ひのでやエコライフ研究所  かんきょうもんだい一日一言

 自然の大きさと人間の大きさ

1999年4月6日
  今でこそ、人間が地球環境を変えつつあるということが知られていますが、最初にこんなことを言い出した人はきっと「そんなばかなことがあるか」って笑われたんでしょうね。「地球はとってもでかいんだぞ」ってね。

 今日は伊豆に帰省しており、ちょっと海へでかけてきました。開港の町下田、その東に突き出た半島が須崎半島というところで、天皇のご用邸があったり、水仙の自生地であったりと、なかなか風光明媚なところです。半島全体が、標高50メートル弱のなだらな丘なのですが、海へと急に崖が落ち込んでいます。そんなあたりにある三保が崎という岩場を散歩してきました。
 ここも切り立った崖の上にあり、まるまる半分太平洋が眺められます。水平線にかすむかどうかのあたりから伊豆大島がそびえ立っているのですが、あの島だって太平洋の入り口にすぎないんですからね。海はもっとはるか遠くまで続いているんでしょうが、見える範囲だけでも十分大きいです。
 一方足下を見下ろすと、岩場は荒波にもまれて白く泡立っています。こんなところに落ちでもしたら、まず助からないんでしょうね。一生懸命作った船でも、こんな岩場に紛れ込んだ日には、木っ端みじんになることは請け合いでしょう。いくら人間の力が強いといっても、真正面から戦いをいどんでは勝てるはずもありません。
 この三保が崎からは、古墳時代の遺跡が発掘されています。どうも海の安全を祈願するために、いろいろなイベントが開催されたようです。今きれいに整備された展望台から眺めていても、巨大な海に囲まれて、海におそわれそうな気持ちになってしまう所ですから、昔はきっと神さんがいるとされていたんでしょうね。崇め奉るというよりは、畏れるといったほうが正直な気持ちなのかもしれません。いくら人間が体を張って海にいどんだとしても、勝てる相手ではないんですから。

 この荒々しい海の眺めは、古墳時代と全く変わっていません。でも残念ながら、中身はかなり変わっているらしいです。
 国立環境研究所を中心に、貝類の雄雌比が大きくくずれているという調査結果が出されてきています。よく話題になっている環境ホルモンの一つである有機スズが船体の塗装に用いられていたため、それが非常にわずかながら海水に溶けだし、生物をすっかり変えてしまったらしいのです。見渡す限りの海を変えてしまったんですね。
 この場に立って考えてみると、人間がそんな力を持っていたのか信じられなくなります。

 人間が地球環境を変えてしまっているというのは、事実であり、非常に大切な認識であるのですが、どうも安易に使われすぎているような気もします。まずは、地球というものがどれだけ巨大なものなのか、偉大なものなのかを、体で体験し、その上で、それ以上に破壊をする力を持ってしまった人類の大きさを認識することが大切なのかもしれないですね。
 地球環境の破壊は、とんでもないパワーで進んでいるのが実感できると思います。
 
 

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