全翼機の世界

解説:Armstrong Whitworth AW-52

最終更新日1998.08.23

 AW-52は、アームストロングウィットワース社(英国)のチーフデザイナー ジミーロイド(Jimmy(John) Lloyd)によって構想された無尾翼機です。 彼は大戦中の層流翼の風洞試験から、層流翼を用いて無尾翼形態にすれば、有害抵抗が約30%に削減できると考え、戦後のジェット旅客機を目指しました。
まずは低速時の空力データ収集のために1/4サイズのAW52G木製グライダーを製作、1945年3月2日に曳航飛行して、データ収集を開始。 続いて本命ジェットエアライナーの1/2サイズのAW-52を2機製作、高速時の空力データ収集を始めましたが、層流翼の形状保持に苦心し、初期は翼弦の5%しか層流を保持できず、 改修後も20%翼弦しか層流を保持できなかったことから、計画は破棄されました。
1号機(TS363)は1949.05.30に墜落して失われており、2号機(TS368)も1954年6月にスクラップされています。
この機体は垂直尾翼と方向舵も持つため全翼機とは言いにくいのですが、イギリスの機体でもあり、本ページに含めました。

 尚、AW-52よりも前にAW-50という全翼型の4発ジェット爆撃機、その1/3スケールのグライダーAW-51が計画されています。 イメージは全体的にAW-52に似ており、AW-52のルーツはここにあるのかもしれません。  AW-50自体は、1942年にジェット戦闘機として計画されたものでしたが、その後ジミーロイドによって層流翼を用いた爆撃機へ変更された機体です。 全幅120 ft、Metropolitan Vickers F-3ターボジェット(推力 2,050 lb)を4基搭載した爆撃機計画として1943年に完成、1944年に航空省に提案されました。 その際、全幅が112 ftへ変更されるととも翼厚比も15%から23.5%に増加され、武装が減少しています。


AW−52データ
項 目AW-52GAW-52
全幅53 ft 10 in90 ft
全長19 ft 4 in37 ft 4 in
全高 8 ft 4 in14 ft 5 in
翼面積443 sq ft1,314 sp ft
翼型NACA 65-220(翼根)
NACA 65-220(翼端)
NPL 655-3-218(翼根)
NPL 655-3-015(翼端)
最大重量-34,150 lb
空虚重量-19,660 lb
燃料搭載量-1,700 Imp lb
最大速度-500 mph(Sea level)
480 mph(36,000 ft)
後続距離-1,500 miles
最大後続距離-2,300 miles
エンジン-1号機(TS363) Rolls-Royce "Nene"(推力 5,000 lb) × 2
2号機(TS368) Rolls-Royce "Derwent"(推力 3,500 lb) × 2
初飛行-1号機(TS363) 1947.11.13
2号機(TS368) 1948.09.01

AW−50データ
項 目AW-50
全幅112.5 ft
全長45 ft
全高-
翼面積- [2,000 sp ft(120 ft計画時)]
最大重量54,183 lb[50,000 lb(120 ft計画時)]
最大速度460 mph
エンジンMetropolitan Vickers F-3(推力 2,050 lb) × 4

 使用文献
  ・Armstrong Whitworth Aircraft since 1913, Oliver Tapper, Putnam, 1973)
  ・Air Enthusiast 17, Ray Williams, 1982,"Tale of No Tails"
  ・Air Enthusiast 43, -, 1991,"Amstrong Whitworh Paper Plane"
  ・(翼型のみ):The Incomplete Guide to Airfoil Usage, UIUC(イリノイ?大学のHP))

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