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〜怪盗ルパンを愛した日本人〜
-アルセーヌ・ルパンシリーズ翻訳の歴史-
<1>


◇ごあんない◇

 ルブランが産み出した稀代の怪盗、アルセーヌ・ルパンは発表直後から各国語に翻訳され、本国フランス以外の世界中で愛好されてきました。その中でも特に日本における「ルパン熱」が世界でも希なものなのは確かなようで、近くの書店にひょいといけば必ずルパンシリーズが何冊か置かれている、図書館に行けばなにがしかの全集がたいてい揃っている、というのはやはり凄いことのようです。しかもそうしたルパン熱がルパンシリーズ発表直後から21世紀の今日に至るまで連綿と続いてきたのを見れば、やはり日本人はルパンを熱愛し続けた国民であると言わざるを得ないでしょう。

 このコーナーではネット上に転がっていた情報、国会図書館の蔵書検索などから可能な限り追いかけてみた「日本におけるルパン・シリーズ翻訳の歴史」リストです。もちろん取りこぼしもまだまだあるのでしょうが、一覧で眺められるものを自分でも作ってみたいと思っていたので思い切って作成してみました。追加・補足・修正情報などがありましたら、ドンドンお寄せくださいませ。



☆読む上での注意☆

●基本的に年代順に並べています。しかしシリーズや全集が出た場合、読みやすさを優先して発行年代順にこだわらずシリーズ番号順に並べ替えたり、やや後の年に刊行されたものもまとめて掲載している場合があります。
●ルパンシリーズ以外のルブラン作品がシリーズに組み込まれていることがしばしばなので、いちいち分けずにルブラン作品もそのまま加えています。
●ルブラン原作と称して実は翻訳者の創作物であったというケースもままあり、それも資料と考えてそのまま加えています。これにともないルブラン以外の作家によるパスティーシュ類も可能な限り加えることにしました。
●邦題の異同については偕成社版全集を基準に説明しています。



●翻案の時代<明治時代末〜大正初>
フランスでルパン・シリーズの発表が始まったのは1905年。第一単行本「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」が発刊されたのが1907年。早くもその2年後に日本への紹介開始が確認されている。初期のものは全て設定を日本や日本人に移し変えた「翻案」ばかりで、シリーズではなく単発作品として発表されていた。

邦題(書籍名)
訳者/執筆者
発行年
出版社
頁数
補足情報
巴里探偵奇譚・泥棒の泥棒
森下流仏楼(安成貞雄?)
1909(明治42)
「サンデー」掲載

「黒真珠」の翻案。ルパンは「鼬(いたち)小僧・有田龍三」となっていた。現在確認される限りで最古のルパンシリーズの日本紹介作とされる。
予告の大盗
馬岳隠士
1910(明治43)
「サンデー」掲載

「ルパンの冒険」の翻案。
予告の大盗
清風草堂主人(堺利彦)
1911(明治44)
万里洞

「ルパンの冒険」の翻案(上記のものの単行本化とのこと)。「清風草堂主人」は複数人物による共通ペンネームで、この「予告の大盗」の作者は日本における初期の社会主義運動家・堺利彦その人であることが判明しているそうである。
春日燈籠
清風草堂主人(安成貞雄)
1912(明治45)
万里洞

「ユダヤのランプ」の翻案。ルパンは「有村龍雄」、ホームズは「堀田三郎」、ワトソンが「和田」として登場する。なお、本作は日本で最初に訳されたホームズパロディものになるとのこと。
大宝窟王(前編)
三津木春影
1912(大正1)
中興館「二十世紀探偵叢書」
249p
「奇岩城」翻案。ルパンは「隼白鉄光」、レイモンドは「黎子」、ガニマールは「蟹丸」、ボートルレは「三井谷散史」となっている。
大宝窟王(後編)
三津木春影
1913(大正2)
中興館「二十世紀探偵叢書」
262p
「奇岩城」翻案。
古城の秘密・武侠探偵(前編)
三津木春影
1912(大正1)
武侠世界社

「813」の翻案。
古城の秘密・武侠探偵(後編)
三津木春影
1913(大正2)
武侠世界社

「813」の翻案。
神出鬼没・金髪美人
安成貞雄
1913(大正2)
明治出版社

「金髪の美女」。英文からの翻訳?ルパンは「有村龍雄」の名前で登場するが、ホームズは「ホームズ」のままである。
金剛石・冒険的大探偵
三津木春影
1913(大正2)

282p
「金髪の美女」の翻案。
船中の間諜
三津木春影 1914(大正3)
「少年倶楽部」11・12号

「ルパン逮捕される」の翻案?
秘密の墜道清風草堂主人1915(大正4)磯部甲陽堂
「おそかりしホームズ」の翻案で作者不明。ルパンは「龍羽安仙」、ホームズは「静夜保六郎」として登場。ここまでに挙げた「対ホームズ」ものの大正期翻案作品は2012年刊行の「怪盗対名探偵初期翻案集」(論創社)にまとめて収録されている。

●翻訳の開始〜保篠龍緒の登場<大正時代>
いよいよ翻案から翻訳の時代へ。フランスで原作が発行されると素早く翻訳が出る時代になる。そして「ムッシュ・ルパン訳者」たる保篠龍緒(本名:星野辰男)が登場、ルパンシリーズを片っ端から訳し始める。探偵小説ブームも起こり、各種叢書にルパンシリーズが収録されるようになる。

邦題(書籍名)
訳者/執筆者
発行年
出版社/シリーズ
頁数
補足情報
変装紳士
後藤末雄/鵜来島保 1916(大正5)
朝野書店

「怪盗紳士ルパン」の翻訳。
最後の五分間
1916(大正5)名倉昭文館
講談本「探偵文庫」の一冊で、「ルパンの冒険」の翻案講談。ルパンは「酒井政也」になってるとのこと。
二重眼鏡の秘密
福岡雄川
1918(大正7)
白水社「近代世界快著叢書」1
378p
「水晶の栓」の翻訳で本邦初訳か?タイトルでネタ割れするのはどうかと思うが、フランス版も表紙イラストでばらしてるからよくわからん。実際には福岡氏は名義を貸しただけで実際には田中早苗氏と友人の医者(高橋穀一?)による翻訳とのこと。
巨盗の告白
福岡雄川
1918(大正7)
白水社「近代世界快著叢書」2

「ルパンの告白」の翻案。福岡雄川の訳となっているが実際は岸田国士の手になるものらしい。日本の話に翻案していて、「反射鏡」(太陽のたわむれ)では暗号を「いろは」に置き換えていた!
獨探の妻
小田律
1918(大正7)


「金三角」の翻訳。フランスでの原作単行本の発行も同年で、雑誌連載時から訳していたのかも?
怪紳士
保篠龍緒
1918(大正7)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」1
382p
記念すべき保篠龍緒のルパン訳第一号。しかもいきなり当時の時点での「叢書」のスタイルである。一説によると「LUPIN」を「ルパン」と表記した最初とも言われる。
怪人対巨人
保篠龍緒
1918(大正7)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」2

「ルパン対ホームズ」の翻訳。以後、保篠版ではこのタイトルが定着。
奇巌城
保篠龍緒
1919(大正8)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」3

「L'AIGUILLECREUSE」(「中空の針」)の翻訳。保篠龍緒がつけた「奇巌城」の邦題は以後これに代わるものが出なかったほどの名タイトル。
813
保篠龍緒
1919(大正8)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」4
328p
国会図書館ではマイクロフィッシュで拝める。話によると星野辰男がルパンにハマったのは「813」原書を読んだためとか。そのせいかかなり原典に忠実な訳と思えた。なお、この当時の定番「怪奇探偵」というコピーが表紙にある。
黒衣の女
保篠龍緒
1919(大正8)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」5

「続813」の翻訳。
死の連判状
保篠龍緒
1922(大正11)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」6

「水晶の栓」。
真紅の肩掛
保篠龍緒
1922(大正11)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」7

「赤い絹のスカーフ」の翻訳。未確認だが短編集「ルパンの告白」を訳したか。
金の三角
愛智博
1922(大正11)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」8

「金三角」。
戯曲・宝冠
愛智博
1923(大正12)
金剛社「アルセーヌ・ルパン叢書」9

戯曲「アルセーヌ・ルパン」。
アルセン・ルパン
小田律
1919(大正8)
新光社:西洋講談

「ルパンの冒険」。恐らく英文小説からの翻訳。
ルパン・ノート 青色型録(カタログ)
保篠龍緒
1920(大正9)
「新青年」8月号〜10月号

ルブラン作を保篠が訳したとされるルパンもの短編の初出。ルブランの原作が確認されていないため保篠自身の創作の可能性が高いとされる。第一次大戦中のスイスでルパンがドイツ密偵相手に活躍、日本軍人も活躍するという内容。以後の保篠版ルパンにはほぼ確実に収録されていく。
ルパン・ノート 空中の防御
保篠龍緒
1920(大正9)
「新青年」11月号・12月号

ツェッペリン飛行船の空襲にさらされるパリで、ルパンがドイツスパイを暴きだす一編。これも「青色カタログ」同様にルブラン原作が未確認で、保篠版ルパンでは常に2作セットで収録されている。
運命の手
小田律
1921(大正10)
玄文社「探偵叢書」

「金三角」の翻訳。大正7年に「獨探の妻」の題で出ていたものを改題。
幽霊夫人
小田律
1921(大正10)
新光社

「砲弾の破片(オルヌカン城の謎)」の本邦初訳。
あるせんるぱん
小田律
1921(大正10)
玄文社「探偵叢書」

「ルパンの冒険」の翻訳。以前「アルセン・ルパン」として出ていたものを改題。
恋人の罪
小田律
1921(大正10)
新光社:西洋講談

「ルパンの冒険」。「アルセン・ルパン」の改題。
神石の秘密
武田玉秋
1921(大正10)
博文館「女学世界」4〜12月号連載

「三十棺桶島」の本邦初訳。掲載誌は少女雑誌的な存在だそうで、ちょっと意外。連載は途中で終わったが単行本化にあたって完成版となった。
絶島の秘密
福岡雄川
1921(大正10)?
白水社

「三十棺桶島」。これも実際の翻訳は田中早苗によるものらしい。
虎の牙/怪奇探偵
保篠龍緒
1921(大正10)
博文館「探偵傑作叢書」1
306p
同年に「新青年」で連載されたもので本邦初訳。この頃から探偵小説叢書の類が各社で発売されるようになり、ルパンシリーズもいくつかそこに収められていく。
呪の狼
保篠龍緒
1922(大正11)
博文館「探偵傑作叢書」7

「虎の牙(下)」。巻数が飛んでいるが上記「虎の牙」と実質セットだったのだろう。保篠龍緒の創作の可能性が高い「青色型録」「空の防御」が収録されていた。
水晶の栓
保篠龍緒
1921(大正10)
博文館「新青年」夏季特大号

雑誌特大号に一挙掲載されたものらしい。
アルセーヌ・ルパン
婦人文化研究会
1922(大正11)
婦人文化研究会「婦人パンフレット」第8輯
53p
ネット図書館「青空文庫」で無料配布中。内容は「白鳥の首のエディス」
疑問の女
小田律
1922(大正11)


前年に出た「幽霊夫人」(「砲弾の破片」の翻訳)の改題再刊。
爆弾
保篠龍緒
1922(大正11)
「新青年」第7号(6月号)

「砲弾の破片(オルヌカン城の謎)」の翻訳。ただし翻訳は第一回が掲載されたのみで以降は打ち切られている。事情は不明。
真紅の封蝋
保篠龍緒
1922(大正11)
「新青年」8月増刊号掲載

ルブランによる非ルパンものの翻訳。
海岸の小屋
妹尾アキ夫
1923(大正12)
「新趣味」1月号掲載
「八点鐘」より「テレーズとジェルメーヌ」。
驚天動地
愛智博
1923(大正12)
金剛社「世界伝奇叢書」8
271p
ルブランの非ルパンものSF「ノーマンズ・ランド」の初訳?見事な邦題に感心。
第一短編名作集
森下雨村・編
1923(大正12)
博文館「探偵傑作叢書」12

ルブランの「旅行用金庫」「真紅の封蝋」が収録されている。どちらも非ルパンものの保篠龍緒訳。
殺人鬼の情熱片岡鉄兵1923(大正12)元泉社
掲示板にいただいた情報。内容は未確認だが新聞に載った広告に「ルブラン原作」とあり、凶悪な殺人鬼にも異性を想う心が…という宣伝文句から「赤い輪」ではないかと推測される。
怪紳士
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」1

基本的に博文館で出ていたものをそのまま再刊しているように見えるが…。一部訳者と訳題が異なる。
怪人対巨人
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」2

「ルパン対ホームズ」。
奇巌城
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」3


813
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」4


牢獄宮殿
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」5

「続813」。保篠版でこのタイトルは珍しい。
死の連判状
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」6
「水晶の栓」。
真紅の肩掛
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」7
「赤い絹のスカーフ」はじめ「告白」を収録?
金の三角
松村博三
1924(大正13)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」6
博文社のルパン叢書では以下2作は愛智博だったが、こちらでは松村博三。同一人物の別筆名だったようだ。
戯曲アルセーヌ・ルパン
松村博三
1924(大正14)
ルパン社「アルセーヌ・ルパン叢書」7

強盗紳士アルセエヌ・リユパン
佐佐木茂索・高橋邦太郎
1924(大正13)
随筆社「モオリス・ルブラン全集」1
269p
この時点で「ルブラン全集」が出ていたことに驚き。また「ルパン」ではなく原音に近い「リユパン」表記が使用されていることにも注目。
水晶の栓
佐佐木茂索・高橋邦太郎
1924(大正13)
随筆社「モオリス・ルブラン全集」5
364p
この「ルブラン全集」は全8冊を予告して刊行されたが全集ものの常で順番どおり出たわけでもない。しかも結局刊行は4冊にとどまった。
輝く雨/黄金三角前編
佐佐木茂索・高橋邦太郎
1924(大正13)
随筆社「モオリス・ルブラン全集」7
244p
「輝く雨」は「金三角」の前半。
リユパンの勝利/黄金三角後編
佐佐木茂索・高橋邦太郎
1924(大正13)
随筆社「モオリス・ルブラン全集」8
250p
「リユパンの勝利」は「金三角」の後半。この随筆社の「モオリス・ルブラン全集」は結局この「1・5・7・8」巻しか刊行されていないらしい。
戯曲アルセーヌ・ルパン
松村博三
1924(大正13)
金剛社
234p

八点鐘
田中早苗
1924(大正13)
博文館「探偵傑作叢書」28

「八点鐘」の本邦初訳か?オリジナルは1922年に連載、1923年に単行本が刊行されたばかり。いただいた情報によればこれは英語版からの重訳で、「海水浴場の悲劇」「ジャン・ルイ事件」の順番が入れ替わっているとのこと。
怪巌窟
保篠龍緒
1924(大正13)
ルパン社

保篠龍緒訳の金剛社「叢書」収録のものをそのまま改題して再版したもの。
三十棺桶島
松村博三
1924(大正13)
紅玉堂「アルセーヌ・ルパン全集」

「三十棺桶島」の第一部。
千古の奇蹟
松村博三
1924(大正13)
紅玉堂「アルセーヌ・ルパン全集」

「三十棺桶島」の第二部。他に短編収録とのこと。
妖魔の呪
保篠龍緒
1925(大正14)
東京朝日新聞社

「カリオストロ伯爵夫人」の本邦初訳。オリジナルは1922年連載、翌年に刊行されたばかり。保篠版では以後「妖魔の呪」でほぼ統一。
現代探偵傑作集
田中早苗
1925(大正14)
グラント社
356p
ルブラン作「古代錦事件」なる短編が収録されている。「白鳥の首のエディス」の翻訳。
黄金の三角
松村博三
1925(大正14)
金剛社

「金三角」。
謎の快男子松村博三1925(大正14)金剛社
「ルパンの告白」から「日光の手品」「結婚の指環」「陰影の符合」「地獄の罠」「真紅の肩掛」の五編を収録。
海上探偵亞留須
前田曙山
1925(大正14)
「娯楽世界」大正14年1月号

「ルパン逮捕される」の翻案で、香港から上海に向かう船の上を舞台に「怪盗アルス」の正体探しをする内容。ベルナール・ダンドレジーにあたる人物は「蘇有祥」なる青年、ガニマールは「海天良」なる探偵にされ、ラストは逮捕はされず逃亡するとのこと。
神か鬼か

1925(大正14)〜1926(大正15)
「日本少年」連載

「金髪の美女」の翻訳。
世界短篇小説大系. 探偵家庭小説篇
近代社編(保篠龍緒)
1926(大正15)
近代社
802p
保篠龍緒訳「真紅のシヨール」(「赤い絹のスカーフ」)を収録。
見えざる怪魔
黒部健彦 1926(大正15)
金剛社

「虎の牙」の前半とのこと。


●各種「ルパン全集」の出現<昭和前期〜戦中期>
昭和の代に入り、ルパンシリーズの浸透にいよいよ拍車がかかる。保篠龍緒による全集も次々刊行され、少年向けバージョンや、ルパンが日本に出張してくるバスティーシュまで登場。原作者ルブランが亡くなるのもこの時期(1941年)である。太平洋戦争が始まると対白人感情からか余裕がなくなったからか、ルパン譚の新規発行はピタリと止まる。

邦題(書籍名)
訳者/執筆者
発行年
出版社/シリーズ
頁数
補足情報
ドロテ
保篠龍緒
1927(昭和2)
博文館「探偵傑作叢書」49

準ルパンもの「ドロテ」(「女探偵ドロテ」)と非ルパンもの「プチグリの歯」、そしてルパンもの「王妃の首飾り」(「女王の首飾り」)を収録。「ドロテ」はこれが初訳?
少年探偵譚
不明
1928(昭和3)
興文社、菊池寛編「小学生全集」45
246p
「奇巌城」を収録。おそらく少年向けリライトのはしり。ホームズは原文にしたがい「ショルメス」になっている。ネット図書館「青空文庫」で無料配布中。また、これを「原典」として、2011年に映画「ルパンの奇巌城」が作られている。
ルパン
保篠龍緒
1928(昭和3)
改造社「世界大衆文学全集」4
566p
収録作は「813」全編とのこと。
蜀江の錦
小酒井不木
1928(昭和3)
「冨士」昭和3年6月号

「白鳥の首のエディス」。
奇巌城/怪紳士(上)
保篠龍緒
1929(昭和4)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」1

日本における真の意味で初の「全集」。堂々全14巻、当時発行されていたルパンシリーズをほぼ完全網羅した。保篠版がルパン日本版のスタンダードの地位を確立する。
水晶の栓/怪紳士(下)
保篠龍緒
1929(昭和4)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」2


虎の牙
保篠龍緒
1929(昭和4)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」3
432p

三十棺桶島/見えざる捕虜/第三の男
保篠龍緒
1929(昭和4)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」4

「見えざる捕虜」は「告白」中の「麦わらのストロー」。「第三の男」は「山羊皮服を着た男」。
怪人対巨人/ルパンの告白(上)
保篠龍緒
1929(昭和4)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」5

「ルパン対ホームズ」「ルパンの告白」。「告白」のうち「太陽の戯れ」「結婚指輪」「影の合図」「地獄罠」を収録。
バルネ探偵局/ルパンの告白(下)
保篠龍緒
1929(昭和4)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」6

「バルネ探偵局」は「バーネット探偵社」の本邦初訳。以後保篠版では「バルネ」で統一。このバージョンではなぜか最終話「ベシュ、バーネットを逮捕」が欠けている。
八点鐘
保篠龍緒
1930(昭和5) 平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」7


妖魔の呪
保篠龍緒
1929(昭和4) 平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」8

「カリオストロ伯爵夫人」。
金三角
保篠龍緒
1929(昭和4) 平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」9


813
保篠龍緒
1930(昭和5) 平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」10


青い目の女
保篠龍緒
1929(昭和4) 平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」11

「緑の目の令嬢」の本邦初訳。非ルパンもの「プチグリの歯」を併録。
怪屋の怪
保篠龍緒
1930(昭和5) 平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」12

「謎の家」の本邦初訳。
ドロテ/ルパン・ノート
保篠龍緒
1930(昭和5) 平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」別巻1

「ルパン・ノート」は内容未確認だが、ルブラン原作が未確認のため保篠龍緒氏の創作ではないかと言われる「青色型録」「空の防御」の2作ではないかと。
三つの眼/赤い輪
保篠龍緒
1930(昭和5)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」別巻2

いずれも非ルパンものの本邦初訳。「赤い輪」は映画のノヴェライズ。「三つの眼」はSF小説。
虎の牙
保篠龍緒
1929(昭和4)
博文館「世界探偵小説全集」14


アルセーヌ・ルパンの冒険
権田保之助
1929(昭和4)
有朋堂書店「独和対訳小品文庫」3
181p
未確認だが、ドイツ語版と和訳の併記?
アルセエヌ・リュパン
佐佐木茂索
1929(昭和4)
改造社
655p
「怪盗紳士」(一部の作品)「水晶の栓」「金三角」を収録とのこと。以前の随筆社「ルブラン全集」と同じ訳者で、「リュパン」表記にこだわりをみせる。
サレク島の秘密/ルパン・ノート
保篠龍緒
1929(昭和4)
春陽堂「探偵小説全集」10
412p
「サレク島の秘密」は「三十棺桶島」。「ルパン・ノート」にはルブラン原作が確認されず保篠氏の創作とも考えられている「青色型録」「空の防御」が収録されている。
白い手袋
保篠龍緒
1929(昭和4)
博文社「新青年」四月号

「バーネット探偵社」から「白い手袋…白いゲートル」を翻訳したもの。
花骨牌

1929(昭和4)
「新青年」8月増刊

「バーネット探偵社」から「バカラの勝負」を翻訳したもの。
ルパン大盗伝
横溝正史
1929(昭和4)
「講談雑誌」連載

「水晶の栓」を原作に、登場人物の設定を変え、ストーリーにも変更と圧縮を加えた4回連載の翻案作品。長らく単行本未収録だったが「横溝正史探偵小説集I」(2008)に収録された。三津木春影の翻案作品の影響のもとに書かれたという。
ラ・バタイユ/震天動地
高橋邦太郎
1930(昭和5)
改造社「世界文学全集」57
486p
フラレエルの「ラ・バタイユ」とルブランの「震天動地」(ノーマンズ・ランド)を併載したもの。
黄金仮面
江戸川乱歩
1930(昭和5)
「キング」連載

乱歩が生み出した名探偵・明智小五郎が、わざわざ日本まで出張してきたアルセーヌ・ルパンと対決する一編。ヒロインが「不二子」だったり、ルパンが日本人相手には殺人をしたりと何かと話題の多い娯楽作。当時保篠龍緒は「世界的大傑作」との賛辞を雑誌に寄稿している。
ダンサー殺し
保篠龍緒
1930(昭和5)
「講談倶楽部」7月号

「赤い絹のスカーフ」を翻案したものらしい。詳細不明。
龍鬼大盗伝
保篠龍緒
1930(昭和5)〜1931(昭和6)
「講談雑誌」連載

保篠龍緒が「翻訳」ではなく「翻案」を手がけたもの。原作は「ユダヤのランプ」とのこと。
評判講談全集第九巻白雲斎楽山1931(昭和6)大日本雄弁会講談社
「金髪の美女」を翻案した「怪盗ルパン」と題する講談が収録されている。ルパンは「有瀬流安」、ホームズは「堡無須」になっているとのこと。
世界文学大全集「ルパン全集」1
保篠龍緒
1931(昭和6)
改造社

「怪紳士」(怪盗紳士ルパン)より「逮捕」「獄中」「脱獄」「不思議な旅行者」「ハートの7」「王妃の首飾り」、「怪人対巨人」(ルパン対ホームズ」)、「見えざる捕虜」(麦藁のストロー)、「奇巌城」「813」を収録。
世界文学大全集「ルパン全集」2
保篠龍緒
1931(昭和6)
改造社「ルパン全集」2

「水晶の栓」「金三角」「三十巻涌嶋」のほか、「ルパンの告白」は「麦藁のストロー」以外を収録。「第三の男」は「山羊皮服を着た男」。口絵にルブランから保篠辰緒に贈られた自筆の手紙が掲げられているとのこと。
世界文学大全集「ルパン全集」3
保篠龍緒
1932(昭和7)
改造社「ルパン全集」3

「虎の牙」「呪いの狼」(「虎の牙」後編)、「八点鐘」「妖魔の呪」(カリオストロ伯爵夫人)、「青い眼の女」(緑の目の令嬢)の4作を収録と言う事はかなり詰め込んだ編集だったみたい。
世界文学大全集「ルパン全集」4
保篠龍緒
1932(昭和7)
改造社「ルパン全集」4

「バルネ探偵局」(バーネット探偵社)は最終話「バーネットの逮捕」がない。「怪屋」(謎の家)、「ルパン・ノート」2作のほか「三つの眼」「赤い輪」「プチグリの歯」「ドロテ」の非ルパンものも収録。
怪盗ルパン・海底水晶宮
横溝正史
1932(昭和7)
「少年少女譚海」連載

「奇岩城」を原作とし、舞台はフランスのままだがルパン以外の登場人物を「ボートルレ→三田村」「レイモンド→蘭子」「ガニマール→蟹丸」といったように日本人名に変更した児童向け翻案作品。大筋は原作に従っているが「奇岩城」そのものの設定は大胆に変更。長らく幻の作品だったが「横溝正史探偵小説集I」(2008)に収録された。
真夜中から七時まで
松尾邦之助
1932(昭和7)1月〜10月
「読売新聞」夕刊連載

非ルパンもの冒険小説「真夜中から七時まで」の本邦初訳。この小説の翻訳は1980年代の偕成社版ルパン全集まで行われていない模様。
死の密約
保篠龍緒
1932(昭和7)〜1933(昭和8)
「冨士」連載

保篠龍緒による「翻案」もので、原作は「水晶の栓」とのこと。
怪人ゼリコ
保篠龍緒
1932(昭和7)〜1933(昭和8)
「キング」連載

「ジェリコ公爵」の本邦初訳?。
探偵ルパン
瀧一郎
1933(昭和8)
博文館「新青年」連載

「バール・イ・ヴァ荘」の初訳?単行本化は未確認。
恐ろしき饗宴 岸田國士
1934(昭和9)
「キング」掲載

「ルパンの告白」から「白鳥の首のエディス」。
奇巌城
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」1

わずか6年の間をおいて再び平凡社から出された保篠版全集。以前より収録作も増え、構成も若干変更されている。
水晶の栓
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」2


怪人対巨人
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」3

「ルパン対ホームズ」。
真紅の肩掛
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」4

「赤い絹のスカーフ」ほか「ルパンの告白」から。
妖魔の呪
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」5

「カリオストロ伯爵夫人」。
ゼリコ
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」6

「ジェリコ公爵」の本邦初訳の単行本化にして、本来非ルパンものの本作がルパン全集に入れられるきっかけとなった。
三十棺桶島
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」7


ドロテ
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」8


虎の牙
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」9


バルネ探偵局/ルパン・ノート
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」10

「バーネット探偵社」。このバージョンでようやく最終話「バルネの捕縛」が追加される。「ルパン・ノート」はルブラン原作が確認されておらず保篠龍緒氏の創作ではないかと疑われる「青色型録(カタログ)」「空の防御」の2題。
八点鐘
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」11


青い眼の女
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」12

「緑の目の令嬢」。
金三角
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」13


怪屋の怪奇
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」14

「謎の家」。
813
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」15


怪紳士
保篠龍緒
1935(昭和10)
平凡社「ルパン全集:怪奇探偵」16

「怪盗紳士ルパン」。なぜか最終巻にこれが入っている。
反射鏡
岸田國士
1935(昭和10)
「キング」五月号掲載

「太陽のたわむれ」。
奇巌城
伊藤松雄
1935(昭和10)
「新少年」十月号付録


妖魔の復讐
岡田真吉
1936(昭和11)
黒白書房「世界探偵傑作叢書」10

「カリオストロの復讐」の初訳か。オリジナルは前年に刊行されたばかり。
二つの靨の女
保篠龍緒
1936(昭和11)
春秋社
320p
前年に「新青年」で連載されたもので、「二つの微笑をもつ女」の初訳。なお「靨」は「えくぼ」と読み、保篠版ではこのタイトルでほぼ統一。
第一短編集
保篠龍緒
1937(昭和12)
「譚海」誌掲載

「ルパンの逮捕」〜「ハートのセブン」までが掲載されていたとの事。
海峡王浜礼記1938(昭和13)「新青年」4月号 ルブランのSF「驚天動地」を日本・台湾に舞台に移した翻案作品とのこと。
古城の秘密
三津木春影
1938(昭和13)
「新青年」昭和13年7月特別増刊号

「813」の翻案の再録。若干の省略箇所があるとのこと。
奇岩城の秘密
延原譲
1938(昭和13)
巧人社「探偵奇談ルパン叢書」

「奇岩城」。
姿なき怪盗
延原譲
1938(昭和13)
巧人社「探偵奇談ルパン叢書」

「ルパン逮捕される」「獄中のルパン」「ルパンの脱獄」「ふしぎな旅行者」「ハートの7」「アンベール夫人の金庫」「黒真珠」「おそかりしホームズ」を収録。
壁上の遺書
延原譲
1938(昭和13)
巧人社「探偵奇談ルパン叢書」

「金三角」。
死を宣告された男
延原譲
1938(昭和13)
巧人社「探偵奇談ルパン叢書」

「虎の牙(上)」。
青色ダイヤ事件
延原譲
1938(昭和13)
巧人社「探偵奇談ルパン叢書」

「ルパン対ホームズ」。
紳士盗賊
延原譲
1938(昭和13)
巧人社「探偵奇談ルパン叢書」

「水晶の栓」。
アルセーヌ・ルパン
保篠龍緒
1939(昭和14)
改造社刊「世界大衆文学名作選集」13
566p
内容は未確認だが、以前改造社の「世界大衆文学全集」第4巻の再利用(内容は「813」)の可能性が高いと見られる。
虎の牙
保篠龍緒
1939(昭和14)
博文館「名作探偵」1

「虎の牙(上)」。この「名作探偵」シリーズの栄えある第一巻に据えられたあたり、当時のルパン熱を感じるところ。
呪いの狼
保篠龍緒
1939(昭和14)
博文館「名作探偵」6
325p
「虎の牙(下)」。
八点鐘
保篠龍緒
1939(昭和14)
博文館「名作探偵」11


ドロテ
保篠龍緒
1939(昭和14)
博文館「名作探偵」13
328p

懸賞金五萬法
井上英三
1939(昭和14)
「新青年」11月増刊

「バーネット探偵社」より「ベシュ、ジム・バーネットを逮捕す」。英語版からの翻訳で、若干話をまとめている。
名作大冒険 奇巌城伊藤松雄1939(昭和14)博文館「少年少女譚海」新年号付録
ネット古本情報でみかけたもの。内容はかなり翻案されているとのこと。ボートルレは「都郷郎安」、ガニマールが「加丸」、レイモンドが「礼安」となり、ホームズ登場はないそうである。
アルセーヌ・ルパン:名玉異変
延原譲
1940(昭和15)
東江堂書店「ルパン叢書」
230p
『怪盗紳士』収録のもののほか短編をいくつか収録とのこと。
欧州の恩人:アルセーヌ・ルパン
延原譲
1940(昭和15)
東江堂書店「ルパン叢書」
285p
「金三角」。
鉄の扉:アルセーヌ・ルパン
延原譲
1940(昭和15)
東江堂書店「ルパン叢書」
310p
「虎の牙」(上)
奇岩城の秘密
延原譲
1941(昭和16)
東江堂書店「ルパン叢書」

「奇岩城」。

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