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投稿時間:2011/10/04(Tue) 00:38
投稿者名:子守男
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URL :http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2010-06-20
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アシモフは原文を改訂していた?
初めまして。
久しぶりに「ファウンデーション三部作」を原書で読んだところ、ちょっと気づいたことがありました。自分のブログ(事実上休止中)に書こうかとも思ったのですが、かなりマニアックな内容なので、「ファウンデーション」について検索していて見つけた貴サイトに投稿させていただくことにしました。すでに知られている内容でしたら無視してください。

今回読んだのは現在最も手に入りやすいと思われるBantam社のペーパーバックですが、"Second Foundation"の第20章のはじめの方に、次のようなような文があります。

Dr. Darell returned to Terminus some weeks after VK day, 62:377, and that same evening, (以下略)

この「"62:377"って何かな」と思い、すぐに「ファウンデーション紀元(F.E.)377年の第62日のことだな」と考えました。そういえば、とページを戻してみると、前の章に、「クオリストンの戦い」がF.E.377年に起きたという「銀河百科事典」からの引用があります。

一応確かめようと、実家から取り戻してきた創元推理文庫の翻訳を見ると・・・ない! 書店で現行のハヤカワ文庫をのぞいてみると・・・こちらにも、「62:377」の部分がない!

ネットを検索してみたら、「三部作」原書全体のpdfファイルがあったのでダウンロードしてみると、なんと! こちらにもペーパーバックにあった"62:377"が入っていないのです。

さらにもうひとつ発見しました。「第二ファウンデーション」の最後のパラグラフ(まさにエンディング)は、Bantam版だと"Eight months earlier,"(「八ヶ月前」)で始まりますが、ネットのpdf版は"Ten months earlier," また二つの邦訳も「十ヶ月前」となっています。

私が30年ほど前に最初に読んだPanther社版の原書は、実家のどこかにあるはずなのですが見つからず、比較ができないのですが、仮にこれもネットにあるものと同じだとすると、アジモフがある時期(もしかしたら80年代に新作を書き始めたのにあわせて?)原文に手を入れた、ということなのでしょうか。

そうだとしたら、わざわざファウンデーション紀元を入れたり、「十ヶ月」を「八ヶ月」にしたりしたのは、最初書いた時間経過に矛盾があったということなのでしょうか?

ネット版の英文とペーパーバックを読み比べてみれば、さらにいろいろわかることがありそうですが、その余裕と気力がありません。この問題について知っている方、情報を持っている方がいらしたら、教えていただきましたらうれしいです。

投稿時間:2011/10/05(Wed) 00:23
投稿者名:徹夜城(第一発言者)
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Re: アシモフは原文を改訂していた?
子守男さん、はじめまして。管理人やってる第一発言者こと徹夜城でございます。

この掲示板も油断してると書き込みがありますね(^^;)。しかも大変興味深い。

僕が所有しているペーパーバックの「Second Foundation」(HarperColinsPublishers、1994とあります)をチェックしてましたが、こちらにはそのファウンデーション紀元の個所はなく、日本語訳と同じことになっていました。
最後のパラグラフの部分もやはり「十か月前」になってますね。

Bantam社のペーパーバックというのは僕は読んだことがないのですが、変更があったとするとアシモフ死後のことでは…という気もしてくるのです。僕が持ってるペーパーバックもアシモフの死去に前書きで触れていまして、その時点では変更がなかったことになると思うのです。
このあたり、アシモフ作品の管理がどうなっているのか気になるところなのですが…

投稿時間:2011/10/05(Wed) 01:23
投稿者名:子守男
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URL :http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2010-06-20
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Bantam版はアジモフ存命中の出版?
第一発言者様の書き込みを拝読し、Bantam版のペーパーバックを見たところ、mass market editionの出版年はアシモフ存命中の1991年11月、そしてhard cover editionとmass market editionのreissueが2004年6月と書かれていました。

1991年当時から私が今回読んだような文だったとすると、同じ時期に出ていたHarperCollins版とテクストが違うことになり、不思議ですね。でなければ、やはり2004年のreissueの時に書き換えられたのでしょうか。だったら、誰によって?

今回のBantam版は店頭で購入したものですが、別の書店でも見かけましたし、アマゾンで検索してもまっさきに出てくるので、多分これが現在一番手に入りやすいのではと思います。そうすると、こちらのテクストがいわば「デフォルト」になっていくのでしょうか。

ところでこのバンタム版三部作の表紙絵は、どれも私が最初に読んだPanther版(絶版)に比べてはるかにつまらないものだと思っており、自分のブログの記事(上記)に書いてしまったほどです。第一発言者様のハーパーコリンズ版の表紙はネットで見つけましたが、なかなかいいですね。

ついでに日本版も、これまた絶版の創元推理文庫の装丁の方が(また翻訳も)私は断然好きで、現行のハヤカワ文庫のカバー絵は何かカン違いしているとしか思えません。

内容が「よもやま話」的になってしまったので、これにて失礼します。版の違いについては、また気づいたことがありましたら報告させていただきます。

投稿時間:2011/10/06(Thu) 14:12
投稿者名:徹夜城(第一発言者)
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バンタム版の謎
>子守男さん
そうですか、アシモフ存命中の出版にも関わらず異なる部分があったのですね。うーん、僕もバンタム版を入手して確認してみようかな。結構普及してるようですから、あちらのファンで気づいている人もいると思うんですが…。検索かけてみたけど話題になってるかどうか探すのが大変そうです。
バージョン違い問題というのは、僕がファンサイトやってるアルセーヌ・ルパン関連の原書および翻訳本でも覚えがあることなのですが、アシモフでもそういうのが出てくるとは。

表紙絵のことはアメリカ・日本ともにいろいろ意見がありますね。僕も創元版から入ったもので、あのシュールというか前衛的というかのイラストはかなり気に入っておりまして、ハヤカワ版の生頼イラストは客を呼ぶではあろうけど内容とのギャップがあるような…とは思ってます。

よもやま話も結構ですので、今後もお気軽にお書き込みください。
もっともよもやま話系はこのツリー型掲示板ではなく普通の伝言板スタイルの方でやるほうがいいかもしれません。

投稿時間:2011/10/09(Sun) 12:33
投稿者名:子守男
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URL :http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2010-06-20
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さらに相違点を発見、および暦法の謎
ネットからダウンロードしたpdf版"Second Foundation"(およびそちらのテクストに拠っていると見られる2つの邦訳)とバンタム社のペーパーバック版の相違点をさらにいくつか見つけました。

まず、"Battle of Quoriston"の日付です。第19章冒頭にある「銀河百科事典」の引用が、pdf版では"Fought on 9, 17, 377 F.E."(ハヤカワ訳「ファウンデーション紀元377年9月17日」)となっていますが、バンタム社のペーパーバック版では"Fought on 1,3, 377 F.E."と、日付が変わっています。

また、この戦いの本文中の描写部分は、pdf版(および2つの邦訳)は"The Foundation loss was eight ships out of a total of one hundred twenty-five."(ハヤカワ訳「ファウンデーション軍の損害は125隻のうち8隻だった」)でパラグラフが終わっていますが、 バンタム版では、このあとに"It was the third day of the new year of 377."という、章冒頭の「事典」の記述に沿った一文がわざわざ追加されています。

さらに第16章のはじめの方で、ファウンデーションとカルガンの戦争のきっかけとなった「ホーバー・マロウ」号の損失の日付がいくつかの異なった暦法で示されますが、ここにも相違点がありました。

この事件の日付は、pdf版(および2つの翻訳)では、「11692年G.E.、419年A.S.、348年Y.F.、56年F.C.の第185日」です。しかしバンタム版では「11692年G.E.、455年S.E. 376年F.E.、76年F.C.の第185日」となっていました。つまりG.E.はどちらも11692年なのに、他の暦法による年が略号ともども大きく変えられているのです。

また略号はA.S.とS.E.と違うものの、どちらも「セルダン生誕からの暦」、Y.F.とF.E.はいずれも「ファウンデーション創設からの暦」を指すことは2つの版とも同じです(同じ文言で説明されています)。そこでY.F.とF.E.が同じものとだとすれば、「クオリストンの会戦」はpdf版ではマロウ号事件の29年後、バンタム版では翌年に起きたことになります。

「ファウンデーション」に出てくる暦に矛盾があるらしいことは、貴サイトのエントリで知りましたが、バンタム版に見られる書き換えは、そうした矛盾に基づいたものなのでしょうか?