◆…◆…◆ 医 食 同 源 T  目  次  ◆…◆…◆ 
医食同源@…鰯(イワシ)医食同源A…小豆(アズキ)医食同源B…小豆餡(アズキアン)医食同源C…甘藷(サツマイモ)
医食同源D…葱(ネギ)医食同源E…蓮根(ハス)医食同源F…蒲公英(タンポポ)医食同源G…独活(ウド)



医食同源@…鰯(イワシ)

最近、医食同源という言葉を耳にする機会が多いと思いますが、これは毎日摂る食事こそが本当の意味での医療で あって、医者だ薬だと頼る心は医療としても本来の目的ではない、と言う事だそうです。そこで私達の身近にある 食材の中から代表的なものや基本的なものを選んで、こんな時にはどのように調理したら、最も合理的なのか?を 少し考えて行きましょう。今日のテーマは、今後たぶん世界的に不足して高価な魚になるだろうと言われている鰯 について学びましょう。鰯は以前(H5,6,20/H7,10,22)にも学習していますが、今回は少し視点を変えてみました。 紫式部は大の鰯好きであったと言いますが、ここで鰯の諺(コトワザ)をいくつかあげてみましょう。

「いわしも洗えば鯉の味」というのがあります。昔は冷蔵庫はもちろん冷凍食品など有りまんから、何をするにも生き の良い魚を選ぶことが第一条件となります。魚によらず悪くなりやすい物は早く売らなければならないので、そこ に安くなる条件があります。その上収穫が多ければ更に値落ちする条件が重なる訳で、こうなると当時豊富に獲れ た鰊や鰯などは肥料か餌用に扱われ、とても悲しいけど魚の善し悪しより買い手市場の都合で値打ちが決められて しまうのは昔も現在と変わらない様ですね。鰯はそんな世の中でもどこかに本来の値打ちを認められていたので す。最近はその巧妙な味や、強力な栄養源として見直され値打ちもグンと上がり、なんだか鰯が胸を張っているよ うな気さえします。

「いわしの煮付けにゃ、生姜と梅干し」これは諺と言うより、受け継がれてきた日本の知恵でしょうか、生姜は臭い消 しとしてばかりか、食あたりをふせぎ、精油成分のジンギベロールやジンギベレンには発汗保温作用があるので昔 から風邪薬として利用されてきました。そのうえ生の生姜には蛋白質分解酵素が含まれていて、ふっくらと柔らか く仕上げたい時には、生の時から生姜汁に漬けておくと効果的です。更に梅干しには青魚の生臭みを取る成分が含 まれているのです。鰯などの青魚の生臭みはアルカリ性のトリメチルアミンと言う物質で、酸性の梅干しを加える 事で中和させることになり、生臭みが取れると言うわけです。しかも酢は肉質を引き締める働きがあるので煮崩れ を防ぎます。科学的な知識もない時代にどうしてこんな合理的なレシピを生み出すことが出来たのでしょうか、経 験とはいえ日本人の料理に対する感覚の鋭さを感じずにはいられません。

「いわしの頭(カシラ)は鴨の味」鰯のアタマも信心からと言う諺もありますが、鰯の頭には栄養的に考えると蛋白 質の量はそれ程ではありませんが、その他の栄養は身や内蔵よりも、重要なしかも脳などに有効な成分が沢山含 まれています。その事を先人は知っていたのでしょうか、驚くばかりです。鴨の味などと言っていますが核酸を 始めレシチン、IPA(元のEPA:エイコサペンタエン酸のこと)、DHAなどが多く血液をサラサラにして 血管も強くし、カルシウムなども多いので精神安定に役立つという正に頭脳の栄養そのものである。つい残しが ちな頭の方が身体には美味しいよと言っているのでしょう。父から中国の学問を学び、兄より聡明であったとい う紫式部はこの事を知っていたのかもしれませんね。

「いわしの焼き食い一升飯」俗に煮物は冷まして食え、焼き物は直ぐに食えといいます。どん な魚でも新鮮な物ほど美味しいのですが、焼きたての魚は格別美味しいもので、その中でも鰯が一番美味しいと 言っているのです。これはついでになりますが、焼き魚を焼く時に出る脂は不飽和脂肪酸がとても多く含まれて いるので、網の上で焼くことで煙にしたり燃やしたりするのは栄養を捨てている事になりますのでご注意!。

この様な諺を見ると、鰯は昔から貧富の差に関係なく多くの人に親しまれていたことが分かります。江戸時代の 「本朝食鑑」という本にも「虚弱体質を治し、人を健康にして長生きさせる」と書かれて います。鰯は皮ごと食べる事が多いですが魚の皮は良質な蛋白質で出来ていて、肌の潤い(保湿性)を維持する 為の物質コラーゲンを体内で生成させる栄養のゼラチンやビタミンB2などが多く含まれていて身の部分に比べる と2〜3倍もあります。同じ皮でも黒い所は白い所の60倍も有ると言われています。しかしいくら割合が高いと 言っても皮だけ食べる(鮫皮の煮こごりやハモ皮ポン酢和え等)機会は少なく、魚全体の含有量としてみれば身 の方が多いことになります。結果として言えることは皮も残さず身と一緒に食べることが一番良いことになりま すね。
 世界ではかつてデンマークの医療研究者達が血栓系の病気が少ないとこれまでの研究で言われているエスキモ ーの体質を研究することで判明した、EPA(IPA)の存在が脚光を浴びて以来、 青魚がもてるようになりましたが、日本ではいつだか分からないほど昔から、鰤(ブリ)・牡蠣(カキ)・鰯は和食文化として大衆の中に立 派に存在していたのです。オランダ・ライデン大学のクロムホート博士らが20年間にわたり中年男性852人につ いて調べたところ、魚を1日平均28g食べている人は、食べない人に比べ心臓病による死亡予想率は半分以下で あることが分かったそうです。魚は健康食品として優秀である事が科学的に証明されたことになります。そして 更にその中でも鰯は老化防止ばかりでなく生命維持に最も有効とされる核酸の一番多く含まれている食品であ る事は、世界が注目していることを付け加えておきたい。
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医食同源A…小豆(アズキ)

小さい豆と書いてアズキと読む、実はショーズとも言うのです。大きい豆と書いてダイズと読むのですから、 ショーズの方が・・・・と思う人もいるでしょう。語源はあまり定かではないのですが一説によると、インドの呼 び名で「アジケ」と言うのがあり、ここから来たのだと言う説と、その姿形から「赤粒木」とか「赤粒草」と 書いて、これを読んでいる内に自然にできあがった音便から来たのだという説があります。昔から小豆は神事 に良く登場します。「古事記」の中にある「穀種発生の神話」によると、小豆はホオゲツ姫の鼻から出来た、な どと書かれています。面白い発想ですね。アズキのキはヨモギのギと同じように「気」から来ているのです。 昔の人は大自然のエネルギー、つまり天然が成長して行く為の根元力の情報があの小さな赤い粒の中に集約さ れている・・・・と、ちょっと信仰的ですが考えたのでした。科学的な考えは出来なくても代々体験を積み重ねて 得た答えだったのかもしれません。とはいえこれは実に合理的な考えで、科学的に調べてもアズキには実際に 大変な薬効が有ったのです。(効用・利用法について詳しくは後半でお話します)原産地は東洋で、我が国へ は3〜8世紀頃に中国から渡来したと言われ、現在でも日本全国の畑作地帯では盛んに作られていますが、国 内事情にはとどかず中国などから輸入を続けています。味や風味は誰でもが好み、そのうえ穀物としての歴史 が古いので種類も多い。大きさは大納言が9mm位、中納言は8mm位、小納言(少納言ではないので注意)は6mm位、 アズキは7mm位が標準です。品質がよい物ほど色艶が良く、大きさも均一です。しかしこれは大まかな分け方 で、市場では更に大納言ではアカネダイナゴン・丹波大納言・岩手大納言などと、普通のアズキでは宝小豆・ 栄小豆・ハヤテショーズ・寿小豆などの様に細かく分けられ取り引きされています。また白い色の白小豆や緑 の緑豆(りょくとう)があり、緑豆などはモヤシや豆麺(とうめん:はるさめのこと)等の原料になります。 小豆の澱粉は湯で火を通しても、粘りけは出ません。これは細胞内の蛋白質が澱粉を包んで熱凝固反応する為 で、この特殊な性質は和菓子の原料として餡などによく利用されています。しるこ、善哉、団子、饅頭、最中、 羊羹、甘納豆、餡練菓子、煮豆、赤飯、小豆飯、小豆粥、等々小豆を使った食品は沢山ありますが、粒のまま 用いる場合と、潰したり煎って粉にしたり、乾燥して粉にし水で晒してから加工したり、その調理法も色々あ ります。小豆は素材の選別から始まります。購入や調理する時の注意点を書いておきましょう。

  1. 丸くて表面に張りがあり、色や艶が良く重量感があり粒揃いのもの。
  2. 虫食いや、粒割れ、大きさや色が不揃いなどのものは選ばない。特に出来上がった豆の「粒の形や色」を 重視して調理する場合は、次のことに注意します。
    • 水で洗うとき表面に浮いてくるものや、皺(しわ)のあるものは取り除く。
    • 良く洗ったら直ぐに煮始める。いつまでも水に浸けておかない。
大豆などの場合は充分に水に浸けておいてから調理しますが、小豆の場合は浸けておいても豆が新しいほど水 を吸わないし、豆の色が水に溶けだして悪くなったり、浸けている内に中身が膨張して腹割れしたりするから です。また調理するときに気を付けたい事は、あらかじめ茹でこぼしたりすると色が淡くなりますし、鉄鍋で 煮たりすると色が黒ずんできますし(これは成分中のアントシアンが鉄と結合して豆を黒くするから)、強火 で煮たりすると火の通りが斑になります。テレビ番組や料理の本でよくみかけますが、煮ている途中でビック リ水をさす等という乱暴な指導をしている事があります。これをすると皮が急に皺が寄って破け易くなり、形 が壊れる原因になるのでどうしても水を増やしたい時はお湯を加えるようにしましょう。これらのことを注意 すれば、風味が損なわれたり、色が鮮やかで無くなったりすることも防げるし、重要な目的である栄養(ビタ ミンB1やサポニンなど)が失われることも防いでくれます。この様な理由の中でも面白いのは、昔から腹割れ は「切腹」に語意がつながることから、豆を形で煮る時には小豆は嫌われ、その対応策として小豆ではないが 良く似ている大角豆(ささげ)が、小豆に比べて壊れにくいので赤飯などの粒を壊さない料理に代役とされて きました。大角豆の大きさは10mm位で小豆よりやや大きめで色や形が良く似ている。またささげより大きめだ が色や名前が似ていて、隠元豆であるウズラ豆と同じ仲間の大正金時(金時という名前は小豆にもある)と言 うのがあり煮豆などによく利用されるので覚えておきたい。
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医食同源B…小豆餡(アズキアン)

小豆は昔から吉凶問わず特別の日(ハレの日という)に、栄養を付けるためのご馳走の代表格として良く用い られました。節日(セツジツ)やお祭り、葬式やお祝い等の日には飽食し満腹になること が自他共に許される日だったのです。また月の1の日や15の日にも小豆を食べる習慣があり、「小豆ご飯で厄 払い」という諺になるくらいでした。普段の日(ケの日という)は贅沢することなく粗食で労働しているので、 この日の小豆餅や大福、しるこ等は力の元となったのです。この様な食習慣だからこそ昔はあまり肥満症や贅 沢病などというもったいない病気にかかることもなく元気で毎日を送れたのかもしれませんね。現代人は少し 見習うところがあるのではないでしょうか。小豆は主に、粒のまゝご飯や粥などに混ぜて食べる場合と、粉に して餅に塗して食べる場合とに大別されました。平安時代の頃から小正月の15日や11月23日には小豆粥を食べ 、室町時代の頃からは祝いの席では赤飯を食べ、また10月亥の子の日には牡丹餅(ぼたもち_PSおはぎ)を食 べるというように節日によって粒にするか粉にするかが約束事として決められていました。
人々は神を崇め、少しでも神に近付こうと自らが努力することで安心を得られ希望を明日につなぐことが出来 たのです。神を祭る日の御神饌として小豆が用いられていたことは、すでに宮中での延喜式(エンギシキ)大 嘗祭(オオニエノマツリ)<下記参考>に「小豆餅」というのがあります、この事からも小豆の歴史背景がみ えてきます。
元来は農耕神事であった小豆粥は、河内枚岡(カワチヒラオカ)神社にその形が残されています。それは小豆 粥を炊く時に使う粥杖(カユツエ)と称する棒を用いてその年の豊作凶作の占いをし、この時用いた小豆粥を 各農家が果樹の予祝として用いているそうです。また西日本では今でも旅立ちの日に小豆粥を食べる習慣が残 っています。糯米(モチゴメ)に少しの粳(ウルチ)を混ぜて柔らかめに炊き荒く搗いたものを、カイモチと かカユモチ(現在の餅よりかなり柔らかめ)とか言い、これに餡を塗し粒の小豆を散らして花に例えて牡丹餅 と言ったのでした。先月学習した「小豆南瓜」も厳冬を乗り切るために食べる食事、つまり「医食同源」その ものと言えます。私のオリジナルとして更に玄米餅を加えることは先人の知恵を利用して更に現代に合った合 理的な栄養配分の食事に作り替えたのです。先人は、あの赤い小さな豆粒の中に穀霊とも言うべき大自然のエ ネルギー源が存在する事を信じていたのでしょう。
しかしこれらを科学的に見ても、小豆には蛋白質が20%も含み豊富なビタミンB1B2は米糠に引けを取らず、 更にカルシウムや鉄分を含む穀類では珍しいアルカリ食品なのです。ビタミンB1は米の糖質が消化し分解す る時に必要な助力者であったり、多量に含まれている食物繊維は便通を良くしてくれたり、更に外皮に含ま れている赤い色のサポニンは大変利尿効果があり体内の水分調節をするので、体内の余分な水分を排泄する ことでむくみを取り除いてくれるなど、小豆と米の合体はとても合理的なのです。更に小豆の効用は身体や 脳の疲労回復に、母乳不足に、ダイエットに、二日酔いの吐き気止めに、あらゆる病気が原因となるむくみ に、便秘に、尿の出が悪い時に(この場合ははるさめを食べても良い)、炎症の鎮静にとその効果は幅広く 利用されています。しかしここで一つ注意しなければならないことは、薬効を更に高めるためには味を付け ないで利用する方が有効となりますので、小豆粥などを甘くして食べたい時は、食べる直前に砂糖を加える 様に心がけることが大切です。また膀胱炎でも血尿や炎症等の時は、刻んだ葱と小豆を空煎りして粉にした ものを日本酒で煮て布で濾し暖かい内に服用すると良い。そして疣痔(イボジ)の内服薬として用いる場合 は、小豆の粉とそば粉を同割にして白木槿(シロムクゲ)の花の煎じ汁で飲み、この時もし痔出血の場合は 酢で煮た小豆を潰しておも湯で飲むと良い。また外用薬として腫れ物の化膿止めやとびひ等には粉にした小 豆を蜂蜜で練ったものを塗る(この場合煎った小豆を粉にして酢で練りガーゼで挟んで貼っても良い)など と、薬として伝来した小豆は科学万能の今でも、いや薬害が多く信じるものが分からない現代だからこそ、 益々その自然の効用に頼る人は増加しているのです。

 参 考 
 
延喜式(エンギシキ)
平安初期の延喜(後醍醐天皇の時代)に禁中(皇居のこと)の年中儀式や制度を漢文 で記したもので全50巻から成り藤原時平らの後、忠平によって927年に撰進され967年に施行された。 後にとても堅苦しいことを言う人に嘲(あざけ)って言う語に使われるようになった。
大嘗祭(ダイジョウサイ)(オオニエノマツリ)
天皇が即位後初めて行う新嘗祭(ニイナメサイ)のことで、その年の新穀を以て自ら 天照大神及び天神・地祇(地の神)を祀る、大礼の中でも神事最大の行事。
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医食同源C…甘藷(サツマイモ)

関東では薩摩芋といえば埼玉の川越が有名です。少し前まで「9里(栗)4里(より)うまい13里」などと 言って、「い〜しやき〜いも〜」と並んで焼き芋屋の売り言葉でもありました。かつての川越は土地が痩せ ていて農産物の収穫が少なかったため、不足分を痩せた土地に適した薩摩芋で補っていた。時代と共に継続 する内に名産地となり江戸から13里(約50Km)離れているということでこの様に言ったのでしょう。
江戸時代中頃(1735年)飢餓に苦しんでいた臣民を救うため、蘭学者の青木昆陽が紹介しその時の飢餓を救っ た。やがてそれが全国で食べられるようになったのが初めとか。 薩摩芋は沖縄ではンムと言い大島ではハンスとかトンとか言います。九州・四国・関西地方ではカライモと かトウイモとか言っていたのですが、いつしかサツマイモになってしまったようです。 今では品種改良が進んで全国では約40種類が栽培されています。主な物を挙げてみると。

ベニアズマ
甘みが強く筋が少なくポクポクしていて関東で人気が高い、
金時
筋が多くねっとりとした舌触り天ぷらやキントンには最高、
コガネイモ
澱粉の量が多く加工食品に良く使われ焼酎などの原料になる。
ベニハヤト
果汁はオレンジ色で人参よりもカロチンを多く含みお菓子の原料になる、
山川紫
果肉は紫アントシアニンを多く含み甘みは薄く羊羹やシャーベットなどに使われる。
この他にも農林1号とかコウケイ14号とか改良段階で付けた品種番号のまま市場に売られている物や、 今ではあまり見られなくなった果肉が白く水気が多く甘みが強いので乾燥芋の原料となる太白芋など懐 かしい物もあります。
江戸時代にベストセラーになった料理本に「甘藷百珍」と言うのがあります。薩摩芋の料理全123種類が評 価ランク付きで書かれていて、普段食べる【尋常品】、アイデアを生かした【奇品】、味と見た目の【妙品】、 そして究極の【絶品】と分けられていて、例えば妙品に「パス藷」というのがありますが、たった5行で書か れたレシピによると、材料は魚・木耳・鶏肉・生麩・金柑・牛蒡・栗・慈姑(くわい)それにだし汁とあり、 これを藷精(いものじん)で蓋をして火にかける、と書いてあります。料理として実に栄養バランスの良い妙 品料理で、まるで寄せ鍋か焙烙(ほうろく)焼きのような感じでしょうか。 次に奇品の「いも衣」と言うのがあります。材料は干し柿・甘藷・筍・慈姑・銀杏・栗・牛蒡と書いてあり、レシピ をみると、おろした甘藷と小麦粉で衣を作り、具を刻んで醤油で味を付け、先に作った衣で掻き揚げかガンモ ドキのように揚げた物です。 また究極の絶品では「ハンペンいも」というのがあります。いものじんを熱湯でとろりと溶いて、すりおろし た甘藷と角切りの豆腐と生麩を加え茶碗で蒸して味噌と山葵を味付けに盛るという、素朴な材料で実に巧妙で 繊細な料理を考えたものです。 ところで薩摩芋は澱粉質が分解されるので甘く感じるために太るのではと思われがちですが、実は同じ量のご 飯より2割もカロリーが低いのです。しかも食物繊維(セルロース)は同量の御飯の5倍も入って います。セルロースはスポンジ状なのでお腹に入ると水分を吸収することで膨張して満腹感が得られますし、 脂肪などと一緒に食べると脂肪の吸収を抑制したりその排泄を促進したり、ついでに途中にある体に悪い老廃 物も吸い取ってゆきそのまま排泄してくれる優秀な掃除機なのです。そしてさらに甘藷の切り口から出てくる 乳白色の液体はヤラピンという物質で腸内に入ると固くなった便を柔らかくしてくれる働きがあるのでセルロ ースと共に便秘の予防や解消に大変役立つばかりか、食品の腸内通過時間を短くしてくれるので大腸ガンやそ の他の病気の予防に役立つのです。私たち腸長人種にとってはとてもありがたい食品ですね。
さらに薩摩芋に含まれるカリウムは林檎や菠薐草などより多く高血圧症などの予防に効果的で、ビタミンCは 蜜柑に匹敵するほど充分にありしかも澱粉に保護されるので熱にも強く焼いても60〜70%、ふかしても80〜90 %も残っているので有効的に摂取できる食品です。ビタミンEは人参やピーマンより遙かに多いので血液の循 環を良くし中性脂肪を減らすのに有効です。血液中のLDLコレステロールは人体には必要な物ですが善玉と のバランスが多くなると悪玉と呼ばれるように血液を汚して動脈硬化を招き脳梗塞や心筋梗塞、腎不全などを 招く結果になるので、薩摩芋を積極的に利用すれば有効的に健康維持できる様になります。
また沖縄名産の紅芋に含まれるポリフェノールのアントシアニンは活性酸素を除去する力があるので肝細胞に 過酸化脂質(脂肪の錆)が出来ない条件を作り肝機能を向上させるという成分が含まれているのです。 そして薩摩芋にはガングリオシドという脳の発達に関係があり特に記憶力の形成に非常に大切な役割をして脳 を活性化させるという成分が含まれているのでこれも見逃せません。
最後に薩摩芋を上手に利用するコツをひとつ、「皮のままゆっくり加熱する」ことがポイントです。皮毎であ ればヤラピンは逃げませんしゆっくり加熱するとβアミラーゼという酵素が熱の力で働きだし澱粉を糖に変え るので生の時の8倍甘くなります。ですから、一番簡単な調理法としては、蒸し芋ということになりますね。
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医食同源D…葱(ネギ)

葱は料理用語ではナンバンと言います。これは室町〜江戸時代には東南アジア〜欧州諸国を南蛮と言って いたのですが、輸入品はすべて南蛮渡来と言いました。この当時の外国料理には葱を使った物が多くそこ から葱をナンバンと呼ぶようになったのです。日本そばのメニューに鴨南蛮とあるのは鴨肉と葱の意味で す。(※ナンバンは別に唐辛子という意味もあります)また食材業界用語ではシャモと言います。シャモ は現在の天然記念物の軍鶏(シャモ)の事でシャムロ鶏の略称です。江戸時代初期にシャム(現在のタイ) から闘鶏用の鶏として輸入されたのですが、この肉が大変美味しく葱と相性が良いので軍鶏料理には必ず 葱が用いられたのでこの様に言ったそうです。
 しかし、一般にはネブカとかナガネギとかヒトモジとか言われています。原産は中国西部と言われてい るが、中国では最も古い野菜の一つで漢民族が原始時代から栽培利用していたと言われ2000年以上の歴史 がある。日本には平安時代に伝えられ、延長年間(923〜931)に編集された「本草和名」以来、「日本書紀」 にも秋ネギ、「万葉集」にもネギの記述があるというきわめて古い野菜の一つなのです。
本来温帯性植物ですが暑さにも寒さにも強く適応性があるので全国各地で栽培されているため品種分化が 多く、大きく分けると加賀・千住・九条の3群になります。加賀群は、北海道・東北・北陸・関東北部の寒冷 地型で冬には休眠し生長しない。株別れが少ないのが特徴。品種としては下仁田・岩槻・金沢太などがあり ます。千住群は、関東・中部地方で産し、葉の伸長につれて土寄せし葉鞘(ようしょう)を軟白した根深 葱で、品種は千住黒柄、千住赤柄、千住合柄などがあります。九条群は関西以南で栽培され、休眠がなく 冬でも生長し、株別れが多い。緑の柔らかい葉の部分を食べるので葉葱とも言います。品種は九条・博多・坊 主不知(ぼうずしらず)などがあります。  もっと単純に大別すると

@主に緑葉を食べる浅葱・分葱・万能葱等は関西系の葉葱。 A白い葉鞘を主に食べる深谷葱・下仁田葱等は関東系の根深葱。
      などの2種類に大別され各々調理法や栄養効果の違いに特徴があります。

 @は緑黄野菜に入り葉にはカロチンが多く含まれていてAと比べ5倍もあるので風邪の予防に最適で ある。またカルシウムは菠薐草の約3倍でビタミンCも遙かに多いのです。注目したい事はAにはほと んど含まれていないセレンというミネラルが沢山含まれていることです。
セレンは地中の土に含まれていますが、体内に摂り入れると過酸化脂質などの分解に働く酵素の助けを する必須成分で体組織の老化を遅くするし、最近の発表ではガン組織が増殖するのを阻害するのでガン 抑制作用が強く、さらに血流を促進する働きが強いので血液が流れやすくしてコレステロール値や血圧 をさげ動脈硬化など血流の関係する諸病の予防をしてくれ、水銀やカドミウム等の有毒金属の毒性を軽 減し、精子の形成に関係するのでこれが不足すると精子が少なくなります。それでは1日にどれくらい 食べれば良いのかというと約50g位、浅葱なら20本、分葱なら6本、万能葱なら20本を「油と共に熱を加 えて調理」したものを食べれば健康効果は期待できます。
 Aは薬味としても@以上に色・風味・歯触りが優れていて料理には欠かせません。しかし栄養効果を考 えると@ほどの種類は有りませんが@には無い物としてムチン(ネバネバ)があります。ムチンは人体 の胃袋内に存在して胃壁を保護して自己消化を防いでいる物質です。さら含硫アミノ酸類が胃を丈夫に し、香りの成分硫化アリルは脳を活性化してホルモンの分泌を促すので、生体調節機能はAの方が優れ ているのです。
調理上の注意点としては、ネバネバが出るように斜め切りに細かく刻みあまり火を加えず乾かない内に 食べ、納豆などと合われて食べると大変効果的なのです。
 この他にも葱系統として芽葱・ポロ葱・玉葱・大蒜・辣韮・韮・野蒜・行者大蒜・カタクリ・カンゾウ・アマ ドコロなど山菜を加えると沢山の種類あるがこれらに共通しているのはどれも百合科の植物であるとい うことです。
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医食同源E…蓮根(ハス)

■先日のニュースによると2000年前の蓮の種を植えたところ芽が出て、実に800年ぶりに花まで咲かせた という話でしたが蓮根は生命力が強いですね。今日は先人の知恵である神秘的食品「蓮根」について 科学してみましょう。古人もこの蓮根の生命力の源に興味を持ちどれほど求め続けたことでしょう。
蓮は仏教にも出てくるように実に神秘的な力を感じずにはいられません。根菜類は根っこから色々な 成分を吸い取りそこに栄養分を蓄えるといいます。蓮根は当に栄養の宝庫でありそこに生命力が在る と考えられます。泥沼の底に根を繁らせる蓮の根は節があるので養分を逃すことがありません。
■蓮根はビタミンCが非常に多く、レモンと同じ位の量を持っています。しかも熱を加えても壊れにくいの です。実験的に蓮の絞り汁とレモンの絞り汁をそれぞれ生の状態で含有量を測定してみると、1l当 たりレモンは 240mg、蓮は 233mgでした。更にこれをどちらも電子レンジで2分間加熱し同じように 測定してみると、1l当たりレモンは 240⇒43mg、蓮は 233⇒231mg でした。この結果を見て解るこ とは蓮根は熱を加えた調理をしても栄養が壊れない食品であるということが言えます。この蓮根を 100g 食べれば一日に必要なビタミンCを摂取したことになるのです。
■蓮にはこの他にも血液を創ると言われる鉄分や、植物では珍しいとされているビタミンB12が含ま れています。ビタミンCは鉄分の吸収を良くしてくれるので大変都合が良く、ビタミンB12は別名コバ ラミンと呼ばれとても綺麗な赤いビタミンですが、葉酸と協力して赤血球のヘモグロビンの合成を助け ているばかりか神経に関与しているので時差ボケやバイオリズムなどの改善に役立つのです。つ まり蓮は造血作用の3つの要素全てを兼ね備えているからその効果は大きいのです。血液中の赤血 球は体内の至る所に酸素を送り身体や脳を正常に働かせる。しかし赤血球が少なくなると体中に酸 素が廻らなくなり頭がボーっとしたりだるくなったりするなど身体に悪い影響を及ぼします。特に 女性特有の諸症状の改善にとって自然に治してくれて摂りすぎの心配がないとてもありがたい食品 と言えます。
■この他蓮根は胃の修復、口臭予防等の効果があります。胃はストレスを受けたり暴飲暴食など で胃に負担がかかると炎症を起こします。すると胃の中が発酵した状態になり、その臭いが口 から出て口臭の原因となります。蓮根のねばねば成分のムチンがタンパク質や脂肪の分解を良 くしてくれて胃に負担をかけないようにするのです。そして苦み成分のタンニンが痛められた 傷口を癒してくれるのです。それらの相乗効果によって胃に優しく胃の健康効果を高めてくれ ると言うわけです。
■煮ても炒めても酢の物でもその効果は変わらず、最近ではアレルギーになりにくくする作用が あることが報告されています。蓮は先行きの「見通しが良い」という意味で祝い料理には欠か せない食品です。1日に100g位を毎日食べることで健康の見通しを良くして、楽しい毎日を 送るように心掛けましょう。
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医食同源F…蒲公英(タンポポ)

■今年もまた野草摘みの季節になりました。野原や畦道を黄色く染めるタンポポの在来種は20種類あ りこれをニホンタンポポと言いますが、セイヨウタンポポの勢力に圧されて現在では激減していま す。戦中、戦後はよく食べられていましたが、現在は野菜も豊富になりタンポポが食べられること も知らない人が多いようです。そこで今日はなぜ良いのか、どのように食べるのかを学んで行きま しょう。
■タンポポには小松菜と比較しても、ビタミンA・タンパク質・カルシウムなど全てに優れていて、 さらにリグニン・イヌリン等の食物繊維が豊富に含まれています。一部の山菜に含まれている発 ガン物質や人体に毒となる様な物質は含まれていません。タンポポ漢字で書くと蒲公英<ほこう えい>ですが、漢方薬店ではこのままの名前で売られています。タンポポの効用は3人に1日 50gのサラダを1週間食べ続ける実験をしてもらった結果、3人とも血中GPT濃度が下がって いました。これは肝臓の細胞の荒れが少なくなっている証拠なのです。肝臓の細胞膜の主成分は タンパク質です。タンポポに含まれる豊富なタンパク質が保護して守ってくれたのです。そして ビタミンAは柔らかい細胞を若返らせてくれるので、冬の間脂肪が蓄積して弱りかけた肝臓を蘇 らせてくれたのです。またコレステロール値の高かった2人の値が下がっています。これは食物 繊維が体内に入ると迷走神経が刺激され胆嚢が収縮し、普段より多く胆汁が分泌され腸での消化 が促進されます。この胆汁の原料となるのが血中のコレステロールなのです。胆汁がたくさん消費 されれば余分なコレステロールが消費されるので、血中のコレステロール値が下がると言うわけです。
■タンポポには高血圧治療薬として使われるマンニトールという成分が含まれています。そして利 尿効果のあるカリウムも含まれていてこれらの相乗効果によって高血圧の予防、改善に効果があ るのです。タンポポは別名薬菜<くすな>と言われるほど薬効が強力です。昨年マウスの実験で タンポポのエキスを与えることで乳ガンの発病を遅らせた事が日本癌学会で発表されました。茎 を折ると白い乳液が出てきますが、この乳液に含まれるタラキサステロールが乳ガンを遅らせた のです。
■昔から母乳の出を良くする薬として利用されてきました。作り方は水600mlに対して乾燥 した全草(10g)または根(5g前後)を煮汁が半分位になるまで煎じ1日3回に分けて飲みます。と言 うわけでタンポポは胃の弱い人、便秘がちな人、冷え症の人、熱の出た人、むくみのある人、胃 潰瘍や十二指腸潰瘍の人、普段からあまり元気のない人等にも有効です。普段から食用にする事 が理想ですが、便利な物としてタンポポエキスが市売されています。この作り方を特別に伝授し ましょう。
@乾燥した蒲公英全草(30g)を粉にする。
A水(350ml)を加えて2日間冷暗保存する。
B良く漉して、汁だけを3分の1になるまで弱火で煮詰める。
C自然に冷ましエチルアルコール(40ml)を加え、密閉容器で2日間冷暗保存する。
D再び布で漉し、一煮立ちさせる。これを1日2回、朝晩に15mlを倍の水で薄めて飲む。
臭みと苦みがあるので一気に飲むと良い。多めに作って密閉容器で冷蔵庫に入れておくと便利です。 この他にも根を乾燥させ煎ってから、粉にして、コーヒーにすることはみなさんも既にご存じで しょう。最後に注意を一つ、タンポポの採集は空気の綺麗な所で行って下さい。
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医食同源G…独活(ウド)

■瑞々しさとシャキシャキっとした歯触り感が嬉しいウド、その爽やかな香りは食卓に春を届けてく れます。この時期のウドはちょうど旬です。味も香りも深みを増し最も美味しい時なのです。昔か ら江戸の特産物は、まずは浅草海苔、葱といえば深川葱(現埼玉県の深谷葱)、大根といえば可愛 い亀戸大根に次いで見事な練馬大根(現神奈川県の三浦大根)、菜っ葉では有名な小松菜、そして 多摩の白独活などと言われていましたが、現在でも都下立川市は全国でも有数な独活の生産地です。
■しかし立ち並ぶ林ばかりでどこに独活畑が?・・・と思うと、その木立の中に直径1m位の穴が空き 梯子でその穴を降りると、そこには20畳位の広さの土を彫り込んだだけの洞窟があり沢山の独活が 育てられていた。独活は山にも天然のものがあるが、日光に当たると堅くなり食べ辛くなるのでこ うした暗い地下の室で育てられているのです。この辺りの小学校の給食には独活が出されていて、 大変な人気メニューだそうです。給食に選ばれる位なので栄養価も高いのではと思うのですが、実 は栄養成分としては水分が95%、糖質がわずか3%、ビタミンやミネラルはほとんどありません。見 かけは立派でも中身スカスカ、世に言う「うどの大木、役立たず」と言うことになります。
■しかし古書を調べてみると、漢方の生薬名は独活(この場合はドッカツ)といい、発汗、解熱、鎮 痛、消炎、利尿に効能があり風邪、神経痛、リュウマチなどの関節炎の特効薬だとか・・・。 でも禄な栄養も無いのにどうして?…と思い、実際にウドを毎日毎食、食べ続ける実験をしてみる と、5日目にリラックスを示すα波が増加している結果が出たのです。これはウドの芳香の源であ る精油成分(リモーネン、サビネン)が吸収されると、アロマセラピーと同様に脳を刺激して精神 を安定させ、心をリラックスさせてくれたり、また副交感神経を刺激し、体のバランスを整えてく れて、体全体の新陳代謝を活性化し、血行を促進する為サーモグラフィーで見ると体温を上げてい る、つまり冷え性を改善することができたのです。また苦みの主成分(アルカロイド)は腎臓の代 謝機能を活性化させ、血液の解毒作用と利尿作用を高めアレルギー体質の改善に効果が現れたので した。更に実験では、血中の老廃物(クレアチニン)が減り体質が改善されていました。そして免 疫力(IL-1産性能)も向上しています。これは体全体の新陳代謝が向上したことを意味します。
■春は気温の変化が激しく体調の変換期も重なって、病気になりやすい季節です。ウドを食べること で血行を良くし代謝を高めてくれるので、気候の変化に対応しやすい身体にしてくれるのです。こ の時期にしっかりウドを食べておきましょう。
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