全翼機の世界

解説:Lippischの全翼機

最終更新日1998.08.23

 無尾翼機やMe163の原型であるDFS194で知られるリピッシュ博士も全翼機に魅入られた一人でした。
博士はその著書の中で「無尾翼機を研究するのは純全翼機のため」と述べています。
その博士は、1921年から高翼後退翼、1928年からのRRG/DFS(German Research Institute for Soaring Flight に改名)時代での低翼後退翼研究を経て、1939年メッサーシュミット社でのMe163開発後、 1943年にLWF(Aeronautical Research Institute、ウイーン)と一環して無尾翼機、デルタ翼を研究してきており、 その手になる全翼機は数多くはないものの、幾つかかが知られています。

 1点めは1928年にILA(International Aeronatical Exhibition)で発表されたものです。
データ等は一切不明です。

 2点めがDFS時代の後半(1937〜38)の作品、DFS 40 "DELTA V"で、無尾翼機と全翼機の比較のために作製された機体です。
リピッシュ博士がDFSを出た後の1939の年末、重量分布の誤りから重心が後半に位置しフラットスピンに陥ってに墜落、パイロットは脱出したものの、機体は完全に破壊されました。
まあ、ありがちな話なのですが、飛行性は良好だったようです。 余談ですが、このDFS40は機体規模やエンジン基数こそ違いますが、ジャック・ノースロップの米国特許である全翼中型爆撃機によく似ていると思います。

DFS40 "Delta V"データ
全幅12 m
全長5.1 m
全高-
翼面積-
全備重量-
最大速度-
エンジンArgus(推力 100 HP) × 1

 3点めは1941年の4発爆撃機 P.08 で、同僚(?)のワースター博士(Dr.Wuester)の手による機体です。
メッサーシュミットのL(リピッシュのLか・・・)支所でのプロジェクトでしたが、計画のみに終りました。

P.08 データ
全幅50.6 m
全長15.35 m
全高-
翼面積300 m2
空虚重量30,000 kg
全備重量90,000 kg
最大速度-
エンジンDB 615(推力 4000 HP) × 4
HWK (推力 750 kg)× 1

 4点めはウイーンのLFW(Aeronautical Research Institute)時代の1943年、ジェット攻撃機(ドイツ空軍向けなので、戦闘爆撃機か)としてV1のモックアップ製作まで進んだプロジェクト11(P.11) "Delta VI"です。
V1は2機の固体ロケットモーターも装備していて、短距離離陸を目指していたようです。

P.11 "Delta VI" データ
全幅10.8 m
全長 7.49 m
全高-
翼面積-
空虚重量-
全備重量16、000 kg
最大速度-
エンジンJunkers Jumo 004 c(推力 1010 kg) × 2

 使用文献   ・THE DELTA WING HISTORY AND DEVELOPMENT, Alexander Lippisch, Iowa State University Press,1981)

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