ひのでやエコライフ研究所  かんきょうもんだい一日一言

 電車が良いと言っても・・・・

1999年8月11日
  ひのでやエコライフ研究所を設立してから始めての帰省です。どの交通機関を使って移動をするのかは、いつも頭を悩ませる問題です。ただ私の場合には自動車の類を持っていませんから、選択肢は新幹線か鈍行かという選択肢になります。

 ちなみに、新幹線はあれだけスピードを出していかにもエネルギーをたくさん消費しているような気がしますが、実際のところは在来線と大きな差はないそうです。もちろん、高速で移動する分電気をたくさん食うことは確かなのですが、かなり乗車率が高いために、一人あたりに換算すると変わらないという話です。停車する駅なども少ないために、加速が少なくてすむというメリットもあるようです。
 余談ですが、高速鉄道がこれだけ利用されているのはめずらしいらしく、ヨーロッパの高速鉄道(ICEなど)は、1両に数人乗っていればいいほうだということで、一人あたりに換算するとかなりエネルギー効率が悪いそうです。環境団体のパンフレットで、「高速鉄道はエネルギー効率が悪いから止めろ」という活動が掲載されていました。

 新幹線が効率がいいのなら、なぜ悩むのかと言えば、まあ単純に金銭的な問題ですね。特急に乗らなければ1日中乗り放題という「青春18切符」なるものがあるために、長距離移動するのには非常に安上がりになります。電車代が、1万円が2000円になるといったら、鈍行を選びたいという悩みをわかってもらえるでしょうか。
 というわけで、貧乏で暇があるという状況判断から、最適解として「鈍行」を選択した次第です。

 夏に電車に乗ると、よく話題に上るのが「冷房のかけすぎ」です。出入りの激しい電車で、立っている人も多い場合には冷房を強くするのもわかりますが、長距離でみんな寝ていることが分かっているのに極端な冷房をかけたりなどしており、かなり迷惑に思っている人も多いようです。今回の帰省でも夜行列車を利用したのですが、上着を持ってこなかったために寒くて仕方なく、衣類を包んでいた風呂敷を肩からかけてどうにか冷気を避けていました。回りを見回してみると、ちゃんと冷房が効きすぎていることを予測してか長袖の上着を用意している人もたくさんいました。真夏の夜になんとも妙な風景です。
 他に見回してみると、昼間に走っていて十分車内は明るいのに、気が付けば蛍光灯が天井にびっしり付いているとか、ふつうの部屋ではなかなか考えにくいような電気の浪費をしています。これでは、本当に電車が環境にいいとは言えないかもしれませんね。

 ではちょっと、電車(普通列車)に乗っている場合に、どれだけの電気を消費しているか簡単に計算してみます。以下に2種類の推定をしてみます。

■1■消費電力から求める
 うろおぼえですみません。電車の車掌室には電圧計と電流計がみえますので、それをちょっとチェックさせてもらいました。大阪地下鉄の場合ですが、電圧が1500V、電流は100Aといったところでしょうか。
 300人の人が乗っていたとすると、ひとりあたり500Wの電気を消費していることになります。

■2■エネルギー消費効率からの推定
 電車のエネルギー効率は、車のおよそ6倍になります(一人、1kmの移動あたり)。電車の一人1kmあたりの電力消費量を求めてみます。
 車の燃費を10km/リットルとし、一人で乗車していると仮定すると、一人1kmあたり0.1リットルのガソリン消費になります。
 ガソリンは8400kcal/リットルの発熱量ですから、車の場合には一人1kmあたり840kcalのエネルギー消費になります。
 さらに、電車の場合には車の6分の1ですから、一人1kmあたり140kcalのエネルギー消費です。
 電力は1kwhあたり2250kcalの熱量に相当します(発電所のロスを含む)から、0.06kwh/kmの消費になります。
 さらに、電車の平均時速を60km/時とすると、3.6kwとなります。つまり、一人あたり3.6kwの電気を消費していることに相当します。

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 ちょっと推算に幅が出てしまいましたが、エアコン1台〜数台分の電気を乗客全員が使っている程度の電気を、電車に乗っていることで消費しているんですね。そうした輸送にかかる電気から比べたら、エアコンを多少きつくかけているとか、照明を常につけているとかいったことは、たいした消費量増加につながらないということでしょうか。

 電車が環境にいいといっても、それはあくまでも自動車に比較しての話です。移動するためには、かなりのエネルギーを消費していることは確かなので「移動しない」のが一番なんでしょうか。
 ちなみに、京都に戻るまでに10時間電車にゆられています。後者の推計を使うと、移動だけで36kwhも消費することになりますね。これは我が研究所の半月分の電力消費量に相当します。いやあ意外とでっかいですね。
 
 

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