Graz


シュタイヤマルク州の州都、グラーツ

 中世にタイムスリップしたような都市、グラーツ。人口24万人あまりのシュタイヤマルク州の州都で、ウィーンに次ぐオーストリア第二の都市でもあります。美しい旧市街と郊外にあるエッゲンベルク城は、ともに世界遺産に登録されています。
 グラーツという名称はスラブ語で小さな城を意味する「グラデツ」に由来するといいます。古くからこの町は、東からの外敵に備える要塞の役割を果たしてきました。
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 【エッゲンベルク城】
Schlos Eggenberg  Schloss Eggenberg/Graz

 グラーツでの今回一番のお目当ては、エッゲンベルク城(1625年築造)博物館に展示されている「豊臣期大坂図屏風」。大学でお世話になっている先生方にお願いして事前に連絡をとっていたき、ここの主任学芸員・教授のバーバラ・カイザー博士から直接説明を受けることができました。長身で貴族の気品のただよう美しい博士に案内されて、屏風をはじめ同館所蔵のほとんどの名画・芸術作品群を間近に鑑賞することができました。初めての欧州の旅で、こんなラッキーな時間をもてたことに感謝!

 グラーツの街の最も西に位置するこの城館は、もとはヨハン・ウルリッヒ・フォン・エッゲンベルク公爵が1623-1625年に建設した宮殿です。
 街の中心から1番の市電にのってエッゲンベルク城前の停留所を下車。城門からお城にいたる、手入れの行き届いたゆったりと奥行きのある庭では、数羽の孔雀が優雅に大輪の羽を広げて来る者を迎えてくれました。正面の城館の風情とあいまって、さながら中世ヨーロッパを描いた印象派の絵画を彷彿とさせる構図です。カイザー博士の説明によると、このエッゲンベルク城は、「時空間」をテーマにに全宇宙をモチーフとして建てられたそうです。四季をあらわす4つの塔にはじまり、1年を表す365個の窓と12カ月をあらわす12の門、それに、1週間を表す7つの扉や1日を表す24枚の絵など、自然界の法則や数字がいたるところにちりばめられた、知的な遊び心に満ちた建物なんだそうです。主任学芸員のカイザー博士には、約2時間近い時間をかけて全館24の部屋をくまなく案内していただきました。ここには件の屏風絵のほかにも、充実した絵画コレクションが所蔵されていますが、中世そのままの城館自体が、豊かな芸術性を誇る第一級の芸術作品といえます。この屏風絵をはじめ貴重絵画なども、今回、心ゆくまで鑑賞することができた。また、同じく滅多に入れないカイザー博士の研究室にもお邪魔できたが、そこで出されたグラーツ自慢の、炭酸を多く含んだ冷たい水の味は、今も忘れられません。





この目で見てきたエッゲンベルク博物館に収蔵されている芸術作品の一部を紹介します。。。


 
     

 
     

 
     
  図書資料室  修復作業中のテーブルです 

 
     
  さて、今回我々が一番のお目当てとしていた屏風絵は、「東洋の間」に、8枚に分けられた一隻の屏風が、パネルにはめ込まれるようにして展示されていました。城の管理者であるヨアネウム博物館の依頼を受けたケルン大学のエームケ教授の調査によって、これが豊臣秀吉築城の大坂城と城下の景観を描いた作品であることが判明したそうです。その後極めて短い期間のうちに、うちの大学の研究センターとヨアネウム博物館、大阪城天守閣との間で、「豊臣期大坂図屏風」の研究調査のための協定が結ばれました。以来、その協定に基いた国際シンポジムをはじめ、多くの公開講座等によってこの屏風絵が公表され、大きな反響を得ています。エッゲンベルク城博物館でも、この屏風絵がイエズス会宣教師の証言と一致する比類なき貴重な作品であるとの価値が確認されたことで、展示室の名称を「東洋の間」から「日本の間」へと改称し、日本との交流が一層深まっています。 

 
     

 


エッゲンベルク城博物館と豊富な所蔵品を詳説したカイザー博士の近著をお土産に、しばし世界遺産グラーツの旧市街を散策しました。


エッゲンベルク城 Schloss Eggenberg 世界遺産

城内のそれぞれの豪華な部屋:
  開館時間: 4月中旬〜10月末まで
  火曜〜日曜 10:00〜17:00 
  ガイドツアー 10:00、11:00、12:00、14:00、15:00、16:00
公園:
  冬期 毎日 8:00〜17:00
  夏期 毎日 9:00〜19:00
Eggenberger Allee 90