どうも一人暮らしの場合には、冷蔵庫が主要な電気消費の原因になっているようです。友達にかなり省エネに心がけている人がいるのですが、私の下宿より多く電気を消費しており不思議に思うのですが、きっと冷蔵庫の消費電力が影響を与えているのでしょう。ちなみに私の下宿では電気消費量のおよそ半分を冷蔵庫が占めています。冷蔵庫を調べずして、省エネは語れないかもしれません。
最近の冷蔵庫は、インバーター制御で、モーターが強く回ったり弱く回ったりすることにより温度調整をしているようですが、私の下宿のやつは単にオンオフ制御をするだけの古いタイプのものです。容量は82リットル、冷凍庫が別になった2ドアのタイプで、大学生には一般的なやつです。
冷蔵庫で省エネをするためにはどうしたらいいのかを調べるのが目的です。よく、ドアの開け閉めの回数が影響するなどが言われていますが、実際にどのくらい省エネに効果があるのかはやはり確かめてみないといけないでしょう。
また、冷蔵庫にはたいていついていると思うのですが、温度設定ができるようになっています。私の下宿の冷蔵庫には「強」「中」「弱」という設定なのですが、これを変えることによって省エネができるはずです。冷房だって温度設定を変えることで省エネになりますからね。どのくらい効果があるものか調べてみることにしました。
とりあえず今回の調査は、冷蔵庫でどのような温度変化が起こっているのかを見て、今後の調査のための予備調査と位置づけて、適当に条件を動かして調べてみました。
■自動温度測定装置
部屋の温度調査でもおなじみの、温度自動計測装置を引っぱり出してきました。ひさしぶりの登場になります。温度(-10度〜40度)の3点同時計測ができる優れものです。今までは気温測定に使っていたので10分ごとにデータを記録していましたが、今回はプログラムを変更して1分ごとに記録できるようにしました。
環境教育学会でもみかけましたが、こうしたデータ収集装置は比較的安く売られているみたいですね。パソコンに繋ぐことができるようになっていて、データ処理は自由自在というものです。
■電力計
研究室の後輩からの借り物です。買い取りたいのですが、まだお金がないので………(^^;)。
電力計を使い、使用している電力を調査しました。モーターがonになっている時には、およそ80ワット、オフになっている時はおよそ6ワットの消費量となっています。今回の冷蔵庫はオンオフ制御ですので、それぞれの時間を測定すれば電力量もでてくるという次第です。
測定を始めて26時間24分で1188ワット時ですから、平均電力消費量は45ワットになります。1ヶ月あたり32.4キロワット時ですが、これは冷蔵庫に示された消費量27キロワット時よりはやや大きな値となっています。
7日の22時から8日の22時まで調査した結果を下図に示します。冷蔵庫のほぼ中央部で品物にあたらない空間の温度を測定した「庫内」、部屋の温度を測定した「外気」、冷蔵庫の側面で熱を逃がす部分の温度を測定した「壁面」の3カ所を設定し、グラフに示しています。
壁面では、モータが稼働しているときには温度が上がり冷蔵庫の中の熱を逃がすようになっています。ですから温度が高い時間を測定すれば、モーターがonになっている時間を測定することにもなります。ちなみにグラフでoffになったときには外気温よりも低くなっていますが、これは冷蔵庫の冷気が壁を伝って逃げていることを示しています。
(1)22時から0時まで
冷蔵庫の温度設定を初期状態の「弱」のままで測定を行いました。なんと冷蔵庫の中の温度が12度〜15度になっているんですね。ふつうの冷蔵庫の温度がどの程度かよく知りませんが、冷蔵庫の性能を測定する条件に示されているのは、冷蔵庫で「5度以下に保つ」としてありますから、もしかしたらこれは非常に温度が高すぎるのかもしれません。でも、冷蔵庫としては十分機能しているみたいですので、いいのかもしれないですけれどもね。
たぶんモーターのオンオフはサーモスタットで設定しているのでしょうけれど、およそ12度でモーターをオフにして、15度になったらオンにする感じです。時間的には30分ほどモーターが動いて冷やし、30分ほどで温度が上がるといったパターンになっています。
モータの稼働時間の割合は43%となっています。
(2)0時から2時
0時の段階で、温度設定を「中」に切り替えました。このため冷蔵庫内の温度を下げるために、モーターの動いている時間が長くなっているようです。
(3)2時から11時
冷蔵庫の開け閉めはしていません。「中」の設定によって、モータが切れる温度が9度、モータが入る温度が13度とそれぞれ下がっているようです。
外気温が(1)と比べて2度ほど下がっているのですが、稼働割合は48〜54%と高くなっており、消費電力が多くなっていることを示しています。7時頃が一番外気温が低く、このころの稼働割合が低いため、温度と稼働割合は大きな関係があることが考えられます。
(4)11時から12時
11時に親から野菜が送られてきて、冷蔵庫の中に詰めました。このために冷蔵庫の中の温度がいったん上昇しています。いろいろ送られてきたのですが、実際に冷蔵庫に入れたのはレタスだけです。
このためにモーター稼働時間も長く、稼働割合は70%になっています。外気温がほぼ同じだった時間と比べると20%近く稼働割合が多くなっています。この分が余計に電力を消費しているということでしょうか。
(5)12時から19時
外出していましたので、冷蔵庫の開け閉めはありません。昼の気温が上昇しているために、モーターの稼働時間が長くなっているのがわかります。外気温30度では75%の時間がモーターが稼働しています。
夏場には40度近くにもなると思われるのですが、そうなったらモーターの限界なんでしょうね。
(6)19時以降
調理をするために短い時間3回扉を開けています。庫内温度は少しあがっているのですが、これが消費電力に影響を与えているかどうかは定かではありません。
一定時間の間に数回ドアの開け閉めをして、稼働時間を比較する実験をしてみる必要があるでしょう。
冷蔵庫は壁から熱が入り込んで、モーターで熱を逃がす、という仕組みですから、庫内温度と外気温をパラメータとして適当な熱流量のモデルが作れるのではないでしょうか。
モーターが稼働していない時については、
[冷蔵庫内の熱量] = [冷蔵庫の温度]×[冷蔵庫内の熱容量]
[熱の流入速度] = ([外気温]−[庫内温度])×[熱貫流係数]
Δ[冷蔵庫内の熱量] = [熱の流入速度]
モーターが稼働しているときには、壁の温度も変わってくるので、先ほどの熱貫流係数がそのまま使えるわけではなさそうですね。熱の流入も含めて効率を定義するとわかりやすいかもしれません。
[熱の排出量]=[電力消費量]×[効率]
これらの式と、モーターがオンオフになるときの庫内温度とその時間で、モデルが作れそうな気がするのですが………。気温が上昇したときの電力消費量、庫内温度設定を変えたときの電力消費量、冷蔵庫にものを入れた時の電力消費量などがモデル的に求まるような気もするのですが、ちょっとパラメータが多すぎるかな?