「スローアートのすすめ」
− The world of slow arts −


手工芸はスローアート

 手工芸は従来クラフトを言われていますが、最近スローアートの代表とも言われ始めました。アートというからには何をアートするのでしょうか。工業的に作られたお土産品はどうなのでしょう。作り手と使い手の心が通じるものがアートであるとするならば、作者の顔が見える関係が重要になって来ます。作り手の心とか作者の顔は、出会いがあってこそ見えて来ます。出会いには、同じ思いを持った運び手の存在も重要になってきます。今後、「手技」というコンセプトで色々考えていきます。

イギリスにもあったスローアートを日本でアレンジする

 その様なアートにイギリスで出会いました。それがラブスプーンです。愛の告白という物語性を引き継いだ作家達がいました。各種プレゼントとして使われるようになり、愛情・敬意・感謝・お祝いなどを表すコミュニケーションの媒体として活用されるようになっています。クリスマスの特別販売は街の広場で作者が自分で行っています。スプーンに彫られた形や模様の持つ意味を伝えながら選択をお手伝いする姿があるのです。

 愛情・敬意・感謝・お祝いなどの気持ちを形に託して表明することは、日本でも行われています。しかし、物語性が薄いものが多いですね。”ほんの気持ちです”、という言葉そのものです。濃い気持ちに縁遠くなってしまったのを少しスローに取り戻したいと思いませんか。イギリスのラブスプーンと日本の漆工芸をドッキングさせる試みが上の写真です。更に加飾を施したモノもあり、物語の意味と込める気持ちを多様化できます。「樹恵麗:jeWelry」に集約して形にしていきますので、ご期待下さい。

漆工芸はスローアートなり

 趣味の漆工房に付けた名前「研悠」の”悠”こそスローの意味を込めたもので、昨今のスローライフやスローフードの動きを先取りした感がある、と自負しています。日本を代表する漆器・漆工芸こそスロー、そしてスローアートの代表ではないだろうかと考える次第です。

 本物の自然材料を使った漆器。地域で手に入る材料を活かし、地域独特の製法・工程を経て創られる物は、地域文化を背負ったモノになります。木地は欅、栃、桜、桂、朴...等々、下地に付ける地の粉は珪藻土などで混ぜる糊は上新粉を煮たもの、上に塗るのは漆の木から採れる樹液を精製した”うるし”。加飾に使う金・銀、貝殻なども然りです。
 うるわしから来たとも言われるうるし(漆)の器はまこと麗しいもので、肌触り・舌触りともにスローな地域の文化をそのままに伝えるものといえます。麗しさをラブに移していくことが出来るよう努力していきます。