向かったドノバンとパウエルのコンビがロボットSPD13号のトラブルに見舞われる。
「われ思う、ゆえに…」Reason(1941)
宇宙ステーションのロボットQT1号は自分のいるステーションを世界のすべてと認識し、エネルギー転換器を「神」と崇め始める。
「野うさぎを追って」Catch the Rabbit(1944)
小惑星の開発にあたる鉱山用のマルチロボットDV13号が異常行動を起こす。ドノバンとパウエルがまたも解決にあたる。
「うそつき」Liar!(1941)
RB34号は偶然にもテレパシー能力を持つロボットだった。しかしそれは思わぬ悲喜劇を引き起こしていく。
「迷子のロボット」The Lost Robot(1947)
ハイパー基地で「第一条」を弱められたロボットが一体行方不明に。ロボ心理学者キャルヴィン博士が名探偵ぶりを発揮。
「逃避」Escape!(1945)
思考ロボット「ブレーン」は与えられた恒星間飛行の問題を解決、ドノバンとパウエルは思いもかけずハイパースペース航法を体験するはめに。
「証拠」Evidence(1946)
2032年、市長選候補スティーブン・バイアリィに、なんと「彼はロボットだ」との疑惑が。彼が人間もしくはロボットである決定的証拠は何か?。
「災厄のとき」The Evitable Conflict(1950)
2052年、地球連邦の政策は思考ロボット「マシン」にゆだねられていた。しかし相次ぐ不穏な動きに連邦統監バイアリィは疑念を強める。その真相は…

ロボットの時代The Rest of Robots(1977)
短編集。「われはロボット」に収録されなかったロボット小説を集めている。うち以下にあげる小説に「USロボット&機械人間社」が登場する。
「AL76号失踪す」Robot AL-76 Goes Astray(1942)
月面開発用ロボット「AL76号」がどうしたことか地球上に野放しにされた。AL76号はそこが月面であると思い込み、とんでもない行動を起こす。
「思わざる勝利」Victoy Unintentional(1942)
木星の衛星ガニメデに進出した人類は、木星人と接触。自尊心が強く敵意を露わにする木星人と交渉するため3体のロボットが木星に向かう。未来史シリーズ中、非地球人類が出てくる珍しい作品。
「第一条」First Law(1956)
2025年、マイケル・ドノバンは「第一条」に従わないロボットを目撃した。ドノバンの回想形式で語られるショート・ショート・ストーリー。
「お気に召すことうけあい」Satisfaction Guaranteed(1951)
USロボット社の実験のためにベルモント家に送られた人間そっくりの美男子ロボット「トニイ」。ベルモント家の主婦クレアは初めは恐れを抱いたが、一つ屋根の下で交流を続けているうち、しだいにトニイに対して特別な感情を抱くようになっていく。
「危険」Risk(1955)
「迷子のロボット」の続編。ハイパー基地で行われた恒星間飛行実験が失敗する。その原因はロボットにあると思われたが…
「レニイ」Lenny(1958)
事故のために赤ん坊同然の頭脳となってしまったロボットLNEモデル。当然廃棄されるかと思われたが、スーザン=キャルヴィン博士はこれをひきとり「教育」を始める。その理由は…。
「校正」Galley Slave(1957)
2033年、大学にUSロボット社から校正用ロボット「EZ27号」が提供された。初めは重宝がられた校正ロボットだったが、やがて本の内容が改ざんされるという大事件が発生、裁判となる。

聖者の行進(邦題)The Bicentennial Man and Other Stories(1976)
短編集。原題では「バイセンテニアルマン」が冠せられている。ロボットもの以外の短編小説を含み、各話についてアシモフ自身の解説が読めるところが楽しい。うち、「USロボット&機械人間社」が登場し、「未来史」に直結するものとして以下の作品がある。
「女の直観」Feminie Intuition(1969)
人類が居住可能な星を探すために開発された直感力に富む女性型ロボット「JN−5」は三つの星の名を挙げた。ところが直後に事故によってロボットもロボ心理学者も死亡してしまう。引退していたキャルビン女史が解決に乗り出す。
「心にかけられたるもの」...That Thou Art Mindful of Him(1974)
キャルビン博士の死から100年、USロボット社は人間社会にロボットを受け入れさせるため人間型ロボットの開発をやめることを決断する。その計画に最新ロボットJG−10が関わるが…。
「バイセンテニアルマン」The Bicentennial Man(1976)
マーティン家に仕えたロボット「アンドリュウ」は、その家の少女「リトル・ミス」に頼まれて木のペンダントを作った。彼は芸術作品を売って財産を持ち、自由を得て、法的にも身体的にも「人間」に近づいていく。200年にわたって生きたアンドリュウが人間になるために下した決断とは…。アシモフ作品として初めて本格的に映画化(邦題「アンドリューNDR114」)された傑作短編。
「三百年祭事件」The Tercentenary Incident(1976)
アメリカ建国三百年の記念式典で大統領が暗殺された…かに見えたが、大統領は無事。それ以後大統領は見違えるほど有能な政治家となった。元護衛がこの事件に疑惑を抱き、到達した結論は…。

ネメシスNemesis(1989)
長編。23世紀、衛星都市ローターは太陽系を離れて恒星ネメシスの軌道上にあった。ローターに住む15才の少女マルレイネはふとしたことからネメシスが地球を破滅させる星であることを知ってしまう。当初「シリーズとは無関係」として発表された作品だが、結局「鋼鉄都市」以降の歴史をお膳立てする作品となった。

母なる地球Mother Earth(1949)
「アシモフ初期短編集3」に収められた短編。地球を離れ、オーロラを始めとする50の植民星を故郷とした人々は、地球人をさげすみ、独立傾向を強めた。そしてついに地球と植民星の間に「三週間戦争」が勃発する。「鋼鉄都市」以降の作品の背景を設定した短編。

鋼鉄都市The Caves of Steel(1954)
長編。一人の宇宙人(宇宙に先に出た地球人の子孫)が地球の基地で何者かに、しかもほとんど密室の状態で殺害された。地球の刑事イライジャ=ベイリは捜査を命じられるが、助手についたのは人間そっくりのロボット、ダニール=オリヴォーだった。SFと本格推理の融合に初めて成功したと絶賛される「SFミステリ」の名作。

はだかの太陽The Naked Sun(1957)
長編。「宇宙人」の星の一つ、ソラリアで殺人事件が発生。ところがソラリア住人は対人接触を極端に嫌悪してお互いに離れて生活しており、人を殺せたはずがない。ただ、死体のそばには機能停止したロボットが。「三原則」に逆らってロボットが人を殺したのか?ベイリとダニールのコンビが再び謎に挑む。

ミラー・イメージMirror Image(1972)
短編。イライジャ=ベイリのもとに突然R・ダニールが訪れ、二人の数学者とそのロボットをめぐる難問解決を依頼する。ベイリ・ダニールコンビの番外編的短編。以前講談社文庫「SFミステリ傑作選」(訳・風見潤)で邦訳が載ったが現在では絶版で読むことはかなり困難。と思っていたら、2004年にようやく邦訳が出た「コンプリート・ロボット」に本作が収録され、安易に読めるようになった。この一本のためにはちょっとお値段が高いけど。

夜明けのロボットThe Robots of Dawn(1983)
長編。「宇宙人」の主力星オーロラで、ロボット破壊事件が発生。犯人と疑われたのは親地球派でダニールの生みの親でもあるファストルフ博士だった。反地球派の「宇宙人」たちが勢いづく。博士を救い、ひいては地球を救うためベイリとダニールはオーロラへと向かった。ベイリ・ダニールコンビの最終作。

ロボットと帝国Robots and Empire(1985)
長編。イライジャ=ベイリの死後百数十年が過ぎた。ベイリの運動で地球人は地下にこもるのをやめ、大宇宙へと進出していた。反発する「宇宙人」たちは密かに地球抹殺の陰謀を進める。ベイリの遺志を受け継いで、ロボット・ダニールは陰謀の阻止に動く。「ロボット・シリーズ」と「トランター帝国シリーズ」の橋渡し的作品。

宇宙気流The Currents of Space(1952)
長編。地球人の空間分析家が惑星フロリナの消滅を予測した。しかし彼は襲われ、記憶を失った。惑星フロリナは特産の繊維を産出し、周辺諸国の狙うところとなっており、これに成長著しいトランター帝国も目を付けていた。「トランター帝国」シリーズの第一作。

暗黒星雲のかなたにThe Stars,Like Dust(1951)
長編。星雲諸国の王子バイロンは地球大学に留学していたが、ティラン帝国に命を狙われ、銀河の彼方へ旅立った。帝国に対抗するため、バイロンは反乱軍の秘密の根拠地となっている惑星を探す。そしてそこには帝国を覆すほどの、ある物があると言うのだが・・・。アシモフ作品中珍しくスペース・オペラを展開している作品。

宇宙の小石Pebble in the Sky(1950)
長編。老人シュバルツはまったくの偶然で20世紀から遠い未来にタイムスリップ、特殊能力を獲得してしまう。時はトランター銀河帝国最盛期。地球は人類発生地であることも忘れ去られ、あたかも「宇宙の小石」となっていた。そして地球の急進派はひそかに全銀河に対する恐るべき陰謀を企てていた!

袋小路Blind Alley(1945)
短編。「アシモフ初期短編集3」に収録。銀河帝国紀元970年代、銀河系内に初めて「非人間」の知的生命が発見された。しかも彼らは心理学・生理学においては人間を上回る科学力を備えていた。これに対し銀河帝国の一官僚アンティオクがとった処置とは?ごく短い短編ながら、銀河帝国最盛期を知る貴重な物語。非人間文明が登場する点でも異例。

ファウンデーションへの序曲Prelude to Foundation(1988)
長編。惑星ヘリコンの若き数学者ハリ=セルダンは、歴史の動きを予測する「心理歴史学」の研究をひっさげて首都トランターにやって来た。関心を示す皇帝クレオンに拝謁したセルダンだったが何者かに追われ、トランター中を逃げ回る。「ファウンデーション」の設立者セルダンの活躍を描く。

ファウンデーションの誕生Forward to Foundation(1992)
長編。セルダンは帝国の宰相も務めるかたわら「心理歴史学」の研究を進める。そして帝国の運命を知り、人類のために「ファウンデーション」設立に生涯を捧げていく。ハリ=セルダンの苦闘の後半生を描く、アシモフの遺作となった長編。妙にセルダンとアシモフのイメージがだぶる。

ファウンデーションFoundation(1951)
連作短編集。最初に発表された「ファウンデーション」シリーズの作品集で、最も未来歴史小説のイメージが濃い。
「心理歴史学者」The Psychohistrians(1951)
銀河帝国の崩壊を数学的に予言する「心理歴史学者」ハリ=セルダン。彼は公安委員会に捕らえられ裁判にかけらるが、帝国崩壊後の暗黒時代を短縮するために人類の知識を結集した「銀河百科事典」をつくるとの意図を示した。この結果、銀河の端の辺鄙な惑星、ターミナスに事典編纂のための「第一ファウンデーション」が設立される。単行本化に際して後から書き下ろされた「ファウンデーション」シリーズの記念すべきオープニング作品。
「百科事典編纂者」The Encyclopedists(初出タイトル“Foundation”、1942年5月)
「ファウンデーション」設立から50年後、銀河帝国は次第に崩壊しターミナス周辺には独立王国が割拠して第一ファウンデーションに服属を要求してくる。市長ハーディンはこの危機の打開をめぐって百科事典編纂者たちと対立するが、そのとき「時間霊廟」に出現したセルダンの映像が思いがけない事実を告げる。
「市長」The Mayors(初出タイトル“Bridle and Saddle”、1942年6月)
さらに30年後、ターミナス周辺の4王国はますますファウンデーションに対する圧迫を強めていた。市長ハーディンはターミナスがもつ唯一の力である科学技術を利用した「宗教」によりこの危機に立ち向かう。そして再び「時間霊廟」にセルダンの姿が…
「貿易商人」The Traders(初出タイトル“The Wedge”、1944年10月)
おのれの利益を得るため、と同時にファウンデーションの拡大のために銀河を駆け巡る貿易商人たちのしたたかな活躍を描くミニ・エピソード。
「豪商」The Merchant Princes(初出タイトル“The Big and the Little”、1944年8月)
第二の「セルダン危機」から75年後、科学を宗教に変えて勢力を拡大していた第一ファウンデーションの前に、高度な科学力を持つコレル共和国がたちはだかった。貿易商人のホバー=マロウは冒険の末にその背後にトランター銀河帝国が今なお存在していることを知る。市長となったマロウは「経済力」を武器にコレル共和国との戦争に臨む。

ファウンデーション対帝国Foundation and Empire(1952)
2つの中編を収録。拡大を続ける第一ファウンデーションの前に、トランター銀河帝国、そして突然変異体であるミュールがたちはだかる。このあたりからアシモフ得意のミステリ色が強くなる。
「将軍」The General(初出タイトル“Dead Hand”、1945年5月)
マロウの時代から40年後、ついにトランター帝国が第一ファウンデーションと激突する。帝国の将軍ベル=リオーズ率いる艦隊がファウンデーション攻撃にかかる中、ファウンデーションの貿易商人デヴァーズはこれを阻止するべく帝国の中枢へと潜入する。
「ザ・ミュール」The Mule(1945年11月・12月)
「ファウンデーション」設立から300年が経ち、順調に発展を続ける第一ファウンデーション。ところが人々の心を操作する超能力を持った突然変異体「ミュール」が出現、たちまち銀河系の大半を制し第一ファウンデーションも降伏を余儀なくされる。ファウンデーション人のトランとベイタの夫婦はセルダンが言い残した「第二ファウンデーション」を求めて銀河に旅立つ。

第二ファウンデーションSecond Foundation(1953)
2つの中編を収録。多くの謎が明かされ、長い間一応の「ファウンデーション」シリーズの完結編だった作品。
「ミュールによる探索」Search by the Mule(初出タイトル“Now You See It”、1948年)
銀河系を制覇したミュールは、自らの帝国をおびやかしかねない「第二ファウンデーション」を求めて銀河中を探索する。ミュールの探索が及んできたそのとき、ミュール同様に精神感応力を持つ「第二」の人々は反撃に転じ、ミュールの野望はくじかれる。
「ファウンデーションによる探索」Search by the Foundation(初出タイトル“-And Now You Don't”、1949〜50年)
ミュールの滅亡後、その残党であるカルガン太守の艦隊が第一ファウンデーションをおびやかす。「第一」の人々はこれと戦いつつ、精神感応力を持つ「第二」の存在を恐れてもいた。この混乱の中で、ベイタ=ダレルの孫である少女アーカディ=ダレルは銀河を駆け巡る大冒険を展開する。そして「第二」はどこにあるのか、ついに真相が明かされる。

ファウンデーションの彼方へFoundation's Edge(1982)
長編。建国から500年、順調に発展を続ける「第一ファウンデーション」。しかし議員トレヴァイズは見かけの順調さに疑問を抱いた。彼は人類の発生地「地球」の探索を口実に、考古学者と銀河の彼方へ飛び立つ。一方、「第二ファウンデーション」でもトレヴァイズの行動に注目し、銀河に何ものか未知の存在を感じ取っていた。実に30年ぶりに発表され、ファンを熱狂させた「ファウンデーション」シリーズの続編。

ファウンデーションと地球Foundation and Earth(1986)
長編。「ファウンデーション」以外に存在した、別の人類の進路。トレヴァイズは自分の決断が果たして正しかったのか自問する。その答えは人類の発生地「地球」にあるのでは?引き寄せられるように、トレヴァイズは「地球」を目指す。そこには思いも寄らない存在が待ち受けていた。「ファウンデーション」シリーズの年代的最終作。残念ながらこの後の歴史は書かれていない。

永遠の終わりThe End of Eternity(1955)
長編。時間を旅し、人類全体のために微妙に歴史を変える「永遠人」という存在があった。その「永遠人」の一人が、歴史から消えるべき女性に恋をしたことから、歴史は狂い始めた。「銀河帝国」シリーズの舞台(地球型人類だけが登場する銀河)を整える、楽屋的存在の作品。


☆新・ファウンデーションシリーズ☆
アシモフの没後、ハードSFの第一人者三人組「キラーB’s」(=「毒蜂」にひっかけたシャレ)によって執筆された「公認」の続編。一応アシモフのメモ等が使われているとされるが、それぞれ癖のある作家だけに世界観だけ借りてそれぞれの書きたいものを書いているという印象も強い。いずれもハリ=セルダンを主役にアシモフが描かなかったインサイドストーリーを語る形式で、現時点で3冊が出ている。

ファウンデーションの危機Foundation's Fear(1997)
グレゴリィ=ベンフォードが執筆した新シリーズ第1弾の長編。物語中の年代では「ファウンデーションへの序曲」の直後に当たる。心理歴史学を完成に導くべく研究に没頭するセルダンのもとに、太古の地球の「模造人格」、“ジャンヌ・ダルク”と“ヴォルテール”が発見されたとの情報が入る。セルダンは妻のドースとともに銀河の彼方へ旅立ち、次々と特異な体験をしてゆく。新シリーズで導入された新要素「模造人格」とベンフォードならではの宇宙航行法がみもの。「心理歴史学」そのものをテーマにすえた小説とも言えるが、新シリーズの下地を作る役割を与えられたためにかなり長大重厚で読みにくい印象も。

ファウンデーションと混沌Foundation and Chaos(1998)
グレッグ=ベアが執筆した第2弾長編。年代的には「ファウンデーション」の一作目「心理歴史学者」と重なっており、同じ場面を違う観点で眺めることができる。「心理歴史学」に基づくファウンデーション計画を破壊しかねない「混沌」に対しセルダンが立ち向かう展開で、ドースも再登場して活躍する。また本作から帝国が出来る以前にロボット達の間で派閥抗争が起こっていたという設定が明かされる。

ファウンデーションの勝利Foundation's Triumph(1999)
デビッド=ブリンが執筆した第3弾長編。「ファウンデーションと混沌」の直後ぐらいの時期設定で、ファウンデーション計画を実行に移し残り少ない余生を送るセルダンが、ある情報に導かれてまたもや銀河を駆け巡る。過去のロボット派閥間の抗争や、「暗黒星雲のかなたに」「宇宙の小石」など他作品とのつながりなど歴史的背景をまとめつつ、アシモフが描ききれなかった未来史を補完していく。ラストでは「永遠の終わり」とのつながりもにおわせ、後継の作家に引き継ぐ伏線も用意されている。