夢飛行(第15話)カーチェイス


 それはまさに緊迫した出来事だった。

ズダダダダ!

1隻の宇宙船から別のある宇宙船に向かって容赦無く、機関銃が浴びせられ
る。だが、相手も負けていない。すらりと追手の攻撃をかわし、近くの小惑
星群に逃げ込む。それを見た追手の宇宙船のパイロットが叫ぶ。 「ちぃっ、逃がしたか!」
そう・・・広大な宇宙のある場所で追いつ追われつの本当はまるで道路上で
行われるカーチェイスのような緊迫したシーンを繰り広げる2隻の宇宙船が
あった。しかし、追手側も冷静だ。
「いえ、リチャード先輩!どうか安心して下さい。彼らの船は事前に発信機
を取り付けてありますから。彼らがどこへ行こうと、レーダーで追跡出来ま
す。もう彼らは袋のネズミですよ。」
追手側の船内で少しインテリ風の金髪の女性が答える。
「お、そうか、ミリー。だが、いつも、お前はやることに抜け目が無いな。」
「それくらい、当然ですよ。でも、彼らも良くここまで逃げ延びましたね。」
「あぁ。今は宇宙が、これまでの地球連邦政府から、俺達が住んでいるレダ
共和国をはじめとし、開拓惑星が次々と独立し、開拓惑星諸国と地球連邦政
府の間の紛争が長く続き、混沌とした時代から、ようやく地球連邦政府や開
拓惑星各国政府の間で緩やかな独立国家共同体も確立して、秩序が回復しよ
うって時期だからな。まだ、秩序が確立していない混沌とした面もあるから、
今回のこともある程度、仕方ないんだけど、俺達、警察もやりにくいことが
たくさんあるよな。」
そう・・・その2隻の宇宙船は実は、あの銀行強盗犯のケイン・エリスの両
名が乗りこむ船と今、まさに彼らを追跡しているリチャード達、レダ警察の
刑事達の船だったのだ。
「でも、何故、先輩はそれほどまでに彼らにこだわるんですか?今回の犯人
追跡もみずから、その任務に志願したようですけど、今回だって、彼らが勝
手に銀行強盗をしでかしたんでしょ。それを、そんなに先輩が責任を感じる
ことないじゃないですか?」
ミリーがリチャードに尋ねた。
「あぁ、だがな・・・俺も、つい最近まで、やつらの中の1人のエリス、彼
女と付き合ってたんだがな・・・でも、結局は、あいつを酷いやり方で振っ
てしまったからなぁ。で、あいつはそれが元でかなり思いつめてしまったよ
うだからなぁ。だから、もしかしたら、それが元で今回の犯行に至ったのか
もしれないんだ。だから、俺は俺が彼女にあんなことをさせてしまった責任
をとるためにも、あいつを必ず、警察官としての自分の手で捕まえ、そして、
罪を償わせてやりたいんだよ!」
だが、それを聞いたミリーはすかさず、
「たくっ、だから、あんたは甘いんだよ。今回だって、彼らが勝手に銀行強
盗をしでかしたんだ。あんたは確かに彼らのうちの1人に酷い仕打ちをした
かもしれない。だけど、彼らが、結局は、自分の意思で勝手に銀行強盗なん
かをしでかしたんだ!それを何もあんたが、そこまで責任を感じることなん
か、ないじゃないか!」
そう叫んだのだった。

                          (第16話に続く)


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