<公共政策学会発表の概要>
地域の自律的な発展と地域特性の関連分析
−英国ウェールズを例として−
キーワード:経済発展、地方分権、都市地域政策、政策方法論、自律・自律的
はじめに
21世紀の日本は住民自治を踏まえた地方分権の時代といえる。各地域の発展を目指して住民、企業、自治体がその活力を発揮するには、各々が出来るだけ自立する中で自らの役割を果すことが望まれ、そのための自律性が重要な要素になっている。2001年4月施行された地方分権一括法は地方分権実現の裏づけになるもので、自主性・自立性を謳っている。その背後にある考え方は自律性の発揮と言っても過言ではない。
自律(Autonomy)という言葉自体が地域において如何なる意味を持つのか、明確に説明されていない。例えば、平成3年版地域経済レポート(*1)では地域経済の自律的発展が地方行財政との関連で特集されている。ここで使われている自律的という言葉は、通常の辞書を引けば出てくる(*2)一般的な意味を持っている。平成8年発行された日本経済の情勢報告(*3)において自律的回復の道が議論され、公共投資主体から民間企業の設備投資や個人消費を牽引力とする経済への転換の必要性を説いている。しかし、ここでも自律的という言葉は気軽に使われてはいるが、方法論と可能性には言及していない。
また、地域の自律性をどの様に評価出来るのかに関する研究も充分とは言えない。ただ、地域の自律性の裏には地域の置かれている歴史的・文化的な地域特性みたいなものも存在することが予想できる。本稿は、このような地域の自律性に関して英国ウェールズを事例として取り上げて研究した成果について報告するものである。
研究の概要
2001年9月から2002年2月まで英国ウェールズの首都カーディフに滞在した。その間に、自主的な動機に基づいてであるが、人口約300万人を擁すし1999年から権限委譲により独立した政府としての議会(The National Assembly for Wales)を持つに至ったウェールズ地方における自律的な発展に関する調査・研究を行った。その際、現地の観察と入手した地域統計データに関する多変量解析に基づいて地域の自律性を相対的に評価し、地域の文化的とも言うべき特性との関連を分析することが出来た。
そこでは、上記の各地域構成要素が示す行動様式が地域の発展に明示的かつ支配的であることが抽出され、地域文化との関連が判明した。また、この機会に現地において自律性を示すと考えられる幾つかの事象について観察した結果をキーワード分析することで、"自律"という言葉の持つ意味をより具体的に把握して整理してみた。なお、この分析と上記データ分析とは主旨は同じであるが制約事項の多さから全く同期はしていない。
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