◆…◆…◆ 医 食 同 源 U  目  次  ◆…◆…◆  
医食同源H…糠(ヌカ)漬け医食同源I…牛蒡(ゴボウ)医食同源J…甘酒(アマザケ)医食同源K…胡麻(ゴマ)
医食同源L…滋養(ジヨウ)味噌医食同源M…鳳梨(パイナップル)医食同源N…干し柿(ホシガキ)


医食同源H…糠(ヌカ)漬け

▼日本の味といえば漬け物、昔はどこの家庭でも糠床をかき回す姿が見られました。大切にあつかわれた糠 床からはおいしい漬け物ができます。食卓に欠かせないおふくろの味です。おふくろの握ったおにぎりがお いしいのは愛情はもちろんですが毎日糠床をかき回した手だったからなのです。福岡県は糠漬け天国といわ れています。福岡市内にある「ぬか床 千束」という食堂では、300年以前から続いた糠床がいくつかあり、 この店で出す糠漬けは江戸時代からの味を今に伝えているといわれています。毎日の面倒を欠かさずに親か ら子へ子から孫へと受け継がれてきたのです。こんなに長持ちしている糠床の秘密を科学的に解明しようと 目を向けた地元の九州大学食品化学工学科では最先端のバイオテクノロジーを駆使して明らかにしようと試 みました。
▼石崎文彬教授の話「糠床はどこの家庭にもあったが、その中でも科学的にみて腐らない仕組みを持っている 糠床だけが残ってきたのではないかと思う。それは具体的にいうと乳酸菌が作る物質が他の悪い菌をやっつ けるようだ。そんな乳酸菌が沢山住み着いて居るのではないか」と、考えた。そして研究の末ついにその物 質が明らかにされた。
新発見の抗菌物質は「ナイシン−Z」と「ISK−1」と名付けられ、糠床の腐敗を防いでいたのでした。 シャーレの上での実験では腐敗菌類をまたたくまに殺してしまったのです。人が糠漬けを食べるとこれらの 抗菌物質も一緒に体内に入り食中毒などの原因になるサルモネラ菌などの悪玉菌を撃退してくれて腸の中を 良い環境にしてくれるのです。
▼「一般的に長続きしている家庭での糠床には私たちが研究している、あの良い物質が沢山住み着いているの ではないかと考えられるのです」と、教授は言う。良い環境で漬けた糠漬けには食中毒の予防効果があると 言うことになります。色々とある漬け物の中で他の漬け物と糠漬けとの大きな違いは「普通の漬け物は調味 料を直接付けてその時で全部終わってしまうが、糠床は手軽に漬けられる上に繰り返し使える」と小川敏男 博士は言う。つまり糠漬けは「糠床」という魔法の調理器具を使った料理といえますね。糠床の食塩が野菜 の細胞から水分を追い出し、その後に糠床の栄養成分が入り込むという仕組みです。そしてその主な栄養成 分とは乳酸菌のこと、他の漬け物なら乳酸菌が発酵するまで1ヶ月もかかりますが、生きた菌が大量に居る 糠床ならばすぐに大量の乳酸菌がしみ込むのです。それでは野菜はどれ位のスピードで漬かるのでしょうか? 室温が摂氏8度位で安定した所で胡瓜を漬けて測定すると5〜6時間で半分位12時間ですっかり漬かっていま した。「糠漬けの特徴は、生きている菌をそのまま食べることができるので胃の中をより酸性にして整腸作 用で整えてくれる」と小川博士は言う。糠漬けを食べるとその中の乳酸が胃液を刺激して分泌を良くしタン パク質の消化酵素であるペプシンの働きを良くしてくれて、さらに腸にはいると脂肪を燃焼させるビタミン B2を体内合成してくれるのです。そこで肉の消化作用の実験をしてみたところ、通常肉は食べてから消化 されるまで12時間かかり消化にあまり時間がかかると有害物質を発生させてしまいます。被験者に生の胡瓜 とステーキを食べてもらい、その翌日今度は糠漬けの胡瓜とステーキを食べてもらって比較した結果、糠漬 けを食べた時の方が2〜12時間も早く消化され便秘や胃もたれの解消もすることができました。さらに乳酸菌 の働きには抗ガン作用や免疫力の向上の効果があるのです。
▼糠漬けのもう一つの効果はぬかに含まれる沢山のビタミンです。 「米糠のビタミンBは全部水溶性なので野菜の中に入りやすいのです」と博士はいう。米糠のビタミンB1 は豚肉よりさらに多く、糠漬けの胡瓜は生の時より2倍、かぶでは生の9倍、大根は12倍もビタミンB1が 含まれているのです。ビタミンB1は糖質の代謝をスムーズにしますからご飯を食べる時に糠 漬けも摂ると血糖値の変化も急には上がらずゆるやかになるのです。これは吸収された糖分が効率良く体 内に取り込まれている証拠です。タンパク質の消化を助け脂肪や糖質の代謝を促す糠漬けは肥満や生活習 慣病などの予防に大いに効果を上げていたのです。
▼最後に良い糠床に育てる方法をチェックすると、ポイントは毎日必ず良くかき混ぜること。丁寧にかき混 ぜれば腐敗菌の繁殖を防ぎ元気な乳酸菌を増やすことがでます。しかし乳酸菌が増え過ぎると酸っぱく なります。こんな時の味を修正する特効薬は「卵の殻」です。適当にくだいて直接糠漬けに混ぜておくだけ でよいのです。こうする事でカルシウムが溶けだし栄養効果を上げてその上味も調えてくれます。また錆 びた釘を布で包んで入れておくと鉄分が溶けて強化され吸収されるのでさらにバランスが良くなり、茄子な どの色出しにも効果があるのです。味を良くするには昆布や鷹の爪を入れるのも良いでしょう。
糠漬けは日本が誇る究極の健康食です。この古くから伝わる伝統の味を大切にし、おいしく糠漬けを食べて 身体を元気にしてゆきましょう。

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医食同源I…牛蒡(ゴボウ)

■畑の土の中から文字通り牛蒡抜き、想像してもいかにも栄養成分たっぷりの感がありますね。 牛蒡のきんぴらや煮物など昔から牛蒡料理は家庭料理の定番として親しまれてきました。実際に牛蒡に含まれる食 物繊維は便秘の解消に役立つことは良く知られています。中国やヨーロッパではその昔から薬として大いに利用さ れてきました。根菜の王様、牛蒡に含まれている健康効果はどれくらい優れているのでしょうか?
牛蒡の食物繊維は水溶性の食物繊維と、水に溶けない不溶性の食物繊維が含まれていてどちらも大量に含まれてい るという所が大きな特徴と言えます。
■これらの内不溶性の食物繊維は摂取しても胃の中では溶けずにそのまま腸に流れ込みます。そこで悪玉菌などの 不純物を取り込んで自らと共に体外へ排出されます。こんなところから大腸癌などの予防効果が期待できるのです 。そしてさらに不溶性食物繊維には様々な物質が含まれています。不溶性食物繊維にはセルロース、セミヘルロー スなどと色々な種類がありますが、その中でも牛蒡にはリグナンという食物繊維が沢山含まれているのです。この リグナンは血小板が固まるのを防ぐ働きがあります。血小板が固まることによって脳梗塞や心筋梗塞になるのです から、牛蒡にはこれらの病気を予防する効果が期待できることになるのです。牛蒡を食べると血液をサラサラにし て血流が良くなるので体全体に血液が行き渡り、結果として冷え性の予防や治癒に効果があるのですが、さらに血 中のコレステロール濃度が少なくなり、血中中性脂肪濃度が大幅に減少し、更に牛蒡に含まれているためか血中カ ルシウム濃度が増加するという臨床結果がでています。これは牛蒡の不溶性食物繊維のリグナンを初めとする様々 な成分の働きによるものです。
■それでは水に溶ける水溶性の食物繊維はどんな働きがあるのでしょうか?
水溶性食物繊維は胃の中でドロドロ状態に溶けて更に膨らむという性質があります。これが腸に達すると腸の中の 不純物を吸着し纏めて排出してくれます。牛蒡の中に含まれている水溶性食物繊維の一つであるイヌリンはコレス テロール・中性脂肪・血糖値などを抑えるという特徴的な働きがあるのです。また牛蒡は「調理法や保存法で甘味 が増す」と経験的に言われてきましたが実はこれもイヌリンの働きによるものであることがわかりました。
■これまでにも牛蒡の健康効果について様々な研究が行われてきましたがその中で、平成5年3月弘前大教育学部の紀要( 大学や研究所などで発行する研究論文を収録した定期刊行物)によると牛蒡の色々な甘味テストの中で「調理方法」 がそのカギを握っていることが分かってきました。そこで実験として次のように比較をしてみました。
@切った牛蒡を40℃のぬるま湯に10分浸しその後5分間熱湯で茹でる。
A切った後そのまますぐに沸騰したお湯で茹でる。
B生で切ったまま。
各牛蒡に試薬をたらし糖分の発生変化をみると、@には試薬が糖分に反応しているのがみられる。
この様に料理の方法で甘味を増すことができるのである。そしてまた室温24度の暗所で1週間保存をしたり、冷 蔵庫ならば4度で3ヶ月保存することで甘味を増すこともできるのです。これは一体どういうメカニズムでこのよ うになっているのでしょうか?
それはイヌリンが分解することでフラクトオリゴ糖に変わるからなのです。このクラフトオリゴ糖は腸内のビフィ ズス菌のエサとなり腸内細菌のバランスを良くし整腸作用を促してくれます。
■牛蒡は近年アメリカでもスーパーなどで売られている程の人気を博しています。しかしこの牛蒡も苦手な人に言 わせると「見た目があまり・・・・ちょっと・・・」とか「木を食べているみたいで固くていやだ」とか言われま す。実際に実験をするまでもなく牛蒡は噛むときの筋力の活動量は大変多く、歯に故障がある人には傷害の多い食 品といえます。しかし牛蒡は固くて「噛まなくてはいけない」食品だからこそ意味があるのです。噛むことは消化 の第1歩なのです。胃や腸などそれ以降の消化器系統の働きを高め、良く噛むことは脳にも刺激を与えて脳の活動 を促しひいてはボケなどの予防にもなるのです。牛蒡は昔流の言い方をすれば「根」を身につける野菜、つまりこ れを食べることで根性がつくという訳でしょうか。この冬を牛蒡で元気に乗り切りましょう。

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医食同源J…甘酒(アマザケ)

■お正月になると初詣などで飲む機会も多くなる甘酒、寒い日には欠かせない飲み物と思います が、この甘酒は自然の総合ビタミンドリンクと言われるほどあらゆる栄養素が含まれている飲 み物なのです。タンパク質、糖質、食物繊維、乳糖、クエン酸などで、ビタミン類はB1、B2、 B3、ニコチン酸、葉酸、パントテン酸、イノシトール、ビオチン、チアミン等が豊富に含ま れている。酒とは言ってもアルコール分はほとんどなく、自然の発酵食品なのでタンパク質が 吸収されやすい形で生きている食品なのです。甘酒の健康効果は、点滴と同じで微量の糖を体 全体に早く供給する作用が強いので、貧血気味の人や普段から栄養が偏りやすい人、栄養が うまくとれてない人などには大変効果的な良い食品です。
■甘酒の作り方には2通りの方法があります。
一つは縁日などで売られている、白米のかゆに麹(糀)などをまぜて醸造したもので、おいし く作るには1〜2日かかります。麹には血圧降下、コレステロール低下などの作用があること が認められており、さらに麹の有効成分は熱湯で容易に抽出することができるので甘酒に適し ているのです。
もう一つは家庭などで簡単につくれる、酒粕を溶かして砂糖で甘みを付けたものです。
■酒粕はコレステロールや脂質を排泄する働きや血糖値の上昇を抑制する効果が認められてい ます。しかし酒を造るには先ず甘酒を造るところから始まり、そこからアルコール発酵に入る ので、その水分を搾ったのが酒で残ったのが酒粕ですから、元を正せば糀も酒粕も同じなので、 その作用もほとんど同じと考えられます。甘酒には血糖値の上昇を抑える働きがあるので食後 1杯の甘酒で充分な効果が期待できます。1日1杯の甘酒を3日続けただけで血圧を下げるこ とができます。甘酒には米と麹菌が一緒になって麹となる時にタンパク質が分解されて活性ペ プチドができます。この活性ペプチドは血圧を上昇させる酵素の働きを抑え血圧を下げる働き があるのです。さらにガン細胞だけを殺す癌細胞剥製遺伝子のNK細胞を増加させる働きもあ るのです。

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医食同源K…胡麻(ゴマ)

■最近は健康食に敏感な人が多く、少しでも合理的な食事を心掛けているようです。種類も多種多様な 物が出回っているようですが、その中でも胡麻は代表格と言えるでしょう。その起源をたどると、今 からおよそ200万年前にアフリカのサバンナで生まれたと言われています。ギリシャやエジプトでは高 栄養食品として愛用され又古代エジプトでは大変貴重な物として胡麻一粒が牛一頭と交換されたと言 う伝説も有るくらいです。
■味、風味はもちろん体に大変良い影響を与えてくれる胡麻ですが、その代表的な効果がLDL(悪玉) コレステロール値を低下させる効果です。この効果を高める為には、@良くつぶして食べる、Aビタ ミンEと共に食べる、この単純な2つの事が栄養効果にはとても大切な事なのです。
■ここに実験として毎日大さじ三杯の胡麻を@擂らない胡麻だけ、A擂らない胡麻と薩摩芋、B擂った 胡麻と菠薐草、これを3人とも一週間食べ続けてもらいその結果を見ると、LDLコレステロールの 変化率は明らかにBの人が効果的であることが示されています。
その理由は、(A)人の体内に入ったLDLコレステロールは小腸へと運ばれて行き腸壁から吸収され 、過剰してくるとやがて成人病の原因となるのですが、胡麻の中に含まれているセサミンがこの腸壁 から吸収される前に腸内で吸収されないようにしてしまう働きがあるのです。(B)そしてさらにLDL コレステロールは増加してくると酸素と結びつき血管壁に酸化悪玉コレステロールとして沈着し動脈 硬化の原因になるのですが、胡麻の中に含まれているセサミンはビタミンEと協力してこの酸化を防 ぎ血管を健康に保ってくれているのです。このA,B2つの条件が重なり合う事でその効果は飛躍的に 向上して行きます。胡麻とビタミンEを組み合わせることはダイエットは元より健康維持にすごい パワーを発揮します。その組み合わせの理想型が、「ほうれん草のごま和え」に見られるのです。 今更ですが和食の先人の知恵には驚嘆と感謝でまったく頭が下がりますね。
■そして胡麻は魚などに多く含まれているDHAやIPAなどと摂ることで魚の持つ栄養効果を引き出す事 ができます。脳や目の疲れなどに効果のあるDHA・IPAは私たちが生きて行くのにとても必要な栄養素 ですが、とても酸化されやすいと言う弱点があり、酸化されてしまうと有害な物質(過酸化脂質) となるので私たちの健康を脅かします。しかし胡麻と共に摂れば、胡麻に含まれているセサミンが これらの酸化を防いでくれるので、能率の良い栄養効果が期待できるのです。
今回次のような、@鰯だけ食べる、A鰯と胡麻を食べる、と言う実験してその結果を見ると、胡麻 のセサミンによって体内のDHA・IPAが酸化されずに有効に吸収されたことが分かります。さらにこの 実験を一週間続けてみると、鰯を食べ続けることにより目の疲労度は二人ともかなりの減少を見る ことができました。しかし胡麻を一緒に摂った方が全く疲れ知らずになっていたのです。
■このように、食べ物は体に良いからといってただ何となく食べるのではなく、その根拠を知ってお くことで、肥満や色々な疾病やさらに浪費までも追い出し健康的で経済的な毎日をおくることがで きるのです。目先だけではなく良く考えた献立にしましょう。

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医食同源L…滋養(ジヨウ)味噌

■日本で味噌は平安時代には主に公家の間で主として食べられていましたが、戦国時代に入り武 家・商人・農家などでも食べられるようになりとても大切な食料でした。一般に「英雄色を好む」と 言いますが、実は味噌を日常食べ続けた結果、精力が付き色気が付いてきたので「英雄味噌を好 む」が本当だという説もあります。というのも、毛利元就は味噌好きで有名ですが71歳で12番目の 子をつくり、また徳川家康においては沢庵和尚から健康によいと聞いてから常食にし61歳で16番目 の子をつくり、戦場には味噌焼きにぎりを必ず持っていったそうで、味噌は昔からパワーの源とし て利用されていました。
■滋養味噌という種類の味噌が有るわけではありません、味噌に何かを合わせて作るおかず味噌の ことです。味噌に何かを合わせる事で味噌が持つ本来の味と、合わせる物が持つ味が合わされる事 で新しい味に変わるのです。しかもお互いに含み持つ有機物が分解されそれぞれの健康効果に加え て新しい健康効果が生まれるのです。これは日常的に利用さえすれば自然に健康効果が得られる事 を意味するのです。みその本来の健康効果は@胃腸の働きを活発にする、Aコレステロールの改善、 B糖尿病の予防、C動脈硬化の予防などです。
■九州・広島・徳島などでは梅味噌と言うのがあります。これは青い梅を洗って水を切り味噌に2〜 3ヶ月漬け込んだものを調味料として使うのです。元来梅には@疲労回復、A胃腸の働きを整える、 Bカルシウムの吸収を促す、C食中毒の予防などの効用がありますが、味噌に梅を漬けることでベ ンズアルデヒドという新しい成分が生まれ、梅のクエン酸と味噌のメラノイシン・イソフラボン・配 糖体(グリコシド等)などが血液の流れを良くしコレステロール値を下げてくれ、血液中の余分な 糖や脂肪・内臓に貯まった脂肪を減らしてくれます。一日に大さじ1杯を続けることで@ガン予防、 A感染症予防、B血液代謝促進、C高脂血症予防、D糖尿病予防、E肥満の予防改善、F肝臓の解 毒作用を向上、G夏の疲労回復などの効用が生まれます。青梅の青酸化合物は毒素ですが味噌にと け込むことによってアミグダリンという物質に変わりベンズアルデヒドになるのです。ベンズアル デヒドはすでにアメリカではレッドリル青酸化合物(ビタミンB17)と言う形でガンに良いことが 証明されています。
■鹿児島県では明治初期の頃から豚味噌と言う滋養味噌が各家庭に伝わっており、西郷隆盛もこよ なく愛したと言われています。これは豚肉を刻んで油で炒め砂糖と麦味噌を加えてねっとりさせ冷 ましてから瓶に詰めて保存食にした物で、今でも家庭の滋養食として利用されています。豚肉は味 噌にに漬け込むことで動物性の蛋白質と植物性の蛋白質とが発酵して良質のアミノ酸が出来ます。 しかしこのアミノ酸に分解される手前のペプチドに変わった時に食べると大変生理効果の高い物質 になるのです。豚味噌の蛋白質は熱を加えることでメラノイシンという有効成分が生まれ、これは 腸内で細菌を増やしたり活性酸素を抑えたりするので老化を予防してくれるのです。毎日の朝食に 炒め物として一日大さじ一杯続けることで若さを保てます。保存期間は半年を目安にすると良いで しょう。尚味噌は色の濃くなったもの程メラノイシンの量が増えています。
■知る人ぞ知ると言うのが大蒜<にんにく>味噌です。大蒜をすり下ろして油でこんがり炒め味噌と 蜂蜜を加えた物です。大蒜のガンに対する予防効果は野菜の中ではトップと言われていますが、大 蒜の臭いの成分はアリシンといって摂りすぎると胃炎を起こしますが味噌に漬けて熟成させること で薄くなり生では無かった新成分として水溶性イオウ化合物が生まれるのです。これは活性酸素を 除去してくれる作用があるので脳細胞を活性化し萎縮を抑え脳を常に若々しく保ってくれて、動脈 硬化を予防してくれるのです。
■滋養味噌はこの様に発酵することで有機物が分解され、新しい健康作用が生まれ、栄養の吸収効 果が上がり、素材の悪い成分を無くし、旨味を増して料理を美味しくさせ、日持ちがするので保存 が出来るとても有効で便利な食品なのです。

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医食同源M…鳳梨(アナナス)(pineapple)

■パイナップル」あまりにも聞き慣れた名前ですが、pine(松毬)の様なapple(林檎)と言う意味の 英語です。和食では鳳梨と書き、ホウリとかアナナスとか言います。中国名は菠羅(ポールオ)。仏 語や西語のアナナースはもとのペルー語から来た植物名です。原産はブラジルとされていますが、 幕末の頃オランダの漂流船に乗って沖縄の石垣島に着いたのが初めとか。夏、地表近くに松毬状に 密集した紫色の花を開き、花托の頂の小葉塊はバンダナで結んだ髪のようです。パイナップルは大 きな一つの実のようですが、小さな独立した実が集合したものなのです。
■世界的には100種以上もあるのですが、葉の緑に棘のないスムースカイエン種が多く、他にはクイ ーン系、レッド系、スパニッシュ系などがあり、我が国ではN67-10という品種が栽培されています。
■パイナップルは独特のタンパク質分解酵素プロメリンが含まれているので、消化を助け夏ばての 予防や改善に役に立ちます。実験として人工胃液の中に一つは肉の塊だけを入れもう一つは肉とパ イナップルを入れて30分撹拌すると明らかに後者の方が消化速度が早いことが分かります。次にパ イナップル液に肉を30分浸けた肉とそのままの肉の硬さの測定をするとパイナップル液 に浸けた肉の方が柔らかくなっていることが分かりました。パイナップルには有機酸(リンゴ酸・ク エン酸)が多く含まれていてこれが唾液・胃液の分泌を高めてくれるので、消化して吸収する効果を だんぜん高めてくれます。タンパク質と摂れば疲労がたまりにくくなり、疲労度(mmol/l乳酸値)が 下がり免疫力(pg/mlインターロイキン産生能)が高まります。またブロメリンはカルシウムと同時に摂ること でカルシウムの吸収の効率(IU/L 血中アルカリフスファターゼ・・・汗などでカルシウムが不足すると骨形成酵 素が血中に流れ出す骨が破壊されたとき出る酵素)を良くしてくれますので、今年の夏のように連日 の猛暑や熱帯夜で体力が低下している時には大変有効に役立ちます。
■この様にブロメリンの酵素作用は大変強力なので、空腹時に生のパイナップル を食べると胃の粘膜を破壊しますし、胃に潰瘍などのトラブルがある時は生のものは控えなければ なりません。またゼリーで固めるときも生だとゼリーが固まるのをじゃまします。しかしこの様な トラブルを解消するには熱を加えるか缶詰などを利用すれば良いのです。ブロメリンは60度以上で その効力を失ってしまいますから、炒め料理に加えたパイナップルにはブロメリンの効果は期待で きません。そして更に未熟なパイナップルにも要注意です、消化不良や肌荒れを起こすことがあり ます。
■パイナップルを選ぶ時は、固くしまって上部の緑色が濃く下部が黄色く柔らかいもの、葉が小さ くしもぶくれの形のもの、下の切り口から甘い香りの強く感じるものなどを注意してみて下さい。 そして全部をおいしく食べるコツは、買ってきたら葉を下にしてM図の様に一日常温で置き、粒を 壊さないように溝に沿ってL図の様に切れば、上から下まで均一な甘さでみずみずしく食べられま す。ブロメリンは腸内腐敗物を分解してくれるので、下痢・消化不良・ガス発生など消化器障害に 役立ち、パイナップルの食物繊維は便秘を解消し、酸味があるので食欲を増進し、ビタミンB1の 働きも手伝って疲労回復に役立つと言う夏ばてにはもってこいの食べ物です。最後に健康効果を 期待するなら一日100g摂れば充分でしょう。

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医食同源N…干し柿(ホシガキ)

■千年以上前から親しまれてきた干し柿は栄養満載でお腹に優しい天然の和菓子です。我が国 最古の医学書「医心方」に「柿は鼻と耳を通じ、疲労困憊(ひろうこんぱい)を補うのに有効 である。また干し柿は、胃を丈夫にして内臓をあたため、鬱血(うっけつ)を除く」とあり、 昔から「柿が赤くなれば医者は青くなる」と言われるほど健康に良い食品なのです。しかし漢 方では「柿を食べると体が冷える」と言われていますが、これはカリウムの利尿作用で沢山食べ た時にトイレが近くなるのでこの様に言われていて、むしろ体を温める食品だという説もあります。 ■甘柿は分子間呼吸によってアセトアルデヒド(アセチレンが水と結合した分子の状態)を生 じ、これが果実中に点在するタンニン細胞中のシブオールと反応して水に不溶のコロイド(大型 化した粒子状態の分子の分散相)に変わり、渋味を失って甘くなる。甘柿の果肉にある黒い斑点 は、タンニン細胞の変化した物である。渋柿を甘くするためには渋抜き(アルコールやお湯をか けたり、炭酸ガスをかけたり、林檎を同居させたり)して生で食べますが、渋柿も干すことで甘 くなります。柿渋は日本酒を製造する時の清澄剤(せいちょうざい)や染色をする時の染料等に も用いられています。
■生柿の特徴としてビタミンCはみかん並に多く、カロチン(ビタミンA)も豊富なので抗酸化 作用がありガンや生活習慣病の予防、風邪などに効果があります。甘柿はそのまま食べる場合が 多くあまり干し柿にはしません、干し柿にするのは渋柿で作ります。
生柿に含まれているプロトペクチンは柿を干すことで水溶性のペクチンに変わりコレステロール を吸着し排泄しやすくしてくれます。この作用によって血中コレステロール量を下げてくれるの で血栓症予防に効果があります。また柿を干す事で中に含まれる成分が濃縮され、アルギニンと いうアミノ酸が生のものより6倍に増えるので疲労回復に効果的です。アルギニンは体内に入る と脂肪の代謝を良くし筋肉を強化して疲れにくい体にするのです。干し柿の白い粉は干すときに 柿の表面にブラシなどで細かい傷を付けることで内側から天然の糖分が表面に吹き出て乾燥した もので、そのまま干したのでは白い粉はあまりできません。
■干し柿はカリウムが生の柿の4倍と多いので利尿作用があり塩分を排泄し血圧の安定にとても 効果的です。渋味は無くても成分は無くならず、その渋味の成分であるタンニン(シブオール) は胃の粘膜を正常な状態に修復する作用があり、他にも果糖を初めカタラーゼ、ペルオキシター ゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ等が含まれているので、アセトアルデヒド(二日酔いの成分) を早く分解して体外に排出してくれ更に二日酔いで多量に失ったカリウムも補充してくれるので 二日酔いの快復にはとても効果があります。糖質は生の甘柿16%に対して渋柿18%と多くさらに 干すことで34〜71%にも増え、混じり合って入っている蔗糖や果糖よりもブドウ糖の割合が増え るので体内への吸収が良くなり、体温保持に効果的なので冬場の食品として役立ちますが、食べ 過ぎると肥満の元ですので1日に1〜2個位が適当(265Kcal/100g)でしょう。干し柿は1食分 の食物繊維が牛蒡の5倍、セロリの10倍あるので便秘の改善には大変有効で、さらに下痢にも効 く便利屋なのです。
 昔から「歯固めの儀式」と言うのがあり、歯が生えそろう頃の子供に干し柿を食べさせること で歯を丈夫にして、固い物を噛む習慣を付けることで記憶に関する神経細胞を活性化させる効果 がありますので成長期の子供にもあの適当な堅さの食べ物は大変有効と言えます。
福島県名産の干し柿にあんぽ柿(天干し又は甘干し⇒あんぽ)と言うのがあります。一般的な干 し柿の水分は20%位に対して50%もあり果肉はとても柔らかいのですが、これは皮を剥いた柿を 雨に当てないように1ヶ月位陰干したもので、他には無い持ち味があります。
干し柿はこの他にもB1、B2や亜鉛が含まれているので消化吸収に有効で免疫力が強化され、味 覚の調整や細胞新生に有効なので肌の新陳代謝に効果があります。

生 柿100gで⇒ビタミンC 70mgビタミンA 65IU食物繊維 0.4g糖質 15.5g
干し柿100gで⇒ビタミンC  3mgビタミンA 180IU食物繊維 1.5g糖質 68.9g

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