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投稿時間:2012/05/27(Sun) 19:45
投稿者名:Ken
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ゲーム版鋼鉄都市(1)
以前に紹介したゲーム版の鋼鉄都市を覚えていますか?
オリジナルのストーリーだし低予算の作品ですが、「アイ・ロボット」などよりもはるかにアジモフの作品世界をよく表現しています。この映像作品をもっと詳しく紹介しようと思います。実のところ、ダウンロードした動画に字幕を加えてYouTubeへアップすることも考えましたが、著作権がどうなってるのか分からないので、次善の策として、作品中で何が話されているのか、掲示板で紹介することにしました。今回は第1部です。どうぞ楽しんでください。
************************************************
パート1:http://www.youtube.com/watch?v=By53fLlxrjE

始めに、この物語がゲームであることが宣言される。プレイヤーは物語の細部に注意を払い、犯人を当てることを求められる。

イライジャ・ベイリの独白〜人類が発祥した地球。人類がかつて、動物のように無防備な地上で暮していたとは、今では信じ難い。幸い人類は地上の都市を捨て、安全な地下へ移住するだけの分別があった。だが、なかには宇宙へ出てゆくという、異なる選択をした者たちがいる。彼らの子孫であるスペイサーは、我儘な浪費者だが、病気に冒されることもなく、芸術や科学に携わる自由をもち、あらゆる望みが充たされた生活をしている。それを可能にしたのが、彼らに奉仕する、利口で、強く、従順なロボット群だ。ロボットはさらなるロボットを作り、その数はスペイサーの100倍にのぼる。ロボットはスペイサーに奉仕するだけでなく、宇宙船の操縦までやる。なるほどロボットは地球にもいる。人間は地表で農作業をしようとはしないのだから。だが、スペイサーのロボットとは比較にならない低次元なものだ。だから地球はスペイサーに太刀打ちできない。スペイサーはニューヨーク近郊に基地を設け、目的は地球を援助するためだと主張する。彼らの真の目的は知らないが、ケルデン・アマデイロが、援助目的でやってきたのでないことだけは分かる〜

ここで場面がニュース番組になる。
キャスター「最新の人口調査に基づき、市長は食料供給がさらに減ることを警告しています。では次のニュース。スペイサーのケルデン・アマディロが今週地球を訪れたことに地球政府は懸念を抱いています。反地球論者として知られるアマディロは、基地建設のためオーロラから地球へ派遣されました。彼を迎えたのは、数ヶ月先行して地球へきていた、有名なロボット工学者ハン・ファストルフです。アマディロとファストルフは、地球とスペイサーの関わり方をめぐって対立関係にあることは周知されています。到着以来、アマデイロは一切のインタビューに応じていません。次のニュースです。反スペイサー、反ロボットの暴動が、都市の5ヶ所で活発化しています。最も激しいのはブルックリンの空気処理工場で、3万人の仕事がロボットに奪われたと言います。それでもNY市警は、事態を制御下に置いていると述べています」
画面が市警のトップ、ジュリアス・エンダビーに切り替わる。
エンダビー「ニューヨーク市民は何も心配するに及びません。我々は事態をコントロールしております」
キャスター「この時間のニュースは以上です」
ここでイライジャ・ベイリはTVを切る。

7:15am:ニューヨーク市警。
ベイリ「スペイサーに暴動にロボットか。窃盗事件などニュースにもならなくなったな」
その時、ベイリの背後に突然現われたロボットのサミーが声をかける。
サミー「ベイリ刑事」
ベイリ「サミー、私の背後にこっそり近づくなと、何回言った?」
サミー「306回です」
ベイリ(サミーの答えにあきれて)「もういいよ」
サミー「何がいいのですか?」
サミーとベイリ苦笑。
サミー「ベイリ刑事、エンダビー本部長がすぐに来てくれといってます。本部長はひどく心配しています。たった今スペイサー・タウンと話したところです。ひどく心配しています」
ベイリの独白〜いつものことだ。本部長になにかあると、サミーは大騒ぎをする。まぁ、市の半分で暴動が起こり、スペイサーが強硬な態度に出たとしたら、心配もするだろうが。問題は、ジュリアスが窮地に立つと、なんとかしろと言われるのは、いつもライジ・ベイリ刑事ってことだ〜

ベイリが本部長のデスクへやってくる。
ベイリ「すごく心配してると聞いたよ、ジュリアス」
サミー「そう言いました、本部長」
エンダビー「ありがとう、サミー。ベイリ、かけたまえ」(机上のピザを指して)「よければつまみたまえ」
ベイリ「よしてくれ。そんな高カロリー、100年前の遺物だろう」
エンダビー「ライジ、君は古きよき時代に偏見をもちすぎてるぞ。ロボットもスペイサーもいない。本物の食べ物、本物の音楽──」
ベイリ「ついでに新鮮な空気に太陽の光とくるんだろ」
エンダビー「すぐそうやって極論に持ってゆく。たった今、ハン・ファストルフと話したが、何を要求してきたと思う?地球の都市にスペイサーを入れさせろというんだ」
ベイリ「地球都市にスペイサーを?病原菌に縮みあがるんじゃないのか?」
エンダビー「この場合は違う。来るのはロボットなんだ」
ベイリ「なんだって!」
エンダビー「そうだ!ファストルフが言うには、これは実験で、そんなに長くはかからないそうだ。彼等は地球が心配なんだと。環境悪化に過密人口に食料危機。スペイサーは自分ではこれないからロボットを地球に留めて我々を観察下に置くという」
ベイリ「スペイサーのロボットを?だめだよ。大変な騒ぎになる」
エンダビー「私だっていやだが、スペイサーは聞く耳をもたないんだ!」
興奮したエンダビーは勢い余って眼鏡を壊してしまう。
エンダビー「ああ、もう!直すのにまた金がかかる」
ベイリ「なんで遺伝子工学で作った目にしないんだ。皆そうしてるじゃないか」
エンダビー「ベイリ、私はファストルフにノーと言えないんだ。スペイサータウンへ行き、先方の刑事を連れてこい。ダニール・オリヴォーという名前だそうだ。あとのことはそれから考えよう」
ベイリ「ちょっとまった。スペイサータウンは地表じゃないか。そんなとこへゆけるか」
エンダビー「地表に出る必要はない。地下鉄が通じてるんだから」
ベイリ「だけど──」
エンダビー「私にもどうにもならないんだ!」
エンダビー出てゆく。
サミー「これは最重要の案件です。データセンターの技師とのリンクをはってください、ベイリ刑事」
ベイリ「忠告に感謝するよ、サミー」
サミー「どういたしまして、刑事。ではいってらっしゃい」
ベイリは携帯端末を取り出して話す「データセンター、こちらはイライジャ・ベイリ刑事だ。ロボット関連任務という名で、新規のファイルを作れ」

投稿時間:2012/05/28(Mon) 23:46
投稿者名:徹夜城(第一発言者)
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ありがとうございます〜
>Kenさん
投稿、ありがとうございます〜しかも非常に「使える」内容で感謝感激。
今後もよろしくお願いします〜

投稿時間:2012/05/29(Tue) 01:18
投稿者名:Ken
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Re: ありがとうございます〜
徹夜城さん、
こちらこそ発表の場をいただき、ありがとうございます。

本作品は1988年に作られてますが、やはりアジモフの存命中には遠慮があって、原作世界が尊重されてるんじゃないでしょうかね。「バイセンテニアルマン」はアジモフの死後ですが、一方の著者のシルバーバーグがいたから、基本的には原作尊重。これが「アイ・ロボット」や「夜きたる」になると、原作などブッとばしての、やりたい放題。

ところで本作品は犯人を当てる刑事ものですが、最後までいっても「解決編」はありません。それでも、登場人物の発言を入念に検証すれば、犯人は分かる仕掛けになってると思います。こちらの方も楽しんでみてください。

投稿時間:2012/05/28(Mon) 23:49
投稿者名:Ken
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ゲーム版鋼鉄都市(2)
パート2:http://www.youtube.com/watch?v=p5RpJFaHWu0&feature=relmfu

ベイリ(端末に)「スペイサータウンへ行くので、地図やその他の関連情報を出してくれ」
表示データ※スペイサーが地球の都市に入ることは決してない。スペイサータウンは地下鉄で結ばれている※

7:55am:スペイサータウン行きローカル線。地下鉄の中に、ロボットをなくせの落書き。
ベイリの独白〜スペイサーが基地を必要だとして、なぜニューヨークの近くに作るんだ?スペイサーにはどうしても気押されてしまう。奴らのロボットときたら悪い夢だ。なのにエンダビーはそのロボットと協力しろという!今日は休めばよかった。そろそろ着く頃か。ローカル線で30分かかるな。そうだ、彼らの基地へ入る前に除菌にかけられるんだった〜

8:00am:スペイサータウンの除菌場
ベイリ「まだ終わらないのか?はやいとこ済ませろよ。ほらそこ、病原菌が逃げる前にやれ。熱線銃よりもおれがくしゃみをしないか注意してろ」
ようやく終わってふらつく足取りで出てきたベイリの前に1人の青年。
ベイリ「ファストルフ博士の研究室へ行きたいんだが。そこでロボットと会うことになってる」
青年「はい、お待ちしてましたよ」
ベイリ「これは、ファストルフ博士。失礼しました」
青年「ちがいます、ベイリ刑事。私はダニール・オリヴォーです」
ベイリ「きみが?だってきみはロボットではなかろう」
青年「ロボットです。ファストルフ博士が開発した新しい人間型ロボットです。信じられませんか?ではこれをご覧なさい」
青年は眼からファストルフの立体映像を投影する。
映像のファストルフ「ダニール、イライジャ・ベイリ刑事がじきに到着する。除菌場の出口でベイリを迎え、研究室まで連れてくるように」
ベイリ(呆れて)「バカらしい。人間と見分けのつかないロボットを作ってどうするんだ」
ダニール「おいでなさい。ファストルフ博士の研究室へ行き、地球に関する博士の計画を説明します」
ベイリ「計画とは?」

8:15am:スペイサータウン内
ダニール「ファストルフ博士の計画とは地球に優れたロボットを導入して、地球を解放しようというものです」
ベイリ「ファストルフ博士は夢想家かい?ロボットのダニール」
ダニール「そうかもしれません。しかし博士は、地球の現状は限界にきており、もはや人口を支えきれないと考えています。しかし、かつてのスペイサーのように他の星へ進出するにはロボットの力が必要だ、と言うのです」
ベイリ「頭のいいファストルフも地球人のことは知らないな。地球人が新しい惑星の地上で暮すなどできっこない。屋外に出るのに耐えられないんだ」
彼らが歩く通路には明るい外光が入っており、ベイリは気分が悪くなる。
ベイリ(手で外光を遮りながら)「こんな環境に耐えられるのはスペイサーだけだ」
ダニール「外光がいやなのですか」
ベイリ「決まってるだろう、ロボット!」
ダニールは自身の体で外光を遮る「これですこしはましでしょう」
ダニール(歩きながら)「そこでファストルフ博士はロボットに対する地球の反応を研究することにしたのです。人間のなまの感情を扱いなれてるのは警察だから、これを利用して研究を進めようというわけです。人間型ロボットなら気づかれることなく人間と接触できるから、私が開発されました。そちらのエンダビー本部長と相談し──」
急にダニールが立ち止まる。
ベイリ「どうした?」
ダニール「おかしい。痛覚フィールドがオンになってるはずがないのだが。ここで待っててください」
言いながらダニールは力場を通り抜けて、スイッチを切る。
ダニール「ここが研究室です。入室できるのはごく少数の者だけです」
ダニールはセンサーに手をかざしてドアを開錠する。

8:35am:ハン・ファストルフ博士の研究室。ロボットの部品が多数存在する研究室にスペイサーのロボットが立っている。
ロボット「フレンド・ダニール、誰かがファストルフ博士の命を狙った」
ダニール「博士は無事か?」
ロボット「熱線銃の弾道から博士を押しのけるのが間に合った」
奥からファストルフが歩み寄り「ベイリ刑事、高名はうかがっていますよ」
ベイリ「あなたこそ高名な科学者でいらっしゃる。ここへきてその理由が分かりましたよ。ところで何が起こったのです」
ファストルフ「この件は気にしなくてよい。私を襲った地球人は、スペイサーの保安部がすぐにつかまえるでしょう」
ベイリ「犯人を見て、誰だか分かったのですか」
ファストルフ「いや、犯人は私とギスカードが入り口から離れている時に侵入した」
ベイリ「それなら、犯人が地球人となぜ分かるのです」
ロボット「ベイリ刑事、スペイサーは犯罪を犯しません。3原則に従うロボットが防止するからです」
ベイリ「君は?」
ロボット「ギスカードといいます」
ベイリ「それでは、ロボットのギスカード、君もダニールのように映像を投影できるのか」
ギスカード「もちろん。自分の記憶が新鮮な間は可能です」
ベイリ「では襲撃場面を見せてほしい」
ギスカードはそのシーンを映す。ロボットの手がファストルフを押しのけ、そこを熱線が通過する。
ファストルフ「ギスカードは背後で熱線銃がチャージされるのを聞き、その意味を推測して、ロボットのスピードで私を救ったのだ」
ベイリ「犯人を見たかい、ロボット」
ギスカード「いいえ、刑事」
ベイリ「犯行時刻は?」
ギスカード「8時半きっかりです」
ファストルフ「ベイリ君、さきほど言ったように、スペイサーの保安部が動いているから、君のすることはない。君とダニールは地球都市へ戻り、本来の任務に取り掛かるべきだ」
ベイリ「地球のやり方が間違ってることを示すのだと聞きましたが」
ファストルフ「きわめて重要なことなのだ。この研究室にあるのは、スペイサーがロボットの力で実現した文化のほんの一端にすぎない。ところが地球は地下へもぐり、増大する人口と涸渇する資源の問題に無策だ。外への拡張を再開しない限り、地球文明は死んでしまう」
ベイリ「でもなぜスペイサーがそれを気にするんですか」
ファストルフ「スペイサーは成功に満足し、うぬぼれ、保守的になりすぎた。長寿も理由の一端だろう。しかし地球がスペイサーに加われば、我々の科学と君たちの活力が1つになり、どちらも生き残れる。地下都市を出て宇宙への道を昇るべきだ」

10:30am:警察。ジュリアス・エンダビー本部長のオフィス。
通信機にアマディロが現われる。
アマディロ「エンダビー本部長、今朝、地球人がスペイサーのハン・ファストルフを襲った話は聞いておられるでしょうな」
エンダビー「おや、アマディロ博士。ファストルフ博士の件はまったくひどいことです」と応じながら、サミーにベイリを呼べと耳打ちする。
アマディロ「スペイサーのコミュニティにとって由々しいことだ。地球での安全は保障していただかねばなりません。我々の命は長く、高い価値をもつ。こんな危険にさらすわけにはゆきませんぞ。本部長、反スペイサー・反ロボット暴動を市警が取り締まっておれば、こんな暴挙は起こらなかったはずです」
そこへベイリとダニールが到着する。
アマディロ「再発は許されない。期限は24時間ですぞ」
エンダビー「何の期限ですか」
アマディロ「犯人検挙です」
エンダビー「24時間で?」
アマディロ「いかにも。それができないなら、スペイサーの力で秩序を回復するまで」
エンダビー「力とは?スペイサーのロボットということか?地球人は断じて容認しませんぞ」
アマディロ「我々は地球人の容認など必要としません」
エンダビー(落ち込んで)「ベイリ、この件を解決しろ」
ベイリ「我々の権限事項じゃないよ、ジュリアス」
ダニール「パートナー・イライジャ、我々の特別任務のおかげで、我々だけが地球都市とスペイサータウンの両方で捜査権限を持っています」
ベイリ「そうか・・・・では、ファストルフの研究室に入れる全員のリストが必要です」
アマディロ「ボーグラフ、研究室にはいれる地球人は誰か」
通信機からロボットの声「エンダビー本部長以外では、政府のロボット技術者ソフィア・クインタナだけです」
アマディロ「ありがとう。では本部長とベイリ刑事、24時間ですぞ」
ベイリとダニールは出て行き、エンダビーはサミーに付いてゆけと合図する。

自分のデスクに戻ったベイリ(追いかけてきたサミーに)「サミー、ソフィア・クインタナを呼び出してくれ」
サミー「直ちに、ベイリ刑事。エンダビー本部長はひどく心配してます」
ベイリ「エンダビー本部長はひどく心配してます、か」
ベイリの独白〜待ってる間に、ソフィア・クインタナのプロファイルをチェックしたが、たいした情報はないな。政府の高官で、サミー型ロボットを設計した、地球のロボット工学の第一人者、か〜
時を置かずにクインタナが、ロボットを伴って現われる。
クインタナ「刑事さん、私のオフィスは通路の先なのよ。ジェインと私はひどく忙しいの」
ロボット「重要な仕事です」
ベイリ「すみません、クインタナさん。エンダビー本部長の特命で──」
クインタナ「これはジュリアスの用件なの?最初に言えばいいのに。それなら協力を惜しまないわ」
ベイリ「クインタナさん」
クインタナ「ソフィアと呼んでちょうだい」
ロボット「私はジェインよ」
ベイリ「今朝、何者かがファストルフを殺そうとしました」
クインタナ「ハン・ファストルフのこと?スペイサータウンの?それで彼は無事なの?」
ベイリ「私が知る限り無事です。あなたの今朝の所在地を知る必要があります」
ジェイン「聞いてくれてありがとう。私はずっとオフィスにいましたが、ソフィアはワシントンへ出張していて、戻ったのは午前の遅い時間です」
クインタナ「この質問の理由は?」
ベイリ「あなたはファストルフの研究室へ入れる1人だし──」
ジェイン(割り込んで)「そうです。そして──」
ベイリ「ちょっと黙っててくれ!」
ジェインはショックを受けて震える。
クインタナ「ベイリさん!」
ベイリ「ごめんよ、ジェイン。君にはこれ以上の質問はないんだ。それではソフィア、あなたは今朝ワシントンにいたわけですね」
クインタナ「昨夜は公式晩餐会に招かれたの。今日の新聞の24頁にその記事があるわ。ワシントンまで都市間地下鉄で2時間もかかったわよ」
ベイリ「ファストルフ博士と一緒に働いたことがあるそうですね」
クインタナ「まあね、ハンと自分は職業上親しかったから。同僚、と言えば分かるわね」
その時ダニールが戻ってくる。
ダニール「おはようございます、クインタナさん」
クインタナ(急に怒って)「ファストルフはやってくれたわね。私の警告を無視して、スペイサーのロボットを地球都市へ送り込むなんて!」
ダニール「自分はベイリ刑事と協力するように指示されました」
クインタナ「こんなこと我慢できるの、ベイリ!」
ベイリ「仕方がないんですよ。それで、ソフィア、あなたとファストルフの関係ですが?」
クインタナ「わくわくしたのはたしかよ。伝説のハン・ファストルフ。賢くて、チャーミングで、ハンサムな──」
ジェイン「そんなに彼が好きなの?」
クインタナ「でも彼をよく知るようになると、冷たい、仕事にしか関心のない男だと分かるわ。彼の娘のヴァシリアに聞けばいい。毎日一緒に仕事をしてるのだから。私には絶対無理だけど」
ベイリ「彼には娘がいるのですか?」
クインタナ「娘と呼べるならね。世の中の親子とは全然違うけど」
ジェイン「ベイリさんはソフィアをいらだたせてます。もう行きましょう」
クインタナ(席を立って)「以上よ」
ベイリ「感謝します」
ベイリはダニールに歩み寄り「ファストルフの娘のヴァシリアを訪問するから彼女のデータをだしてくれ」
ダニール「承知しました。それとデータセンターを当たって役に立ちそうな情報を見つけました、パートナー・イライジャ」
ベイリ(端末を開き)「この情報をAデータとして入力せよ」

投稿時間:2012/05/29(Tue) 23:14
投稿者名:Ken
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ゲーム版鋼鉄都市(3)
パート3:http://www.youtube.com/watch?v=_Bt45r0akYo&feature=relmfu

ベイリ「データセンター、今からスペイサータウンへ戻るが、新しい情報はあるか」
表示データ※スペイサーは激しく菌感染を恐れる。スペイサーの寿命は数百年に及ぶ※

2:00pm:ヴァシリア・ファストルフの研究室。
ベイリの独白〜ヴァシリア・ファストルフのオフィスは、父親の研究室から3マイル、政庁内にある。地上へは出られないから、地下の保守用通路を徒歩で行った。ヴァシリアは私と会うのをひどく嫌がっているようだ〜
部屋では大音量の音楽がかかっている。ベイリが自分に気付かないヴァシリアの背後から肩を叩くと、ヴァシリアは悲鳴を上げて飛び上がる。
ベイリの独白〜くしゃみをしたわけではないが、私と会うのは誇りが許さないようだ。というか、彼女はそもそも誰かとつきあいたがるタイプではないという印象を受ける〜
ヴァシリア(ベイリと距離をとりながら)「アマディロ博士の指示だからあなたと会うが、手っ取り早くすませておくれ、地球人」
ベイリ「もう少し静かなほうが、すぐに片付くと思いますが」
ヴァシリア(音楽を切って)「大音量の音楽がある方が集中できるのよ」
ベイリ「今朝、お父さんが殺されかけたことを知ってますか」
ヴァシリア「あんたの名前は?地球人」
ベイリ「ベイリです」
ヴァシリア「よくお聞き、ベイリ。ハン・ファストルフが私の父親としてふるまったことは一度もない。彼は80年間私の研究を盗んで、栄光を我が物にする一方、私の昇進を妨げてきた。彼よりも、私のデザインを盗んで彼が作ったロボットの方に、よほど関心があるわ」
ベイリ(ヴァシリアに歩み寄り)「では、彼を襲う動機のある人は?」
ヴァシリア(後ずさりながら)「地球人の知り合いはいないわ」
ベイリ「それはあなたの損失ですな。では今朝8時半どこにいました」
ヴァシリア「スペイサーは犯罪を犯さない。私はこのオフィスにいた。それ以上近づくな!」(データ端末をチェックして)「8時半には3次元通信を使っていた」
ベイリ「ファストルフ博士について知ってることは?」
ヴァシリア「なにも。彼自身に聞けばいいでしょ。なぜこんな病原菌の巣窟に関わろうとたくらむのか。なぜ地球人を同胞として心配するふりをするのか、なぜ心にもないことばかりいうのか。彼は地球を愛してるかもしれないけど、地球の病原菌を恐れるのは私以上よ。もう出ておゆき、ベイリ。これ以上感染の危険には耐えられない。出て行かないなら、ロボットに放り出させるから」
ベイリ「その必要はない。聞きたいことは聞いた。お話できてよかった、ヴァシリア」(わざとらしく咳きこみ)「おっと、何かに感染してなけりゃいいが」
ヴァシリア(立ち去るベイリに)「なぜ私のアイディアを盗むのか彼に尋ねなさい」

ベイリの独白〜この機会にアマディロと話さねばならない。ニュースでは、彼はファストルフの敵対者だ。それなのに、エンダビーのオフィスでは、今回の暗殺未遂をひどく心配してるように見えた〜

2:15pm:ケルデン・アマディロのオフィス
アマディロ「待っていたよ、刑事。だいぶヴァシリアを怒らせたようだね」
ベイリ「まるで私が歩くペスト菌みたいでした」
ベイリが近づくとアマディロは後ずさり、同席しているロボットのボーグラフが「ヴァシリアの反応はともかく、あなたは地球都市のことにのみ関わっているのがよいのでは?」
ベイリ「私がこの件に関わるのは、アマディロ博士の強硬な要請のせいだ。君はロボットの、私は刑事の分を互いに守ろう」
アマディロ「すべての情報を提供するよ」
ベイリ「結構。手続き上、関係者全員の今朝8時半の所在を明らかにせねばなりません」
アマディロ「なるほど」
ベイリ「あなたはどこにいました?」
アマディロ「その質問は無意味だが、手続きのために答えよう。私は行政部にいた」
ベイリ「そんな早朝に何を?」
アマディロ「オーロラへの報告を亜空間3次元通信で行っていた」
ベイリ「毎日そんなことを? 1回の亜空間通信に要するエネルギーは、地球人1人を1ヶ月養えるのに」
アマディロ「そうだろう。だが3次元通信だけが文明との繋がりなのだ。ファストルフ博士ですら、オーロラとは常に連絡している。いずれにせよ、こんな質問は無意味。私やヴァシリアの所在を確かめてもしょうがない。スペイサーの犯罪などありえない」
ベイリ「またそれか、スペイサーは皆善人という話にはうんざりですな」
いきなりアマディロは手に持った丸い文鎮をベイリに向けて投げる。同時にボーグラフが飛び出し、ベイリの寸前で文鎮を掴んで握りつぶす。
ボーグラフ「お怪我は?」
ベイリ「・・・ないよ」
アマディロ「見ての通りだ。スペイサー社会では、ロボットがいかなる暴力も阻止するのだ」
ボーグラフ「アマディロ博士、文鎮を潰してしまいました」
ベイリ「みせてくれるか」(潰れた文鎮を手に取り)「ボーグラフ、君は今朝どこにいた?」
アマディロ「おいおい・・・」
ボーグラフ「アマディロ博士と私は、重要な案件を処理していました。私自身は、報告書をチェックして──」
アマディロが割り込んで「ボーグラフと私にはやることがたくさんある。そして君の期限はあと18時間だ」
ここでダニールが現われる。
ダニール「スペイサータウンで得られた情報がいくつかあります。入力したら地球都市へ戻りましょう」
ベイリ(端末を開き)「データセンター、ダニールが情報を集めてきた。これをBデータとして登録せよ。そちらに新しい情報はあるか」
表示データ※オーロラの強行論者は地球の完全隔離を主張するが、地球を徐々にスペイサー世界へ組み込もうと主張する穏健派との間で対立が続いている※

ベイリは机で寝入っている。夢の中で、
ニュースキャスター「アマディロの期限まであと12時間。噂では、犯人を挙げられない場合は、スペイサーのロボット群が地球都市に入り、暴動を鎮圧するとのことです」
ベイリの脳裏にイメージが湧く。ベイリの代わりにロボットの刑事。エンダビーの代わりに、市民に安全を保障するロボット。
ここでベイリは目覚める。

8:00pm:ニューヨーク市警
ダニール「捜査が進展してるとは思えません、パートナー・イライジャ」
ベイリ「忍耐だ、ダニール。刑事の一番の基礎は忍耐だよ。忍耐を続けるうちに、手がかりに出会う」
ダニール「人間の直感ですか?パートナー・イライジャ?」
ベイリ「そう言ってよかろう。事実と論理と直感が大切なんだ。あの研究室に出入りできる全員のリストをくれ。人間もロボットも、地球人もスペイサーも。ファストルフ博士とギスカードと君以外では誰だ?」
ダニール「ケルデン・アマディロ、ボーグラフ、ジュリアス・エンダビー、ヴァシリア・ファストルフ、ジェイン、ソフィア・クインタナ、それにサミー」
ベイリ「サミー!」と叫びながら、掃除するサミーを振り返る。「今朝の8時半はどこにいた?」
サミー「ここで働いてましたよ、ベイリ刑事。私がエンダビー本部長を心配してることは言いましたか?とにかく心労がひどいんです」
ダニール「イライジャ、なぜサミーの所在が気になるのですか?」
ベイリ「あらゆることが気になるんだ。ワラをも掴む心境なんだ」
ダニール「何を掴む?」
ベイリ「だからつまり──」
ダニール「そうか、地球のことわざですね。ワラをも掴む心境なら、これを見ては?」
ベイリ(端末を開き)「データセンター、この情報をCデータとして登録せよ」

投稿時間:2012/05/30(Wed) 22:32
投稿者名:Ken
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タイトル:
ゲーム版鋼鉄都市(4)
パート4:http://www.youtube.com/watch?v=U5rHsuz3h30&feature=relmfu

ベイリ「給料計算をしてるのか? 何か新しい情報は?」
表示データ※強さの比較:スペイサーロボット500、地球のロボット450、人間の大人100、人間の子供50※

9:00pm:ヴァシリア・ファストルフの研究室
ヴァシリア「ケルデン、私を地球から脱出させて。私にはまだ数百年の寿命があるのに。オーロラに帰りたい。これ以上の感染リスクには耐えられない!」
アマディロ「ヴァシリア、気持ちは分かる。私だって危険にさらされてる。でもファストルフの支持なしには手を出せない」
ヴァシリア「あんたの方が上位じゃないの」
アマディロ「だめだ。それをやったらオーロラでの私の立場が悪くなる。おそらく──」
言いかけたアマディロをボーグラフが制止する。
アマディロ「──もう少しで事態が変わるよ。今回の暗殺未遂が知られたら、地球を更生させる望みのないことがファストルフの支持者にも理解されよう。地球への同情もなくなるよ」
ヴァシリア「そんなの待てない。あの汚らしい地球人とこれ以上会うなんて──」
アマディロ「我慢だ、ヴァシリア。私だっていやなんだ。傲慢さを除けば、ファストルフだってベイリと何も共通点はないのに。だが彼は最後の勝利は得られない。今度こそ彼には負けない」

2:00am:ニューヨーク市警
ベイリ「聞いてくれ、ダニール。有能な刑事は自ら選択肢を狭めることはない。ヴァシリアとアマディロを容疑者リストから外す理由はない」
ダニール「スペイサー世界に犯罪はないから、アマディロやヴァシリアがファストルフを殺そうとするとは考えられません。しかもヴァシリアはファストルフの娘です」
ベイリ「分かってる。だが2人とも地球へ来てからすごい心労にさらされてる」
ダニール「精神の安定を失った結果、犯行に及ぶと?」
ベイリ「そのとおり」
ダニール「では、容疑者は4人。ケルデン・アマディロ、ヴァシリア・ファストルフ、ソフィア・クインタナ、それにジュリアス・エンダビー」
ベイリ「ジュリアス・エンダビー? 警察のトップだぜ」
ダニール「容疑者リストから削除することに論理性はないでしょう」
ベイリ「ふん、君はいい刑事になれるかもな。エンダビーをリストに入れるなら、ボーグラフとジェインとサミーも入れなきゃな」
ダニール「ロボット法則の第1条がある限り、いかなるロボットも容疑者にはなりえません」
ベイリ「まったダニール、質問がある。気を悪くせんでほしいが、ロボットが第1条を破る可能性は?」
ダニール「ありません。ロボットは人間を傷つけてはならない」
ベイリ「人間を傷つけてはならない」
ダニール「そのとおり。パートナー・イライジャ、この情報は役立つのではありませんか」
ベイリ(端末を開き)「起きろ、データセンター。この情報をDとして登録せよ」

投稿時間:2012/05/31(Thu) 23:36
投稿者名:Ken
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タイトル:
ゲーム版鋼鉄都市(5)
パート5:http://www.youtube.com/watch?v=WkFJc4hg2CE&feature=relmfu

ベイリ「こんな夜中に新しい情報があるとも思えないが」
表示データ※ロボット法則1条:ロボットは人間を傷つけても、人間が傷つくのを見過ごしてもいけない。ロボット法則2条:第1条に抵触しない限り、ロボットは人間の命令に従わなければいけない※

3:00am:ロボット修理場。
ジェイン「ソフィアは心労が激しいわ」
サミー「エンダビー本部長もだよ」
ジェイン「あんたは本部長の精神衛生にすごく貢献してるわ、サミー。ソフィアは新しい人間型ロボットを嫌がってる。自分のロボット技術が劣って見えるから」
サミー「エンダビー本部長はどんなロボットも嫌がってる。僕は別だけど」
ジェイン「あんたが本部長に好かれててうれしいわ」
2体のロボットは互いの顔に触れる。
ジェイン「ソフィアはスペイサーのロボットが地球都市に来るのおそれてる。みなが怖がるから。ロボットは友好的で、人間の優越感を充たすようにしなければ、というのがソフィアの考えよ」
サミー「僕はそれができるよ」
サミーはジェインを元気付けて立ち去る。

7:30am:ニューヨーク市警
TVのキャスター「ただいま朝の7時半です。ハン・ファストルフ襲撃犯を捕えるのに、市警に残された時間は3時間。スペイサーのロボットが既に都市へ入っているという噂が流れ、暴動が激しくなっています。エンダビー本部長のコメントを取ろうとしてますが、成功していません」
エンダビー(TVを切って)「ベイリ、状況は?」
ベイリ「ダニールとの協同捜査は進展してます、本部長」
エンダビー「ダニール?」
ベイリ「そう、ロボットだ。我々はスペイサータウンへ戻ってファストルフと会う。その会見に立ち会ってほしい数名がいる。1人はあんただ」
エンダビー「私だって?」
ベイリ「3D通信でいいから」
ダニールがやってくる。
ダニール「スペイサータウンから新しい情報を得ました。襲撃犯が逃走するとき、活性イリディウムの容器をひっくり返したといいます。共通エリアで粒子を調べる作業が進行中です。スペイサータウン保安部からの先行情報はここに」
ベイリ(端末を開き)「データセンター、登録データEだ。保安関連の報告書だよ」

投稿時間:2012/06/02(Sat) 01:28
投稿者名:Ken
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ゲーム版鋼鉄都市(6)
パート6:http://www.youtube.com/watch?v=RjB6wFE9gfU&feature=relmfu

ベイリ(端末に)「第1条を教えてくれて助かったよ」声をひそめて「イリディウムってなんだ?」
表示データ※活性化されたイリディウムは、ロボット頭脳解析において、陽電子回路のトレースに利用される※

10:20am:ファストルフの研究室。イライジャとダニールは到着しており、クインタナとジェイン、エンダビーとサミー、アマディロとヴァシリアとボーグラフは、それぞれ通信機で参加している。
ベイリ「ファストルフ博士、襲われたときには何をしてましたか?」
ファストルフ「仕事に没頭していた」
ベイリ「仕事とは?」
ファストルフ「それはつまり──」
ベイリ「ギスカードに頼むほうがよいか」
ギスカード「なんなりと」
ベイリ「暗殺未遂の場面を映し出してくれ」
ギスカード「了解です」
前回と同じ、熱線銃の弾道からファストルフの身をかわさせるロボットが映される。
ベイリ「再生を止めろ。最初まで巻き戻してくれ」
ギスカードがそうすると、ベイリが「ギスカード、もっと前に巻き戻すんだ」
ギスカードはうろたえ「ファストルフ博士・・・・」
ファストルフ「従わねばならない。フレンド・ギスカード」
その言葉に驚くソフィア。
ベイリ「ギスカード、音声を含めてすべて再生するんだ」
映像のファストルフは通信機に向かい、そこにはもう1人のファストルフが映っている。
通信機のファストルフ「地球でこれほど暴動が続くとは予想できなかった」
研究室のファストルフ「ギスカードと私は、人間が傷つく可能性を心配してる。ここからどう動けば?」
通信機のファストルフ「ダニール・オリヴォー計画を早く進めるんだ」
研究室のファストルフ「分かりました」
通信機のファストルフ「ギスカードと君には、これが人類の幸福へいたる道だと、強く言いつけてある。分かるかね?」
研究室のファストルフ「ご指示に従うように努めています。フレンド・ギスカードは目的をよく理解しています」
通信機のファストルフ「ギスカードは貴重な存在だ。ここオーロラに彼がいないのは不便だが、彼は君と地球へ同行せねばならなかった。彼は有能だし、姿を見せること自体にも意味がある」
研究室のファストルフ「他になにか?」
通信機のファストルフ「ない。明日また連絡する」と言って、通信機を切る。
ヴァシリア「ファストルフはロボットを身代わりに送り込んだのね」
ベイリ「そのとおり。ダニール、保安部の報告を得てくれ。結論を出すときだ」
ダニール「ただちに。はじめまして、フレンド・ハン」
ベイリ「私はファストルフが地球へ来てないことに気付きました。スペイサーで彼だけが私との接触を恐れなかった。ヴァシリアは父親が病原菌を激しく恐れるはずと言ったが、ロボットのファストルフなら納得できる。彼の計画はロボットを地球に導入することだが、それにはロボットを送り込むのが最高の方法ではないか。それに、アマディロやヴァシリアとの対立は、完璧なロボットを作る動機になる。彼らでさえ見抜けないようなロボットを」
アマディロ「ベイリ、君は何の進展も見せてない。ファストルフがロボットだとしても同じことだ。あと数分で時間切れだが、犯人を挙げられないんだろう」
ダニール「パートナー・イライジャ、保安部からの情報です」
ベイリ「ありがとう、パートナー・ダニール」
2人は握手をかわす。驚くエンダビー。
ベイリ(端末を開き)「データセンター、本件に決着をつけるときがきた。この保安情報をFとして登録せよ。これが最後のアクセスだ」
表示データ※地球の諸都市はスペイサーの脅威に対処する計画を話し合っている。オーロラでのファストルフは支持を失いつつある。アマディロの期限まで数分を残すのみ※
アマディロ「犯人は? ベイリ」
ベイリ「アマディロ博士、犯人も動機も犯行方法も明らかにする証拠があがっています」
ダニール「データセンターに起訴を立件させるべきでしょう」
ベイリ(端末を開き)「データセンター、アマディロのデッドラインまで数分だ。その前に犯人と動機と犯行手段を明らかにせねばならない。以上」

投稿時間:2012/06/02(Sat) 01:37
投稿者名:Ken
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ゲーム版鋼鉄都市(推理編)
さて、この映画には犯人を明らかにする解決編がありませんが、ここまでの経緯から犯人を推理できるでしょうか? 私はできると思います。結論からいえば、犯人はボーグラフでしょう。

始めに言えるのは、実行犯はロボットだということです。狙撃されたときの「ファストルフ」は、通信回線で本物のファストルフと話しており、侵入した犯人がこれを見れば、眼前のファストルフがロボットだと分かる。よって、第1条は適用されません。

ベイリとダニールが研究室へ向かう途上で痛覚フィールド(「tingle field」をこう訳しました)という力場がオンになってたことを思い出してください。この場面から明らかなように、この力場は人間には有害だが、ロボットには影響を与えない。つまりこの力場がはられた中を逃走した襲撃犯は、ロボットだということです。また、犯人が陽電子頭脳をトレースできるイリディウムの容器を壊したのも、逃走を容易にするためでしょう。

さて、ファストルフの研究室に入れるロボットは5名。

ダニール、ギスカード、ボーグラフ、サミー、ジェイン

この中で、犯行時にはベイリを迎えに出ていたダニールと、ファストルフを熱線からおしのけたギスカードは、ただちに除外できます。

残る3名は、いずれも物理的には犯行が可能です。そして3名とも自分の所在をベイリに語っています。第2条により、ロボットは人間に従わねばならず、よって人間にウソをつくことはできません。

まずサミーは、犯行時刻には市警の中で働いていたと、明確に述べています。またジェインは、午後の遅い時刻にソフィアが戻るまで、ずっと政庁で仕事をしていたと語っています。この両名とも、ベイリに嘘をつかないかぎり、犯行の場にいることはできません。

ところが、ボーグラフだけは、アマディロの干渉のせいで、明確な回答をベイリに与えていないのです。正確を期すために、パート3に含まれるこの場面の会話を、原語のままで紹介しましょう。

Baley “Where were you this morning, Borgraf?”
Amadiro “Really, Baley, ….”
Borgraf “Dr. Amadiro and I were working on a number of important matters. I was here reviewing a series of reports―”
Amadiro “Good day, Mr. Baley. Borgraf and I have quite a bit of work to do. And you have 18 hours left.”

注意深く読めば分かるように、ボーグラフは午前中にやった仕事について述べてますが、犯行時刻の8時半にどこにいたかを、疑問の余地なく明らかにする言い方にはなってません。そしてベイリとボーグラフの会話に割り込んで、強引に打ち切らせたのはアマディロです。

また、動機の点でも(この場合はそれぞれの主人の動機ですが)、ファストルフ襲撃で最も利益を得るのがアマディロだということを考えれば、ボーグラフが犯人と考えるのが合理的です。ファストルフ襲撃で、アマディロは少なくとも2つの利益を期待できます。

(1)犯行を地球人のせいにすることで、オーロラの穏健派の誤りを指摘できる
(2)地球の警察に治安維持能力がないことを理由に、地球をスペイサーロボットの直接支配下における。

一方、サミーとジェインの主人には、ファストルフ襲撃の理由がありません。エンダビー本部長は、利益どころか、事件のせいで最大の窮地に追い込まれます。ソフィア・クインタナはファストルフがスペイサーロボットを地球都市へ送り込んだことを怒っており、一見、動機がありそうですが、彼女がダニールを見つけるのはファストルフ暗殺未遂の後なのです。

こう考えてくると、アマディロに命令されたか、もしくはアマディロの意思を忖度したボーグラフが研究室に侵入し、ファストルフがロボットと判明した時点で、殺害をはかった、という真相が見えるのではないでしょうか。