4民生家庭部門
この報告は、CASAの気候変動研究会で進められている研究の一部です。97年9月中に中間発表として、その他の分野も合わせてまとめて報告される予定です。2010年までに40%削減のシナリオを作ることを目的に調整が進められています。
中間報告の中に含められる内容は、随時訂正が進められていますので、以下の文章を参考にする場合にはご注意ください。
1民生家庭部門からのCO2排出の状況
- 民生家庭部門からのCO2排出量は、1990年度の3750万炭素トンから1995年度4350万炭素トンに約16%増大している。運輸部門と並んでCO2排出量の増加率が高く、1995年度までの排出量増大に対する民生家庭部門の寄与は24.9%となっている。 [共通図]
- 1995年度の部門別シェアは、13.1%を占める。(1990年度は11.9%) [共通図]
- 民生家庭部門からのCO2排出を用途別に見ると、1995年時点において照明動力が42.8%と最も多く、暖房25.1%、給湯22.5%、厨房6.4%となっている。なお、暖房からのCO2排出量は地域差が大きく、北海道の暖房消費量は全国平均の3.7倍となっている。[図表4-1]
- 厨房で使用するエネルギーはほぼ横這いとなっているが、冷暖房や、照明動力の消費エネルギーは特に増加が激しい。
[図表4-2〜4-5] [資料1]
- 電力消費のうちわけでは、エアコンの21.2%、冷蔵庫18.1%、テレビの9.4%などの機材の消費が大きい。[図表4-6]
2民生家庭部門におけるCO2排出増大の原因−現状分析−
(1)世帯数の増加
- 少子化の傾向が続くため人口は2010年のピークにむけて増加の速度は遅くなっている。しかし一世帯あたりの人数が少なくなっており、世帯数は1990年の4120万世帯から2010年には5020万世帯へと増加することが予想されている。(人口問題研究所推定) [図表4-7〜4-8]
(2)快適な生活を目的とした、家電製品の普及や大型化、建物の全館空調化の進行。
- エアコン等の普及率の上昇が激しくなっており、一家に一台から各部屋に設置する方向で動いている。その他の家電製品についても普及率が上昇している。[資料2]
- テレビなど家電製品の大型化に伴い、消費電力が大きくなっている[図表4-9]。
- 各種家電製品にリモコン等の機能が追加されたため、利用をしていない時でも待機電力を消費するものが増え、電気使用の増加に寄与している。家庭で消費する電力の20%はこうした待機電力であるとする報告もある。[資料3]
- 高齢化の進展によって快適な温度が求められるようになり、また労働時間の減少により家庭での生活時間が長くなるため、家庭での暖房のエネルギー消費は多くなる。
- 女性の社会進出がすすみ、家族構成員が家事に関わる時間が十分とれなくなってきている。このため電化製品を用いた家事省力化の動きがすすみ、電力消費は増える。
*レトルト食品化や外食化等によって、厨房でのエネルギー使用量はあまり増加していない。しかし、乾燥機(衣類、ふとん)などは大きな増加となっている。
- 比較的少ないエネルギーで暖をとることができるこたつ等の普及率が頭打ちとなり、部屋全体もしくは建物全体を冷暖房する方向へと移っている。床暖房として足下から部屋全体を暖めるほか、洗面所やトイレの便器などの部分的暖房も増えてきている。
*床暖房は住宅雑誌でも特集で取り上げられ、快適性の面から注目されている。しかし電気式の場合には電気料金が月あたり10000円(8畳一間、15時間通電)と言われており、最新型のエアコン(12畳用、月あたり3980円/カタログ値)の倍以上のエネルギー消費となる。
(3)夜型ライフスタイルへの移行
- 平均的な就寝時間が以前に比べて遅くなってきている。このため、早朝であれば必要のない電灯の消費が増えることになる。
- 24時間営業のコンビニや深夜テレビなどが一般的になり、夜型ライフスタイルを送ることがより快適になってきている。
(4)情報化社会に向けての要因
- パソコンが家庭に普及してきており、情報をインターネット等を用いてやりとりするインフラが整ってくると、情報機器を長時間利用することが多くなることが予想される。
- 電話の電力は通話に必要な分はNTT側から送られてくるが、親子電話、留守録電話、FAXなどの機材では独自にエネルギーを必要とするために常に通電した状態にしておく必要がある。このため待機電力が大きな割合を占めるようになる。
3民生家庭部門におけるCO2排出削減の技術的可能性−ハード対策−
3.1 2010年までに導入可能な対策技術とそのCO2排出削減効果
3.1.1空調負荷の削減
(1)既存住宅の保温構造化(窓・サッシのペアガラス化)
- 建物からの熱損失を減らすことにより、空調の負荷を減らすことができる。しかし既存住宅に対しては、壁や床への断熱材の設置といった工事をすることは非常にコストがかかり、開口部への工事が唯一現実的とされている。既存の窓やサッシなどの開口部に対しては、ガラスを二重にしたペアガラスを導入することによって、熱の放出を抑えることができる。
- 集合住宅に対してすべての開口部にペアガラスを導入する場合には、暖房に対して16.4%、冷房に対して1.3%の省エネルギー効果が見込める。この場合、世帯当たりCO2排出量が年間30kg-Cの削減となる。
- すべての開口部に対して導入するとコストがかさむため、空調を行うことの多い居間に導入した場合、戸建住宅で暖房に対して4.5%の省エネルギー、集合住宅では暖房に対して7.1%、冷房に対して1.1%の省エネルギーが見込める。この場合、戸建住宅ではCO2排出量が年間15kg-Cの削減、集合住宅では13kg-Cの削減となる。
*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)
(2)新築住宅の保温構造の強化(断熱構造化・保温構造強化)
- 気密構造を強化し熱損失を減らす技術としては、天井・壁・床への断熱材の導入、ペアガラスの採用があげられる。断熱材を用いていない戸建住宅(東京2月)からの熱損失は、外壁から33.7%、天井を通じて屋根から24.2%、床から20.1%、窓から9.0%などとなっており、こうした部分の断熱が効果がある。[資料4]
- 断熱材なしのシングルガラスの住宅での暖房負荷を100とした場合、50mmグラスウールの断熱材使用で54.1、ペアガラスと100mmグラスウール断熱材を使用した場合にはおよそ1/3の33.2まで改善される。[資料5]
- 1992年の省エネルギー基準の改正により、寒冷地においては高断熱高気密工法、温暖地では冷暖房負荷を下げるための断熱性の基準強化が行われた。断熱効果をはかる熱損失係数による基準化が行われた[資料6]が、住宅金融公庫の割増融資条件になっているだけで実際に基準を満たした建築を行っている事例はまだ少ない。断熱構造化としてこの基準を満たす建築を行うと、省エネルギー率は37%、CO2排出量は年間一世帯あたり104kg-Cの削減となると見積もられている。
- 北海道地域では天井・床・壁への断熱材の使用は100%となっているが、その他の地域ではまだ完全には普及していない[資料7]。北海道地域以外におけるこうした保温構造の強化によって、省エネルギー率は17%、CO2排出量では年間一世帯あたり47kg-Cの削減になる。
*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)
3.1.2自然エネルギーの利用
(1)太陽熱温水器、ソーラーシステム
- 太陽熱温水器とソーラーシステムはいずれも太陽の熱を利用して温水を作るもので、自然循環させるタイプが太陽熱温水器、強制循環させるタイプはソーラーシステムと呼ばれている。いずれも天候が悪く十分な集熱が得られない時には補助熱源を用いて自動的に加熱する等のシステムが組まれている[資料8]。
- 集熱部分の面積は4〜6m2程度が必要となる。最近では真空二重ガラス管を用いて集熱効率を上げた製品が販売されるようになり、効率のよいものでは供給される太陽熱の50%以上の利用が可能となっている。
- 太陽熱温水器は追加的なエネルギーを必要としない一方、貯湯槽が屋根に載せられるために十分な量の湯をためることができない。日射量により地域で異なるが、950〜1600Mcal/台・年の省エネルギー効果となる。平均して年間1台あたり77kg-Cの削減となる。
- ソーラーシステムでは、貯留槽を地上に作ることができるため300リットル程度の十分な湯をためることができ、ヒートポンプエアコンと併せて効率的な運用可能なシステム(→電力多機能ヒートポンプ)も考えられている。省エネルギーは1600〜2300Mcal/台・年が見込まれ、平均して年間1台あたり179kg-Cの削減となる。
- 住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)を中心に、各社のカタログも参考にした
(2)パッシブソーラー住宅
- 蓄熱・断熱や送風構造の工夫により、太陽熱などの自然のエネルギーを効果的に使うことで、エネルギー負荷を低減させた住宅をパッシブソーラー住宅と呼ぶ。
- 太陽の熱を蓄える方法としては、開口部から直接日光を取りこみ蓄熱するダイレクトゲイン、蓄熱壁を窓際に置いて夜放熱させるトロンブウォール、壁の外に温室を設ける付設温室、屋根面に水を張るルーフポンド、夏季に地下の冷気を活用するクールパイプなどの手法が開発されている。[資料9]
- 静岡県浜松市で行ったシミュレーションでは、暖房用で37%、給湯用で48%の省エネルギー効果が見いだされた。これによるCO2削減効果は年間239kg-Cと見積もられている。
*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)
3.1.3エネルギー効率の改善
(1)電力多機能ヒートポンプ
- ヒートポンプ自体はエアコンに使用されているが、これは冷房を行うときには屋外に熱を排出し、暖房を行うときには屋外から熱を奪っている。特に冷房の時に熱を排出しているが、これを給湯に利用することにより、更にエネルギーを有効利用することが可能になる。このように冷暖房に給湯を組み合わせてヒートポンプを使うシステムが多機能ヒートポンプと呼ばれている。[資料10]
- 従来の都市ガス給湯器に比較して、冬季以外については省エネルギー率は50%程度と高いが、冬季は暖房の運転が優先されて室外機の能力が限界となるため、電気で湯を沸かすことになり給湯効率は悪くなる。年間通して給湯の省エネ率は21%、CO2削減効果は年間一台あたり34kg-Cと試算されている。
- 冬季においては適切な熱源がないために効率が下がっている。このため下水などの熱源が利用できる場合には、年間通じて給湯における50%の省エネルギーが可能となる。
*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)
(2)エンジン多機能ヒートポンプ
- ガスをそのまま燃やして給湯に使うのではなく、ガスエンジンでヒートポンプを動かして外部の熱を利用することで、効率的にエネルギーを使うことが模索されている。エンジン出力は3割のみで7割のエネルギーが廃熱となるが、これも温水として利用することにより、冬季においてはガスエネルギーインプットの1.77倍の熱が回収できるとされている。[資料11]
- 夏季には冷房と組み合わせることにより、ガスエネルギーインプットの0.85倍の冷房と、1.71倍の給湯が可能になる。この場合、冷房を行うことで、給湯のための費用がかからないというメリットがある。
- 実証研究により2000年頃の技術としては、給湯用で66%、暖房用で33%の省エネルギーが見込まれている。これよりCO2排出量は一台あたり年間200kg-Cの削減となる。
*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)
(3)家電製品の効率向上
- 家電製品の消費電力に関する情報としては、家電製品協会が出しているものがあるが、85年ころで省エネルギー化が一段落して、それ以上の削減ができていないことが示されている[資料12]。しかし、例示されているクラスのモデルは現状ではあまり作られておらず、実際にはそれより大型の機種での省エネルギーの改善は著しい。特にここ数年において、省エネルギーを売りにする家電製品が増えてきており、今後の大きな削減が予想される。
<エアコン>
- 1980年代はじめに登場したインバーター式のエアコンにより、一時期エネルギー消費を大きく削減することができるようになったが、それ以降は目立った技術改良はなされてこなかった。使った電気の何倍の能力を発揮するかというCOP(Coefficient
Of Performance)値は、1990年に販売されていたモデルでは、暖房に対して2.91、冷房に対して2.50となっている。[図表4-10]
- エアコンの性能を向上させる新たな技術としては、圧縮機の直流モーター化やツインロータリー化、多段曲げ型熱交換機の採用などがあげられる。このような技術を採用したエアコンは1994年頃から市場に出回りはじめ、「省エネタイプで電気代がお得」と宣伝されて売られている。1997年のカタログでは、各メーカーでもっともエネルギー効率のよいシリーズの平均では、暖房のCOP値が4.26、冷房の値は3.98となっており、1990年製品と比較してそれぞれ32%、43%の省エネとなっている。なお、もっともエネルギー効率のいいエアコンでは、暖房のCOP値が4.86、冷房のCOP値が4.55となっている。[図表4-11]
- 毎年改善が進められており、今後も更に効率のよいエアコンが開発・製品化されることが予想される。[資料13]
- 冷暖房効率だけでなく、除湿やインテリジェント制御などにより、少ない電力でより快適な室内環境を生み出すことが可能になってきている。各メーカーとも、これらの技術により快適さを損なわずに更に20%程度の省エネルギーが可能であるとしている。
- 以上の機能をふくめ、既存のエアコンに対して40%程度の省エネルギーが可能であると考えられ、買い換えを行った場合に世帯当たり年間67.2kg-Cの二酸化炭素排出削減になる。
- 2000年の平均製品基準として、冷暖房のCOP値をそれぞれ4.0とした場合、1990年の販売製品に比較して冷房で38%、暖房で27%の効率向上となる。冷暖房それぞれのエネルギー消費割合から重みを付けると、30%の効率向上となる。これに対して10%分を快適性の制御によってセーブしたものとして40%削減を設定した。
<冷蔵庫>
- 特定フロンの使用禁止で、代替材料を使用した場合には効率が落ちることが懸念されていたが、断熱材としては真空断熱材の使用や、発泡断熱材の気泡の細密化、コンプレッサーのインバータ制御、放熱面積の拡大、直流ファンモーター採用などの技術により、省エネルギーが可能となっている。
- 省エネ対応を謳っている冷蔵庫は、軒並み消費エネルギーが以前の機種に比べて半分程度になっている。400リットルクラスの冷蔵庫の中には、100リットル以下の小型冷蔵庫よりも消費電力の小さい物が出てきている。[図表2-12]
- エネルギー消費量の算出は、扉の開け閉めや物の出し入れがない状態で測定している。このため、冷蔵庫の断熱性が大きな影響を与えることになり、比較的大型の製品のほうが断熱材を多く使えるために消費電力が少なくなっている。
- まだすべてのモデルが省エネ対応になっておらず、同じクラスの冷蔵庫でも2倍程度消費電力に開きがある。数年のうちにすべてが省エネ対応に変わることが可能と考えられる。実際に、メーカーの中には冷蔵庫のエネルギー消費が半分にすることを目標としているところがある。[資料14]
- 現在売れ筋の350リットルクラスの冷蔵庫では、既存機種で60kwh/月程度の製品が売られている一方で、省エネ型として30kwh/月を下回る機種も販売されている。同じクラスの冷蔵庫を買い換えた場合、50%の省エネになるものとして、CO2排出は一世帯あたり年間52.9kg-Cの削減となる。
<テレビ>
- 1965年〜1975年にかけて真空管からトランジスターやICといった半導体化の技術によって消費エネルギーが大きく削減された。高機能化が行われても、たいていの機能は半導体技術で電力の削減が進められてきた。
- ブラウン管は「最後まで生き残っている真空管」とも呼ばれており、テレビ全体のエネルギー消費の大部分を占める。この代替技術として、カラー液晶によるテレビが実用化されつつある。まだ価格が高いことから、パソコンのディスプレイの代替として一部使われている程度であるが、非常に薄型である点から壁掛け式など新たな需要を生む可能性は否定できない。
- 液晶テレビは現状では10.8インチのサイズが販売されており、パソコン用のディスプレイとしては15インチのものが出回り始めている。ただし現在の主流は32インチ以上のワイドテレビが中心であり、差はまだ大きい。
- 液晶化による電力の削減率は75%と見込まれ、導入によってCO2排出量は一世帯当たり年間30.8kg-Cの削減となる。
<照明器具>
- 白熱電球より蛍光灯のほうが同じ明るさを得るのに消費する電力は少なくて済む。60Wの電球と同等に明るさを得るためには15W程度の蛍光灯があればよく、安定器などの付属部品で消費する分も含めて約3倍のエネルギー効率(約67%の削減)となる。
- 蛍光灯では安定器(トランス)でのエネルギーロスが多く、これをインバータ回路で代替させることにより安定器のものより14%程度省エネルギーにすることができる。また、高周波点灯型の蛍光灯(Hfランプ)も売り出されており、一般の蛍光灯に比べて23%のエネルギー削減が可能とされている。
- 電球と同じソケットでそのまま代替して使えるコンパクト蛍光灯も一般の店頭で購入できるようになっている。製品の単価は高いが、電力料金を含めて考えるとランニングコストは約半分となる。ただし既存の電球用の電気スタンドには、電球より重量があるために付けられないこともある。
- 現状では蛍光灯がもっともエネルギー効率のよい照明の一つであるが、それでも電力消費の25%程度が光に転換されているにすぎず、残りは熱として放出されている。最も効率よく光を出す製品は発光ダイオードでほとんど熱放出はないが、非常に小型の物しか作れず光が弱いために光源としては利用できない。技術的には現在の蛍光灯以上の効率を持つ明かりも不可能ではない。
- インテリアとして蛍光灯を覆うタイプの照明があるが、これは明るさを得る点ではロスとなる。こうした覆いをはずしたり、反射板をアルミメッキ等することにより反射率を上げることによって、同じ明るさを得るために必要な蛍光灯の本数を減らすことができる。
- 常夜灯として付けられる明かりも、人がいない場合には無駄である。このため、人体関知センサーを設置し、人がいる時だけ明かりを付けることにより消費電力を下げることができる。この場合、センサーを稼働させるための電力は別途必要になる。
<電子レンジ・オーブンレンジ>
- 平成8年度に省エネバンガード21を受賞した電子レンジ・オーブンでは、壁面の断熱構造化、マイクロ波の反射効率の向上、食品に合わせた加熱・電波出力制御などで、既存の同機種に対して33%の省エネルギーを達成している。[資料15]
<その他の電力機器>
- リモコンやマイコン制御などの機能が加わることにより、電源を切っても待機電力を消費するタイプの家電製品が多数ある。発光ダイオード表示から液晶表示への転換、電源のトランスからスイッチング式への転換、不要な回路に電気を回さない設計の工夫などによって、大きく削減することができる。電子レンジでは、待機電力を72%削減した製品が販売されている。
- 「その他の動力機器」に含まれる物で比較的電力消費が大きな製品としては、テレビ、洗濯機、掃除機、乾燥機などがあげられる。これらの製品についても、待機電力の改善、モーターの改良、インテリジェント制御(洗濯物の量や汚れによる洗濯時間制御、周囲の明るさでのテレビの明るさ制御)等により、エネルギー消費量を削減する余地はまだあると考えられる。
- これらの動力機器について、おしなべて既存の普及しているタイプに比べて20%エネルギー効率が向上したと仮定すると、一世帯当たり年間40.5kg-Cの二酸化炭素排出削減になる。
(4)効率的な技術の選択
- 暖房を行うにあたって、直接ガスや灯油を燃やすより、エアコンのほうがCO2排出が少ない。石油ストーブからエアコンへの転換が行われることにより、現行機種の最大値(COP=4.5)のものと仮定すると58%のCO2削減、ガスストーブからの転換では47%の削減となり、一世帯あたり年間CO2発生量が121kg-C削減される。
- ただし北海道地域は冬季は外気温が低いため、ヒートポンプエアコンによる暖房は難しい。
3.1.4集合住宅用コージェネレーション
- 燃料で発電を行い電気を生み出すとともに、その時出される熱を暖房や給湯用の熱として利用することにより、発生するエネルギーの多くを回収することができる。
- システムが大型になるが、100軒程度の集合住宅では十分導入可能である。
3.1.5効果を計上できないその他の技術
(1)ガスエアコン
- ガスを燃焼させる熱を利用して冷媒を気化させることにより、ヒートポンプとして冷暖房を行うことができる。
- 大規模な施設を中心に導入実績があり、夏場の電力ピークを抑えるための技術として宣伝が行われている。住宅用のガスエアコンの現状の効率は、CO2発生量あたりの冷暖房能力として比較すると、COP値は冷房で2.6、暖房で2.1の能力をもった電気エアコンに相当する。この値は現状では比較的低い値となっており、導入によってエネルギー削減とはならない。
(2)エンジンヒートポンプ
- 灯油を燃料としてエンジンを回し、ヒートポンプとするものであるが、廃熱を利用しないために全体的な効率はそれほどよくない。製品化はすでにされている。
- エンジン多機能のタイプのみを削減技術として計上した。
(3)プラズマディスプレイテレビ
- 製品化されているプラズマテレビは、薄型であることをメリットに壁掛け式として売られているが、消費電力は同じ大きさのブラウン管テレビに比べても大きくなっている。
(4)発光ダイオード照明
- 青色の発光ダイオードが開発されたため白色の光を作ることも可能になったが、照明に十分な光量を作るには至っていない。2010年までの技術としては見込まない。
3.2対策技術の導入を促進するための政策と措置
(1)建物の保温構造等に対する基準強化
- 1980年に告示された建物のエネルギー使用合理化の判断基準に基づき、地域ごとに基準が設定され、1992年の省エネルギー基準の改正により厳しくされた。
- 現状の基準では、省エネルギー法W地域(関東から、東海、近畿、九州までの最も人口が多い地域)ではペアガラスの導入が基準化されていないなど、まだ改善する余地は十分ある。
- 寒冷地についてはより断熱構造化についての新たな基準を作る。またその他の地域についても現在の寒冷地の基準を参考に、新たな基準を設定することが必要である。
- 新たな建物の建築に際して、ソーラーシステムを設置することを基準化させていく。
- 以上の基準は単なる判断基準であるが、最低限守るべき断熱構造の基準として強制するために、建築基準法の建築基準に含めることもできると考えられる。
(2)住宅金融公庫の融資条件化
- 建物の省エネルギーに関する基準を守らせるためのインセンティブとして、住宅金融公庫の融資基準(融資するための必須条件)や、割増融資基準(基準を満たせば融資限度額があがる条件)に含めることが考えられる。
- 省エネルギーの1980年基準については、1988年には北日本について住宅金融公庫の融資条件となり、89年には南日本でも条件化されている。しかし1992年の省エネルギー基準の改正により追加された分については、住宅金融公庫の割増融資条件にすぎず、融資条件にはなっていない。このために十分断熱構造等が普及していない面がある。
- 新たに設定する省エネルギー基準については割増融資基準化をする、また現在普及しつつある断熱建築についてはさらに融資基準化や、建築基準法の基準化などにより、段階的に気密構造を普及させるインセンティブをかけていく必要がある。
- ソーラーシステムの設置に対して、補助金以外に金融公庫の割増融資基準化していく。
(3)補助金制度・税制
- 現状で太陽熱温水器には20〜35万円、ソーラーシステムには50〜100万円程度の費用がかかる。しかし使用することによりエネルギー費用がかからなくて済むために、太陽熱温水器で年間10000円、ソーラーシステムで年間24000円の削減になる。
- 特に省エネ効率の高いソーラーシステムの普及をめざすために、10年使用して回収できるように、設置費用の半額程度を補助金として出すものとする。
- 既存住宅おけるペアガラス導入等の断熱化工事に対して、半額程度の補助を行う。
- 大型の液晶テレビについてはエネルギーの削減効率が大きいため、販売金額の1割の補助を行う。そのほか効率のよい家電製品に対しては、消費税の税額を下げるなどの優遇措置が考えられる。
(4)電気機器のエネルギー効率の向上に向けた施策
- エアコンについては平成5年に通産省告示により、平成10年9月までに、出荷する全製品の平均エネルギー消費効率を一定値以上にすることが示された。消費効率の目標値としては平成4年の実績より3%から6%の改善を求めている。[資料16]
- しかし実際には40%以上の改善ができる機種が販売されており、達成目標値は現状ではあまり意味のない値となっている。こうした新技術が導入された省エネルギー型機種の販売を促進するため、より目標値の設定を厳しくすることが必要と思われる。2000年時点で販売平均におけるCOP値で冷暖房ともに4.0、2010年までには現状の最高機種の値を採用して冷房COPが4.5、暖房COPが5.0を目標とする。
- エアコン以外にはテレビ、蛍光ランプ、ビデオに対して省エネルギーの基準が設定されているが、同様に冷蔵庫や洗濯機、調理機器等についても省エネの目標基準を設定し、平均的な消費電力の省エネを推進していく。
- テレビについては、小型のものほど消費電力が少なくなっており、省エネ化が進んでもテレビが大型化すれば相殺されてしまう。そこで、「出荷一台あたりの平均消費エネルギーを150W以下にする」など、小型化の推進や液晶タイプへの移行も含めた基準設定も効果があると考えられる。
- 省エネルギーセンターでは、特に省エネルギー性にすぐれた民生用機器・資材・システムに対して表彰制度を行っている。民生機器を表彰することは、消費者に対する製品のプラスイメージが大きく、宣伝として実際に使われている。これは省エネルギーに対する消費者教育の視点からも望ましいと考えられる。
- 省エネルギーに関する開発に対して、資金援助などの支援をより積極的に行う。
- 一般の機器についても、省エネルギー製品であるのかわかりやすくするための表示を定める。
(5)エネルギー消費の非効率な機器に対する改善勧告・指導
- エネルギー効率の特に悪い家電製品についてはリスト化を行い、製造者や販売者に対して定期的に提示し改善を求める。。
- 深夜電気温水器については単体の販売の抑制を製造者に求め、ソーラーシステムとの併用やヒートポンプ型の機器への転換を進めさせる。
(6)家電製品に対する廃棄物処理費用の上乗せ
- 現状では大型家電製品の大部分は自治体で処理されており、重量があるため運搬や資源回収などに大きな支障となっている。処理にかかる費用をあらかじめ消費者からとっておくことにより、資源回収やフロン回収など適正な処理が可能となる。この費用を販売時に上乗せして徴収することによって、廃棄時点での不法投棄も防げる。家電製品の処理については法制化にむけて動き始めている。
- テレビについては1台あたり4257円の負担、エアコンは3349円の負担となり、価格弾力性を用いて評価すると販売量がそれぞれ年間14.2万台、5.5万台の減少が見込まれる。
*廃棄物研究財団「廃棄物適正処理対策調査報告書−適正処理困難物対策(家電製品)」、1995
3.3対策技術を最大限導入した場合に削減可能なCO2排出量
3.3.1省エネルギー技術の普及に伴うCO2排出削減量の推定
- 削減可能な取り組み、およびその実施によるCO2の削減可能量を一覧表に示した[図表4-13]。
図表4-13 民生家庭部門における温暖化防止技術とその効果予測(1/3)
| | 既存住宅へのペアガラス開口部保温構造化
| 断熱構造化
| 保温構造強化
| ソーラーシステム
| 太陽熱温水器
|
対象
| | 公共住宅
| 民間戸建て住宅
| 民間集合住宅
| 新規住宅・北海道東北地方
| 新規住宅
| | |
CO2原単位
| | 30
| 15
| 13
| 104
| 47
| 179
| 77
|
(単位)
| | kg-C/世帯・年
| kg-C/世帯・年
| kg-C/世帯・年
| kg-C/世帯・年
| kg-C/世帯・年
| kg-C/台・年
| kg-C/台・年
|
年間導入実績
| | | |
| 年間の新規住宅建設件数は149万戸(1995)/保温構造強化は北海道では完全実施されている
| 2.3万台
| 18万台
|
(年)
| | | |
| | | 1994
| 1994
|
ストック量
| | 280万戸
| 2406万戸
| 1363万戸
| | | |
|
| | 1995年の戸建て以外の公共住宅
| 1995年時点での一戸建て戸数
| 1995年の共同住宅戸数
| | | |
|
設定
| | 2000年以降2005年までに宮崎以北のすべての住宅(280万戸)へ導入
| 既存住宅に対して年間1%ずつ2005年以降は年間2%ずつ導入していく
| 既存住宅に対して年間1%ずつ2005年以降は年間2%ずつ導入していく
| 公庫融資を受けるところ全部+受けないところ同数が断熱構造化するものとする
| 2005年以降はすべての新築住宅への導入(現在の新築数の半分が改善したものとする)
| 現在の太陽熱温水器の販売の2倍のペースで設置、2005年以降は更に4倍とする。
| 2005年までは現状の2倍、それ以降はソーラーシステムに置き換わる。
|
2010年時点での導入数
| | 公共住宅の全世帯
| 戸建住宅の15%
| 民間集合住宅の15%
| 全世帯の5%
| 全世帯の9%
| 全世帯の21%
| 全世帯の8%
|
(単位)
| | 万戸
| 万戸
| 万戸
| 万戸
| 万戸
| 万台
| 万台
|
年間増加数
| 2000年
| 56
| 24
| 14
| 26
| 18
| 40.6
| 40.6
|
| 2005年
| 56
| 48
| 28
| 26
| 75
| 163.2
| 0
|
| 2010年
| 0
| 48
| 28
| 26
| 75
| 163.2
| 0
|
累積導入数
| 2000年
| 0
| 0
| 0
| 0
| 0
| 23
| 180
|
| 2005年
| 280
| 120
| 70
| 130
| 90
| 226
| 383
|
| 2010年
| 280
| 360
| 210
| 260
| 465
| 1042
| 383
|
削減予測
| 2000年
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 41.2
| 138.6
|
(千トン-C)
| 2005年
| 84.0
| 18.0
| 9.1
| 135.2
| 42.3
| 404.5
| 294.9
|
| 2010年
| 84.0
| 54.0
| 27.3
| 270.4
| 218.6
| 1,865.2
| 294.9
|
導入コスト(万円)
| | 30.0
| 7.5
| 7.5
| | | 80.0
| 30.0
|
省エネ分(万円)
| | 3.2
| 1.6
| 1.4
| 11.0
| 4.9
| 24.3
| 10.4
|
2010年総経費(億円)
| | 7,516
| 2,131
| 1,288
| ---
| ---
| 58,057
| 7,489
|
代表的推進施策
| | 政府による率先実施
| 公庫融資での条件義務化
| 公庫融資での条件義務化
| 地域により公庫融資での条件義務化
| 建築基準の設定/公庫融資での条件義務化
| 財政的支援、設置の義務化
| 普及啓発
|
民生家庭部門における温暖化防止技術とその効果予測(2/3)
| | パッシブソーラー住宅
| 電力による多機能ヒートポンプ
| エンジン多機能ヒートポンプ
| ヒートポンプエアコンの効率向上
| ヒートポンプエアコンの普及拡大
| コンパクト蛍光灯の普及
| 冷蔵庫の効率向上
|
対象 |
| | | |
エアコン所有世帯 |
北海道以外 |
| |
CO2原単位 |
| 239 | 34
| 200 | 67
| 121 | (省エネ率)67
| 42 |
(単位) |
| kg-C/世帯・年 |
kg-C/台・年 | kg-C/台・年
| kg-C/世帯・年 |
kg-C/世帯・年 | %
| kg-C/世帯・年 |
年間導入実績 |
| 約1000戸
| 約500台 |
| (廃棄)289万台
| | | (廃棄)363万台
|
(年) |
| | 1993
| | 1995
| | | 1995
|
ストック量 |
| | | 0
| 3000万世帯 |
| 世帯あたり4個
| |
| | |
| | 1993
| | 推定
| |
設定 |
| 現状の2倍のペースで施工、2005年以降は5倍になる。
| 東北以北をのぞき、電気温水器の販売がすべて多機能に替わる
| 2005年以降、電気多機能ヒートポンプの1割の販売
| 廃棄される分の効率がよくなる。年間360万世帯が買い換えを行う。
| 寒冷地以外で石油ストーブを購入する世帯の10%がHPへ転換する
| 白熱灯ストックを年率10%ずつ取り替えていく
| 廃棄される分の効率がよくなる。毎年500万世帯が買い換え。
|
2010年時点での導入数
| | | |
| 所有している全世帯で買い換え
| | 白熱灯のすべてが置き換わる
| 全世帯での買い換えが完了する
|
(単位) |
| 万戸 | 万台
| 万台 | 万世帯
| 万世帯 | 万個
| 万世帯 |
年間増加数 | 2000年
| 0.2 | 2.6
| | 360
| 42 | 2000
| 500 |
| 2005年
| 0.5 | 2.6
| 0.26 | 360
| 42 | 2000
| 500 |
| 2010年
| 0.5 | 2.6
| 0.26 | 360
| 42 | 2000
| 500 |
累積導入数 | 2000年
| 0.8 | 0.5
| 0 | 0
| 0 | 0
| 0 |
| 2005年
| 1.8 | 13.5
| 0 | 1800
| 210 | 10000
| 2500 |
| 2010年
| 4.3 | 26.5
| 1.3 | 3600
| 420 | 20000
| 5000 |
削減予測 | 2000年
| 1.9 | 0.2
| 0.0 | 0.0
| 0.0 | 272.5
| 0.0 |
(千トン-C) |
2005年 | 4.3
| 4.6 | 0.0
| 1,210.3 | 254.1
| 573.1 | 1,057.5
|
| 2010年
| 10.3 | 9.0
| 2.6 | 2,420.7
| 508.2 | 751.6
| 2,115.0 |
導入コスト(万円) |
| 165.0
| 65.0 | 65.0
| | | 0.1
| |
省エネ分(万円) |
| 43.3
| 6.2 | 28.1
| 12.2 | 3.6
| 0.7 | 7.7
|
2010年総経費(億円)
| | 523
| 1,559 | 48
| ---
| ---
| ---
| ---
|
代表的推進施策 |
| 補助制度
| 補助制度 | 開発の支援
| 効率の基準の強化
| 消費者への啓発 |
消費者への啓発 | 省エネルギー基準の設定
|
民生家庭部門における温暖化防止技術とその効果予測(3/3)
| | テレビの液晶化
| 「動力その他」製品の消費電力削減
| 集合住宅のコジェネレーション
|
対象 |
| | | 集合住宅
|
CO2原単位 |
| 31 | 41
| 15 |
(単位) |
| kg-C/台・年 |
kg-C/世帯・年 | kg-C/世帯・年
|
年間導入実績 |
| (テレビ全体)830万台
| | |
(年) |
| | | |
ストック量 |
| | |
|
| | |
| |
設定 |
| 2000年以降、ストックの0.5%/年、2005年以降は1%/年の速さで代替される(テレビ出荷の1/10程度)
| 2000年以降毎年10%が削減される(10年で買い換えの完了)
| 1件あたり100世帯以上の集合住宅に限定して設置
|
2010年時点での導入数
| | テレビストックの6%程度
| 全世帯で省エネ型を導入する
| |
(単位) |
| 万台 | 万戸
| 件 |
年間増加数 | 2000年
| 43.8 | 500
| 15 |
| 2005年
| 87.6 | 500
| 15 |
| 2010年
| 87.6 | 500
| 15 |
累積導入数 | 2000年
| 0 | 0
| 0 |
| 2005年
| 219 | 2500
| 75 |
| 2010年
| 657 | 5000
| 150 |
削減予測 | 2000年
| 0.0 | 0.0
| 0.0 |
(千トン-C) |
2005年 | 67.5
| 1,012.5 | 0.1
|
| 2010年
| 202.5 | 2,025.0
| 0.2 |
導入コスト(万円) |
| 5.0
| | 3,000.0
|
省エネ分(万円) |
| 5.6
| 7.3 | 203.5
|
2010年総経費(億円)
| | ---
| ---
| 42 |
代表的推進施策 |
| 液晶タイプの開発の支援
| 開発の技術支援/表彰制度
| 小型化等への技術開発支援
|
CO2原単位
| ・
| ヒートポンプエアコンの効率向上、ヒートポンプエアコンの普及拡大、冷蔵庫の効率向上、テレビの液晶化、動力その他製品の消費電力の削減、については既存消費量から推定。
|
| ・
| その他は住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)より
|
年間導入実績
| ・
| 新規住宅建築戸数は、建設統計要覧平成9年版より
|
| ・
| エアコン、冷蔵庫の廃棄台数は、家電製品協会の予測
|
| ・
| その他は住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)より
|
ストック量
| ・
| 既存住宅については、全国住宅基礎統計調査より
|
費用
| ・
| 住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)より
|
省エネ分
| ・
| エネルギー種別の省エネルギー量を元に、現在のエネルギー価格を用いて計算。10年間で回収できる金額を示した。
|
2010年総経費
| ・
| 2010年までに導入に必要な総費用を計算した。ただし、省エネによって回収できる金額も含めて計算を行った。
|
- 各技術について、導入によるCO2削減の原単位に対して、対象年における累積の導入見込み数を掛け合わせることにより、CO2排出削減量を求めている。累積の導入数については、世帯数の増加も見越した値を設定している。
- 各技術について2000年以前の導入はないものとし、2000年時点での導入量は0としている。ただし明白に導入が行われた、太陽熱温水器、ソーラーシステム等については1990年からの削減量として計上している。
- 2005年および2010年時点での削減量をまとめたグラフを示す。[図表4-14]
- 削減効果としては、エアコンや冷蔵庫の効率向上、太陽熱利用などが大きな影響を与えることが示された。2010年時点で1086万t-Cの排出削減になるが、これは1990年時点での排出量の30%に相当する。
- 対策に必要な試算結果を示す。2010年までに追加的に7兆8650億円の投資が必要になる。2000年から開始したとして、年間7865億円の支出となる。
3.3.2 2010年のエネルギー利用シナリオとCO2排出削減量
(1)シナリオ設定
シナリオ1:資源エネルギー庁の総合エネルギー調査会が出している予測に基づき、民生家庭部門のエネルギー消費が増大するものとする。エネルギー消費は2000年までは年平均で2.7%の増加、2000年から2010年までは年平均1.8%の増加が続き、1990年に比べて2005年では43%、2010年には56%増加する。技術的改善は含める。
シナリオ2:2005年及び2010年における各家庭のエネルギー利用機材の使用量を1990年レベルに抑制される。すなわち生活スタイルを変えないものとする。ただし技術的な省エネルギーの改善は見込まない。
シナリオ3:2005年および2010年における各家庭のエネルギー利用機材の使用量を1990年時点に比べて20%削減する。加えて技術的改善がなされたものとする。
参考シナリオ:2005年及び2010年における各家庭のエネルギー利用機材の使用量を1990年レベルに抑制される。シナリオ2に対して、技術的な削減を含めない場合。
(2)その他の設定
- 世帯数は、1990年が4120万世帯、2010年が5020万世帯とする。
- シナリオ2,3、参考シナリオについては、用途ごとのエネルギー消費比率は変わらないものとする。
- 将来世帯数が増加する一方で世帯人数が減少することが予想されている。現状でも少人数の世帯より大人数の世帯のほうが、一世帯あたりのエネルギー支出は多くなっており、これを補正する必要がある。家計調査年報のエネルギー支出を参考に算出すると、世帯人数の減少分の寄与は、CO2発生量で計算して2005年で6.1%、2010年で7.6%の減少となる[図表4-15]。
(3)各シナリオにおけるCO2排出削減量の試算
図表4-16 シナリオの試算結果
シナリオ1:増大予測ケース
| | | (1000t-C)
| | |
| 暖房
| 冷房
| 給湯
| 厨房
| 動力照明
| 合計
| |
1990年実績
| 8,886
| 1,272
| 7,925
| 2,322
| 17,095
| 37,501
| 100
|
2005年予測
| 11,683
| 1,527
| 13,324
| 3,299
| 23,769
| 53,602
| 143
|
2010年予測
| 11,215
| 1,506
| 13,058
| 3,346
| 24,243
| 53,369
| 142
|
| | |
| | | |
|
シナリオ2:利用量1990年レベル抑制ケース
| | (1000t-C)
| | |
| 暖房
| 冷房
| 給湯
| 厨房
| 動力照明
| 合計
| |
1990年実績
| 8,886
| 1,272
| 7,925
| 2,322
| 17,095
| 37,501
| 100
|
2005年予測
| 8,407
| 1,176
| 8,147
| 2,593
| 16,377
| 36,700
| 98
|
2010年予測
| 7,022
| 961
| 6,871
| 2,648
| 14,398
| 31,899
| 85
|
| | |
| | | |
|
シナリオ3:利用量20%削減ケース
| | | (1000t-C)
| | |
| 暖房
| 冷房
| 給湯
| 厨房
| 動力照明
| 合計
| |
1990年実績
| 8,886
| 1,272
| 7,925
| 2,322
| 17,095
| 37,501
| 100
|
2005年予測
| 6,422
| 892
| 6,377
| 2,074
| 12,560
| 28,326
| 76
|
2010年予測
| 4,996
| 671
| 5,064
| 2,118
| 10,499
| 23,347
| 62
|
| | |
| | | |
|
参考シナリオ:1990年レベル抑制:技術なしケース
| (1000t-C)
| | |
| 暖房
| 冷房
| 給湯
| 厨房
| 動力照明
| 合計
| |
1990年実績
| 8,886
| 1,272
| 7,925
| 2,322
| 17,095
| 37,501
| 100
|
2005年予測
| 9,922
| 1,420
| 8,849
| 2,593
| 19,088
| 41,872
| 112
|
2010年予測
| 10,132
| 1,450
| 9,036
| 2,648
| 19,492
| 42,759
| 114
|
4家庭でのエネルギー使用削減のメニューとその効果−ソフト対策−
4.1家庭での省エネの取り組み
- 家庭で取り組むことのできる削減策、およびその効果を表に示す[図表4-17]。
- 家庭での取り組みを自発性に任せるだけでは取り組みが進まないことが予想される。この取り組みを推進するために環境家計簿等の自己チェックの仕組みを作ったり、互いにチェックしあえるシステムを作ると取り組みが行いやすい。このため、地域コミュニティーの中でチェックしあいながら取り組みを行うのが望ましいと考えられる。
- こうした自発的な取り組みを普及させるために、自治体や政府では、積極的に講習会を開催したり、環境家計簿の配布をするなどの取り組みが求められる。
- 石油ショックの時には家計に大きく響くという点で、積極的な省エネの取り組みが進められたが、現状ではそれほどエネルギーコストは大きくないため、費用削減といった点では省エネのインセンティブが働きにくい。エネルギー消費が環境的に望ましくないことを社会的共有認識にしていく必要がある。
| 図表4-17 家庭におけるソフト対策とその効果
|
用途大項目
| CO2排出量(1995年)
| 対象
| 行動内容
| 削減量
|
| kg-C/世帯・年
| | kg-C/世帯・年
|
暖房
| 273.4
|
|
|
|
| | エアコン
| 暖房の設定を2度下げる
| 34.0
|
| |
| 暖房の使用時間を1時間短くする
|
|
| |
| 1度がまんする(暖房を始める気温を1度低くする、設定温度を1度低くする)
| 49.2
|
| |
| 2度がまんする(同上)
| 109.4
|
| | エアコン
| フィルターの定期的点検
|
|
| | 全館暖房
| 全館暖房の場合には、全体の温度を低めに設定して、部分暖房を補助的に加える
|
|
| |
| 人のいない部屋を暖めない
|
|
| |
| 家族が一つの部屋で過ごす
|
|
| |
| 厚着をする
|
|
| | カーテン
| 夜暖房をするときにはカーテンを閉める
|
|
| | こたつ
| 部屋暖房からこたつへの変更
| 66.3
|
冷房
| 39.1
|
|
|
|
| | エアコン
| 設定を2度あげる
| 10.6
|
| | エアコン
| 1日1時間使用時間の短縮
| 5.1
|
| | エアコン
| タイマーや、省エネモードなどを有効に利用する
|
|
| | エアコン
| フィルターの定期的点検
|
|
| |
| 扇風機の活用
|
|
| | カーテン
| 昼間の日光を遮る、熱の拡散を遮る
|
|
| | 水打ち
| 夕方水打ちをする
|
|
| | 庭木
| 庭木を植える
|
|
給湯
| 243.9
|
|
|
|
| | シャワー
| シャワーを一人一日1分短縮
| 19.3
|
| | 風呂
| 風呂の二度炊きを週2回減らす
| 8.8
|
| | 風呂
| 沸かしたら間をあけずに入る
|
|
| | 風呂
| 風呂の湯量を1割減らす
| 22.0
|
| | 風呂
| 沸かす温度を42度から39度程度にする
| 22.9
|
| | 風呂
| 2日に1回はシャワーで済ませる
| 22.1
|
| | 風呂
| 風呂を2日に1回にする
| 112.3
|
| | 風呂
| 太陽熱温水器の手入れをして活用する
|
|
| | 風呂
| ふたをこまめにする
|
|
| | 風呂
| 冬は沸かす直前に、夏は朝水を張る
|
|
| | 火種
| ガス湯沸かしの火種をこまめに消す
| 6.4
|
| | 台所
| 食器を洗う時に、お湯を流しっぱなしにしない
|
|
厨房
| 71.5
|
|
|
|
| | 湯
| お湯を沸かす場合には、効率のいいガス湯沸かしを活用する
|
|
| |
| 長時間の煮物等については、圧力釜や保温型調理器具の活用をする。
|
|
| | ポット
| 長時間使わないときにはポットを切る
|
|
| | 湯
| 無駄なお湯は沸かさない
| |
照明動力
| 526.0
|
|
|
|
| | テレビ
| テレビの視聴を1時間減らす
| 6.7
|
| | テレビ
| テレビを見ない
| 41.1
|
| | テレビ等
| テレビやビデオなど、見ないときには元電源を抜く
|
|
| | 掃除機
| 掃除機のフィルター掃除の徹底
| 1.8
|
| | 掃除機
| (事前に片づけるなどにより)掃除機一日10分の短縮
| 3.7
|
| | 洗濯機
| 風呂の残り湯(温水)の利用による洗濯時間の短縮
|
|
| | 洗濯機
| 洗濯物をまとめて洗う(2回を1回に)
| 2.5
|
| | 洗濯機
| 洗濯・脱水時間の見直し
|
|
| | 乾燥機
| 乾燥機を使わずに天日乾燥させる
|
|
| | 照明
| 1日1時間の照明時間の短縮
| 23.2
|
| | 照明
| 家族が同じ部屋で過ごす
|
|
| | 照明
| 複数の蛍光灯がある場合には1本減らす
|
|
| | 照明
| 人がいないところの照明をこまめに消す
|
|
| | 冷蔵庫
| 冷蔵庫の適正容量を維持
| 0.8
|
| | 冷蔵庫
| 開け閉めの回数を減らす
| |
家庭排出量
| 1,153.9
| | | |
※参考文献
地球温暖化対策技術評価検討会報告書(1996.5)
静岡県地球温暖化防止対策地域推進計画(ふじのくにアジェンダ21)(1996)
仙台市地球温暖化対策推進計画策定調査 委託報告書(1995)
東京都地球環境保全行動計画(1992) 等
4.2家庭エネルギー消費アドバイザーの設置・改善技術の宣伝
- 各家庭のエネルギー消費について、改善できる点やそのための費用の相談など、公営による無料のアドバイザー制度をつくり市民に活用してもらう。現状ではどのような改善が行えるのかあまり知られていないと考えられ、取り組みを具体的に提案することによって、市民に認知してもらう。
- 家電製品の適切な使い方などソフト面のアドバイス以外にも、ハード的な面としては、ペアガラス導入や、ソーラーシステムの設置などについて、積極的に働きかけを行う必要がある。特に太陽熱温水器やソーラーシステムについては、石油ショックの一時期より設置台数が大幅に減少しており、設置が社会的に重要であることを説得していくことが重要である。
- ボランティアによってアドバイザー制度を運用する場合には、アドバイザーの質を確保するために、定期的に研修会を行い、常に新しい情報を提供できるようにする。
4.3これ以上持たないという選択
- 現在家庭にある電気器具を使用しない取り組みの先には、使わない電気器具は購入しない(持たない)という選択が考えられる。家庭にある物をあえて使わないことは、心理的にも負担が大きいと考えられるが、そもそも家に無ければ使わない選択肢を自然と選ぶことになり、心理的な負担は小さくなると考えられる。
- 現在使っている製品が本当に必要であるのかアンケートで尋ねた。これによると、主要な家電製品について「必要不可欠」であると答えた人だけが使ってもかまわないとすると、約3割の削減になる。[資料17]
- 製品そのものを買わないとすると、単に家庭でのエネルギー消費を減らすだけでなく、製造や輸送の段階で使用されるエネルギーも削減することになる[資料18]。民生家庭部門の削減量としては計上できないものの、全体の二酸化炭素排出を削減するためには効果がある。
4.4サマータイム制の導入
- OECD加盟の主要国では大部分がサマータイム制を導入している。また日本より緯度の低い地域でも導入している事例がある。
- サマータイム制の導入によって、朝の日照時間を有効に使えることにより、夜の電力消費を下げることが可能になるとされている。影響の試算結果では、家庭における照明電力消費量が10%削減されるとしている。[資料19]
4.5エネルギー使用量を伝える政策
- 家庭でエネルギー消費をした量は、電力会社、ガス会社等からの領収書(請求書)によってわかる。しかし二酸化炭素としてどれだけ排出したのかは明確ではなく、一旦環境家計簿に写して計算し直す手間がかかる。
- このためエネルギー供給に関する企業は、各家庭に通知する時に二酸化炭素の排出量を明記し、エネルギー消費が多い家庭もしくは増大している家庭には、個別にエネルギー削減のためのアドバイスを付記して送ることが効果があると考えられる。
- また各世帯におけるエネルギー消費量を公開として誰でも閲覧ができるようにすることにより、自主的に省エネルギーの取り組みを行うように促すことも考えられる。
4.6製品情報を伝える制度
- 環境配慮型の家電製品については、共通のラベルを作成し、消費者が選択をしやすいような制度を作る。ラベルには、どの程度エネルギー消費が削減できるのかも含めて記載することが望ましい。
- 逆に、製品のエネルギー消費パフォーマンスが一定レベル以下の製品に対しては、負荷が多い旨の注意書きラベルを貼ることを義務づける。
お問い合わせ、感想などありましたら鈴木(suzuki@student.eprc.kyoto-u.ac.jp)まで。お気軽にどうぞ。
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