ひのでやエコライフ研究所  かんきょうもんだい一日一言

 風呂の問題1:風呂と銭湯はどちらがいいのか

1999年4月14日
 最近は銭湯というものが少なくなってきました。私の住む京都三条大橋の近くは銭湯が健在で、今日はどこへいこうかと迷ってしまうくらいですが(注1)、こうしたところはもう珍しくなったのでしょうか。ちょっとした下宿でも風呂はついているところが多いみたいですね。
 東京へ出かける時にも、結構銭湯を利用します。いわゆる「ヘルスセンター」みたいな横文字が似合わない「銭湯」がまだまだ渋谷、新宿などの駅のそばにもあります。旅の疲れをいやすのには、広い風呂に手足を伸ばしてつかるというのはなかなかいいものです。
 さて本題に入りますが、銭湯はみんなで共同して使っているから、環境にいいはずではないかという意見も聞きます。ただ、あれだけ大量のお湯を湯船に満たしているというのは効率が悪いのではないかという心配も起こってしまいますが、本当のところはどうなんでしょうか。

■家庭で風呂をわかした場合の環境負荷
 標準的な風呂(1.5人用)で、おおよそ250リットルのお湯が入ります。ガスでお湯を沸かした場合には1回で440gのCO2が排出されることになります。シャワーなども使うでしょうから、3割増しと考えて、600gが排出されるとしておきましょう。現在の標準の世帯人数が3人ですから、一人1日あたり200gの二酸化炭素ということになります。

■銭湯での環境負荷
 これがやっかいものです。とりあえず、全国の銭湯で消費されているエネルギーを利用者数で割ってみましょう。産業連関表の分類に、「861904 浴場業」というものがあり、国立環境研究所の計算では、売上100万円あたり1.25トンのCO2が排出されることが示されています。京都の場合には1回あたり340円(東京は395円)ですから、このお金を払うことにより、425gの二酸化炭素が排出されることになります。(注2)
 意外と多く使っているんですね。特に銭湯だと、お湯が自由に使えますから、なんども体にかけたりしていますから、そうした所でも負荷が多きくなっているのかもしれません。

■銭湯にしたほうがいいのか
 難しいところです。いろいろな考え方があります。

一人暮らしであれば、自分一人が使うためにわかすよりは銭湯にいったほうがいい」。これはおおむね妥当なところかもしれません。

銭湯へ行く家だと、毎日銭湯に行かないのでかえって負荷は小さくなる」。これもその通りかもしれませんね。家でも毎日わかさないということができれば、一番効果が大きいのですが。

銭湯は自分が行っても行かなくてもお湯を沸かしているのだから、銭湯を使ったほうがいい」。一面ではあっていますが、これは難しい問題です。公共交通でも同じような考え方ができるのですが、「だから公共交通に乗っても二酸化炭素は出さない」とは言いません。公共交通で使っている分を、分配して自分が使った分を計算するのが一般的です。さらに細かい話をすると、繁盛している銭湯はそれだけ多くの人で湯船のお湯を分担しているので二酸化炭素排出は少なくなるでしょうし、はやっていない(負荷の大きな)銭湯の場合にはそんな銭湯には行かなければ、いずれ潰れてしまい二酸化炭素排出が削減されることに結びつきます(注3)。こうした話を総合して、お金を払っている分だけ二酸化炭素を排出していると言う計算ができるのです。

温泉を使っている銭湯は負荷が小さい」。温泉を掘るのに今では1000メートルにもなるということで、かなりエネルギーもかかると思うのですが、基本的に自然エネルギーですので、すぐに元をとれると思います。環境負荷は確かに少ないでしょう。あと最近は、熱効率のいいコージェネレーションなどによってお湯を供給する銭湯とかも出てきていますから、こうしたエネルギーに工夫をしているところも別途評価していく必要はあるかもしれません。

銭湯でもお湯を無駄に使わないようにしたほうがいい」。言われなくても当然の話です。ついついたくさん使ってしまうところは直さなくてはいけないでしょう。
 

(注1)決して毎日迷っているわけではありません。銭湯へいくのは○日に1回くらいです・・・はい。
(注2)産業連関分析では、直接消費されたエネルギーだけでなく、建物の建設なども含まれており純粋に比較できないのですが、まあ大部分が直接エネルギー消費でしょう。
(注3)ちょっと言い過ぎですね。公共財の場合には、それ以外に選択のしようがない人がいることを考える必要があります。例えば風呂のない家で、その銭湯が潰れてしまったら行くところがないお年寄りとかね。
 
 

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