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投稿日: 2011/01/16(Sun) 18:41
投稿者Ken
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タイトルID論争 (4)

今回はベーエ博士の主張を紹介します。

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 マイケル・ベーエ(Behe:米国での発音は「ビーヒー」)は1952年生まれ、生化学教授として教壇に立つ人物で、熱心なローマ・カソリック教徒としても知られる。1996年に著書「ダーウィンのブラックボックス」を発表して、ID論のチャンピオンというべき存在になった。
 「ダーウィンのブラックボックス」とは、進化論を唱えたダーウィンが、実は、生物の内部構造をよく理解せず、いわばブラックボックスとしてその表層のみを捉え、その結果、自然選択ですべての進化が説明できる、という誤った結論に達した、という意味で付けたタイトルである。

 「ブラックボックス」の好例として、ベーエは我々人類も持つ血液凝固機能を挙げる。
 我々が怪我をして出血すると、ほどなくして傷口で血が固まり、それ以上は血が流れなくなる。この機能が先天的に欠けている遺伝疾患が血友病である。さて、ダーウィニズムは、この血液凝固機能の発生を、当然ながら、突然変異と自然選択で説明する。つまり、太古の動物はこのような機能を有していなかったが、ある時、偶然の突然変異で、空気に触れると血液が凝固する個体が登場した。ひとたび登場すると、これは生存競争で非常に有利に働く。なにしろ、他の動物は、傷自体が治癒するまで出血が続くのに、この突然変異体は、はるかに少ないダメージで済むからだ。そして、自然選択のルール通りに、この突然変異体の子孫が、その他の生物を淘汰して、優位を占めるようになった。人類を含む、多くの陸上脊椎動物は、その末裔である、と・・・・。

 ところが、生化学者ベーエによると、我々の血液が空気と接触して固まるするのは、血液中に含まれる30種類の異なる蛋白質の協同作業で、30のうちどの1つが欠けても、起らない現象だという。そして、ここが肝心なのだが、1回の突然変異、つまりDNA配列の書き換えで、出来るのは1種類の蛋白質のみである。こんなことはダーウィンは知らなかったが、DNAの働きが解明された今、ダーウィニストを含めて、この点に反対する人はいない。
 つまり、血液凝固機能の発生は、1回ではなく、最低でも30回の突然変異が起った結果なのだ。もちろん、その間に、長大な時間が経過しただろう。
 最初の突然変異で1つ目の蛋白質ができても、血液凝固は起らない。2つ目、3つ目も同じ。29個の蛋白質がそろってもまだダメである。30個目の蛋白質が生じて、初めて血液凝固という有利な機能が生じる。
 ということは、ダーウィニズムで説明出来るのは、29個の蛋白質が揃っているところへ30個目が加わる、最後の1回だけではないか。これに先立つ29回の進化はどう説明するのか? 繰り返すが、自然選択とは、個体の生存、繁殖に、ただちに貢献する場合に働くものなのである。

 この「謎」に対するID論者の解答は、もはや想像がつくだろう。動物に血液凝固機能を与える「意思」をもった何者かが、進化を導いたのである。有利をもたらさない29回の進化が進行している間、その動物を保護して、計画通り30回の進化を完成させた、というのだ。これは、人類が行ってきた人為選択よりも、はるかに偉大な作業で、人類を超越した存在を暗示している。

 ベーエが、また挙げる例に、原生動物の鞭毛(べんもう)がある。これは、各種のバクテリアや動物の精子から生えている鞭状の器官で、これのおかげで、これら微生物は泳ぎ回ることができる。これについても、ダーウィニズムは、あるとき偶然に出現し、泳ぎ回るという、大変な有利さを所有者に与え、大いに繁栄させた、と説く。
 ところが、鞭毛を仔細に見ると、多くの部品からなる精密機械なのだ。部品とは、本物の機械に例えるなら、固定子、軸、リング、継ぎ手、フィラメントなどに相当し、それぞれに異なる蛋白質で出来ている。どの部品を作るにも、最低1回の突然変異が必要で、すべての部品が揃い、鞭毛という機械に組み立てられるまで、所有者たる生物に、何の利益ももたらさない。つまり、ダーウィニズムでは、「途中経過」の説明ができない。
 どう考えても、機械の完成形態のビジョンをもった「意思」が働いて、進化を導いたと考える方が、理にかなうだろう、というのがID論者の主張なのである。

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 ID論者の主張を、2回に分けて紹介しました。
 次回は、このようなID論に対するダーウィニズムの反応(反論)について、お話します。


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