エアコンと石油ファンヒーターの暖房効率に関する調査

目的

 部屋の暖房をする場合には、エアコンや石油ストーブなど各種の手段がある。暖房能力は部屋の中へ供給できた熱量によって測定され、部屋環境が同じ場合には、熱供給量に従って部屋の温度が決まるとされている。一定熱量を室内に供給するのに伴い発生する二酸化炭素量を計算すると、エアコンのほうが効率が良く、石油ストーブは同じ熱量発生に対して約2.2倍の二酸化炭素を発生するとされている(COP=3.4の時)。今回はその確認のため、実際に部屋の暖房を行い、エアコンと石油ファンヒーターの二酸化炭素発生量について比較を行った。

実験方法

1)暖房機材の違いによる二酸化炭素排出量の比較

人の出入りのない部屋を借り、気温変化の似ている2日間を選んで、それぞれエアコンおよび石油ファンヒーターで夜間の暖房を行った。室温がほぼ等しくなるように午後7時半から午前2時までの6時間半暖房を行い、エアコンについては電力消費量を、石油ファンヒーターでは、灯油の消費重量を測定して二酸化炭素量に換算し比較を行った。なお、細かい検討を行うため室内外の温度については、経時変化を測定した。

温度測定は、部屋中央の天井から30cm程度離れた場所(天井付近)、サッシの近くで床から60cm程度の高さの場所(室温)、およびベランダの手すり付近(外気温)の3ヶ所を測定した。

2)暖房特性の比較

 エアコンと石油ファンヒーターについて、それぞれ午前7時30分に暖房を始め、50分間室温の時間変化を測定した。

実験条件

図 1 部屋の概要

 測定は1998年2月26〜27日、および27〜28日の2晩実施した。測定場所は、京都市内の鉄筋コンクリート2階建ての建物の、2階の東向きの部屋で行った。この建物は1階が幼稚園、2階が児童館として使われており、測定を行った午後7時以降は閉鎖されていた。

 部屋は12畳あり、1面(西側)が隣の部屋と全面ガラス戸で接しており、別の1面(南面)はほぼ全面がガラスのサッシとなっている。サッシの面については、薄いカーテンがつけられている。部屋の熱源としては、蛍光灯が40W直管のものが4本付いている他は、持ち込んだ温度測定器が10W、ノートパソコンが20Wの電力消費のみとなっている。

 今回使用したエアコンは、東芝製造1994年製のもので暖房能力は4.2kw、インバータ制御が可能で、暖房効率を示すCOP値は3.41と比較的性能のよいものとなっている。石油ファンヒーターは、電力による強制対流式で温度設定が可能なタイプで、最大3300kcal/hから最小1200kcal/hまで暖房能力を変動させることが可能となっている。なお、石油ファンヒーターの場合には、1時間に1回程度の換気を行った。

調査結果

(1)測定した2日の外気温変化について

図 2 2日間の外気温の変化比較

 2日間の夜間の外気温の変化を図2に示す。多少27日〜28日のほうが気温が高めに推移したものの、1度以上気温が離れたことがなく、外気温の変化はほぼ同じとみなすことができる。

 いずれも測定開始時間帯には10度前後の気温があったものの、朝方は5度前後まで気温が下がっている。

 ただし、隣の大部屋の室温変動を測定した結果では、午前2時の時点で、1日目が15度であったのに対し、2日目が16.5度あり、外気温が同じであっても室温の下がり方に差があることが認められた。この理由としては、2日目の昼間が晴れていたため、蓄熱がなされていた可能性が考えられる。

(2)2日間の暖房による消費量の比較

 初日はエアコンで調査を行った。天井付近が25度前後まで気温が上がったのに対して、床付近の温度が18〜19度までしか上がらず、暖房むらができていることが示された。25度まで上がることから暖房能力としては十分あるものの、送風能力に不足があるため、床付近まで十分暖まらなかったものと思われる。

 2日目に石油ファンヒーターで暖房を行った。床付近から暖気を送風しているため、床付近と天井付近の温度差が少なく、天井付近が24度前後だったのに対し、床付近で21〜22度程度の温度を確保した。

 床付近の温度がエアコンより高くなってしまい、このままでは暖房量が異なることから比較が不可能となる。そこで、同じ量の暖房をしている基準として、室温と天井付近の温度の平均値を取り、その時間平均が等しくなるように配慮しながら、ファンヒーターのon-offの制御を手動で行った。今回の測定では暖房を行った6時間半について、1日目の平均温度が20.72度、2日目の平均温度が20.75度となっており、ほぼ等しい量の暖房が行われたとみなした。

2日間の暖房による気温変化を図3〜4に示す。なお、石油ファンヒーターで暖房をした時間は午後7時30分より午前2時までであり、午前2時以降の暖房については確認のためにエアコンで暖房を行ったもので、エネルギー消費量には含めていない。

図 3 エアコン暖房による気温変化(1日目)

図 4 石油ファンヒーターによる気温変化(2日目)

 1日目のエアコンの電力消費量は3790whであり、平均して583wの電力消費となった。これを定格能力でのCOP値を用いて換算すると、1704kcal/時の暖房能力を発揮したことになる。また電力の二酸化炭素排出原単位を0.104kg-C/kwhとすると、61g-C/時の排出量となる。

 2日目の石油ファンヒーターでの灯油の消費量は440gであり、6時間半の暖房時間の平均で67g/時の灯油消費速度となっている。またファンヒーターによる電力消費量は平均57.5wであった。灯油の比重を0.815、熱量を8900kcal/Lとすると、電力と灯油の分を合わせて暖房能力は786kcal/時となる。またこれに伴うに二酸化炭素排出量は63g-C/時となっている。

 二酸化炭素排出量としては2つの暖房の間で差がない結果となった。しかし上記の比較では、理論的に供給される熱量に2倍以上の差があり、蓄熱が影響していること、および天井付近と床付近の平均の温度を用いてほぼ等しい暖房量であったとみなしたことに無理がある可能性がある。

(3)同じ日の暖房による消費量の比較

 2日目の午前2時以降に、エアコンを用いて暖房を行った。部屋の上下の温度差を小さくするために、エアコンを稼働させた上に、うちわを用いて空気のかきまぜを行った。この結果、午前2時以前の石油ファンヒーターによる暖房とほぼ同じ温度分布を達成することができた。稼働時間における暖房量を等しいとみなし、エアコンと、石油ファンヒーターの二酸化炭素排出量について比較を行った。

 この結果、理論的熱供給量はエアコンが2844kcal/時、石油ファンヒーターが1742kcal/時となった。これに対して二酸化炭素排出量で比較を行うと、エアコンが101g-C/時に対して、石油ファンヒーターが137g-C/時と大きくなっている。

 熱供給量で差がでた理由としては、エアコンで暖房した時間帯が夜遅くであり、外気温が低かったことが多少影響している点、および最大の能力を出していないためにCOP値が表記値より実際には小さいことが考えられる。

(4)立ち上げに関する比較

 2日間、朝午前7時半ころからエアコンおよび石油ファンヒーターを用いて暖房を開始したときの温度変化を測定した。

 エアコンの場合には、天井付近が6度上昇するまでに約15分かかっており、さらに床付近については20分経っても2度程度しか上昇が見られない。これに対して、石油ファンヒーターでは点火直後から急に温度が上がり始め、約5分で天井、床付近とも6度前後上昇することが確かめられた。このように立ち上げすぐの反応としては、石油ファンヒーターのほうが暖まりがよいことが示された。

図 5 エアコンによる部屋暖房の立ち上げ

結論と考察

 エアコンと石油ファンヒーターの比較では、2種類の比較で、二酸化炭素排出量はほぼ同じかエアコンのほうが少ないという結果が導かれた。

 ただし、暖房量に関する設定について検討し直す必要があると思われる。外気温が同じであっても、蓄熱量によって一定温度を維持するために必要となる熱供給量が変わる点、および部屋の上下で温度分布がある時の考え方などについてはさらなる検討が必要と思われる。

エアコン、石油ファンヒーターいずれについても、部屋の天井付近と床付近にかなりの温度差がみられた。特にエアコンについては、今回の機種は送風機能が不十分であり、床付近がほとんど暖まらないという状況が生まれた。人が生活を行うのは床付近であることが多く、同じ熱量を供給したとしてもほとんど有効に機能していない可能性がある。暖房を有効に機能させるためには、扇風機の併用などにより、部屋の上部にたまった暖気を下におろす仕組みが必要と思われる。

また、立ち上げにおいては石油ファンヒーターのほうが暖まりやすく、短時間に温度を確保したい場合には、石油ファンヒーターのほうが有利であることが示された。 よく「エアコンは暖まりにくい」と言われるが、こうしたところにも大きな原因があると思われる。





(★実験実施 1998.2.28/最終修正 1998.3.13)


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