しかし、銀行強盗という罪を犯し、追われると身になっているはずの彼ら
が何故、賞金稼ぎという、逆に追う側いう立場にいるのか、不思議に思う読
者の方達もいると思うが・・・
それはともかく、まずは賞金稼ぎという職業について述べて行くことにし
ようと思う。
まず、賞金稼ぎとは・・・宇宙開拓時代以降、人類はそれまでの地球とい
う小さな殻を突き破り、宇宙に飛び出して行くことになるが、広大な宇宙は
何もかもが人類が始めて体験する未知の世界だった。だが、人々は決して怯
まなかった。新転地での生活に夢を求め、多くの人々が宇宙へ旅立って行っ
た。しかし、人類が移住した開拓惑星での生活は決して甘い物ではなかった。
母なる地球のそれと違い、移住先の星はどこもまだ、文字通り、何もない空
間が広がり、人類の生活を支える物は何一つない、劣悪な環境だった。文字
通り、1からの開発が続いた。移住先の惑星では、開拓工事中にも、地下か
らの有毒ガスの噴出事故や地盤の緩みによる落石事故などで多くの人命が失
われた。しかし、人々は決して、立ち止まらなかった。新転地での生活を切
り開くため、人々は必死で働いた。そうして、次々と開拓惑星に町が出来て
いった。そして、次第に町は発展し、都市になっていった。
しかし、開拓惑星を含む宇宙での生活はやはり、人類にはいいことばかり
ではなかった。まだ、移住先で、犯罪を取り締まる秩序が確立していない時
代のことだ。そこに目を付けた悪人どもにより、宇宙では何の罪もない民間
船を襲う宇宙海賊や、星間の人身売買等の犯罪が多発したのである。そんな
わけで、宇宙で多発する宇宙海賊等の悪質な犯罪者達を取り締まるため、犯
罪者達に多大な賞金が掛けられた。そして、その賞金が目当ての賞金稼ぎと
いう職業が現れた。宇宙時代特有の職業だった。だが、その仕事内容の危険
性ゆえ、犯罪者に対抗する強さを求められる職業性ゆえか、賞金稼ぎの中に
は、自身もすねに傷持つアウトローも少なくなかったのだ。つまり、十分な
強さがあり、犯罪者を退治出来るなら、結局、多少の問題のある人物でも、
良かったのである。だから、当然、以前、銀行強盗という犯罪をしてしまっ
たケインとエリスも賞金稼ぎとして、違法すれすれの裏市場では、活躍出来
ていたのだ。
だが、彼らの追っていた船の男は先日、民間船を襲った宇宙海賊の一味だ
ったのだが・・・彼らに撃墜され、立ち往生している所を、連絡を受けた宇
宙警察の宇宙船に捕獲され、遂に御用になったのである。
そんなわけだが、その数時間後・・・
彼らはある宇宙ステーションの一角のあるバーに来ていた。つい、先程、
宇宙海賊一味を退治し、報酬を受け取った2人は、カクテルの入ったグラス
を片手にその余韻に浸っている。
「ねぇねぇ、今回の獲物は割合、張り合いが無かったね。この調子でいけば、
この後も楽勝だね。」
そう調子付くエリスだった。だが、相棒のケインは
「あぁ、そうだな。」
気の無い返事を返すだけだった。だが、彼もこの時、いいようのない不安に
かられていたいたのも事実だった。
何だ。これは・・・
自分達は逃亡中の身なのに、最近、余りにも、物事が上手く行き過ぎる。
このまま、この調子でこれからも上手く行くといいのだが・・・
しかし、彼の不安は見事に的中したのだった。
広大な宇宙を航行するある宇宙船の操縦室で、ある1組の男女が話をして
いた。眼鏡を掛け、少しインテリ風の雰囲気のある、女性が言う。
「先輩!遂に追っている犯人と思われる2人組の足取りを掴みました。今、
情報屋が例の犯人と思われる2人組の写真をFAX転送して来ました。これ
です。」
男が女性から写真を受け取る。しかし、そこには
「遂に見つけたぜ。」
写真を見て目を光らせる、彼らを追跡中の刑事リチャードの姿があった。
(第14話に続く)