6.気管切開患者の処置

(1)気管切開カニューレ・ガーゼの交換
 気管切開カニューレ・ガーゼの交換は,カニューレ周囲への粘液貯留を防ぎ,感染を予防し,清潔を保つために行います.通常は1日1回程度交換します.
 @必要物品
 交換用カニューレ・ガーゼ,ガーゼ固定用の紙テープ,摂子(ピンセット)を準備します.
 滅菌されたカニューレ・ガーゼは,かかりつけの医療機関から入手できます.ガーゼは市販の滅菌ガーゼを数枚重ね二重に折り,アルコール綿でよく拭いたはさみで,折り目からY字型の切れ込みを入れたものでもかまいません

 A方法
 a)患者の気管切開孔から汚れたカニューレ・ガーゼを外します
乾燥した喀痰でガーゼが周囲の皮膚に付いてしまっていることがありますので,注意深くゆっくり行います.ガーゼが皮膚からはがしにくい時は,ポピヨンヨード消毒液(イソジン)などで湿らしながら,ゆっくりはずしてゆきます.急にはずすと皮膚,粘膜を傷つけ,出血することがあるので気をつけましょう.
 b)摂子でガーゼを摘みます.もし,摂子がなければ,石鹸で洗った手で,直接ガーゼに触れて行ってもかまいません.
 カニューレに触れるY字型の切れ込みの部位には直接触れないよう気をつけましょう.
 c)カニューレをはさみこみながらガーゼをいれます

 d)カニューレ固定用のベルトの下にガーゼをくぐらせたら,ガーゼの切れ込みの部位をテープで固定します


 交換中は,カニューレが抜けないように注意しましょう.もし抜けてしまった場合,皮膚や衣類と接触したカニューレは不潔ですので,慌てずに新しいカニューレを挿入しましょう.
 もし手元に新しいカニューレがない場合には,抜けてしまったカニューレを再度挿入してください.この場合は,できるだけ早く清潔なカニューレに交換する必要がありますので,かかりつけの医療機関に連絡し受診するようにしてください.
 気管切開孔の大きめの患者さんは,カニューレの周囲に人工呼吸器の送り込む空気がもれてくることがあります.このときは,カニューレのまわりにガーゼをあて,もれを少なくするようにします.
(斉藤 利雄)

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