「地域研究の方法論」

地域研究から地域デザイン・政策提言へと繋げるための枠組み


1.データ分析の必要性

 地域の現状をきちんと把握することが改革の第一歩である。「数字で何が判るのか」という議論があり、また「数字は真実を語る」という言葉も存在する。要は、データの意味を正しく理解し、統計学上の適切な分析方法を採ることである。物事を、比較する、時系列的な流を調べる、主な要因を把握する等は極めて重要な事柄であり、データ分析に意味をもたらすものである。

2.多変量解析を駆使

 地域に関するデータには、個人の意識や態度、企業の活動内容、NPOの行動、行政の優先順位、経済状況など多岐に亘る。この様な、出来るだけ多種多様なデータを用いて分析することで、地域の全体像を把握すべきである。統計解析のソフトには専門的なものを使っており、クラスター分析、相関分析、主成分分析、回帰分析、平均値比較などがツールになる。しかし、日本における統計データには偏りがあり、特に個人や個別の企業の詳しいデータが少ない。今後、地方分権時代を意義あるものにしていくため、地域データの拡充が強く求められているのである。

3.観測の重要性

 データの持つアクチュアリティ(現実性)を確認することが重要で、これには現場をリアルに観察し、個別に観測することが必要となる。データ及びその分析結果だけで判断すると、特異点的な現象を標準化してしまったり、非現実的な場面を引き出すような事が避けられる。観測も現状把握の重要な要素である。

4.当事者の組み込み

 従来、ともすると当事者を無視した政策が策定される事があった。始めから結論有りきの、手段側からみた方法論で、最近は実効性が疑問視されるようになってきた。目的を忘れた考え方であるが、結果を評価出来ない仕組みと相俟って生き延びてきた。これは、民主主義の根幹に関わる課題である。地域においては、住民個人、事業者、各企業など、「個」を基準にして物事を開始し、そこから全体を推進することが必須克つ唯一の方法になって来た。

5.地域デザインのツール

 地域問題は単純ではない。解は、産業と環境、文化、教育、情報、人材などの多くの要素の複合的な関係性の中から見つかっていくものである。そのために、
  ・地域デザインの基本的な手法が必要 → 思考エンジン;e-Modelの駆使
  ・データ分析と観測にようる現状把握
  ・多様な当事者のワークショップ;知恵の結集
  ・公務員起業家を想起した枠組み
  ・改革効果の予測
などが不可欠の要素として挙げられる。