紹介；安丸良夫氏による日本思想状況の整理

☆　紹介；安丸良夫氏による日本思想状況の整理　☆

NAME： ウェブマスタ－　　

川口様

ずいぶんとお久しぶりでございます。お元気にされていますか。

ご紹介させていただきました米原論文がお役に立てて光栄です。お教えいただいた西島建男
の「戦後思想を読む」を、よく立ち寄る中央区の某書店で見つけまして、５分間ほど立ち読
みしてきました。西島建男は元朝日新聞の記者で、二年前の丸山真男死去の折に朝日新聞二
面の「評伝」を執筆しています。内容的には「ポストモダン」論の辺りなど、新聞記者らし
く事実を事実としてよく捉えて、きちんと整理しているように見受けられました。浅田や中
沢のところなどよく書けているのではないでしょうか。ここに書かれているような、八○年
代に起った空虚きわまりない出来事を、見たくない人間や思い出したくないアカデミ－の若
僧たちがたくさんいることでしょう。しかしながら事実は事実です。

先月から「日本政治思想史講義録１９４８」をずっと読んでおりまして、ペ－ジを捲り返し
ているうちに時間が経ってしまいました。結局のところ「日本政治思想史研究」三論文を一
から読み返すことになり、さらに平石直昭や田尻祐一郎などへと読み進んで、コツコツと勉
強をすすめております。今週からは、朝の電車で野口武彦の「荻生徂徠」を、帰りの夜の電
車の車内で子安宣邦の「本居宣長」をと、二つの新書を読み始めました（鞄で持ち運ぶのに
ちょうどピッタリサイズで一人悦に入っています）。新書ではありますが、両方とも相当に
歯応えがあります。

話が脱線しますが、この朝と夜の読む順番が逆だとどうもいけません。ディスク－ルの思想
史は、仕事で疲れてポ－ッとした夜の頭でふにゃふにゃと読むのがいちばんよいようであり
（笑）、野口武彦の漢文を読むのは朝のシャキッとした頭でなければならないようです。と
言うよりも、徂徠先生のシャキシャキッとした歯切れのいい漢文（新書の中では訓読みにし
てもらっていますが）を読んでいると、自然に朝の寝惚けていた頭が醒めてくる感じがして、
ちょうど具合がよいのです。頭が醒めて来た頃に、電車が川を渡って、窓の外に江戸の街並
みが見えて来まして（笑）、これがまた何とも言えません（茅場町の下を地下鉄がくぐり抜
けたりして）。朝の電車で「荻生徂徠」、帰りの電車で「本居宣長」。全国のサラリ－マン
諸氏にお薦めしたい絶妙のライフスタイルです。

近世研究というのも独特の世界があっていいものですね。川口さんも「戦後思想論」に飽き
られたら、ぜひ近世の方にいらして下さい。東京に住んでいるということは、確かに近世を
研究するにはメリットが多いと感じます。

昨年の夏に、平石直昭の放送大学教材を読んだときは、「方法的視角が弱い」とか「あまり
にインフォメ－ションの思想史である」という感想を（正直に）持ったのですが、少し考え
方が変わってきました。近世の思想家群像には確かな豊かさがあります。ひょっとしたら戦
後思想史よりもはるかに豊饒なのではないかという気さえしてきます。そのことは、また機
会があれば詳しく論じてみたいと思います。けれども、けれども何といっても今回あらため
て思い直したのは、丸山真男の「日本政治思想史研究」の素晴らしさでありました。

私は、丸山真男の二つの代表作である「日本政治思想史研究」と「現代政治の思想と行動」
の二つについて、これまで、後者の方は永遠不滅のものとして輝き続けるけれども、前者の
方は後代の優秀な専門家たちの研究業績によって次第に相対化されて行くだろうという具合
に検討をつけていました。が、どうやらそうでもなさそうです。こちらの方も後者と同じよ
うに、読み返すたびに新たな発見や感動がある作品でした。全く古くならないですね。

去年の秋から冬にかけて、丸山真男の思想史論について二つ三つ書きましたが、今回少し着
想を得て、またその続きを再開しようと思っております。以前より荻生徂徠が身近に感じら
れるようになったお陰で、その着想が浮かびました。またまた脱線ですが、五月の連休のと
きに旅してきた鶴岡（庄内藩酒井家）の致道館は徂徠学の系譜です。観光名所の一つとはな
っていますが、実に見事というほかない素晴らしいところでした。武士にとって剣と学問と
は同じものなのだという私の直観を、あらためて確信させてくれる空間でした。二時間でも
三時間でも一人で佇んでいたい心の聖地です。司馬遼太郎も訪れたことがあったでしょうが、
彼は何を感じたことでしょう。

校倉書房の安丸良夫の「＜方法＞としての思想史」も同じ中央区の本屋で立ち読みして来ま
した。その感想はまた次の機会にいたしましょう。

お返事にはならないかもしれませんが、短い時間、短い人生をひしひし感じる年並みになっ
てきますと、意味のない読書のために時間と金を浪費するのはどうしても避けたいと思うよ
うになってきます。墓場に足を入れる前に「弁道」や「論語古義」に接近したいと思ったな
らば、それに向けてそれなりに最適化の努力をしなくてはなりません。元禄の江戸の町にも
ゴチャゴチャしたガラクタはいっぱいあったことでしょう。東北大学文学部の日本思想史研
究室が、わがホ－ムペ－ジにリンクを張っているのも、今回ちょこちょこ作業している間に
見つけました。

リンクペ－ジを新装しましたので、感想などお聞かせいただければ幸いです。それではまた。

[1998/06/19 23:26:47]

NAME： 川口泉　　

ウェブマスタ－田中様

お返事が大変遅れてしまいました。
どうレスつけたらいいのか、迷っていたこともあります。さらに、先月下旬、Ｃ
ＡＴＶなどを導入したことで、はてどう使っていいのかと思いまどっていたこと
もあったりで（それほどチャンネルが多く、うれしい悲鳴です）、２週間のご無
沙汰となってしまいました。

丸山神格化の動きとそれへの批判について

これは誤解なきようにお願いしたいのですが、私が紹介したとおり、佐高信によ
る「手帖の会」運営方針への批判という、一定の限局された場面でのものでした。
私がそこから類推して、丸山を持ち上げる人たちの中にそのような危険な傾向を
感じたものですから、紹介しただけのことです。

西部邁？　佐伯啓思？　一切関係ありません。神格化批判は、無内容な丸山「批
判」とは関係ありません。むしろ、丸山の主張に忠実に、その内容を生かしてい
く方向においてこそ必要なことなのです。

佐高の「手帖の会」批判は誤解にしても、その訴えは、丸山政治学を未来に向か
って発展させようとする我々においても、厳しい自己点検として常に意識化して
おかないといけないものであろうと思います。それを「丸山政治学否定派の主張
である」がごとき「批判」の仕方では、すれ違いにしかならないように感じられ
ます。

安丸論文の評価について

まさか、佐伯の指摘（京都学派うんぬん）の影響で安丸良夫に反感をもたれてい
るわけでもないでしょうが（笑；安丸氏は京都大学卒業）、ずいぶんとムキにな
って私の紹介した現代思想状況への見取り図を否定しようとされてます。私は別
に安丸学徒でもありませんし、自分が紹介したものを否定されてムキになる必要
もなく、また弁護する義務もありませんが、このように書いてしまう田中さんの
姿勢には極めて危険な傾向を感じざるを得ませんので、少し言及させてください。


なお客観的な評価として、安丸良夫の日本思想史学が、丸山が到達し得なかった
地平に達しているすぐれた業績であることは明白です。


先日、氏の処女作と言える『日本の近代化と民衆思想』（青木書店、１９７４年）
をやっと古書店で見つけ購入しました。インタ－ネットではずいぶんと高くなっ
ていて、業界すじでの評価をうかがうことが出来ます。私がみつけた古本屋では、
ネット古書店よりは半分の値段で購入出来たのですが。


さて、田中さんは安丸による総体的な評価、

＞戦後第一世代の近代主義の知の地平の方が、いまもずっと輝いて見えるという
＞ことにもなるのではなかろうか

との「事実認識」には同感されつつ、そうした評価を下した安丸の「評価的視角」
に疑問を投げ、吉本隆明への不満などを述べられ、全体として、

＞思想（商品）市場の栄枯盛衰史の概説では思想史とは言えないのではないか
　とされてます。

しかしながら、あの論文は思想史の専門論文ではありません。「日本通史」という
「講座」の中の、戦後思想史をテ－マとして書かれた論文の、枚数も限られた一論
文でしかありませんでした。確かに突っ込みが足りない、と言えばそのとおりかも
しれませんが、私にはあの「講座」中の他論文と比して、さほど密度の落ちる内容
だとも思えませんでした。あれも言われてない・・・、これもない・・・、という
ないものねだりによる「批判」はそもそもナンセンスです。

ここまで書いてきて、先日、やっと区内の図書館の分館で、ご紹介いただいた
＞米原謙の『戦後思想を読む』（法律文化社、『日本の政治を考える』1992  所収）
　を借用することができました。

なかなか興味深い本のようです。これまでまったく無知の著者たちの主張に出合え
てうれしく感じます。この本をご紹介してくださった田中さんに感謝したいと思い
ます。

＞こちらの方は、安丸論文よりも丸山真男について多く言及されており（辛口の
＞程度もヨリ強いですが）、ペ－ジ数も適度にあって、読者には読みやすい整理
＞になっています。

とのことですが、私がざあ－と見た限りでは、丸山眞男への評価も極めて適切な
ようです。どうも田中さんにとっては「丸山眞男」にどれだけ言及されているか
いないか、が評価の絶対的規準なのではありませんか？安丸論文への不満は、第
１世代といっても丸山をワン・オブ・ゼム扱いしていることが主なものではない
のでしょうか？

＞あれもこれもとゴチャゴチャ出す必要はないのではないか

そりゃあ田中さんの趣味ではそうなりましょう。極端に言えば、丸山眞男だけで
済んでしまうわけですね（笑）。しかしながら、世間ではそれを「神格化」と表
記するようです。客観的な戦後思想史のアウトラインを知りたい、という読者に
は丸山眞男だけでは足りません。時代思潮を代表する思想家を、安丸良夫が取り
出したぐらいの程度は「あれもこれもとゴチャゴチャ出す必要」は十分にあるの
です。

とここまでは一応、予告というか、ご無沙汰をしたお詫びにアリバイ報告もあり、
書いてきました。米原論文をきちんと読んでから、また再論をしたいと存じます。
今回は簡略にて、失礼いたします。

川口泉

[1998/06/15 22:51:10]

NAME： ウエブマスタ－　　

川口様、

なかなか安丸良夫の思想史論へ行けないまま、スト－ンズや司馬遼太郎でお茶
を濁してしまって申し訳なく思います。今回は、少しだけ思いついたところを
申し上げることにいたします。川口さんが引用された安丸良夫論文の総括的な
部分ですが、

  > 全体としての後退戦のなかで、思想状況の大枠が市民社会論に本卦
  > 帰りしつつあるのだとすれば、丸山・大塚久雄・竹内好・鶴見俊輔
  > ・加藤周一らが苦心して切り拓いた戦後第一世代の近代主義の知の
  > 地平の方が、いまもずっと輝いて見えるということにもなるのでは
  > なかろうか

この「事実認識」については、私も基本的に同感の立場ではありますが、全体
を読んで私が疑問に思うのは、果たして安丸良夫自身はこの総括部分について、
どのような「評価的視角」で書いているのかということです。つまり、第二世
代や第三世代の「戦後思想家」の成果や意義についてどのように思想史的に評
価・整理しているのかというところを疑問に感じました。なぜいま第一世代だ
けが輝いて、第二世代・第三世代は輝きが萎縮・消滅してしまったのか、その
問題点についての安丸良夫自身の思想史的な分析は、この論文中には見られま
せん。

第一世代のみがホンモノで（第二・第三世代がニセモノで）あったからという
理由づけは、川口さんのものであって、安丸良夫のものではないようです。

この論文全体を読んでの私の感想ですが、第一世代、第二世代、第三世代とい
うことで幾人もの「戦後思想家」が登場して来ますが、実際に安丸論文の全体
構図の中で三世代論の主役としてスポットライトが照射されているのは、丸山
真男、吉本隆明、浅田彰の三人なのではないでしょうか。私の読み方ではそう
なります。

 > 六○年代の若者には吉本隆明が圧倒的な人気だったが、それは、吉本が
 > 制化したマルクス主義と近代主義に対抗して、現実認識のためのあた
 > らしい理論的枠組をつくりだそうと努力していたからである。
 （293-294ペ-ジ）  
 
 > この時代の吉本は、戦後の進歩主義を批判しつつ国家と対峙し、そのこ
 > とによって大衆・土俗をも批判的にとらえかえすという視点に立ってい
 > た。そこには、どこにも帰属すまいとする宙づりにされた緊張感があり
 >（中略）いま読みかえしても、若者たちへの圧倒的人気が納得できる。 
  (311-312ペ-ジ)

歴史認識、思想史認識の問題として、吉本隆明へのこの評価は、果たしてこれ
でよいのでしょうか。私にはとても共感できるものではありません。後の「定
式」のところでは、

 > （中略）かつては急進派の期待を一身にあつめた吉本隆明が、むきだし
 > の高度消費社会擁護派に転向したことが目立つ程度ではなかろうか。
  (319ペ-ジ)

と言っているのですが、それでは吉本隆明が何故「むきだしの高度消費社会擁
護派」に転向してしまったのかという大事な問題について、安丸良夫は思想史
的に掘り下げようとしていません。浅田彰についても同様です。「構造主義革
命のきびしい批判精神と熱気はどこへ行ったのだろう」(319ペ-ジ)と言ってい
ますが、元々の思想性に問題があったのかどうかについては触れられていませ
ん。結果的に吉本隆明も浅田彰も二人とも落っこちて、第一世代の市民社会派
・近代主義のみが輝いて残っていると言っているのみです。

そうすると読者としては、一体、この安丸良夫の戦後思想史論とは何なのだろ
うかということになるわけです。単に「論壇」でブ－ムになった「思想家」の
栄枯盛衰をずらずらと並べているだけなのかしらと首をかしげざるを得ないの
です。しかもこの場合の「論壇」たるや、相当にマニアックな商業思想的「論
壇」ではあります。『岩波講座日本通史』に提出する『現代の思想状況』とし
て相応しい対象の捉え方なのかどうか、私にはかなり問題があるように思われ
ました。

思想（商品）市場の栄枯盛衰史の概説では思想史とは言えないのではないか、
あれもこれもとゴチャゴチャ出す必要はないのではないか、それが私の素朴な
疑問です。（前に加藤先生にも同じ暴言を吐いて窘められましたが）この安丸
良夫の「戦後思想家論」は、例の「つぎつぎとなりゆくいきほひ」の表象を連
想させます。それが評価に値しないガラクタであれば、思想史として摘出・描
写する必要はないのです。もしもそれらがガラクタでなくて意味のあるものだ
と言うのなら、その思想史的意味をきちんと評価して論理化しなくてはなりま
せん。それが思想史家というものです。

似たようなテ－マのものとして、米原謙の『戦後思想を読む』（法律文化社、
『日本の政治を考える』1992  所収）を読みましたが、こちらの方は、安丸論
文よりも丸山真男について多く言及されており（辛口の程度もヨリ強いですが）、
ペ－ジ数も適度にあって、読者には読みやすい整理になっています。鶴見俊輔、
竹内好、吉本隆明、松下圭一が取り上げられ、いずれも丸山真男の思想（戦後
民主主義、近代主義、市民主義）との関連で比較整理され、説明されています。
かなりスタンダ－ド的な感じはしますが、タイトルから連想するほどスウィ－
ピングな感じはしません。

戦後思想史あるいは現代思想史としては、米原論文の方が安丸論文よりも読む
べき内容を多く持っていると思います（ただし丸山真男の思想の評価について
は、手荒で粗雑な整理をしている部分が目につきますが）。ここで、重要な問
題を一つ申し上げたいのですが、両者の議論は非常によく似通っているところ
がありまして、それは丸山真男の思想の意義と限界を示そうとするとき、必ず
吉本隆明の丸山真男批判を持ってきて、そこで丸山真男を相対化しようとする
手法です。この方法は、現在でも一般的・標準的な丸山真男論の整理法として
広く通用しているように思われます。

吉本隆明の、戦後民主主義体制批判、権威主義的知識人批判、西洋的近代崇拝
批判としての丸山真男批判ですね。現在では、ほとんど公式的とすら呼んでい
い丸山真男批判の形式です。安丸良夫もそうだと思いますが、米原謙の場合は
明らかに、その吉本隆明の丸山真男批判の意義を認める書き方をしています。
『市民のための丸山真男ホ－ムペ－ジ』の著者である私が、そのような評価と
立場を同じにできないのは当然のことです。

最近でも、例えば『現代思想』などの思想雑誌でお手軽に丸山真男批判をして
小銭を稼いでいるポストモダン主義者たちの物言いは、ほとんどこの吉本隆明
の丸山真男批判の言説を下敷きとしたものです。この問題（＝吉本隆明の丸山
真男批判とその「公式化」の一般的定着）は、私にとって見逃すことのできな
い重要な問題ですので、いずれ詳細に検討する機会を持ちたいと考えています。


私は、自分自身の日本政治思想史研究の対象として次の三つを持っています。

・丸山真男
・日本共産党と共産党学派
・司馬遼太郎

そして戦後の日本政治思想史は、この三つを中心にした研究によって、正しく
展望できるのではないかと、ひとり考えています。戦後日本の政治思想に最も
大きな影響を与えてきた（与えている）のが、この三者であると考えるからで
す。丸山真男とマルクスだけでは（あまりに装備が貧弱で）近代社会はト－タ
ルに分析できないぞというお叱りを頂戴したことがありましたが、少なくとも
戦後思想史を分析するためには、すなわち、われわれ自身を自己対象化するた
めには、この二者 － 丸山真男と日本マルクス主義 － が分析構図の中心に措
定されなければならないことでしょう。

ア－レントにせよ、ハ－バ－マスにせよ、現状ではテンポラリ－な「脱マルク
ス知」に過ぎないのではないのかという懐疑の気分が、今の私には強くありま
す。アカデミ－内部の「脱マルクス」需要のソリュ－ションとして重宝され、
愛用されているだけなのではないのか。すなわち「制度化されつつある脱マル
クス知」。制度化されたものを制度化されたものとして認めることのできない
若い人たちの主観においては決してそうではないでしょうけれど。

安丸良夫論文の中に第三世代戦後思想家代表者として登場する橋爪大三郎が、
『ＡＥＲＡ社会学がわかる』の中で、「今の社会科学の世界でまともに読むに
値するのはマルクスとウェ－バ－だけだ」と言い切っているところがあります。
思わず苦笑してしまいますけれど、橋爪大三郎も「勉強不足」の一人なのかな
と思ったりしました。

最近、加藤先生が「『共産党宣言』の現代的意味』と「戦後日本と『アメリカ』
の影」の二つをアップロ－ドされましたが、二つとも力作ではありますが、私
から見れば、前者の方が断然いい出来栄えだと思います。

Ｐ．Ｓ．

ＣＰＵのクロックも、また主記憶も１Ｇを超える時が近い将来やって来ます。
現在の開発ペ－スで行けば西暦2000年か2001年でしょうか。１Ｇマシン時代に
なれば、ウェブも、現在のＧＩＦやＪＰＥＧをハンドリングするのと同じ感覚
でＭＰＥＧを（IEEE1394の入出力で）取り扱っていることでしょう。そうなっ
た時、私自身の三つ目のホ－ムペ－ジ『アジアのための鶴見良行ホ－ムペ－ジ』
を立ち上げたいと思っています。このホ－ムペ－ジだけはＭＰＥＧの情報がメ
インでないと意味がありません。設計を考えるだけでうきうきしますね。

1997年 7.14 市民のための丸山真男ホ－ムペ－ジ	 
1999年 2.12 読者のための司馬遼太郎ホ－ムペ－ジ	
2001年 x.xx アジアのための鶴見良行ホ－ムペ－ジ	

三人とも死んでしまいました。

[1998/05/26 22:42:56]

NAME： ウェブマスタ－　　

川口様、
梅雨入りしたような鬱陶しい毎日が続きますね。

 ＞ 丸山眞男を神格化する動きは、丸山自身を新たな「制度化された知」
 ＞ へと収斂しようという動きに連なっているのです。		

このご指摘には多少とも共感するところがありまして、丸山真男を「制度
化された知」へと誘導、セメント化しようとする「策動」は、たしかに感
じます。死後に佐々木毅が日経新聞に書いていたものあたりから、そうい
う怪しさを感じ始めました。

ただ、この「丸山真男神格化問題」については、少し注意して見なければ
ならないところがあって、それは一体誰が、誰を念頭において「神格化現
象」を批判しているのかということです。死後に出された丸山真男論はき
わめて膨大ですが、そのなかの多くの論者が「神格化批判」を口にしてい
ますね。

たとえば西部遇によれば、世紀末の日本人全員が丸山教徒であり、丸山信
者であり、「薄められた丸山主義者」なのだそうですよ。佐伯啓思は「八
○年代以降になっても丸山さんを神格化している人たちというのは、何か
根本的に間違っているという気がしますね」と言って、ポストモダンの時
代に丸山真男を論じるのは意味がない、京都学派の連中はそのことをいち
早く感知していたなどと言っています。呵呵大笑してしまいますが、昨年
の１０月にそんなことを言っています。

雑誌「大航海」を読むと、書いている論者のほぼ全員が、似たような口調
で「神格化」を言っているようです。結局のところは、「オレを読まずに
丸山を読むのは怪しからん」「オレ様を崇めずに丸山ばかり崇めるのは気
にいらん」とゴネているようにしか見えません。身の程知らずと言うか、
みっともないと言うか、安直に丸山真男批判を口走ったり、丸山真男神格
化批判を言う人間には、低劣な思い上がり人間が多いように思います。

こういう状況を見ながら思うのは、その「神格化」現象なるものは、実際
には、丸山真男を本当に神格化して拝んでいる人間たちの存在の事実によっ
てではなく、そういう「現実」がそこら中に溢れているぞとマスコミで騒
いでる人間たちの言説によって作り出されている「現実」ではないかとい
うことです。「丸山真男を神格化している思慮のない間違った人間がたく
さんいる」という「現実」(＝幻想)が無理やり作り出されて、宣伝されて
いるという具合には考えられないでしょうか。

私自身が「神格化」現象を感じるときというのは、例えば、岩波書店や東
大出版のパンフレットの広告コピ－を見たときなどですが、これは商品を
売るためのセ－ルスト－クですから、ある程度やむを得ないのかなと思っ
て見ていまし。あとは、全集の中に入って来た月報の中に、少しそうい
う傾向のものがあったかもしれません。岩波書店の商業主義マ－ケティン
グの周辺に若干度の過ぎたものを感じる程度です。

安丸良夫の戦後思想史論についてはまた別途。

[1998/05/24 09:25:06]

NAME： 川口泉　　

田中様、理解に苦しみます。

安丸良夫「現代の思想状況」、どうもお気に召さなかったようですね。
どこがどういけないのか、私にはさっぱり分からず理解に苦しみます。
以前にも書いたように、氏の主張の根幹は田中さんの指摘とそれほど違うもの
ではありません。
丸山眞男だって正当に評価し、第１世代の今日的意義を訴えているのに、それ
に批判的な田中さんの真意はまったく理解できません。
思想家世代論がそれほど変ですか？
安丸氏が参考文献に挙げているのは、何も「別冊宝島『現代思想入門Ⅱ』」だ
けではなかったはずです。
おまけに、そのような「安っぽい若者向け思想マニュアル」を氏は肯定的に描
いていますか？　きちんと批判的に見ているはずですよ。
現実の論文にもきちんと当たっていただいたみたいで、そのご熱心さには頭が
下がりますが、田中さんのご主張は首尾一貫性に欠けるように感じます。

丸山眞男の著作が知的分野の書物として相対的に「よく売れている」としても、
出版部数全体としては、ごくささやかなものにすぎません。
やはり圧倒的に消費としての本・雑誌が売れている現実に変わりありません。
したがって、丸山に関する企画が死後爆発しているという事実をあまり過大に
評価しないほうがいいでしょう。
そんな妙な「安心感」「希望と楽観」は、かえって事の本質を見誤ることにな
るのではないでしょうか？
私にとっては、売れていようがいまいが関係のないことです。
価値あるものを一市民が読む、読んで共感しあえる者同士で意見交換をし、互
いの認識を深める、その輪を可能な限り拡大するような努力をする、ただそれ
だけでいいのです。

しかしながら、気になるのは、丸山にしても、ただ読まれていればいい、とい
うものではない、ということです。
神格化の危険ですね。
田中さんによると、神格化の危険性というのは丸山の主張そのものを否定する
「論者の欺瞞にすぎない」とのことですが、はたしてそうでしょうか？
おそらくそうではありますまい。
丸山眞男を神格化する動きは、丸山自身を新たな「制度化された知」へと収斂
しようという動きに連なっているのです。
そしてそれこそが、丸山眞男が生涯闘った「他者感覚」を喪失した日本社会の
現実なのではありませんか？
丸山神格化の危険性を常に意識し反省し、他ならぬ丸山本人の主張の根幹部分
の訴えを常に己れのものとする努力を怠らずに、丸山を読む、という作業が我
々には必要なように思われます。

田中さんが司馬遼太郎ＨＰも同時に計画されていたと知り、驚きました。
いまの丸山ＨＰのフレームを何とかしていただいて、繰り込むようなことは出
来ないものでしょうか。
ぜひとも拝見の機会が欲しいです。
確かに、司馬と丸山との死後評価の問題は、少し私の言葉が足らなかったみた
いです。
死後も続々と評価の本が出ること、その部数的には丸山より上であろう、とい
うことを言いたかったわけですが、前の記述は厳密ではありませんでした。
ここにお詫びします。

Ｐ．Ｓ．ストーンズを最前列で、とのこと。
　　　　あれま、と羨ましく感じました。
　　　　私は９０年と９５年、それぞれ２回ずつ行きましたが、ほぼ真向かい
　　　　とは言え、遙か遠くの席からでした。
　　　　さすが、今年はパスしました、こちらのほうが体力が保たない（笑）。

　　　　こうしてＨＰ上の公開メールみたいなことでいいのでしょうか？
　　　　出来れば、もう少し、いろいろな方がたの意見も合わせてお聞きした
　　　　いところです。
　　　　それでは。

[1998/05/21 14:14:44]

NAME： ウェブマスタ－　　

川口様、少し追加をさせてください。

死後の評価という点での司馬遼太郎との比較についてなのですが、

 ＞ 没したことで仕事への評価が更に進むという例から言えば、
 ＞ 司馬遼太郎のほうが遙かに上でしょう。

実は、昨年の今頃、私には二つのウェブプランがあって、一つがこの『市民のための
丸山真男ホ－ムペ－ジ』で、もう一つが『読者のための司馬遼太郎研究ペ－ジ』とい
うものでした。笑われてしまいそうなタイトルですが本当です。製作的にはほとんど
出来上がっていて、公開するには十分なのですが、ただ、二つを平行して続けて行く
作業量や時間的金銭的負担のことを考えて、二つ目のワ－クを手控えることになりま
した。もともとの計画では今年の二月十二日に公開の予定でした。

死後の評価についてですが、司馬遼太郎の場合は、没してのち（私を含めて）読者た
ちのモラ－ルは実際にはずいぶん下がってしまったのではないかと思っています。生
存して活動していたときの方が、現在よりも、日本における司馬遼太郎の思想的影響
力は大きかったのではないかと思うのです。司馬遼太郎本人が消えてしまった途端に、
他の誰かが司馬遼太郎の思想を語るとか継承するということが、全くあり得なくなっ
たかの如くです。

山折哲雄とか田中直毅とか － あるいは立花隆や井上ひさしでさえ－ 彼らが「司馬
遼太郎の思想とはこうだった」と言うのを聞いていると、「それは少し違うのではな
いか」という違和感がしてならないのであり、また谷沢永一や藤岡信勝などが「司馬
史観論者」として跳梁跋扈するのを見ると、しばらくは司馬遼太郎を読むのは中断し
ようという気分になってしまうわけです。読者の多くがそういう感覚を持っているの
ではないでしょうか。

丸山真男は長い間沈黙を守り、人々の表面的関心が途絶えたところで死を迎えました
から、丸山真男に対する人々の関心というものは、時間をかけて凝縮されたものがあ
ります。つまり知的関心の凝縮圧力とでも言いましょうか。司馬遼太郎は思想的活動
の絶頂のところで死にましたから、関心として凝縮されたものがありません。むしろ
どんどん（放出の一途によって）関心の圧力が低下しているようにさえ思います。

さてもう一つ、私にはドラスティックな仮説があります。それは私のストラテジ－で
もありますが、

いま八重洲ブックセンタ－のワゴンやシェルフから丸山真男の著作を拾い上げて読み
はじめた日本の市民たちというのは、これまでずっと熱心に司馬遼太郎を読み続けて
きた同じ市民なのではないかという仮説（＝戦略）です。それは表面的に見れば、読
書市場における司馬遼太郎から丸山真男への知的関心の移動なのですが、このトラン
スファ－は決して一方向的な表面的・商業的な読書傾向のトレンドだけの意味には止
まらないように思います。むしろインタラクティブな、相互に関連し合った思想的関
心になるのではないかと思うのです。

読者市民は、手に取った丸山真男の著述の中に、たやすく司馬遼太郎を見つけること
ができることでしょう。そしてそこから先は、読者市民が自分の頭で考えることです。

   たとえば宮崎駿のところで落ち着く人間もいるでしょうし、
   あるいは酒井直樹的方向へ向かう人間もいるでしょうし、
   よく分からないまま佐伯啓思で思考停止するのもいるでしょう。

そしてそこに日本の政治状況がクロスして来る筈です。

[1998/05/20 06:56:13]

NAME： ウェブマスタ－　　

川口様、おひさしぶりです。

丸山真男の著作はいま非常によく売れていると思います。東大出版の『丸山真男講義録 1948』
は、八重洲ブックセンタ－の二階で堂々ワゴンセ－ルスされる繁盛ぶりです。平積みではなく
ワゴンセ－ルスです。アカデミ－関係者だけの需要では、あのワゴンセ－ルスのボリュ－ムは
絶対に捌くことはできません。明らかに「普通の市民」が読んでいるのです。「普通の市民が
丸山真男を読むのは大変なエネルギ－が要る」のは確かだと思いますが、みんなエネルギ－を
出して一生懸命読んでいるようです。去年の夏は山之内靖のウェ－バ－入門がよく売れました
が、日本の読者市民の一般的水準をもってすれば、山之内靖でも軽々と読破してしまうパワ－
を秘めているわけですから、丸山真男が大量に売れたとしてもさほど不思議ではないように思
われます。日本の（戦後のと加えるべきでしょうか）社会科学の奥深さを思い知らされるとこ
ろです。

（１）スト－ンズとビ－トルズ

さて、実は私もロ－リングスト－ンズは大好きでして、八年ほど前の来日公演のときは、東京
ド－ム会場ステ－ジ最前列のチケットを入手して、最初から最後まで立ち通しで熱狂した一人
です。たとえば、エルトンジョンなどはあのようにデブになって往年の面影がなく悲しいので
すが、当時五○歳のミックジャガ－は、肉体もスリムで、三時間近く歌って走って飛び回って
も全然疲れない様子でした。流石にス－パ－スタ－のショ－マンは違うと感激したことを思い
出します。歌も全く手抜きがありませんでした。ちょうど同じ頃だったと思いますが、ウィン
グスの色褪せたライブとはずいぶん違って、何とも「お買い得」な一夜でありました。

私らが中学高校の頃、もちろんビ－トルズもスト－ンズもみんな好んでよく聴いたわけですが、
誰かに「どっちが好きか？」と訊かれた時は、何となく見栄を張ってか、格好をつけてなのか、
正直に「ビ－トルズだよ」と言わずに、「どっちかと言うとスト－ンズかな」などと答えてい
たように思います（「曲は？」と訊かれると「悪魔かな」と気取ってしまう）。私もそういう
小さな嘘をついていた一人でした。何しろ、ぺちゃんこにした黒い学生カバンに『ミュ－ジッ
クライフ』の付録の大きなシ－ル（ベロを出した）を貼って毎日通学していましたから、どう
も「ビ－トルズ」とは言いにくかったようです。優等生的なものを公然と認めるのは、具合が
よくありませんでした。

戦後の大衆音楽がビ－トルズだけしかないとなると、これは大変寂しい話になりますが、反対
のことを考えて、もしそこにビ－トルズがなかったとすれば、とてつもなく大きな穴がポッカ
リ空いてしまうように感じます。ビ－トルズを抜きにして戦後の音楽を考えることはできませ
ん。それは絶対にできません。よく言われることですが、もし無人島に一つだけ持って行くと
したら、あなたは何を．．という話がありますね。私の場合はビ－トルズだろうと思いますし、
丸山真男なのだろうと思います。また機会があれば、その二つのミュ－ジックシ－ンについて
議論してみましょう。

（２）自己限定、コミットメント

川口さんもいずれお気づきになられると思いますが、ホ－ムペ－ジを作るということは、自分
に正直にならなければできないし、続けて行くことができません。リンク集ならば別ですが、
知識をジェネレ－トして公開する営みというのは、やはりどこかで「自分はこうと決めている
のだ」というコミットメントを前に出して、自分にとっての目標を自己限定することになるよ
うに思います。掲示板にちょこちょこ書いているうちはいいのですが、ホ－ムペ－ジ一個をト
－タルにクリエイトするとなると、どうしてもコミットメント的態度が要請されます。

二年前の私から見て、現在の私の客観的な立場や相貌は、あまりに丸山真男の世界に没入し過
ぎている姿であることは明らかです。単なる一市民であるにもかかわらず、何でそこまで（外
から覗く者に対して挑発的に）没入的に振る舞っているのだろうと思うに違いありません。自
分でも驚くほどです。私を私的によく知っている者が見たなら、何でお前が丸山真男なのだと
ポカンとするかも知れません。だんだんと変わって来ました。

この先いったい何が成果として残るのか、それともただ嘲笑われるだけで終わるのか、私自身
にもよく分かりません。お金も結構かかりますし、悩みながらやっています。そして少しづつ、
自分にとって空白であった部分を埋め込んで行っている気分も味わっています。それから、
「日本の市民が自分の生活と民主主義を防衛するために書店で丸山真男を手にするだろう、他
のものでは防衛のための武器にならないだろう」と、これを始める前に考えたことも、やはり
間違いではなかったと確信しています。

（３）丸山真男神格化否定論者の欺瞞

一つだけ言えることがあります。丸山真男の死後に出された「丸山真男特集」諸雑誌に論を寄
せた少なくない者が、「丸山真男を絶対視する傾向への警告」とか「丸山真男を神格化する偶
像崇拝の危険性」などというような発言をしていたことです。しかしながら、彼ら論者のほと
んどが、丸山真男をまともに読んだことのない人間たちでありました。その一見常識的な常套
句は、実際には、丸山真男を読んだことがない人間が丸山真男を読んでいる人間に対して吐い
ている軽蔑の言葉であったのです。私は『現代思想』や『神奈川大学評論』や『大航海』で、
意味のない常套句を並べている「売れっ子思想評論家」連中よりも、心血を注いでわれわれ市
民のために『丸山真男講義録』や『丸山真男手帖』を編集している知識人たちの方を尊敬し、
信用します。

いま市民が丸山真男を読んでものを考えるということは、川口さんがおっしゃる「制度化され
た知」へのプロテストを意味する行為になるのではないかと私は考えます。したがって世の論
者たちが恐れる「傾向」や「危険性」というのは、本当のところは、自分たちが立脚している
「制度化された知」なるものが崩壊する傾向や危険性のことなのではないでしょうか。そのよ
うに考えることはできないでしょうか。

丸山真男は、『「文明論之概略」を読む』の「まえがき」で

  惚れた恋人には「あばたもえくぼ」に映る危険は確かにある。しかし、とことんまで惚れ
  てはじめて見えてくる恋人の真実（中略）というものもあるのではなかろうか。そうでな
  ければ、伊藤仁斎の『論語古義』も、『論語徴』も、こうした儒者がぞっこん孔子に惚れ
  ているかぎり、とうてい論語の真実に達しられないことになってしまうだろう。そうして、
  とことんまで惚れてはじめて見えてきた対象の真実は、一時ほどの熱がたとえ醒めたあと
  でも、持続的な刻印として当人の頭脳と胸奥に残るのである。

と言っています。私は、丸山真男が福沢諭吉を読んだ読み方にならって、丸山真男を読んで行
こうと思います。ちょうどいま『丸山真男講義録 日本政治思想史 1948』の 第四章『初期朱
子学者の政治思想』まで読み進んだところですが、そこで例の山崎闇斎の次の言葉、「朱子を
学んで謬らば朱子と共に謬るなり。何の遺憾かこれあらん」が出てきます（１１３ペ－ジ）。
私も暫くは、闇斎学派的態度で丸山真男研究を続けて行こうと思っています。

（４）安丸良夫の『現代の思想状況』

安丸良夫の戦後思想家三世代論（『現代の思想状況』）について、特に第三節『構造主義革命
と擬似市民社会』の下敷きになっているのは、参考文献のところでも取り上げられている別冊
宝島の『現代思想入門Ⅱ』ではないかと考えています。安丸良夫のようなきちんとした歴史家
が、なぜ別冊宝島の『現代思想入門Ⅱ』のような安っぽい若者向け思想マニュアルを用いて、
責任の重い『岩波講座日本通史』の『現代の思想状況』を整理することになったのか、私には
分かりませんが、それこそまさしく彼の根本的な失敗であるように思えてなりません。そのよ
うな安マニュアルは、戦後思想の整理などという重い歴史学的作業をする上での参考文献にな
るものではないと思うからです。

[1998/05/19 22:16:18]

NAME： 川口泉　　

ウェブマスター田中様

私が紹介させていただいた安丸良夫氏による日本思想状況分析への感想、
ありがとうございました。田中さんの現状への想いの伺える内容であっ
たと思います。さて、私も田中さん同様、流行言葉としての「知の何々」
には嫌悪感しか感じません。

その点、まったくご同様なのですが、しかしながら「知」という言葉を
その本来の意味で使用することまで拒否するのはどんなものでしょうか？
現在のような反知性主義・反主知主義の蔓延する日本の状況にあっては、
なおのこと、真の「知」こそ望まれること、言うを待たないはずだから
です。

さて、戦後思想史の三世代整理について。

さっそく、「あまり意味があるもののようには思われません」などと厳
しい指摘をされています。しかしながら、これはあるいは私の紹介の仕
方がまずかったのかもしれませんが、安丸論文本体にあっては世代ごと
の分析を自己目的化するような展開にはなっておりません。それに、そ
の時代時代において中心的な役割を果たした思想家を”世代”として括
った上で、時代の特質を分析すること自体は、戦後思想の本質的展開を
見るうえで不可欠な作業であろうと考えられます。のっぺりと５０年全
体を見渡すのでは、緻密な「分析」は不可能です。

田中さんの”遠望論”は空間的な把握ですね。しかしながら、この場合
の比喩としてはあまり適切ではないように感じられます。世代とは、ま
さに時間的な形成を意味するのですから。それに、これは紹介した中身
でも明らかなとおり、安丸氏自身が「ある地点から風景を遠望したとき
に、視界の中では近距離に位置する対象が大きな割合（面積）を占めて
見えてしまう」こととは、別のことを指摘しております。

安丸氏も第３世代が制度の知に収斂されてしまいつつある現在では、な
おのこと第１世代の仕事のほうが、より重要に感じられる、との感想を
書かれているのであり、その点、田中さんの感想と共通する部分が多い
ように思うのですが、いかがでしょうか？あとで記す点とも関連します
が、もう少し他人（丸山以外の？（笑））の指摘でも、正しい面は正し
いと積極的に評価するようにしたほうがいいと思います。

さて、ビートルズ（私は断然ストーンズなのですが、いまだに現役とい
うことで、田中さんの比喩には適切ではないのでしょうか？（笑））と、
シカゴやイーグルス（私は断然フリートウッド・マックなのですが、そ
れは置くとして（笑））の比喩に関して。いかにも田中さんらしい表現
です。丸山がビートルズで、網野や色川がシカゴ、イーグルスに当たる
かどうかの適不適は別として、もしビートルズしか存在しなかったとし
たら戦後世界の大衆音楽は何と貧しいものであったことでしょう！シカ
ゴやイーグルスあったればこそ、豊かで大きな流れとなって今日まで来
ているのではないのでしょうか？

網野史学の評価について。

どうもこれまで拝見した限りでは、田中さんは網野善彦氏の仕事をあま
り深くご存じないようです。網野史学は井上清や色川大吉の史学とはまっ
たく別のものです。氏の史学の最大の特徴は、従来の日本像の変革にあ
ると思います。その一つが、日本という国号に時代的な限定のあること
の重視であり、さらに日本歴史の担い手の実体的な紹介（”民衆”といっ
た曖昧な概念にとどまらない）であり、従来の日本史の常識をうち破る
さまざまな学的成果であるわけです。

網野史学の詳細に渡っての検討は後日を期したいと考えますが、そもそ
も歴史学に限らず学問というものが、その学的成果を後代に受け継いで
いくものとすれば、今後「反網野史学ブーム」など起こりようはずがあ
りません。旧来の日本史学、旧来の日本像へと戻ってしまうわけはない
のですから。

それに、田中さんは、網野史学がさも現在の日本史学の主流のような感
想をもたれていますが、その認識もはたして正しいのでしょうか？

私の素人的判断でも、まだ日本史学界全体の「常識」となったわけでは
必ずしもないように思われます。これはご本人による指摘ですが、「網
野の本など禁書にしろ」という動きまであるらしいですから（笑）。網
野史学が今後乗り越えられるとしたら、それは網野史学を深める方向で
の発展しか、考えられません。すぐれた学的業績とは、いずれもそうし
たものなのでしょう。

なお、田中さんが最近書かれている点で、どうも少し違うのではないか
な、と強く感じていることと関連してくるので、正直に言わせていただ
きますと、丸山眞男だけで日本の戦後思想史は成り立っているわけでは
ありません。丸山政治学を評価するあまり、それ以外の価値を一切否定
する田中さんの偏狭さには危険な面を感じざるを得ません。

網野史学と丸山政治学とはそれほど矛盾するものではないはずです。私
などは網野史学に、丸山政治学における「日本」像を、より広げ、補充
する価値があるように感じております。頂点の思想家の思想に限定して
分析の対象とした丸山政治学にはある種のエリート的な”狭さ”を感じ
ざるを得ませんが、網野氏の本にはそうしたものはありません。

私は丸山を読んだあと、網野氏の本を読むと、パアーと視界が開けた感
じを受けます。もちろん、このことはただ両者が対象とする世界が違う
ためということであって、別に丸山政治学よりも網野史学のほうが上、
ということを意味するものではありませんが。

とにかく、丸山の”絶対化”は、丸山自身の主張にも矛盾することであ
り、丸山政治学の絶対信奉、他者感覚の欠如などは、丸山本人が最も嫌
悪したものであることを再度確認しておきたいものです。「世界」１月
号での、佐高信による「手帖の会」批判はご存じですか？佐高によれば、
小さな講演でのスピーチまで記録して配布するのは「神格化」に当たる、
とのことです。

もちろん、この「批判」は佐高のいつものとおりの（笑）的外れ・誤解
にすぎませんが（「手帖の会」会員による反論が同誌３月号に掲載）、
もし万が一、丸山神格化という丸山政治学自身に逆らうような流れが出
てきているとしたら、それは厳しく自戒されるべきです。

なお、冷静客観的に見て、丸山の著作がいまの日本でそれほど売れてい
るとも思えません。確かに企画的には注目されますが、そのような目で
見るからそう思えるだけのことではないでしょうか？没したことで仕事
への評価が更に進むという例から言えば、司馬遼太郎のほうが遙かに上
でしょう。一方、武満徹の仕事への評価は、国際的な高さに比べて、国
内ではあまりに乏しいようです。

確かに、丸山の著作だけでも、我々”普通の市民”が追いかけて行くに
は大変なエネルギーの持続が要ります。そのために、まず各種の情報交
流も前提的に不可欠でしょう。そうした意味でも、この田中さんのホー
ムページが今後も丸山眞男研究の、世界的な場として維持・発展される
ことを心より願っております。

[1998/05/19 00:11:29]

NAME： ウェブマスタ－　　

川口様、

連休はいかにお過ごしでしたか。非常に面白いお話をご提供いただきましてありがとうござい
ました。

普通の常識と感性を持った人間であれば、日本のアカデミ－の現在の実態を見て、「専門化さ
れた制度の知へと回収される傾向」の不毛さに、溜息の一つもついてしまうのが自然ではない
かと私も思います。また、いま丸山真男が日本の読者市民に広範に読まれている状況について
も、そうした見方で整理して自然であるし、きわめて妥当であると思います。

私は、八○年代以降に流行文句になった「知」という言い方が嫌いで、本屋などで知のナント
カとかナントカの知などというタイトルや表現を見つけると、身をのけぞらせて走り逃げて行
く性分です。「知」の言葉遣いに、八○年代以降の浅薄なアカデミ－商業主義の臭いを感じる
からです。私自身は、自分の文章の中にこの表現は極力採用しないことに決めていて、「知識」
あるいは「知性」の言葉遣いだけで、その問題に対応することにしています。心ある人には
「知」の言い方は意識的にやめて欲しいと、ひそかに思ったりもします。

いま丸山真男が売れているのは、一つはそれがブ－ムだから、みんなが読んで騒いでいるから
でありますが、もう一つは、丸山真男以外に読むものがないから、他に読むべきものがないか
らであると思います。読むべきものを探している読者市民にとって、丸山真男以外に「読むべ
き」の「べき」の部分の内面的な中身をよく充足させてくれる著者がいないということです。

ご紹介いただいた安丸良夫の「戦後思想史」の三世代整理を並べると、	

第一世代：丸山真男・大塚久雄・竹内好・鶴見俊輔・加藤周一		

第二世代：吉本隆明・色川大吉・中村雄二郎・藤田省三・網野善彦・山口昌男・広松渉・小田実・見田宗介					

第三世代：竹田青嗣・橋爪大三郎						

となるのですが、私にはこういう整理自体、あまり意味があるもののようには思われません。
（などと言うとまた厳しいお叱りを受けそうで恐縮ですが）この「戦後思想家」世代論には、
物理的・時間的な意味があるだけのように感じます。つまり、ある地点から風景を遠望したと
きに、視界の中では近距離に位置する対象が大きな割合（面積）を占めて見えてしまうという
ことがありますが、そういうことではないかと思われるのです。例えば、新宿の高層ビルの最
上階のレストランから東側の窓を見下ろすと、皇居よりも新宿御苑、新宿御苑よりも
新宿駅が大きく目に映りますよね。

私は丸山真男は立派な皇居だと思いますが、竹田青嗣と橋爪大三郎は、京王百貨店の横隣に並
んでいる月並みなオフィスビルの一つ二つではないかと思いますし、中村雄二郎は、新宿御苑
の横に建っているレンガ色のマンションであるように思います。ほんの少し視点を物理的にず
らせたならば、その三つの建物はすぐに埋没して見えなくなってしまうことでしょう。池袋サ
ンシャインの屋上から東南方面を眺めたとき、私たちは最早その三つを確認することができま
せん。西新宿から東池袋までの時間的距離は、恐らく一○年か二○年でしょう。

たとえばこの中で、世紀末の現在でも、日本の思想世界で最も大きな影響力を持ち、多くの読
者に読み続けられている思想家は丸山真男であり、そしてそれに続いているのは、大塚久雄と
加藤周一でありましょう。私は丸山真男はビ－トルズと同じだと思っています。現在の丸山真
男ブ－ムは、ビ－トルズで言えば、解散後に「赤版」と「青版」が出た一九七二年のブ－ムに
相当するものです。ブ－ムの波は何度でも何度でも、途切れることなく永遠に続いて行くこと
でしょう（そしてブ－ムの時だけちゃっかり便乗して、全集も読んでいないのに「丸山先生」
などと気味悪くべたべた阿たりする若い人間が出て来たりもするのです）。

現時点でのネ－ムバリュ－と著作物の販売数量では網野善彦も決して丸山真男に負けてはいま
せんが、網野善彦が果たして戦後知識人の大いなる一人として日本思想史の系譜に名をとどめ
ることができるのかどうか、私には若干怪しく思われます。歴史家として、従来にない日本史
認識の方法を提示した卓見と業績は、末永く語り継がれるだろうと思いますが、どちらかと言
うと、井上清とか色川大吉とかと似たような　－　普遍的というよりも個性的な　－　位置づ
けになるように思います。

シカゴとかイ－グルスあたりでどうでしょうか？

あと十年ほどすれば、いわゆる「網野史学批判」的なム－ブメントが始まりそうな予感がしま
す。スポ－ツの世界で「記録は破られるためにある」という言葉がありますが、歴史学、特に
日本史というのは、何となくそういうことの繰り返しのようなところがありますよね。昨年、
古層論に関して石田雄の「勇み足」論を批判した折に、少し古代史認識の問題について触れた
のですが、加藤哲郎先生の「講座派的日本史認識（自己）批判」のお言葉などもありましたの
で、網野善彦の日本史について、私もいつか、もう少し内在的に検討する機会を持ちたいと思
います。

．．が、岩波書店の「座談集」が毎月ドサドサと出て来るし、いよいよ東大出版の「講義録」
が隔月で出て来ますので、先ずはそちらにエネルギ－の主力を注がなければなりません。特に
「講義録」ですね。今年の本屋は（昨年予言したとおり）まさに丸山真男一色です。

それでは、また。
川口さんのインタ－ネット世界を揺るがせるビッグイベントを心待ちにしております。

[1998/05/09 10:17:53]

NAME： 川口泉　　

ウェブマスタ－、Ｈ．田中様

何か過分のお褒めのお言葉をいただき、恐縮しております。
私はけっして田中さんが言われているような人間ではありませんが、現在の
情けない日本の状況に対して、インターネットなどで自分の意見を少しでも
発信し続けることで、「同好の士」の輪が広がり、もって多少とも社会がよ
りよき方向へと転ずることを念願する者です。

今回は少し趣きを変えて、安丸良夫氏による「現代の思想状況」（＊１）と
いう論文を紹介させていただきます。
安丸氏については、おそらくご存じかと思いますが、一橋大学教授で、日本
思想史の研究者です。
「従軍慰安婦」問題などにも関心をお持ちのようで、市民の集会などにもよ
く顔を出され、インタビュー（＊２）を受けて、「世界」今月号では、歴史
認識と歴史研究の方法論について刺激的なエッセイ（＊３）を発表されてお
ります。

ここで紹介する論文は３年ほど前に発表されたものですが、戦後から現在に
至る日本の思想状況を的確にまとめられた優れた内容のものであるように思
いますので、少し丁寧に見て行きたいと存じます。

氏は、「丸山真男、柳田（への関心）、吉本」（隆明）「は、おそらく第１
期を象徴する偉大な名前である」とし、「フランス現代思想に比べて、その
迫力において見劣りするとしても、冷戦構造のなかでそのどちらにも属さな
い知的自立性を求めたところに、戦後日本の知識人の世界史的な位相があっ
た、ともいえようか」と、その特質を指摘されます。
世代的には、「戦後思想の第一世代を、丸山真男・竹内好などの世代とすれ
ば、吉本隆明・色川大吉・中村雄二郎・藤田省三・網野善彦・山口昌男・広
松渉・小田実、そして見田宗介あたりまでが第二世代となり、７０年代なか
ばの構造主義革命以降に活躍したのはさらに若い第三世代にあたることにな
ろう」と整理されてます。
氏はこの第三世代について、「フェミニズムや女性史のほか、構造主義とか
かわりの深い文化人類学、宗教学、民俗学、文学の批評理論、アナール派の
社会史などが若い世代の研究者をひきつけ、職人型研究者の多い日本史でも、
学界の周縁部ではさまざまの問題提起が行われてきた。しかし、あたらしい
さまざまの探求は、個別の領域ではいまも新鮮な成果を生みだしつつあると
はいえ、全体としてみると、ひとときの熱気が失われて、いまでは専門化さ
れた制度の知へと回収される傾向にあるのではなかろうか」と曲がり角にあ
る現状を指摘します。

そして、第三世代の代表として、竹田青嗣と橋爪大三郎を取り上げ、彼らの
対談本（＊４）をもとに、その思想を掘り下げられています。

「＜権力ゲーム＞より＜金取りゲーム＞の方がよほどましだ、市場経済は基
本的にはうまくできているのであって、ただその「悪い部分をどう補ってい
くか」という問題が大切だ、と二人はのべている。市場にはハンディがあり、
とりわけ先進国と第三世界との関係や環境問題には、容易に解決できない困
難があると自覚されてはいるが、観念的ラディカリズムは現実的解決をもた
らしえない、第三世界の問題は、先進国と手を携えて資本や技術の移転をは
かり「少しずつ格差を埋めていく」よりほかに有効な対策がない、（中略）
要するに、市場原理・消費社会・近代的国家制度・テクノロジーなどの現状
を大枠で肯定し、その前提のもとでの漸進的改良、またそれを支える市民社
会と自立的精神を求めているのであって、これはある意味ではとてもわかり
やすい見解である」

ここまではおそらく安丸氏自身も賛同されているように感じられますが（私
も大枠で賛成なのですが）、氏は慎重にも次のように付け加えることを忘れ
ていません。

「そして、二人が市場原理以下の近代の諸原理を選びとるというばあい、他
に有効な選択肢がありそうもないからだとしても、現代世界の状況を大きく
見渡して、ほの暗い疑惑の影が心をよぎらなかったかどうか、尋ねたいとこ
ろである」

「ほの暗い疑惑の影」？
昨今のMAI（多国間投資協定）などにも象徴されるような市場最優先の動向を
実に的確に”予言”されているような気がしますが、特殊この二人に限って
みても、制度の知へと取り込まれてしまった現在の姿を先取り的に捉えた懸
念であったようです。
この論文が発表された２年後、竹田と橋爪に漫画家小林”ゴーマン”よしの
りを加えた鼎談本（＊５）を、徐京植は「後世の憶えのために挙げる最悪の
１冊」（＊６）と評価し、上野千鶴子はシンポジウムの席上、この本の中で
橋爪が展開している国家論の危険性を指摘（＊７）しています。

さて、これらの展開を経て、氏は、

　戦後思想－（正統派マルクス主義＋政治的急進主義）＝現代思想（近代主
　　義的市民社会論）

　という公式を立てるわけですが、この整理は私には疑問があるところなの
で、詳しくは触れません。

第三世代が全体として新たな制度の知へと回収されつつある現状の中で、そ
れでは私たちに光を与えてくれるのはどのような思想なのでしょうか？

氏は「全体としての後退戦のなかで、思想状況の大枠が市民社会論に本卦帰
りしつつあるのだとすれば、丸山・大塚久雄・竹内好・鶴見俊輔・加藤周一
らが苦心して切り拓いた戦後第一世代の近代主義の知の地平の方が、いまも
ずっと輝いて見えるということにもなるのではなかろうか」と言われます。

なるほど、戦後思想はぐるっと回って、またもとの出発点に戻ったようです。
結局は時代も世代も関係ない、ホンモノだけが後世に伝えられていく。
私たちも流行に捉われることなく、ホンモノを見抜く目を持ちたいという、
何だか当たり前のところに落ち着いてしまったみたいですが、これで一応紹
介を終わります。

＊１；「岩波講座・日本通史」第２１巻「現代２」（1995年）
＊２；「安丸良夫氏に聞く－「慰安婦」問題と歴史学」
　　　　　　　　　　　　　（「季刊・戦争責任研究」18号、1997年）
＊３；「「従軍慰安婦」問題と歴史家の仕事」（「世界」５月号、1998年）
＊４；『自分を生かす思想・社会を生きる思想』（径書房、1994年）
＊５；『正義・戦争・国家』（径書房、1997年）
＊６；「みすず」No.４２２「１９９７年読書アンケート特集」（1998年）
＊７；杉本由美子「シンポジウム参加記－ナショナリズムと「従軍慰安婦」問題」
　　　　　　　　　　　　　（「季刊・戦争責任研究」18号、1997年）

[1998/04/28 23:16:03]

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