医食同源@…鰯(イワシ)
最近、医食同源という言葉を耳にする機会が多いと思いますが、これは毎日摂る食事こそが本当の意味での医療で
あって、医者だ薬だと頼る心は医療としても本来の目的ではない、と言う事だそうです。そこで私達の身近にある
食材の中から代表的なものや基本的なものを選んで、こんな時にはどのように調理したら、最も合理的なのか?を
少し考えて行きましょう。今日のテーマは、今後たぶん世界的に不足して高価な魚になるだろうと言われている鰯
について学びましょう。鰯は以前(H5,6,20/H7,10,22)にも学習していますが、今回は少し視点を変えてみました。
紫式部は大の鰯好きであったと言いますが、ここで鰯の諺(コトワザ)をいくつかあげてみましょう。
「いわしも洗えば鯉の味」というのがあります。昔は冷蔵庫はもちろん冷凍食品など有りまんから、何をするにも生き
の良い魚を選ぶことが第一条件となります。魚によらず悪くなりやすい物は早く売らなければならないので、そこ
に安くなる条件があります。その上収穫が多ければ更に値落ちする条件が重なる訳で、こうなると当時豊富に獲れ
た鰊や鰯などは肥料か餌用に扱われ、とても悲しいけど魚の善し悪しより買い手市場の都合で値打ちが決められて
しまうのは昔も現在と変わらない様ですね。鰯はそんな世の中でもどこかに本来の値打ちを認められていたので
す。最近はその巧妙な味や、強力な栄養源として見直され値打ちもグンと上がり、なんだか鰯が胸を張っているよ
うな気さえします。
「いわしの煮付けにゃ、生姜と梅干し」これは諺と言うより、受け継がれてきた日本の知恵でしょうか、生姜は臭い消
しとしてばかりか、食あたりをふせぎ、精油成分のジンギベロールやジンギベレンには発汗保温作用があるので昔
から風邪薬として利用されてきました。そのうえ生の生姜には蛋白質分解酵素が含まれていて、ふっくらと柔らか
く仕上げたい時には、生の時から生姜汁に漬けておくと効果的です。更に梅干しには青魚の生臭みを取る成分が含
まれているのです。鰯などの青魚の生臭みはアルカリ性のトリメチルアミンと言う物質で、酸性の梅干しを加える
事で中和させることになり、生臭みが取れると言うわけです。しかも酢は肉質を引き締める働きがあるので煮崩れ
を防ぎます。科学的な知識もない時代にどうしてこんな合理的なレシピを生み出すことが出来たのでしょうか、経
験とはいえ日本人の料理に対する感覚の鋭さを感じずにはいられません。
「いわしの頭(カシラ)は鴨の味」鰯のアタマも信心からと言う諺もありますが、鰯の頭には栄養的に考えると蛋白
質の量はそれ程ではありませんが、その他の栄養は身や内蔵よりも、重要なしかも脳などに有効な成分が沢山含
まれています。その事を先人は知っていたのでしょうか、驚くばかりです。鴨の味などと言っていますが核酸を
始めレシチン、IPA(元のEPA:エイコサペンタエン酸のこと)、DHAなどが多く血液をサラサラにして
血管も強くし、カルシウムなども多いので精神安定に役立つという正に頭脳の栄養そのものである。つい残しが
ちな頭の方が身体には美味しいよと言っているのでしょう。父から中国の学問を学び、兄より聡明であったとい
う紫式部はこの事を知っていたのかもしれませんね。
「いわしの焼き食い一升飯」俗に煮物は冷まして食え、焼き物は直ぐに食えといいます。どん
な魚でも新鮮な物ほど美味しいのですが、焼きたての魚は格別美味しいもので、その中でも鰯が一番美味しいと
言っているのです。これはついでになりますが、焼き魚を焼く時に出る脂は不飽和脂肪酸がとても多く含まれて
いるので、網の上で焼くことで煙にしたり燃やしたりするのは栄養を捨てている事になりますのでご注意!。
この様な諺を見ると、鰯は昔から貧富の差に関係なく多くの人に親しまれていたことが分かります。江戸時代の
「本朝食鑑」という本にも「虚弱体質を治し、人を健康にして長生きさせる」と書かれて
います。鰯は皮ごと食べる事が多いですが魚の皮は良質な蛋白質で出来ていて、肌の潤い(保湿性)を維持する
為の物質コラーゲンを体内で生成させる栄養のゼラチンやビタミンB2などが多く含まれていて身の部分に比べる
と2〜3倍もあります。同じ皮でも黒い所は白い所の60倍も有ると言われています。しかしいくら割合が高いと
言っても皮だけ食べる(鮫皮の煮こごりやハモ皮ポン酢和え等)機会は少なく、魚全体の含有量としてみれば身
の方が多いことになります。結果として言えることは皮も残さず身と一緒に食べることが一番良いことになりま
すね。
世界ではかつてデンマークの医療研究者達が血栓系の病気が少ないとこれまでの研究で言われているエスキモ
ーの体質を研究することで判明した、EPA(IPA)の存在が脚光を浴びて以来、
青魚がもてるようになりましたが、日本ではいつだか分からないほど昔から、鰤(ブリ)・牡蠣(カキ)・鰯は和食文化として大衆の中に立
派に存在していたのです。オランダ・ライデン大学のクロムホート博士らが20年間にわたり中年男性852人につ
いて調べたところ、魚を1日平均28g食べている人は、食べない人に比べ心臓病による死亡予想率は半分以下で
あることが分かったそうです。魚は健康食品として優秀である事が科学的に証明されたことになります。そして
更にその中でも鰯は老化防止ばかりでなく生命維持に最も有効とされる核酸の一番多く含まれている食品であ
る事は、世界が注目していることを付け加えておきたい。
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