◆…◆…◆ 食 材 と 意 味  目  次  ◆…◆…◆ 
鰯(イワシ)葛粉(クズコ)信太(シノダ)冬瓜(トウガン)穴子(アナゴ)「塩から」ってなあに?鰹(カツオ)ずんだ(豆打・糂汰)
晩秋の魚(その1)晩秋の魚(その2)蓮根(レンコン・ハス) しいたけ(椎茸)饂飩(ウドン)平目(ヒラメ)寄居虫(ヤドカリ)
海鞘(ホヤ)蓬(ヨモギ)

(イワシ)

ニシン科のマイワシ、ウルメイワシとカタクチイワシ科の総称カタクチイワシは 全国の沿岸に住み、太平洋、日本海沿岸各地ではマイワシが多い。

【マイワシ】
体側に7 個の斑点があり、ナナツボシとも呼ばれる。ふつうイワシ というとマイワシをさす。成長名として3cm以下をシラス、10cm以下を小羽ま たはコベラ、13cm以下を中羽、それ以上を大羽という名称が広く使われている コベラは6月ごろが美味だが、中羽以上は8〜10月が脂がのり旬。塩焼き、酢 の物、つみれ等にするほか、めざし、丸干し、みりん干し、等の干物や缶詰にす る。
【ウルメイワシ】
体が丸く、目が大きく潤んだよ うに見える。脂が少なく生食に向かず、主に干物にする。冬が旬。熊本でオオメ イワシ、富山、石川でドンボと呼ばれる。
【カタクチイワシ】
別名カタクチ、ヒシコイワシ、 セグロイワシと言い、地方名としては、瀬戸内海沿岸でホオタレ、、東京でシコ、 シコイワシ、山陰でヒシコイワシと呼ぶ。全長15cm位の小型で、口が大きく開くと下 あごだけがめだつので片口の名がある。生食はあまりせず、稚魚のシラスはタタミイワ シや、関東向けに釜上げシラス、シラス干し、関西向けにチリメンジャコに加工させれる。 成魚は主に小型の物は田作り、小、中型は煮干し、味醂干し等に、大型で脂肪の多いもの はマイワシと同様に調理して食用となるほか、ハマチの餌にされる。
田作り…乾燥魚をからいりし醤油、砂糖、味醂で味付けた料理、別名ごまめとも言う〕
鰯料理の種類とバリェーション
鰯の種類によって多少の差は有るが、刺身、たたき、つみいれ、干物等は代表的 な調理方法で、他にも鰯越後、鰯団子、鰯蕎麦団子、辛煮、マリネ、卯の花鮨、 鰯飯、そして缶詰、鰯油、鰯節、鰯醤油、としても利用度が高い。 私のオリジナルとしては、鰯の揚げ梅、鰯かるかん風はんぺん、ハワイアンステ ーキ、鰯練り味噌、錦鰯、鰯肝合え、鰯蕎麦、塩鰯豆腐、鰯博多道明寺揚げ、鰯 笹汁、蒲焼き、ETC...等の他今の所約30種類位になります。 今日は此の内の何種類かを紹介します。しっかりメモしていって下さいね。
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葛粉(クズコ)

わが国の山野に自生するマメ科のつる性多年草クズの根から得られる澱粉 の一種クズ澱粉とも言う。10〜2月頃に葛の根を採取して打ち砕き、これを水に浸して澱粉を洗 い出し、沈澱法による精製を繰り返した後日陰乾燥をして製品とする製品は、小さく砕いても角ば った形に割れるものが良品。
産地は奈良県(吉野クズ)、福岡県(筑前クズ)、三重県(伊勢クズ)、福井県(若狭クズ)、ETC クズ粉は昔から良質のデンプンとされ、他のデンプンと比べると高価である。高級和菓子の材料 や、料理ではクズ素麺、や胡麻豆腐等に使われる。また、他の澱粉としては片栗粉、馬鈴薯澱 粉、コーンスターチ、などは良く知られている。
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信太(シノダ)

「きつね」と同じく油揚げを用いた料理につける名称。きつねと信太をもじってこんだともいう。 キツネが油揚げを好むという言い伝えから、葛の葉ギツネの伝説で有名な信太の森( 現大阪府和泉市)の名を借りて呼んだものである。「いなりずし」を「しのだずし」、「きつね うどん」を「しのだうどん」などとよび、油揚げで巻いた料理を「しのだ巻き」と呼ぶ。
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冬瓜(トウガン)

瓜と言うと何が心に浮かびますか?・・・ 胡瓜、白瓜、青瓜、縞瓜、隼人瓜、素麺瓜、苦瓜(れいし)、 糸瓜(へちま)、冬瓜(とうがん)、南瓜(かぼちゃ)などは野菜として用いられますが、西瓜(すいか)、 メロン各種などは果実として用いられているようです。しかし真桑(まくわ)瓜や蕃瓜(パパイア)などは 幼果時には野菜として用いられ、塾してくると果物として食用にされます。野菜瓜は広く漬け物や生食、 煮物、炒め物に利用され、果実瓜は多汁質で甘味があり生食される。これらはいずれも外来種で元来日本 に野生するスズメウリ、カラスウリ、アマチャズル等は一般には食用とはしない。本日の献立はトウガン を扱いますが、このトウガンは真夏に最盛期を迎えるというのにどうして冬の瓜と書くのでしょうか?  ちょっと考えると変ですよね。 トウガンは何処から来たのでしょうか、どんな種類があるのかなー?・・・
辞書によると、
 ウリ科のつる性1年草.平安時代には栽培が行われ、加毛宇利(かもうり)と記せられている。別名 トウガ。インド、東南アジア原産の果菜である。亜熱帯、熱帯では夏の重要な野菜である。促成・早期栽培 用では、小冬瓜、長冬瓜、早生冬瓜がある。小冬瓜は果実が扁円形緑色で白い斑点を有し、長冬瓜、早生冬 瓜は長円形の果実で果色は小冬瓜に近い。在来種の果実は、路地栽培用でひきうす形、緑色の地に淡緑色の 斑点があり、白い粉を生ずる。その他台湾・琉球種などは、長円形の大果で、果実は緑色に白い粉があるも のとないものがある。主産地は、東京、埼玉、茨城、沖縄。冬瓜自体は水分がほとんど(96%)で固有の 味に乏しいので、レシピとしては味付けする調理法が主である。煮物、あんかけ、酢の物、寄せ鍋、クリー ム煮、スープ、蒸し物や漬け物、砂糖漬けなどに。果肉、種ともに民間薬として腎臓病、高血圧のための利 尿剤として使用する。・・・
とあります。 また、現在のように冷蔵設備のない昔は常温での保存性が高い野菜として、夏から秋に収穫をした冬瓜を冷 暗所に保存しておき、野菜の少なくなった冬に利用したところから、トウガンを冬の瓜と書く様になったと か・・・。
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穴子(アナゴ)

私が料理店をしている時の事ですが、穴子はよく鰻と間違えられこちらの方から注訳を加えない限り穴 子とは思われず、営業の都合としてはあまりこちらから説明を押しつけることもできず、かと言って誤解され たままでおくこともいささかしっくりしないし、どうしたものか?、と悩んだことがありましたが、活きた姿 も形状としては良く似ていますので、ましてや開いて蒲焼きなどにしたら見分けが付かないのも無理はありま せん。穴子も鰻も生まれたときは海に居ますが、成長するとともに川に登り沼や池で生息するのが鰻で、一方 穴子はそのまま海で生息し成魚となります。見た目も気を付けて見るとその違いははっきりと理解できて、特 徴としては背鰭と体側に、尾鰭にかけて白い星のような模様がならんでいます。鰻はウナギ科、穴子はアナゴ 科として分類されており、普通はマアナゴを言います。
昼は海泥低に潜っていて夜になると行動し始める夜行性で、底引き網や延縄で漁獲されます。日本各地の内 海や内湾から朝鮮・中国の海域に産します。種類は、マアナゴ(90Cm)、ゴテンアナゴ (60Cm)、 ギンアナゴ(45Cm)、クロアナゴ (140Cm)、キリアナゴ (90Cm)等が一般に食用とされる。 マアナゴは暗褐色に白点が体側に並んでいるのが特徴。味は一番良く、次いでゴテンアナゴ、その他の種類 は劣るので主として練り製品の原料に使われる。30、40Cm位の物を開いて蒲焼きにするか、八幡巻き、 天ぷら、鍋料理、鮨種、茶碗蒸し、酢の物味醂干し、そば種(穴子南蛮)、穴子丼、穴子飯(広島県名物)、 その他国内はもとより穴子の利用範囲は多く韓国、中国料理その他の国の料理等にも利用度は見られ、かた や高級でありながらとてもポピュラーな素材として広く親しまれています。鰻よりも淡泊なところが賞味さ れ、呼び名も東京ではハカリメ、東北、山陰ではハモ(鱧とは別物)、関西では大きいものをベイスケと呼 んでいます。一年中味は変わらないが特に7,8月頃が美味しい時期とされています。鰻と並んでビタミン Aが豊富であることもつけ加えておきます。
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「塩から」ってなあに?     

ひとくちにシオカラって言うけれどシオカラって何だろう?・・なんて考えたことはありませんか? 昔から保存方法として食品を塩漬けにする事は常道ですが、ただ塩漬けにしただけならば鯵の干物から、塩 鮭、たらこ、練り雲丹、塩鯖、しょっつるのハタハタ、白菜漬け、沢庵、等々その種類は数え切れないくら いあります。塩辛とは魚介類の肉や内蔵、生殖巣(主に卵巣)等を塩漬けにし、自己消化によって発行熟成 させた水産加工食品を言い、一種の酵素の働きで蛋白質がアミノ酸に分解され、独特の旨みが形成される。 イカの塩辛が代表的でその他には、雲丹の生殖巣で作る雲丹の塩辛かつおの内蔵で作る鰹の塩辛、同じ鰹で も肝臓を含まない腸管だけで作る酒盗、鮎の内蔵や生殖巣で作るうるか、なまこの腸管で作るこのわた、鮭 の腎臓(背わた、血わたともいう)で作る、めふん(アイヌ語のメフル<腎臓の意味>がなまったもの)、 くじらの主食となる沖アミで作るアミの塩辛、などがある。うるかは@切り込みうるか(頭と鰭を除いたア ユを内蔵ごと細かくしたもの)、A子うるか(卵巣)、B白うるか(精巣)、C苦うるか(内蔵全部)、D 泥うるか(内蔵の砂や泥を洗い流さず用いる)、E子交じりうるか(内蔵と卵巣)、などがある。
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(カツオ)

<種類>
紡錘形で、断面は円形に近い魚です。地方によっては、ヤタ、マガツオなどと呼ばれ、 黒潮海域の水温が16〜30゜Cくらいのところに生息していて、季節によって移動し、日本へは初夏のこ ろ黒潮に乗って北上してきます。類似の魚にソーダガツオ、キツネガツオなどがあります。旬は日本列島に沿 って北上しますので5〜6月頃が伊豆、房州沖、7〜8月頃が金華山沖、9〜10月頃が北海道となります。 北上したこの後再び南へ帰る頃捕れる鰹は、皮は固いが脂はのっていて、濃厚な味をしているので、俗に「モ ドリガツオ」とか「クダリガツオ」と呼ばれて珍重されます。全長が1mになるものもありますが、日本沿岸 では50cmぐらいです。
<特徴>
比較的臭みの強い魚で、鮮度が落ちてくるとともに臭みは強くなりますが、この原因は 血合いが多いためだと言われています。肉はしまっていて堅く、味は濃厚です。
<栄養>
蛋白質、脂肪、リン、鉄分が多く含まれていて、旨味の成分であるイノシン酸も多いの で、加工品としてかつおぶしとして、だしをとるのに使われたり、なまりぶしにしたりされます。
<調理>
部位によって使い分けると無駄なく食べられます。刺身はもとより、さっと「わら火」 であぶって冷水に浸したたきにしたり、味を濃いめにした角煮やあら煮、しぐれ煮、粉節煮、照り焼き、生姜 焼き、若狭焼き、ムニエル、赤ワインやピューレーなどの煮込み、酒で蒸してからフレークにしてサラダにし たり、それをまたそぼろに煎ってふりかけにしたり、内蔵はシオカラや酒盗のような絶品の珍味にしたり、今 日の献立にあるようにその工夫次第ではこれ程幅のある素材は数少ないでしょう。頑張って是非自分の逸品を 生み出して下さい。
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ずんだ(豆打・糂汰)

豆打と書いて「ずんだ」と読む、東北地方に伝わる枝豆料理。 その由来として幾つかの説があるようですが、所によって同じものをジンダとかジンダンとかいわれいるよう です。ひとつには昔から徒然草にも「後世を思はん者は、糂汰一つも持つまじきものなり」とあるように、こ の糂汰(じんだ)とはぬかみそなどを意味し(ささじん)などとも言ったそうで、五斗味噌(つまり豆2斗・ 糠2斗・塩1斗を搗き合わせて作るからいう)や醤油かすを加工して作ったものや、麹と糠をまぜ塩を加えて ならし、酢や酒を加えて用いたものなどがあったようだが、このじんだがなまってズンダとなった。と言う説 と、甚太という人がはじめて作ったからだと言う説と、仙台の伊達政宗公が戦の時陣太刀の柄を使って豆をつ ぶした所から来たと言う説と、色々ありますが料理として考えられるにはおそらく、豆打(ずだ)がなまって ズンダといわれるようになったのだろうと言う説が最も自然でしょう。
いずれにしてもずんだとはゆでたえだまめを擂り鉢で摺り潰したものを言います。 このジンダに砂糖、塩、少量の醤油などを加えて和え衣を作り種に和えればズンダ和えとなり、ジンダ和えと かジンダン和えとか言います。なかでも茄子のジンダ和えなどは良く知られていますし、また昨今特に有名に なってきたものにズンダ餅があります。つきたての餅にズンダの衣を絡めたものでそのあざやかな緑色と、い かにも夏らしい豆の香りが特徴で、それを知る者の味覚をそそります。
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晩秋の魚(その1)

日本は四季がハッキリしていて食べ物に旬があることはすでにご存じの通りですが、どの魚 にも、一番うまいと言える時期がある。旬のない魚はない。しかしここに一つだけ例外がある。鰻には旬がな い。だから一年中うまい。このうなぎも強いてしゅんを決めれば九月下旬から十月にかけての「下り鰻」とよ ばれるときである。産卵のために、これから深海めざして長い旅路につこうと言う鰻だから、たっぷり身体に 栄養をつけている。これは鰻のなかの白眉、いちばんうまいうなぎである。
素人がうなぎを料理しようとしても実に難しい。だいいちつかめない。うなぎは自然の状態ならそれほどでも ないが、苦しめると、あのヌルヌルの体液を粘液腺からたくさん出す。このヌルヌルは大変精のつく、栄養の あるものなのである。鰻自身もそれを出し尽くすと仮死状態になってしまう。このヌルヌルをわざと出させる。 大きいびんにうなぎをいれ、棒で突き続けると、うなぎはどんどんヌルヌルを出すこの鰻を手でしごくと、3 尾から4尾でコップ一杯のヌルヌルがとれる。これをぐっと飲んで遠泳をやって、優勝したチームもあったほ どだ。このヌルヌルを乾かし固めたものがアルチゲンという肺炎の薬である。素人が鰻を殺すと、このエキス を出してしまうから強壮剤としては二等品になってしまう。うなぎが呑気な顔をしているときにあっという間 に苦しめずに裂いてしまえば、エキスを出す暇がないから、精力を失わぬうなぎを食べられる。名人なればこそ である。
歌人で医学博士だった斉藤茂吉は、生前の日記に、弁当の鰻丼を食べると帰りに明治神宮の木々の緑が目にハ ッキリ見えると、鰻の効果を書き残している。が、鰻の食べ過ぎで、ついに下痢をしてしまったと言う話もあ るから、やはり何事も程々にすることが肝心の様だ。
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晩秋の魚(その2)

前回の鰻に続いてはと言うと、やはり鮎ということにになるのかな・・・・。 鮎は体長5〜6センチのものを「ノボリアユ」とか「ワカアユ」とか言って喜ぶが、次には子を持った鮎を「 コモチアユ」と言って珍重する。鮎は十月から十一月ころに川の上流で産卵してから、川を下がってくる。こ の下がり鮎を「落ち鮎」と呼んだり「サビアユ」と言って名残の鮎として食べている十月は落ち鮎の時である。
次に、蜆(しじみ)もまたうまくなるもののひとつです。寒さに向かった時のうまさである。
泥の中に生息するウナギとかドジウ、そしてシジミ、こうした食べ物が体力をつけるのによいと言われている のは、なにか土と生命、そこに神秘的なものがあるようである。土の中の生き物を食べることが、人間の寿命 を永く保たせる事になり、健康にもよいといえそうですね。
ところで健康食品と言えば、以前にも学んだように、イワシがありますが、イワシは漢字で魚ヘンに弱と書か れるほどの憶病者です。敵の目をあざむき、おのれを大きく見せようと生まれつき群を作るのが巧い。イルカ などの大きな魚の攻撃を防ぐため、何千何万と言う数の鰯が実にきれいな球体の群を作って泳ぎ回るのだそう です。
イワシと言えば思い出されるのが源氏物語でおなじみの紫式部の話です。 式部は鰯が好物だったが、当時の上流階級の人たちは、鰯を卑しい魚と軽んじ、ほとんど口にしなかったそう です(?弱い魚だからかなあ?)。 夫の留守をよいことに、密かに鰯を賞味した式部は、口を拭ってそしらぬ顔をしていたが、その匂いまでは隠 すことが出来ず、帰宅した夫に早々感ずかれてしまった。夫、左衛門宣孝は、むげにいやしきものを好み給う ものかなと、たしなめたが、そこで黙って引き下がるような式部さんではない。即座に、 日の本にはやらせたまふ石清水(いわしみず)まいらぬ人もあらじとぞ思う とお詠みあそばされた、ときたもんだ。つまり、石清水八幡宮にイワシと言う言葉をかけて、そのお宮には誰 でもがお参りするように、鰯だって食べないひとはないでしょうよという意。これにはさすがの夫も参り、そ れ以後は、夫婦仲良く鰯をお食べあそばされるようになったそうですよ。そんな所から、鰯のことを「紫(む らさき)」というようになったそうです。
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蓮根(レンコン・ハス)

ハス堀りは、手足は勿論、顔や頭まで泥んこになってなかなか骨の折れる仕事だが、傍目にはどこかユー モラスな感じがする。ハス田によっても違うが、だいたい膚色か乳白色で細長い部分の少ない、小太りのもの が良品である。
蓮という字は、その花と実が相連なって出るところからできた字である。蓮根という熟語は日本で作ったもの で、蓮の実が蓮である。ハスは古名を「ハチス」というが、これは花後、果実を納める漏斗状の花托の形が、 蜂の巣に似ている所から命名されたと言われている。
原産地は印度、あるいは中国であるらしい。中国では揚子江流域に多く、昔から愛蓮の詩がうたわれ、南画 や陶画のテーマにもなっている。日本に渡来した時期ははっきり しないが、「常陸風土記」(713年)には記してあるから、 かなり大昔から栽培されていたらしい。,br. 万葉時代には、ハスは珍しいものであったらしく、「はちす葉はかくこそ有るもの有吉麻呂(おきまろ)が家 なるものは芋(うも)の葉のあらし」という歌が残っている。
ハスの花は紅と白がある。紅花の蓮根は俗に「みはす」といい、根は大きいが粘りが少ない。白花の蓮根は通 常「もちはす」と称して、根は小さいが粘りが多いのでおいしい。関東地方のハスは品質が優れている。九州 地方は大きいものを産するが、味はやや劣る。そこで大きな穴に芥子を詰めた「芥子蓮根」なるものが創り出 されたわけである。黄色、黒褐色のものは不良品で、細長い部分の少ない、小太りのものが良品である。ハス は四、五月に種蓮を植え付け、九月はじめから穫りはじめ、翌春五月までが収穫期。近年は、蓮田の上にビニ ールをトンネル状にかぶせて、促成栽培が行われるようになり、三月に植え付け、七月にはもう収穫されるよ うになった。
ハスの一番美味しい部分は、芽に近い節、俗に芽節と呼ばれる部分で、ここは肉が厚くてひときわ美味しい。 ハスを切って空気に触れると黒くなるが、これはその成分である鉄分とタンニンによる。鉄分は貧血の人に良 く、タンニンは止血作用をもっている。搾り汁が良いようだ。この搾り汁は、他に咳止め、血圧の上昇予防に も効果がある。また、便秘にも良いようだ。

参 考
南画<なんが>
正しくは南宗画といい、中国二大流派の一つで唐の王維を祖とし、巨然等を 経て元の王蒙らによって大成された。文化画派の系譜で柔らかい描線を用い、主観的美による山水画を特色と する。わが国では江戸中期から受け入れ、池大雅・与謝蕪村らが有名である。
常陸風土記<ひたちふどき>
一巻による古風土記で、713年(和銅6)の詔によって撰進 され、常陸国<ひたちのくに>(現茨城県あたり)11郡の地誌をいう。
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しいたけ(椎茸)

鎌倉時代のはじめ、南宗に渡った道元が、最初に出会った人物は、椎茸を買いにわざわざ5里の道を日本 船まで歩いてやってきた一老僧だった。この頃、日本の椎茸が中国へ輸出されていたのである。
日本の古い記録では、仲哀天皇の香椎宮とか万葉集に椎の木の歌が幾つかある。足利時代には盛んに食用 にし、精進料理のダシであった。  香菰・香菌とも書き、シイ・ナラ・クヌギ・クリ・シデ・カシなどの濶葉樹のやや腐りかかったものに寄生 する。発生する時季によって、秋子・春子・夏子・冬子と言う。
台湾の新高山やニューギニアのスカルノ峰などが原生地で、これらの高い山から風に乗ってやってきた。 日本では熊本、大分、宮崎、四国、静岡それに北海道の帯広原野に自然の椎茸が生えた。風の加減、吹き溜ま りといったことも、胞子の多く落ちることに関係があったのだろうと考えられる。
椎茸の胞子の働きは実に不思議である。江戸時代の人たちも、体験的にわかっていたようでたとえば、椎 茸を食べて酒を飲むとひどく酔うといったことである。酔うために酒を飲むというが、少量で酔ったのでは楽 しみが少ないと考えてか、酒の肴には椎茸はいけないと禁じていた。今は、この効力を利用して日本酒の瓶の 中に十個とか十五個とかの椎茸を入れておき、その酒を燗して飲むと、普通3本の晩酌をやっている人は、2 本で酔ってしまう。
またこの胞子には、きわめて強力な抗ウィルス性の物質をつくらせる働きがある。インフルエンザ、癌、 白血病など、ウィルスで起こる病気に効くともいわれる。椎茸の酵素、寄生する菌などの働きで、コレステロ ールを除去する。また、血圧を下げるエリダテニンというアミノ酸が含まれている。その他疲労回復、皮膚の シミ取り、贅肉を取るといった効果もある。椎茸を粉末にしたものは甘い味がする。これはアミノ酸の働きで、 素晴らしいダシになる。ビタミンB12、Dも多い。椎茸が健康によいというのは、メラニン色素が多量に含 まれているので、これが内分泌の働きを盛んにするからであるといわれている。さらに有効成分は200度の 熱に耐え、煮ても揚げても破壊されない。他の材料のビタミン類も、椎茸と一緒に料理すれば、こわれないと いわれ、栄養的に難しいレシピには実にエスケープメンタルな食材なので、この手法はプロ間でも利用されて いる。
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饂飩(ウドン)

日本の麺類として蕎麦(そば)に対して饂飩(うどん)はかなり古くから親しまれてきた食品ですが、 その昔(奈良時代の頃)唐の国<現在の中国>から渡来した菓子の1つに“混沌”(こんとん)とよ  ばれる,小麦粉の皮にあんを包んでだんごにして煮て食べるものがありました。これが食べ 物と言うことで文字の偏をサンズイから食偏に改められ“ 飩”(こんとん)となって世に普及し、これ が熱く煮て食べるところから“温飩”(うんどん)となり、さらに食偏にして“饂飩”(うんどん)に転 じ、これがつまって現在の“うどん”と呼ばれるようになったとか... そもそもうどんは小麦粉(強力粉)を味の薄い塩水で充分にこね,麺棒で薄くのばし,折り重ねて細く切る。 この細く切ったものを昔は「切り麦」と呼び,熱くしたものを「熱麦」と言い,冷やしたものを「冷や麦」 と言っていたが現在では「うどん」と言う名で統括されている(この辺は以前麺類の所でも学びましたね) 。かくて時が過ぎ、各地に広がったうどんの文化も各地方の特色や土地柄,それに制作者たちの創意工夫を 取り入れながら固有の歴史となり,その呼び名も シッポク,カマアゲ,などの料理法による違い、ヨモギ、 ワラビ、などの生地の中に添加する他の素材による違い、イナニワ,サヌキ、などの土地柄特色による違い, ウンメン,ソーメン,ヒヤムギ,などの太さによる違い等々...その上さらに麺の上に載せる具の種類や 鍋料理などの食べ方の違いを考え合わせると多種多様のものがあり,その用途によって使い分けることが料 理する者の課題となってきました。 今日の饂飩は元来のものに少し手を加えて現代的な麺のバリエーションとして私が工夫をしたオリジナル作 品です。そのまま食べるのも良いし,炒めたり焼いたり煮たりして食べるのも良いし,シチューやカレーの 副食品として食べるのもいいと思います。それにこのまま冷凍にしておけばいつでも腰のある麺として食べ られます。試して下さい。
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平目(ヒラメ)

始めにお詫びをしておきたいのですが、先月号では料理と有名人の話をする予定でしたが、食材をもっと 知って欲しいので、その件は延期して今回は正月の魚の代表である平目について話す事にします。 さて、1月の魚と言うと、平目、鰤、真鯛、黒鯛、甘鯛、白魚、鮪、鱚、鮭、鰆、蟹、蝦、烏賊、鮒、公魚、 諸子、寒鯉、ヒガイ、蛤、牡蛎、平貝、海鼠、IJ、真魚鰹、河豚、鮟鱇、虎魚等がありますが、平目の美 味しい時季としては寒い内とされています。市場には何時も在るようですが走りは10月からで、脂がのっ て一番美味しくなるのは12月と1月止まりです。俗に「3月平目は犬も食わない」と言われていてその頃 になると腹に子を持っていてだんだん不味になるからである。
平目は産地を挙げる必要の無いほど、北海道から九州沿岸まで各地に棲んでいる。東京市場の入荷の状況を 調べてみると、福岡が一番多く、全体の三割を占めている。次いで千葉、山口、福島、茨城、長崎の順にな っている。この時季は入荷も多く美味しくって安価のようです。これも料理する時の重要なヒントになりま すね。
平目は方言が多く、北海道でテックイ、東北でオオグチガレイ、関西でオオグチガレ、徳島でホンガレイな どとよんでいるようです。この方言から判断しても、以前に授業でも学んだ「ヒダリヒラメにミギカレイ」 の区別よりも口の大きさによる区別の方が確かかも知れませんね。
ヒラメの利用法は多く、刺身、その物の吸物や椀種などに、またフライや天麩羅など各種の揚げ物、蒸し物 の種、鍋物、焼き物、そして極めつけは縁側(上下の鰭の所に付いている肉)の煮物である、これは絶品と されている。また栄養価もあり味に癖も少なく、消化吸収も良いので、近年は病人や病後、また産後、幼児 や老人の保健食として、また肥満対策の痩健食として白身魚が注目されていますが、その中でもヒラメはや はり高級魚の風格もさることながら、白身魚の王者と言えるでしょう。
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寄居虫(ヤドカリ)〜タラバ蟹との関係?

やどかり(宿借、寄居虫)ってカニ? エビ? それとも何者?
蟹でもないのに偉そうな鋏を持ち、貝でもないのに固い家に住み、勝手に拝借していて気に入らなくなると 強引にもさっさと住み替える。昔から居候や厄介などの代名詞にも使われてきたヤドカリくん、古名ではカ ミナと呼ばれ別名ゴウナとかオバケガイ等とひどい名でも呼ばれて、今も昔も洋の東西を問わず、子供達に は玩具代わりとしてなかなかの人気のようである。
生物学上の分類として、人や魚などには存在する脊椎を持たない、無脊椎動物の一門でその中でも節足動物 甲殻類(綱)に属し、この点で蛛形目のサソリやクモとは別種である。また蜘蛛は小さいながらその姿が蟹 に似ている所からササガニとも呼ばれ4対の脚が有り、蟹とは一対の鋏の爪を除けば同じである。また、蠍 (さそり)には鋏もあり4対の脚もあり、節足動物としても同じであるが、甲殻綱としては含まれない。 甲殻綱十脚目の中に蝦(海老)や蟹がある。蝦は長尾亜目に属し伊勢海老やアメリカンロブスター、ざりが に、ウチワエビ等の歩行類と、車エビ、コウライエビ(大正蝦)、ホッコクアカエビ(甘蝦)、桜蝦、手長 蝦(川蝦)、牡丹蝦等の遊泳類とに分類される。英語では大型の歩行類をロブスター(Lobster)、遊泳類を プローン(Plawn)、小型の蝦をシュリンプ(Shrimp)と呼び方を変えている。漢字で海老と書くのは髭が長 く腰を曲げているところから老人になぞらえてこのように書いたそうだが、そのためか長寿のものとして古 来から料理や飾り等の吉事に使用されてきた代表格である。
また蟹は短尾亜目のものが大体で、鱈場(たらば)蟹、毛蟹、楚(ずわい)蟹、花咲蟹、がざみ、藻屑(も くず)蟹、沢蟹、旭蟹、高脚(あかあし)蟹等は食用として良く知られている。ズアイガニ(楚とは若い枝 々の意)は松葉蟹とか越前蟹とも言われ、雌はタラバガニ、セイコガニ、コウバクガニ等と呼ぶこともある。 ガザミは行動形態からワタリガニとかその体型からヒシガニの名で知られている美味の蟹の代表で、料理法 も数多い種類である。
身体に毛が有る種類としては全体に赤い毛の毛蟹と鋏に長い毛がある藻屑蟹である。 縦長の変わった体型の旭蟹は温暖な地方で捕れ、長い脚の高脚蟹と並んで高価で珍重されている。蝦は前後 に歩くが蟹は横歩きするのも特徴といえる。 また、鱈の漁場で捕れるという鱈場蟹や根室花咲半島近海で捕れる花咲蟹やヤシの木に登ってその実を食べる と言うヤシガニ等は先の蟹類とちょっと種類が異なる。美味な点と高価な点は他に引けを取らないが一対の鋏 爪の他に脚が三対しかない様に見えるのである。第四脚は小さく目立たない。これらは甲殻類の中でも異尾亜 目と言われ、実はヤドカリの仲間なのである。蟹類は四対の脚で横這いするが、ヤドカリが歩くのに使う脚は 前の二対だけで後の二対は小さく横歩きはしない。また性格は用心深くきれい好きで義理堅い所があって、ど の種類のヤドカリも、何でも良く食べる割には、大家さんである生きた貝を殺して食べたり、引き出したり は決してしない。あくまで共存するためにも、空く迄待つのである。しかし空き部屋の争奪戦は弱い方が挟 み出されるのである。いよいよ入居する時は脚でよく調べてから掃除をし安全を確かめてからお腹から体を入 れて収めるというなかなかの用意周到である。 食用としてのヤドカリは小さいものを集めて塩辛にしたり、大きなものを焼いて食べたりするが、蝦や蟹のよ うに沢山捕れないので、美味で珍味ですがあまり一般的ではありません。 潮の引いた波打ち際の浜で、時を得たかの様に気ぜわしく動き回るそのあどけない姿は人間との関わり合いを 見ても、ペットとしてどれだけ多くの子供達に親しまれて来たことでしょう。
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海鞘(ホヤ)

ホヤは、紀貫之によるわが国最初の仮名文日記として知られる土佐日記にも「ほやのつまの飯鮨・・」 と詠われているように、わが国では千年以上前から食用としていたらしい。生物分類の系統的な位置は 長い間不明であったが、約110年前にロシアのコヴァレフスキーによる「発生の研究」によって、脊 索動物、尾索類のほや目として扱われるようになった。海底に着生し、セルロースに似たチュニシンと 言う物質からなる厚い独特な被嚢で包まれている動物で、海藻のように岩などに根を生やして付着して いる姿は、陸上のヤドリ木に似ており、このヤドリ木の事を方言でホヤとよぶ所があって、大木にその ホヤが根をはって生えている姿に良く似ているとこから、この動物をホヤとよぶようになったそうである。
ホヤ類はカタツムリのように雌雄同体で卵生だが、無性的な出芽生殖をすることもあり、胞胚・嚢胚を経 て透明なおたまじゃくし型幼生になり浮遊生活を送るが、やがて口部の吸盤で岩礁に付着して尾が再吸収 され変体をとげ固着生活を営むのである。これらは単体のものと群体のものとがあり日本の近海で約三百 種位、相模湾からだけでも百種以上知られており、このうち食用になるのは東北(秋田、三陸)・北海道 に多く分布しているマボヤ、アカボヤ、スボヤなどであるが、このうち最も一般的で、美味なものはマボ ヤであり、三年もので7月〜9月上旬が最も美味で、これより若いものは身が柔らかくべとついて旨くな い。牡鹿半島周辺では5月15日から2ヶ月間潜水夫2名が1舟で天然ものは1日に1万個漁獲している が、舟の上から剥ぎ棒での漁獲は1年中している、また人気の上がってきた近年では養殖も盛んである。
体長は15cm、直径10cm程度になり、外皮は赤みを帯び上部にいくつかの乳頭状の突起と入水口と 出水口とがある。生きの良いホヤは手で触れると外皮が張って全体が玉の様になる。この時この口を切断 し、中から透明な液体が出てくるのでそれをこぼさない様に別容器にとって置き後に利用する、次に外皮 を除いて筋肉を生で食べるのが一番美味であり雲丹の味と赤貝の歯触りと海鼠の香りがすると言われてい る、また筋肉と内蔵を酢の物や塩辛、鍋などにしたり、また白焼きにして吸物や煮付けで食べたりするが、 この吸物はツルの味がすると言われており東北の人には喜ばれる。外国でも地中海沿岸地方では食用にし ている。しかし特有の風味を持っているので、生まれて初めてコーラや餃子を口にした時の様な、ある意 味では新鮮な感覚ではあるが慣れないと食べにくい人もいる、しかし慣れるとやみつきになる人も少なく ない。栄養価は消化吸収の良い蛋白質であり、脂質や糖質は少なく、ビタミンB群やC・カリウム・カル シウム・ナトリウム・リン・鉄分などが含まれていて、近年の情報によるとカロチンなども含まれており、 昔から滋養強壮に効果があるとされ病後・産後やダイエット後のケア食としても高く評価されてきた。 この他のホヤ類としては、エボヤ、シロボヤ、ユウレイボヤなどは牡蛎やアコヤ貝などの筏に付着して、 貝の生育のじゃまをする。これらは1個体がそれぞれ単独に生活しているが、キクイタボヤの類は群体を 作り、1個体としては小さいが体の構造は単独のものと変わらない。コバンイタボヤの様に海藻の表面に 広がっているものや、カンザシボヤのように長い柄を持っている種類もある。ヒカリボヤは群体の長さが 20cm位の円柱形で透明、海面近くを浮遊し、蛍烏賊の様に光を放つので有名である。先代の天皇であ る裕仁親王の採集にかかるホヤ類は《相模湾産海鞘類図譜》として出版され、世界的にも良く知られてい る。
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(ヨモギ)

 日本の食文化の原点である土器の鍋による「料理」と言う 文化を発明した我が祖先は更に漬け物と言う発酵食品の料理文化を発明し、他国の料理文化には存在しない味 の世界を広げて行くのです。旬の山菜や野菜や海藻などの浅漬けはいずれも、ビタミン、ミネラル他人間に は欠かせない栄養素を含んでいて、強い生命力を補強してくれる正に現代にこそ必要な優れた食品なのです。 西洋の四味甘い、辛い、塩っぱい、すっぱい中華の五味はこれらに苦いが加わり、更にお 茶や蕗のトウの渋みと昆布や椎茸の旨味が加わって日本の七味となりますが、日本料理の「味の演出」の原点はいかに米 の旨味を引き出すかから出発したと言われ、このように味を繊細にそして深いばかりか広く捕らえられるの も日本の山海四季による豊かな自然環境と、そこを卒無く丹念に考えながら工夫を繰り返してきた古代から の先輩のメッセージの贈り物と考え、これからも私達は自然の恵みを利用する上で大いに役立て育んで後輩 に残したいと思います。
また、昔から医食同源と言いますが古代の長生き食として現代にも通用する食物(@胡麻 A枸杞 B松葉 C昆布 D椎茸 E柿 F蓬 G山芋)の八つ有ることは既にご存知の方も多いと思いますが、今日はこの中のヨモギについて お話します。
 ヨモギは別名「医草」とか「千年草」と呼ばれ、強力な薬効成分持ち、濃厚な葉緑素と芳香の強い精油、 ビタミンA、B1、B2、C、蛋白質、カルシウム、鉄、カリウムと驚異的な内容です。ヨモギは「魔除け の霊草」として古代から神聖視されてきたが、古代中国の祭事には、祈祷師が両手にヨモギを持ち、振りか ざしながら乱舞して悪霊を追い払い、日本でも戸口にヨモギの束をつるし「厄避け」にしました。ヨモギの 「ヨモ」は四方(ヨモ)で東西南北だから宇宙のあらゆる方向を意味し、「ギ」は気功の気だから宇宙、自然、 生命等のエネルギーを指しています。つまりヨモギは、それが存在する所に、成長するまでに天上地下から 集めた自らの魔力とも言える強力なエネルギーを放射してくれているのです。仙人はこれを食べるばかりか、 敷物にしたり、枕にしたりして、霊気とも言える力を140億個の脳細胞を始め身体全身に吸収させること で、生命力や神通力の補強をはかったといわれます。
日本の伝統文化として今日でも3月3日の雛祭り には、女子は変わり目の変調に備えて霊気と栄養を採るために草餅として食べ、5月5日の端午の節句に、 男子は菖蒲と併せて入浴する事で霊気の補強はかります。
モグサは良く成長した葉を乾燥させ揉みほぐすと綿のような繊維質が残ります。これがお灸の材料として使 われますが、ここにもヨモギの霊気を借りて体内の陰気(邪気)を追い出し陽気(元気)を補強するのが目 的です。その他ヨモギにはカリウムが多いので体内の過剰塩分を排泄し高血圧に有効だったり、豊富に含ま れる葉緑素には、潰瘍の治療促進や浄血作用があったり、チフスやブドウ球菌等の増殖を抑えインフルエン ザウィルスを強く抑える働きや香気の主成分(チオネールという精油)は虫よけの効果が有ったり、こんな に人類に貢献できる素材なのに、沢山あるためか、以外と粗末にされているのが現状です。どうぞこれを機 に蓬にもっと親しんで、上手に利用する事をおすすめします。
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