Minimoog External Controllerの製作


改めて言うまでもなく、Minimoogは非常に良くできた「楽器」である。しかし、如何せん古い楽器なので最近の便利なキーボードに慣れてしまった人間には是非追加したい機能が幾つかあるもの。また、外部入力を使用してフィルタリング加工を行うときにも多少不便な点が存在する。そんなわけで実際にMinimoogを自宅スタジオ/ライブなどの現場で扱いやすくする外部コントロールモジュールを製作しました。

1.トランスポーズ(移調)が出来ない

ロータリースイッチにより半音分(約0.83V)の段階で上昇するCV(コントロール電圧)をオシレーターコントロール入力に送ってやることで半音単位のトランスポーズを可能に。

2.フットペダルでフィルターや音量をコントロールしたい

CVペダルを使用すれば可能だが、汎用のエクスプレッションペダル(YAMAHA FC7等)に電圧を流し込み制御させることでも実現。レンジ調節も可能。

3.鍵盤を弾かなくてもトリガー(発音)させたい

外部入力端子にCD等のソースを突っ込んでフィルタリングする場合、鍵盤を押しっぱなしにしておかないとVCAやVCFがトリガーされないため、音が出ない。本体のS-Trigger端子を使用して、トグルスイッチで鍵盤押しっぱなしの状況を作る。加えてプッシュボタン/フットスイッチによるワンショットトリガーも可能に。

以上の3つの機能を盛り込んだモジュールです。製作は非常に簡単、中学校程度の電気回路の知識で製作可能。自慢できる様な回路じゃないので回路図は公開しません。抵抗値も非常にいい加減なので・・・。

必要な部品 個数 備考
適当な基板 1 小さいのでOK
適当なケース 1 秋葉原ラジデパ地下、奥澤で探そう
1回路12接点ロータリースイッチ 1 秋月やラジデパの上の方で見つかる
トグルスイッチ 1 1回路2〜3接点
プッシュボタンスイッチ 1 1回路2〜3接点、モメンタリ
モノラル標準ジャック 5 CV出力、フットSW用
ステレオ標準ジャック 2 EXP.ペダル用
ACアダプター用ジャック 1 付けばいい
精度±1%抵抗 12 200ΩくらいでOK?
適当な抵抗 適宜 あり合わせ
半固定抵抗 1 トランスポーズ電圧の微調整用
可変抵抗 3 Bカーブ、適当な抵抗値で
電解(で充分)コンデンサ 適宜 ノイズフィルターに。100μPくらい?
配線材 適宜 各色あると便利
ネジやナット 適宜
ACアダプター 1 今回はDC9Vの汎用品を使用
工具類 備考
ドリル、リーマー、ポンチ ボール盤があると便利
ハンダごて 吸い取り機もあると便利
ニッパー、ラジオペンチ
テスター 秋月¥1280で充分
ドライバー&レンチ 精密ドライバーもあると便利


電源:基本的にこの装置は抵抗による分圧のみを行うパッシブ回路です。ACアダプターからの+電源を適当な抵抗を介して9V×3に分配しておきます。-電源は基板のグラウンド部分に。

1.トランスポーズ回路

・一つ目の9Vを適当な抵抗&半固定抵抗(微調整用)&ボリュームポッド(パネル上のファインチューン用)を使ってジャスト1Vに分圧。各所にコンデンサを接続し、グラウンドに落とすことでノイズ成分をカットし、安定した直流電流を得る(以降全ての回路で一定の距離毎にコンデンサを付けてください)。

・12接点スイッチの各端子間に精度±1%抵抗を計11個取り付ける。

・1Vの電圧を精度±1%抵抗を一つ介して接続。計12個の抵抗で1Vを均等に、11段階で分圧することで半音単位の階段状電圧が得られる(スイッチを左に回しきった状態はOFF、何も出力されない)。

・スイッチから出てくる電圧をモノラルジャックのチップ(先端)側に、グラウンドをスリーブ(根本)に接続。これがトランスポーズ電圧出力。

*ただし、昔のヤマハやコルグのシンセはピッチCVの方式が異なるため、この回路では対応不可能。

2.CVペダル回路 至って簡単。

・2つ目の9Vをボリュームポッドに接続、0〜9Vまで電圧を変えられる様にする(ペダルのレンジコントロール)。

・前段の出力をステレオジャックのチップに、リングをモノラルジャックのチップに。グラウンドは適当に繋いでゆく。これで完成。ステレオジャックに接続したフットペダル(結局中身は可変抵抗)で電圧がコントロールされ、モノラルジャックからコントロール電圧(CV)が出力される。

・一つはVCF用、もう一つはVCA用に同じ回路を計2個作る。

3.Sトリガー回路 滅茶苦茶簡単。

MOOGのトリガーは非常に簡単。2極をショートさせれば良いだけ。トリガー出力ジャックの各接点と各スイッチ&フットスイッチ用ジャックを並列で接続するだけ。何れかのスイッチがONになるとトリガージャックはショートし、これを感知したMinimoogはエンベロープをスタートさせる。ただし、フットスイッチは踏んだときに接続される極性のみ使用可能。メーカーによってはトリガーが逆になるので注意。

このトリガー回路はMoogのシンセサイザーしか使えないので、他のアナログシンセの場合(V-Trigger)は若干変更を加える必要がある。電源電圧をもう一つパラっておいて、スイッチがONになったときに5V以上(機種により異なる)の電圧を出力するようにすれば良いだけ。1と2の回路はそのままで応用可能。


パネルは上面にボリュームポッド&ロータリースイッチ用の穴を計4つ、スイッチ用の穴を2つ開ける。背面はCV/ペダル用の標準ジャックを7つ、電源用の穴を1つ開ける。あとは適当にレタリング、回路のショートに気を付けながら組み込めば完成!

慣れたスケールで色んなキーの演奏が出来るし(絶対音感はこの際忘れ去った方が吉)、ペダルでカットオフを動かせばワウっぽい演奏が可能。うーんライブで使いたい。その前にバンド作らなければ(苦笑)。

外部入力にCDなんかを突っ込んだ際も鍵盤の上に重りを置いたり、テープを貼ったりナイフを挿したりする必要も無くなり快適。リリースを長く(ディケイスイッチON)しておいてトリガーのHOLDを解除、フットスイッチやボタンでエンベロープがトリガー出来る。あとはエンベロープフォロワーが欲しくなる。


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