夢飛行(第14話)逃走


 ある宇宙ステーションの一角で、2人は通路を歩いていた。その日も彼ら
は賞金クビを仕留めた後だった。当局から、賞金クビに掛けれていた賞金も
受け取り、エリスは上機嫌だ。
「ねぇ、今日も何とか、仕事を片付けられたね。ねぇ、せっかくだから、こ
れから、飲みに行こうよ!」
そんなこと言っている。だが、その時、彼女の相棒のケインは何故か、浮か
ない表情をしていた。何故か、誰かに見張られている!というか、つけられ
ている・・・そんな感じがしたからだ。妙に思った彼は何度も後ろを振り返
る・・・だが、誰もいない。妙に思ったエリスが、彼に聞く。
「ねぇ、何か、あったの?」
「あぁ、別に何でもないさ。」
彼女に無用な心配を掛けさせまいと彼はそう返した。
 だが、彼の感じた違和感の正体はその後、まもなくして暴かれたのだった。
彼が何気なく、振り向いた先にそいつはいた。そいつは先程、通り過ぎた2
つの通路が交差する十字路で、通路の壁の陰に隠れ、こちらを見ている。
「まずい。つけられてるぞ!」
ケインはそう言って、エリスの手を引き、走り出そうとする。だが、そいつ
も負けてはいない。2人の前に姿を現し、言った。

「オイ、待て!レダ警察指名手配中の銀行強盗エリス=ミラーにケイン=ス
ミスっ!お前らは決して逃げられないぞっ!おとなしく観念して警察に投降
するんだな!」

何と、そこには2人を追跡中のレダ共和国警察の刑事のリチャードの姿があ
ったのだった。

ダン、ダーン!

威嚇の弾丸が何発か撃ち込まれる。だが、幸い、そのどれも走って逃走をは
かるエリスとケインの2人には、当たらなかった。しかし、これだけは確実
に言えた。2人にとって、やっと、手に入れた平和な時間はもうない。
 そう・・・ほんの一瞬でも、警察の追ってを振り切り、訪れた平和によっ
て、止まっていた時間がまた、動き出したのだ。この物語にもたらされるで
あろう、ある1つの結末に向かって・・・

                          (第15話に続く)


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