京大事務室・研究室「紙事情」アンケート結果
リサイクル社会をめざす会
(この調査は1992年に実施したものです。なお悲しいことに97年の現在でもまだ再生紙の購入には至っていません。古紙のリサイクルは5分別のちゃんとした制度ができたんですけれどもね。がんばってください、京都大学さん。)
現在の一般廃棄物の増加の大きな原因はOA用紙の増加によるものだと言われています。高速なコピー機が普及して大量の紙が消費される一方、秘密の資料ということで回収業者にわたって再利用されることなく大量に廃棄されているのです。
何か対策を講じねばと、自治体や大学の中には、率先してOA用紙のリサイクルや再生コピー紙の使用などが行う所が出てきました。
京都大学でも、「環境保全委員会」という場で紙の分別リサイクルと、再生コピー紙の使用について話し合いがもたれていますが、各研究室や事務室の協力が得られるか心配であるとか、再生紙の価格が高いのが問題であるなど頭を悩ますことが多いようです。ようやく重い腰をあげて、十二月より順次、学部毎にリサイクルを試行していくことが決定されたばかりで、再生コピー紙の採用については価格の問題から話し合いが行き詰まったままといった状況です。
環境保全委員会に任せっきりではいつになっても実行されそうにありませんので、実際の事務室や研究室ではどう考えているのか、どれだけ協力する意志があるのかを今回調査することにしました。
京大の各学部の全事務室37ヶ所と、研究室は任意抽出により198ヶ所、計245ヶ所に対して学内便を使いアンケートを送付し、十月中に回答をいただきました。回収できたのは事務室18、研究室54の計72ヶ所です。
まず、現状はどうであるかという点からの質問です。
問:現在紙のリサイクルを行っていますか。
紙のリサイクルは、事務室では約8割で、研究室では5割弱のところで行っています。事務室の方が現在の取り組みはいいようです。
学部別に見てうまく行われていないのは、総合人間学部と医学部で、医学部では「大学の備品を売る、もしくは譲るという行為が認められない」との達しがきているそうで、古紙回収はあまり行われていません。一方、理学部では「現在古紙はちりがみと交換しており、大学で一括してリサイクルする場合に研究室への還元をして欲しい」といった積極的(?)な意見もあり、学部毎に考え方が違うことが明らかになりました。
問:コピー紙の使用量を減らすための努力をしていますか(複数回答)
「内容を吟味して本当に必要な部分だけコピーしている」のが、研究室で5割強、事務室では7割にもなり、なかなか積極的にコピーの量を減らすよう気を遣っていることが分かります。
「両面をコピーするようにしている」と、「縮小をかけてコピーをしている」という取り組みも比較的多かったのですが、これについては事務室と研究室とで大きな差が出てしまいました。両面コピーは5割の研究室で実行しているのに対し、事務室で実行しているのは3%(1ヶ所)のみ。逆に、事務室では6割近くが縮小をかけてコピーしているのに研究室で行っているのはたった1割強にしか過ぎません。事務室は縮小コピー、研究室は両面コピーと見事に色分けされてしまいました。今後それぞれで培ってきたコピー紙削減技術の、技術提携が必要となってくるでしょう。
次に紙のリサイクルについての質問です。
問:これから紙のリサイクルをするにあたって、リサイクルに支障を感じるほど問題であると考えることは何ですか(複数回答)
一、紙を分別しておくスペースがない
二、定期的に回収してもらえず紙があふれてしまう
三、紙を質によって分別するのが面倒
四、禁忌品が混じらないようにするのが面倒
五、紙の分別の基準が分からない
六、部屋を共有している人の協力が得られない
七、秘密の文書がもれてしまう
八、リサイクルするのに支障をきたすほどの問題はない
いずれも、リサイクルをしていく中で問題として起こりうることだと考えます。その問題を、リサイクルの必要性と比べてみて、必要性を疑ってしまうほどの重大な問題であると思われることを挙げてもらう、という視点で質問をしたつもりです。
(結果は)やはり、分別時の面倒さと、スペースの不足が大きなネックとなっているようです。また、企業では秘密保持が非常に大切なのはわかりますが、大学でも3割近い事務室で「秘密の文書がもれてしまう」ことが問題であると挙げています。
ちなみに、すべての項目で研究室より事務室の方が上回っており、先のことを心配する性質が事務室にあることが分かります。
問:環境保全委員会の紙のリサイクル計画について協力したいと考えますか
一、協力したい
二、リサイクルの有功性が納得できたら協力したい
三、協力したくない
無条件に協力したいという所が事務室で4割強、研究室では7割弱にのぼります。さらに「有功性が納得できらた」を含めると、何と9割以上で協力したいとの表明がなされています。先程の問では、支障を感じるほどの問題がいろいろと挙げられましたが、その問題点を中心にリサイクルの意義について話し合う機会を持つことができれば、紙のリサイクルは十分支持を得られているとみていいでしょう。
これほどまで各事務室・研究室で協力する意志があることは驚きでした。むしろ、問題ばかりを考え、なかなか実行案を出してこなかった環境保全委員が一番考え方が遅れているようです。
次に再生コピー紙の使用についての質問です。再生コピー紙については見たことがない方も多いと思われたので、アンケートに同封した現状報告書に再生コピー紙を使用して、実際に見て触ってもらうことを行いました。
問:これから再生コピー紙を使用していくとすると、使用に支障を感じるほど問題だと考えることは何ですか(複数回答)
一、色が悪い
二、肌触りが悪い
三、保存が効かない
四、紙づまりが多くなり、保守が面倒
五、重要なコピーは今までの紙を使うとなると、いちいち取り替えるのが面倒。
六、リサイクルで引き取ってもらえなくなる
七、購入価格が高い
八、使用に支障を感じるほど問題はない
最近再生コピー紙の質がとみに向上して、保存に耐え、色もどんどん白くなってきています。100%パルプのコピー紙と並べてみないとそれだと気がつかないほどになっています。実用上は全く問題がないと考えていましたが、「色」「肌触り」が悪いという回答も少なからずありました。
これについては、根本的に考え直してみる必要があるかもしれません。そもそも、コピー紙に完全な白さや肌触りが必要なのでしょうか。再生コピー紙の色では不十分な白さが求められるコピーなどそうやたらにあるとは思えないのですが、どうなのでしょう。
「保存が効かない」「紙づまりが多くなる」については実際どの程度になるのか使ってみないとわからないというのが本音でしょう。しかし、大きな心配として取り上げる所が多く、問題が無視できるほどに再生紙の質が向上することが望まれるところです。
ここでも事務室の心配症が出ているようで、「支障がない」と考えるところが、研究室で4割を越えているのに事務室で1割程度と、顕著に現れています。
価格はやはり大きな問題のようです。後の質問でまた述べます。
問:環境保全委員会の再生コピー紙使用計画について協力したいと考えますか
一、協力したい
二、再生紙の使用の有功性が納得できたら協力したい
三、協力したくない
環境保全委員会ではなかなか話が進まない再生コピー紙ですが、受入側の反応は非常に良好です。協力したいという所が事務室で4割、研究室で6割。「有功性が納得できたら」を含めると95%のところで協力したいと答えています。これは、リサイクルよりも多い数字になります。
問:現在、大学当局として再生コピー紙の価格が高いために採用に踏み切れずにいますが、その事態についてどう考えますか。
一、社会的なイニシアティブを取っていくためにも、多少価格が高くても採用していくのが当然である。
二、価格が高いのなら仕方がない。
先程の質問にもありましたが、価格の問題になるとちょっと考え込んでしまうようです。それでも、事務室では3割弱で、研究室では5割程度が「採用していくべきだ」と積極的な答えをしています。
無回答がかなりありましたので、それを除いて合計すると「採用していくべきだ」が「仕方がない」を上回っています。
委員会では価格の高さが一番のネックとなっているようですが、事務室・研究室ともにこれだけ協力したいと言ってきています。委員会としてもこれに答えていく必要があるのではないでしょうか。
最後に環境保全委員会でも特に扱っていませんが、最も大切だと思える問です。
問:コピー紙の使用を減らすとしたら、何%減らすことが可能であると考えますか
研究室が非常に積極的で、平均でも14%減らすことができるとのことです。リサイクルよりも、再生紙使用よりも、このようにコピーが本当に必要なのかを考え、無駄になるならコピーをしないという意識が大切です。その意味では、各研究室でこれだけ見つめ直しているということは素晴らしいことだと思います。ぜひとも減らすことができるよう努力してください。
全般的に見て、リサイクルにしろ、再生コピー紙使用にしろ、また紙そのものの使用削減にしろ、積極的に考えていることがわかりました。特に研究室では積極的に紙問題を考えているようです。
アンケートを通じて、実際紙を使っている人が、何が大きな問題だと考えているかも明らかになりましたし、環境保全委員会ではそれを汲み取って率先して行動を促していってほしいと思います。現在まだ、リサイクルや再生コピー紙について十分理解が深まっていない様子ですので、現場の人にきちんと説明をしていくことも必要です。
最後に、再生コピー紙を扱っているゼロックスさんの厳しいお言葉です。ほかの自治体や大学で再生コピー紙が採用されているのに、なかなか採用しないことについて、述べたという話です。
「京大さんはさすがに頭が固いですね」
(92.11.13 学内環境誌「みどりむし」に掲載)