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投稿日: 2011/01/18(Tue) 22:16
投稿者Ken
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タイトルID論争 (6)

 今回が最終回です。私自身が、日頃思うことを述べて、まとめとします。

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 この機会に、いわゆる「超自然現象」に対する、正しい態度、科学的に向き合う姿勢とは、どういうものか考えてみよう。対象は神でもいいし、魔術でも、幽霊でもよい。

 米国では、臨死状態から蘇生した人が、「幽体離脱」を経験したと報告した例がいくつもある。多くの報告に共通するのは、患者が気が付くと、自分は病室にいるのだが、目の前のベッドに、意識の無い自分自身の体が寝ており、周囲には医療スタッフや家族がいる。それらの人々には、そこに立っている自分が見えない、というものである。空中に浮遊して、人々を見下ろしているケースも多いらしい。ある人は、やがて自分の肉体に戻って目覚めたと言うし、別の人は、その後、暗いトンネルのようなところを通り抜けて、やがて光輝く世界が現われ、その光の中に、自分を迎えてくれる「何者」かを見た、という。

 このような「幽体離脱」の報告を聞いた人々の圧倒的多数は、頭から信じるか、頭から否定するかのどちらかだそうだ。頭から信じる人は、これこそ、人間の霊魂が肉体の死後も残ることの証明だし、光の中に現われた存在こそ、天使または神そのものに違いないと言う。頭から否定する人は、臨死状態で脳の機能が衰えた時に見た幻覚にすぎないと決めつける。しかし、故カール・セーガンは、こういう態度は、どちらも正しくないと言い、真実に近づくために、次のような実験を提案した。

 ある患者が臨死状態になったら、その人が、それまで見たことがないのが確実な本を取り出して開くのだ。あるいは、ノートを開いて何か書き込んでもよい。その本なりノートなりを、ベッドの患者からは、絶対見えない場所と角度で開いておく。やがて、覚醒した患者が「幽体離脱」を語るとき、その本やノートの内容を正しく言い当てたなら、強力な証拠になるだろう。

 これこそ、正しい態度、科学的姿勢というものである。

 残念ながら、多くの人が、幽体離脱など幻覚と片付けるのが、科学的態度と信じている。科学の本質とは疑うことなのに、「幻覚説」を頭から信じて疑わないのだ。そして、まったく同じ姿勢で、IDに対しても臨んでいる。もし今、セーガンやアジモフが生きていたら、ID議論にどう反応するか、私の興味が尽きないのは、この理由による。

 今回の投稿では、IDや幽体離脱など、主に米国で論議されているテーマを取り上げた。ひるがえって、日本はどうだろう? 日本にも、私などがみて、非常に気になる社会現象がある。いわゆる「血液型による性格診断」である。これに関連する本を置いてない本屋を見つけるのは、ほとんど不可能といっていい。

 血液型で性格が決まるという説が、正しいのか、誤りなのか、ここでは論じないが、一つだけ言えることは、これを支持する人々のアプローチは実に非科学的であるということだ。私もさんざん経験しているが、はじめに「あなたの血液型は?」と尋ね、答えると「〜型だから、あなたの性格は〜」と言い、その線に沿って私の言動を解説してみせる。しかし、最初に血液型を尋ねるばかりでは、血液型性格診断の仮説が正しいかの検証にならないではないか。

 もちろん、いかなる仮説も、事実を観察し、データを集めることから始まるから、多くの人に血液型を尋ね、その人たちの言動を観察し、そこから「A型に共通するのは〜」「B型の共通項は〜」という仮説を立てるのは、正しい作業である。しかし、それだけなら、仮説を立てたに過ぎず、仮説の検証をやっていない。この場合、仮説の検証とは、個人の言動を観察し、血液型を当ててみせることでなければならない。百発百中でなくても、統計的に信頼できる精度で当ててみせて、始めて、仮説は証明されるだろう。しかし、私の知る限りで、どんな本を読んでも、そんな検証が乗ってるものはない。これでは、日本の血液型性格診断は、米国のID論などより、はるかに程度の低い、幼稚な議論というしかないだろう。要するに、一人のベーエもいないのだ。

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 これにて、連続投稿を終了します。最後まで読んでくださった方には、感謝します。読んでて分かりにくい点、疑問点などありましたら、どうかおっしゃってください。「何が何だか分からん!」というお叱りでも結構です。(笑)
 IDは正しいかもしれないし、誤りかもしれない。しかし、いわゆる「疑似科学」とは、性質を異にするように思うのですが、どうでしょうか?

 また、あらためまして、発表の場を提供いただいた、徹夜城さんに感謝します。


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