速記者や速記文字なんかが登場する小説や映画、ドラマも結構あるんで、ちょっと紹介しとくわな。小説で映画化されたいうようなやつは、とりあえずワシが読んだり見たりしたもので紹介しとくわ。
円朝芝居噺 夫婦幽霊 〜辻原 登〜
速記本で有名な三遊亭円朝はん、「怪談牡丹燈籠」は有名やわな。その名人の落語に幻の一作があったのが発見されよった。しかも、それは速記文字で書かれとるんや。方式は田鎖式な。「迷走地図」の速記文字解読やないけど、そんな感じで「夫婦幽霊」いう幻のネタが現代に蘇る……いう感じやな。
実在の速記事務所がそのまんまの名前で出てきたり、後には芥川龍之介はんまで絡んでくる。どこまでが現実でどこまでが創作なんか、立ち読みレベルのわしにはようわからんけど、なかなかおもろそうや。
SOKKI! 〜秦 建日子〜
速記を題材にした一番新しい小説は、これと違うかな。著者の秦はんは、このごろテレビドラマでヒットを飛ばしてる脚本家さんやけど、実は早稲田大学の速記研究会に所属してたそうな。
サブタイトルには「人生には役に立たない特技」とか「美女に釣られて、速記研究会」とか、なかなか刺激的な言葉が並んでる。まさにその言葉どおり、美女に釣られて速記研究会に入ってしまった主人公の恋愛青春ストーリーという感じやな。文系クラブと思われがちな速記部やけど、実はバリバリの体育会系……てな感じがよく伝わってくるわ。
余白の愛 〜小川洋子〜
離婚してから難聴に悩まされることになった主人公が、病気を克服した体験を話し合う座談会に出席したら、そこにYという速記者が仕事で来ていた。その繊細な指の動きにすっかり心を奪われてしまう彼女……という感じで物語は始まっていくんや。
小説にも、それぞれ「色」があるわな。この小川洋子はん、最近では「博士の愛した数式」がヒットしたけど、やっぱりそれに通じる独特の「色」があるような気がするな。全体にゆったりとストーリーは進んでいくんやけど、終盤には思わずゾクッ!となるような感じもあるで。
ドルシネアにようこそ 〜宮部みゆき〜
ご存じ元速記者の宮部はんが速記を題材にした短編や。速記事務所でバイトをしながら速記検定1級を目指してる青年が、何気ない日常から急に思わぬ事態に引きずり込まれていく……みたいな感じやな。短編やから、あっという間に読んでしまうけど、読んだ後にはきっと「何か」が残るんやないかと思うわ。
ちなみに、「ドルシネア」いうのは高級ディスコの店の名前な。この短編は「返事はいらない」という短編集に納められてるわ。
水中花 〜五木寛之〜
主人公は速記事務所に勤める森下梨絵(25歳)。ドラマでは松坂はんが演じてたけど、ある日、その梨絵の妹がちょっとした「事件」を起こしよる。で、その話を聞いてびっくり仰天した梨絵はん、プロの速記者として絶対にやったらあかんミスを立て続けに2つもしてしまうねん。ま、小説やから「おもろいな〜」てな感じやけど、もし自分が実際にこんなことしたら大変やろな。
結局、幸か不幸か警察沙汰にはなれへんかったんやけど、その後始末のために梨絵はんは速記者とは別の仕事もせんならんようになるわけや。ほんで……この後は、まあ自分で読んでみてや。
迷走地図 〜松本清張〜
松本清張はんが速記者を雇って口述速記で多くの作品をつくったいうのは有名やな。この作品は、そんな速記との付き合いが長い氏ならではの描写があちこちに出てくるわ。中盤から話の中心的存在になる人物が、実は口述速記者を雇ってる設定やしな。
この作品も、たしか映画化されたはずや。内容は政治絡みの複雑な話やねんけど、実はこの作品では速記文字が重要な鍵を握る設定になってる。方式が「熊崎式」いうのは何ともマニアックな気もするけど、それを中根式の速記者が解読していくんやわ。まあ、結末は……自分で読んでや。
シェイクスピアを盗め! 〜ゲアリー・ブラックウッド〜
孤児院で辛い生活を送っていた少年(ウィッジ)のとこへ、ある日、1人の男が引き取りにくるねん。で、その男がウィッジに、自分が開発した速記術を無理やり教え込むんやわ。ウィッジは頑張ってそれを身につけたんやけど、そしたら今度はその技術を買い取ってくれる人が出てきて、ロンドンへ行ったはええけど、何や、盗人みたいな仕事をさせられるねん。
ほんで、一体何を盗むやかやけど、それは、まあ本のタイトルを見てもわかるやろ……ということで、とりあえず読んでみてや。
あなたにも書ける恋愛小説
借金を抱えた貧乏作家が怖いお兄さんらに「金返せ」と脅されて、1カ月で新作の小説を書き上げる約束で何とか「お引き取り」願うんや。ほんで、その作家は速記者を雇って口述速記させて新作を仕上げていく……という感じやな。速記はタイプ式や。ロマンチック・ラブコメディという感じの仕上がりになってる。
この話、オードリー・ヘップバーン主演か何かで似たようなのあった気がするわ。すぐにはタイトル出てけえへんけど。速記者役のエマ・ワトソンが1人で5役やってるのもおもろいで。
グランドホテル
「グランドホテル」という高級ホテルに宿泊するいろんな人の人生を個別の視点から描くんやけど、それがうまく重なりながら1つのストーリーが展開していくんや。邦画でヒットした「有頂天ホテル」の原型になったのがこれや。何でも、クラシックの名作の1つやとか。
いろんな登場人物がいてるけど、その中に色気たっぷりの女性速記者がおる。やたら目立つ大胆な速記者やわ。速記はタイプ式やけど、「ソクタイプ」なんかと違て、喧しい大げさな入力や。あんな指の動きでほんまに全言記録できてるんかいな?いうような感じや。