Minimoogセッティングチャート

いきなり白いページ。このページは殆どの方にとって何の役にも立たないページです。Minimoogをお持ちの方は音色の参考に(するほどのものではありませんが)、そうでない方はパラメーター概要を参照した上で音作りのプロセスを疑似体験、出てくる音を想像してみて下さい。


・Rick Wakeman's Minimoog

YESSONGSでのソロタイムやソロアルバム「ヘンリー8世の6人の妻」等で聴かれるビヨビヨ音。キモはVCFのレゾナンスとVCF/VCAのディケイ(リリース)タイム。リリースが長いのでスタッカート気味に演奏してもレガート風の演奏になる。これにより、片手がコード弾き等で塞がっていてもスタッカートで次の音を弾くまでの間、カットオフやグライド(ポルタメント)のパラメーターをコントロールすることができる(映画YESSONGSでのウェイクマンのソロ参照)。VCFのディケイ/リリースの方がVCAよりも若干速いために減衰していく音はだんだんフィルターが閉じた感じになる。


・SYNTH BASS

R&Bやソウル等でよく使われる典型的なシンセベース音。音ヤセを防ぐためにレゾナンスは0、「ビョン」というより「ブン」という感じの音。オシレーター3はキーボードコントロールから切り離し、LOWレンジに設定、ビブラート用のモジュレーションソースとして使用(LFO-LOW FREQUENCY OSCILLATOR-低周波発振器)。ピッチベンドやモジュレーションホイールを駆使してファンキーなベースラインを演奏したい。オクターブ上のOSC1の波形を三角波またはランプ波にするとよりストイックにボトムを引き締める実用的な音色が作れる。


・SYNTH LEAD

チック・コリア等のフュージョンものからロックのソロまでよく使われる典型的シンセリード。オシレーター1と2は同じオクターブで若干のデチューンを。オシレーター3はビブラート用LFOとして使用する。このセッティングの場合、どの波形でも破綻無くそれっぽいリード音になる。ただし、出力エネルギーの小さい三角波やナローバンドのパルス波等とノコギリ波を組み合わせたりする場合はミキサーセクションで音量のバランスを取ることが重要。これもピッチベンドとモジュレーションホイールを駆使して演奏すべき。グライドも重要。


・MAJOR CHORD

オシレーターが3つあるMimimoogならではの技。オシレーター2は1の3度上、オシレーター3は1の5度上になる様、慎重にセッティング。メジャーコードの平行移動になる。3つのオシレーターから一気にオーディオ信号を取り出すため、ミキサー/VCFでクリップしない様若干出力を絞りたい。この際、オシレーター3は通常のオシレーターとして使用するためビブラートは使えない。演奏しながらオシレーター2の周波数を微妙に操作してマイナーやSus4などに移行したり、オシレーター3を7thにチューニングしてハウスなコードバッキングに挑戦するのも面白い。ポリシンセなら訳もなくコードを押さえるだけで演奏できるのだが、それをあえてモノフォニックのMinimoogでやるところが男気(笑)。


・CHIME

オシレーター3による可聴帯域周波数変調(FM-FREQUENCY MODULATION)の例。オシレーター3の周波数はオーディオ信号として耳に聞こえるくらいの周期の速い信号に設定、これでオシレーター1のピッチを変調(モジュレート)する。聞き取ることの出来ない早さで大きくピッチが揺れ動くため、本来の波形にはなかった高域の非整数次倍音が発生、金属的な音になる。エンベロープを減衰音に設定するとチャイムの様な鐘の音に聞こえる(気がする)。実はこれ、DX7等で一世を風靡したFM音源の基本原理。倍音の存在しないサイン波同士を変調させ、新しい倍音を生成するシンセサイズ方式はこのセッティング例と大差無い訳だ。


・外部オーディオ信号のフィルタリング

この例ではMinimoog内のサウンドソース(オシレーター/ノイズ)を全く使用しない。後部パネルのEXTERNAL INPUTにCDやシーケンス、リズムマシンなど適当なオーディオ信号を入力、本体のフィルターで加工する。外部入力信号の音量調節は重要。適当にオーバーロードランプが点灯するくらいがいちばん音が太い。特に思い切った加工をしなくても独特の質感が出てくるのは正にMOOGマジック。当然モノラルだが。注意しなければならないのはMinimoogはトリガーされないとVCAは開かないので音が出ないこと。その為、この例のようにリリース(ディケイ)を長めにとってリズムに合わせて鍵盤を弾く(VCFのキーボードコントロールがONになっているため、鍵盤の位置でも音色が異なる)か、適当な重りを鍵盤の上に置きっぱなしにする、または後部トリガー入力端子をショートさせておくことで継続的に外部信号を出力できる。オシレーター3をLFOとしてカットオフ周波数を変調させてはいるが、本体のLFOではいまいち遅くならないので外部モジュラーシンセ等のLFOからの電圧を後部フィルターCV入力にパッチしても効果的。またここにCVペダルを接続、レゾナンスを上げた状態でペダルを踏むとワウペダルの様な効果が、入力ソースをパラってエンベロープフォロワーに接続、そこからのエンベロープ電圧を接続するとオートワウの様な効果が得られる。最近発売されたMoogerfoogerのMF-101はMinimoogのこのような使い方に特化して小型化されたものだが、サウンドはやはりオリジナルには適わない。いくらMoog博士の設計とはいえ新しく洗練され過ぎてMoogマジックがあまり感じられないのは残念。


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