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投稿日: 2011/01/14(Fri) 22:46
投稿者Ken
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タイトルID論争 (2)

前回は、ダーウィニズムについて、特にその核心をなす「自然選択」についてお話しました。今回のテーマは「人為選択」です。

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 考古学研究によると、人類は、約1万3千年前に農耕と牧畜を始めたらしい。それ以前は、狩猟採取生活だったが、野生の植物を農作物とし、動物を家畜として飼育することが、最初はメソポタミアで、ついで世界各地で始まった。

 ほどなくして、農民や牧畜民は、自分たちが育てている動植物の中に、「好ましい」特質を備えたものが散見されることに気づいた。例えば、より大きな粒をつけるムギや、多くの乳を出す牛などである。そして、そのムギの種子から育つムギ、その牛が産む牛は、親と同様の特質を持つことも、経験的に分かった。そうなると、それら「好ましい」個体に優先的に子孫を作らせることを、誰もが考える。ここでもまた選択が行われるのだが、ダーウィニズムが提唱する自然選択に対して、こちらは、人の意思が介在して引き起こす「人為選択」と呼ばれる。自然選択と同様に人為選択も、それを続けることで、動植物の種が「改良」されてゆく。

 さて、自然選択と人為選択では、その目指すところが異なる。自然選択は、生物が野生の中で生き残り、多くの子孫を残す方向にのみ働くものである。一方、人為選択は、人間がその生物から得ようとするもの──おもに食料だが、被服・建築材料や、労働力なども──を最大化する方向に働く。選択の目的が異なるために、選択の結果生じる進化も、異なる場合が多い。

 例えば、家畜のブタは、野生のイノシシを人間が飼育し、改良したものである。何よりも、多くの食肉を得るべく人為選択を繰り返したため、ブタは、イノシシとは比較にならない、肥満形状となった。また、野生のイノシシは体を保護する豊かな体毛をもち、敵と戦う牙も備えているが、食肉として加工するのに体毛は邪魔になるし、牙などがあると人間にとって扱いにくい。そこでこれらをなくする方向へ改良され、我々になじみのブタの形状になった。

 ここで注意すべきは、イノシシからブタへの「進化」は、家畜としての進化であって、野生動物としてみれば、進化でもなんでもない、ということである。肥満のために動作は鈍重になるし、牙と体毛を喪失したことで、攻撃力も防御力も低下した。これが野生動物なら、たちまち肉食獣の餌食になり、淘汰されてしまうだろう。つまり自然選択ではこんな「進化」は起こり得ない。人為選択ならばこそ、起こったことなのである。

 農作物となった植物にも、同じことがいえる。例えば、トウモロコシは8千年ほど前から、米大陸の先住民が栽培していたのだが、人為選択による改良の結果、ヨーロッパ人がやって来た頃には、元来の原生種と比べて、粒の大きさが数倍にもなっていた。こんなことも、自然選択では起こり得ない。そもそも、我々が食するムギ、イネ、トウモロコシなどの実は、植物の種子が発芽して、根を降ろし、葉を広げ、光合成を行えるまでに育つための「つなぎ」の栄養分にほかならない。そのために必要な分だけあればよいので、それ以上に栄養分があっても、使われることなく腐るだけである。その植物が繁殖する何の助けにもならない。(繁殖のためなら、粒の大きさは元のままで、数を増やすことこそ、理にかなうだろう。)

 要するに、自然選択は、その生物の生存や繁殖に、ただちに貢献する場合にのみ起こると考えてよく、生存、繁殖に役立たない、ましてや逆効果となる変化は起こり得ない。(なぜなら、自然界で淘汰されるから。)これは、見方を変えれば、イノシシからブタを生じるような「進化」が起こったなら、それは人為──すなわち何者かの意思──が介在した結果と考えてよいことになる。

 ダーウィニストの主張は、地球に生命が発生してより、ずっと自然選択のみで進化してきたが、人類が農耕、牧畜を始めたことで、人為選択が登場した、というものである。これに対してID論者の主張は、人類発生以前の進化にも、人為としか考えられないものが見受けられる、ということで要約される。
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 なぜ、ID論者はそう主張するのか、次回から詳しく説明します。


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