ここで言う「速記」は、文字や符号なんかを使って書き取る、記録するという意味な。それやったら1種類しかないやんと思う? ところがどっこい、そんなことはないんやで。
まず、大きく分けたら手で書く「手書き式」と何か機械を使う「タイプ式」に分けられるやろか。あ、ただこの分け方はワシが適当に言うてるだけやから、正式な分類法になってるんかどうかは知らんで。そやけど、まあ大体イメージできるやろ。手で書くかタイプするかという違いやね。フツーの人が「速記」と聞いてまずイメージするんは、グニャラグニャラ〜サ〜ラサラ〜って感じで手書きする形やないやろか。タイプ式の方が身近やという人は、多分裁判に縁のある人やないかな。裁判所以外では、映画やドラマの中でちょこっと見かけるぐらいやからな。手書きは今でも国会中継見てたらいつも真ん中におるし。
タイプ式のやつは、その使う機械も幾つか種類があるけど、一番多いのは裁判所の速記官たちが使う「ソクタイプ」配列のやつ。「竹本キーボード」とか「ステンチュラ」いうのもその仲間やな。もうちょっと細かに言うたら、「ソクタイプ」はタイプしたらレシート型の紙に記号が印字されていく昔からあるタイプ。「竹本キーボード」はそれに電気的な接点をつけて「はやとくん」という自動反訳に対応できるようにしたもん。「ステンチュラ」はアメリカのステノグラフ社という世界各国のタイプ式速記者向けのキーボードをつくってるとこが日本の「ソクタイプ」配列に改造してくれたやつ。もちろん、パソコン処理できる高級機。あと、10個ぐらいの専用キーボードで入力していく「ミニット10」、「ソクタイプ」配列をもとに新開発した「キャバ」とかな。「キャバ」は、まだ市販ベースにまでなってないかな。
タイプ式の強みは反訳の速さやろか。逆に弱点は、当たり前やけど、機械が要るということや。事務所に据えつけて使うならええけど、あちこち持ち運ぶのは、幾ら小型やいうても、それなりに大変よな。電動のやつは、バッテリーやAC電源の確保もせんなんし。手書きやったらペンとノートだけでとりあえずは何とかなるけどな。
手書き速記の方式は、ほんまに実用になったんかいな?というような、単に発表されただけのものまで含めたら結構な数になるやろな。軽く100は超えるんちゃうやろか。俗に「4大速記法」て言われてきたんは、衆議院式、参議院式、中根式、早稲田式やな。衆議院式は衆議院、参議院式は参議院の速記者たちが使う方式、中根式は主に高校の速記部を中心に広がったはずや。早稲田式は、一時、通信教育だけで年間13万人ぐらい勉強していたらしいわ。もちろん、今でも専門学校もあるし、通信教育もやってんで。他には、V式、石村式、山根式などが有名どころやろかな。山根式は、速記学校がなくなってしもたけど、大学速記界の名門・関西大学速記部がず〜っとその伝統を引き継いでるわ。中根式は、いろんな人が改良して「○○派」というような、いわゆる分派みたいな形が結構ある。ちなみに、ワシは、早稲田式をベースに、途中からその高速型とも言える「佐竹式」を取り入れて、さらに自己流のヘンテコ文字を入れて現在に至ってるという感じやろか。
各方式の詳しいことについては、Linkからそれぞれディープなサイトにリンクしてるから、そっちで見てんか。……いや、手抜きやないで。同じようなことここで書いてもむだやんか。……何や、その疑いの目は。ほんま、あんた見る目あるな。まあ、ワシもそれなりに忙しいんじゃ。許さんかい。
速記を余り知らん人からよう聞かれるんは、「方式が違たら読めやんの?」ということやな。これは、一言で言うたら「無理」。まあ、中には似たような方式、兄弟というてもええようなものもあって、そういうのやったらある程度は読めるかもしれへんけど、フツーは基本となる文字からして形が違うんで、無理や。同じ方式でも、習った場所、先生、年代なんかで微妙に違うし、自分で勝手につくった省略文字なんかがあるともっと違うから、なかなか大変やな。ただ、数は少ないけど「マルチ方式」いうて、1人で幾つかの方式を読み書きできる超人もおるけどな。語学でいうバイリンガーみたいな人な。
ただ、メジャーな方式やったら、文字の形である程度の方式は想像できるし、それがわかったら基本文字表なんかを使えばわかる部分もあるやろな。そやけど、なかなか100%すらすらっと読むいうのは無理ちゃうやろか。古代の文字を解き明かすような感じで、じっくり取り組んだら何とかなるかもしれへんけど。