第二回「ジャズとは何か その2」


ジャズとはスウィングである!!
(チャイムが鳴ると「A列車で行こう」"The Popular Ellington" Duke Ellington Orchestra1966 が流れる) みんな集まったかな?今流れている曲は知っている人もいるでしょう。デューク・エリントンのことはそのうち話すことにしましょう。 さて、また私の大好きなレコードを持ってきました。前回に続いていろいろなスタイルのジャズを聴いてみましょう。 先入観を持たないで、新鮮な気持ちで聞いてみて下さいね。

本日のレコード

1. 「You'd Be So Nice To Come Home To」"Art Pepper Meets The Rhythm Section"1957

 アルト・サックスのアート・ペッパーが当時のマイルス・デイビスのリズム・セクション(ピアノ・ベース・ドラム。"The"が付くくらい高名だったんです) と競演しています。次々と湧いてくるサックスのアドリブ・フレーズがすてきでしょう。実は当時のペッパーは麻薬の虜になっていて、自伝を読むと このレコードの吹き込みの時もひどい状態で、吹き込みがあることを当日初めて知らされ半年ぶりに楽器に触り、曲もアレンジもすべてその場で決めたらしいです。 そんなこと全く感じさせない素晴らしい演奏です。不思議ですね。

2. 「直立猿人」"Pithecanthropus Erectus"Charlie Mingus Jazz Workshop1956

 ベースのチャーリー・ミンガス(チャールズと呼べ!と言ってたそうですが)はベース奏者、作曲家、バンド・リーダーとして 個性的な人物の多いジャズ界でも際だって個性的な人でした。この演奏、サックス二人、ピアノ、ベース、ドラム、という五人編成 で演奏されますが、なんかもっと大勢でやっているような気がしませんか?作曲と即興演奏の見事な融合が聴けます。聴いていて どんな情景が浮かんできますか?なんて訊きたくなるような曲です。

3. 「ラ・フィェスタ」"Captain Marvel"Stan Getz1972

 ピアノ、キーボードのチック・コリアはロック・リズムを取り入れたいわゆる「フュージョン」の創始者の一人です。 この曲はチックのバンド「リターン・トゥ・フォーエバー」での演奏が有名ですが今日はメンバーがほとんど同じ同時期の スタン・ゲッツのバンドの演奏を聴きましょう。

4. 「枯葉」"Portrait In Jazz"Bill Evans Trio1959

  今度はピアノ・トリオです。ピアノ、ベース、ドラム、という三人編成でもともと「シャンソン」の曲ですがジャズのスタンダード・ナンバー になった「枯葉」を聴いてみましょう。この演奏は三人がお互いの音を聴きながら対等に即興演奏をしています。和音や小節数は決まっています。各自が自分の身体で4ビートを 感じて、出す音は微妙に割り切れないタイミングになっていますのでほんと、頭を空っぽにして聴いて下さいね。三人のからみから強烈なスウィング が生じています。

5.  「ゴースト」"Spiritual Unity"Albert Ayler Trio"1964

  最後はフリー・ジャズです!テナー・サックス、ベース、ドラム、のトリオで演奏されます。最初と最後に出てくる、懐かしいような メロディがテーマで即興のパートはリズム、和音とも決まりはありません。三人の相互作用がこれまた強烈なスウィングを生み出しています。 アイラーのサックスは今まで聴いたサックスとちょっと違うでしょう?怒ってるのではありませんよ。よく聴くと優しさを感じませんか? ピーコックのベースは鋭く後の二人に反応しているのを聴いて下さい。サニーのドラムはシンバルがポイントですよ。 さあ、もっともっと先入観を捨てて虚心になって聴いて下さい!


生徒の意見

(女子A) 1.は、こういう曲が好き。またこういうのを聴きたい。3.はスペイン舞踊の曲みたいだった。どこかの熱い国の 音楽を連想した。4.はよくわからなくて、めちゃくちゃにしか聞こえなかった、でも静かでよかった。5.はもっともっとわからなくて虚心になって聴くなんてとても無理だった。とても激しい曲だった。ちょっと狂いそー。

(男子B)2.は聴いていておそろしい感じがした。演奏が人の悲鳴のように聞こえてきたのが特に印象的だった。5.は初めのうちカントリーみたいだったのがだんだん変わっていき、最後にまたもどる ところがよかった。

(男子C)3.は聞いたことがあったし、いいなあと思った。最後の曲のフニャフニャしたサックスの音はギターならトレモロ・アームを使って出せるがサックスでどうやって出すんだろうと思った。

(女子D)1.はプリントにあったように、とても麻薬中毒とは思えない良い演奏だった。2.はベースの音がとっても印象的で、長い曲だった分だけすごかった。 直立猿人というより人間の文明の運命を感じさせた。3.は「カルメン」を思わせる曲調だった。このドラムがすごく好き。4.はピアノがとても躍動的だった。ベースもよかった。ちょっと聴くとメチャクチャに演奏してるようにも思えたけど もしかしたら決まっているのではないかなーと思ったら、そうだった。それを表面に出さないなんてすごい!5.は「幽霊」と言う感じはあまりしなかったけど、いかにも「ジャズ」っていう感じがした。 頭の中をかきまわすような曲だった。三人の相互作用なんてとても難しくて聴きとれない。「ジャズ」の難しさを思わせるような曲。どうしてここまでやれるのか、やっぱり私にはわからない。

(女子E)2.は今までのと違っていて何かold daysのアメリカのハード・ボイルドっぽい映画音楽みたいで聞き易かった。ベースのソロをいっぱい聴きたい。「直立猿人」という イメージはあまりなかったけれど、ストーリー性があって聞き易くて楽しめました。4.はピアノとベースのインタープレイがすごかった。ソロなど聞くとジャズはロックやポップスとは比べ物にならないくらい上手くないと ダメなんだなあとつくづく思ってしまいます。5.はシンバルがカチャカチャ勝手にたたいているみたいだった。そうかと思うと今度はサックスが適当に吹いているみたいだったり・・・それでいて不快感を与えないというのは きっとすごいことなのでしょう。この曲はどろどろとして、それでいてすごくクリアで、何て言っていいのかわかりませんが言いようのない不思議な曲でした。言葉で表そうとすると、どんな言葉でも表現できずに頭痛がしてくるという 今まで聞いたことのない不思議な音楽でした。


けっこう難しいかなという曲を選んだのですが、熱心に聴いてくれてうれしいですね。

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