富の地に暮らす
サンセット大通りの賑わいが懐かしい。
下町の真昼の陽射しに肌をさらし
ひたむきに先人の足跡をたどって歩く観光客たちを尻目に
通りの角を少し上がって
白亜の花壇をめざす。
喧騒とはほど遠い石畳の小路の先の
いつものカフェに人影はまばらだ。
日よけのパラソルをくぐれば
乾いた風が頬に心地よい。
「今日は、少しゆっくりですね」
青く澄んだ瞳のウェイトレスの控えめな会釈が
遅いランチタイムに一味のスパイスを期待とともに添えてくれるのだ。
その昔
緑ひとつ育たぬ褐色の地であったというこの町に
今、欲すれど叶わぬものなどありはしない。
日暮れともなれば
気取らないお洒落をしたマダムたちが
表通りの華やかなモールの其処此処を
涼し気な風情で散策しはじめるのだが。
1998.8
Kazu.