「夢飛行(第24話)崩壊、そして…」


「畜生!いよいよ、これで…もう終わりなのかよ…」
「ごめんね、あの時…あたしが足を滑らせていなければ…」
「いいよ、これは誰のせいでもない、気にすんな…」

しかし、これからまもなくしたら、自爆して跡形も無くなってしまうであろ
う…宇宙ステーション取り残された…ケインとエリスの2人は、2人共…も
うこの場を乗り切る為に打つ手が無い事を今、痛烈に思い知らされているだ
けに…今はただ…絶望感に打ちひしがれて虚脱感に陥っていた…

だけど、一体…どうして、ちょっと思う様に行かない事があっただでで…あ
んな風に衝動的に銀行強盗という馬鹿な行為に出てしまったのだろう…

一体、どうして…

今はただ、2人共、後悔と…もし、もう一度同じ様な境遇に陥ったら、あん
な馬鹿な行為はしないだろうにという、そんな思いでいっぱいだった…

そして、お互いに挫折と絶望の中で出会ってから…出会ってから、銀行強盗
…そして、逃亡生活の果ての故郷の開拓惑星レダからの脱出…更には賞金稼
ぎとして過ごした日々、そして…行き着いたこの宇宙ステーションにたどり
着くまでのまでの2人で過ごした日々が、今はたった…1週間程の短い間の
出来事の様にも、思えていた…そして、走馬燈の様に思い返されるのは、2
人が今回の件で、今まで体験した出来事の数々であった………

そう…何より…もう一度、やり直せるなら、もう…2度とあんな失敗はしな
い、だろうに……………

そして、走馬燈の様に思い浮かぶ…彼らの数々の思い………


実社会での挫折から
過ちを犯し

逃亡者として
逃げて逃げて

逃避行のように逃げて

夢の中であなたと過ごした1週間

それももうおわかれね

With you・・・

ありがとう、さようなら

・・・1ヶ月後・・・そして、はじまる


しかし…そんな、もう一貫の終わりと観念した2人だったが…そんな中で、
エリスがあるこんな絶望的な状況を打破するいいアイディアを思いついたの
だった…

「ねぇ、良く考えたら…これだけの宇宙ステーションで万が一の事故が起き
た時に…脱出する為の脱出口って無いのかな…」
「おっ、そう言えば…良く考えたら、このステーションの中央監視室には…
図面によると、床のハッチを開けると、通路から…いざと言う時の脱出する
為の宇宙船が泊めてある格納庫に通じていたはず…」

そして、希望が見えて来た…2人は急いで、走って…ステーション中央監視
室に戻った…で、目当てのハッチを探し当てて…こじ開けて…

「ビンゴ!!!やった、これで助かるぞ!」

ケインは叫んだ!で、2人は通路をただひたすら走って…宇宙船が泊めてあ
る…その格納庫に向かった…そして、やっとの事で格納庫に到着し、そこの
控え室で宇宙服姿に着替えた2人だったが…その後…自身で格納庫に隣接す
る操作室でハッチの開閉ボタンを押し、

「これから…ハッチが開きます。乗員は速やかに宇宙船に乗り込んで下さい。」

けたたましい警告音が鳴り響く中…先にエリスも乗り込んでいた宇宙船に乗
り込み、出入口のドアを閉めた後…コックピットの操縦席に着いた。

発着用のハッチが開き、ケインは叫ぶ…

「よし、脱出するぞ!」

さて、その頃…2人を助けられなかったリチャードとトム、それに同僚のミ
リーは、彼らの宇宙船で…これから2人が取り残されてしまった宇宙ステー
ションが、今まさに…自爆してなくなってしまうのを見守っていた。

「畜生、ここでも、やはり…また、俺はあいつらを救う事が出来ないのか…」
「いや…お前はもう…やるだけの事はやったんだ、今回の件も仕方なかった
んだ…気にすんな…」
「えぇ、そうよ。リチャード…あなたは今回の件でもやるだけの事はやった
し、後はしょうがないじゃない…」

さすがに…いつまでも今回の件で後悔し、悔しい顔を見せるリチャードにト
ムやミリーも慰めの言葉をかけていた。

「あぁ、そうだな…」

それに、リチャードも彼らに気を使わせまいと返答をするが…目前の宇宙ス
テーションそんな彼らにはおかまいなしに…しばらくして、いよいよ自爆し
て、その最期を迎える事になる。

ドカーン

大きな音を鳴り響かせ、宇宙ステーションが爆発した。

「あーあ、これで奴等ももうおしまいか…」

落胆の声をあげるリチャードだが…実は…その時、宇宙ステーションから、
一筋の光が放たれていたのだった…

「ねぇ、リチャード…あの光…もしかしたら、彼らは宇宙船で宇宙ステーシ
ョンから…脱出したんじゃ…」

すかさず…落ち込むリチャードにミリーは慰めの言葉を掛けたのだった…し
かし、リチャードは…

「いや、銀行強盗犯のケインとエリスの2人はここで宇宙ステーションと共
に…その最期を迎えたんだ、さぁ、これから惑星レダに戻って、今回の件に
ついて、報告しよう…」

そう、応えたのだった…だが、彼には分かっていた。一度実際に戦ってやり
とりもしてみた…ケイン…あいつなら…この困難も乗り越えて見事、宇宙船
で…宇宙ステーションから脱出したに違いないことを…そして、彼は確信し
ていた…ケイン、あいつなら…今後…自身が過去に愛し、結局、幸せにして
やれなかった…エリスも幸せにしてやれるに違いないことを…

                           (最終話に続く)


  • メインメニューに戻る。