夢飛行(第7話)逃亡者達


「何を今更・・・もう遅い、手遅れなのよ。」
そう叫ぶエリスの両目からは涙が溢れ出て止まらないのだった。と、同時
に、彼女は両手で銃を構えていた。銃口を2人の刑事達に向け、

バーーーン!

一発の銃弾が発せられた。だが、エリスには、涙で、標的をろくに狙うこと
も出来ず、結果的には、誰にも当たらなかった。だが、それでリチャード
も、
「本当にもう駄目なんだな。」
覚悟を決めたのだった。彼は言った。
「よし、犯人を捕まえろ!」
2人の刑事がエリスとケインめがけて飛び掛ってくる。だが、エリスは余り
のショックにまだ呆然としている。見かねたケインは、
「ほら、捕まってしまうぞ。逃げろ!!」
エリスの手を引っ張り、

バーン。

勢い良く、窓を開け、ベランダへ飛び出た。しかし、ここは5階。逃げ場は
無い。だが、彼は、
「急げ、俺の背に捕まれ。」
「え、あ、うん。」
エリスを背中におんぶした。そして、何と、手すりを乗り越え、5階から飛
び降りた。だが、このままでは、2人とも地上に激突、即死してしまう。し
かし、ケインは腕にはめた腕輪のボタンを押すや否や、豆粒ほどの小さな穴
が開き、大きな布とそれと腕輪を繋ぐたくさんんの紐が出てきた。そして、
丁度パラシュートのようになり、2人の落下を防いだ。近年、開発された、
いざと言うときのための携帯パラシュートだ。そして、その下には、更に都
合がいいことに、麻袋の荷物をたくさん積んだトラックが停まっていた。よ
って、2人は麻袋の荷がクッションとなって何事も無く、着地し、怪我をせ
ずにすんだ。エリスがケインの背から降りる。だが、お尋ね者の2人は警察
に捕まらないように、そうのんびりはしていられない。トラックの荷台か
ら、降り、いちもくさんにその場から走って逃げる。だが、2人が飛び降
り、無事に逃げ出したのを見たビリーが、
「ちぃ、逃げられたか!」
そう悔しそうに言い放ち、身に付ける小型のマイクとイヤホンを用いた無線
を使い、
「オイ、犯人達がそちらへ逃げたぞ。」
地上で待機していた仲間に連絡したせいか、待ち伏せの警官が当然、数人駆
け寄り、
「オイ、逃げるな!」
「待て、この野郎!」

ズダン、ズダーン!

2人に何発も銃弾が発射される。だが、幸い、2人には命中せず、2人はそ
ばに停車してエアカーの影に隠れることが出来た。だが、いつまでもそうし
てはいられない。2人は傍にあったマンホールの蓋を開け、入った。だか
ら、
「オイ、突っ込め!」
1人の警官の掛け声と共に、数人の警官がその車めがけて走って来たが、2
人のいた所にはもう誰もいないのだった。先程、突入の掛け声を挙げた警官
が悔しそうに言った。
「しまった、逃げられたか!」

 数時間後・・・2人は下水道の地下水路の中を泥水で服を真っ黒にしなが
ら、必死でさまよっていた。2人が下水道の地下水路へ逃げたのを知って
か、時折、警察のバイク型エアカーが下水道の地下水路の中をひっきりなし
に走っている。それらの走る音が聞こえるや否や、エリスとケインの2人は
見つからないように、慌てて地下水路の支線の方にに隠れた。慌てて、時に
は、それこそ水路の中で転んで滑って泥だらけにもなりながら・・・そんな
惨状の2人だが、とうとうエリスが先に弱音を吐いた。
「ひぃ、転んで服が泥だらけじゃない。何でこうなるのよぉ。」
「まぁ、そう言うな。元々は銀行強盗という馬鹿をやっちまった俺達が悪い
んだからよ。」
2人は長い逃亡生活で疲れきっていたのだ。そして、とうとうエリスが言っ
た。
「もー、どこに行っても警察から逃げられないなんて。これじゃ宇宙へ逃げ
るしかないじゃない。」
「宇宙へ逃げる、それも悪くないな。」
ケインが答えた。そして、その時、初めて2人は

 もうこうなったら、誰も追って来ない宇宙へ逃げるしかない。
 宇宙へ・・・

そう心に誓うのだった。

                           (第8話に続く)


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