What's MINIMOOG?

Minimoogとは、R.A.Moog博士が1970年に発表した小型シンセサイザーである。これまでのシンセサイザーはMOOG IIIc(右写真)に代表されるような大型の音響設備で、持ち運びが困難であるばかりか楽器として演奏するためには膨大なモジュール間をパッチケーブルによって接続し、気の遠くなるような調整を繰り返すことが必要だった。

K.エマーソンら先鋭的なミュージシャンとのR&Dの末、モジュラーシンセの中の最小限のモジュールを一つの筐体に収め、モジュール間は内部で配線してパッチングの必要を無くしたものが、Minimoogである。VCO(モジュラーMOOGのVCOはあまりに不安定だったため新設計)が3つ、内一つはキーボードCVから切り離してLFOとしてVCO/VCFをもジュレートする事も可能。VCFは-24dB/Oct.タイプのレゾナンス付きローパスフィルター。エンベロープはADSタイプがVCF、VCO用に1つづつ。これらの仕様はアナログモノシンセの基本的な形として多大なる影響を与えた。

発売当初は営業も苦労するほど人気が無かったが、YESのR.ウェイクマンやEL&PのK.エマーソンらがアルバムやライブで使い始めると人気に火がつき、力強いリード音とモリモリと太いベース音はROCK、FUSION、R&B等ジャンルを問わず幅広いミュージシャンに支持され大ヒット、同時期に発売され、シンクを始め多彩な音色が売り物だったARPのOdysseyと人気を二分した。事実、1975年くらいまでのポップス/ロック/R&B等のアルバムで聴くことのできるシンセ音は大抵MinimoogかOdysseyであろう。

Minimoogには数種類のバリエーションが存在する。Model Aは試作品とも言えるもので、パッチケーブルを使用してモジュール間を接続するものであった。Model Bはモジュール間を内部接続、パッチングの必要を無くしたもの。1台のみ製造された。Model Cはその改良型で、このモデルまでピッチ/モジュレーションのコントローラーはスライダーが採用されていた。大量生産され、いわゆるMinimoogとして知られているのがModel Dである。更にModel Dの中でも数種のバリエーションが存在する。

Minimoogの生産台数は約12250台。シリアルNo.は1017〜13259。新設計とはいえ、初期のオシレーターはチューニングが非常に不安定だったため、1978年、シリアルNo.10175から新しいオシレーターボードに変更された(後期型)。また、最初期モデル(R.A.MOOGロゴ付きのものとMOOG MUSONICSロゴ付きの一部)はディスクリート方式のオシレーターのため更に安定度が悪い。後期型のVCOボードは非常に優秀で、チューニングは殆ど気にせずに使用できる。前期型のモデルでもこのボードに交換されているものも多く見かける。VCFボードも時期により使用されている部品が多少異なり、それなりに音も違うらしい。後期型は後部パネルのVCFボード部に調整用のトリマーの穴が開いている。楽器としての実用性、信頼性は後期型がベストだが、サウンドの荒々しさという点では前期型にもファンは多い。

外観も時期により多少異なる。初期の一部のモデルでは波形切り替えつまみの形状が異なるし、最初期のピッチベンド/モジュレーションホイールは透明なプラスチック製だが、後に半透明な乳白色のツルツルとしたものに代わり、後期にはギザギザの付いた一般的な白いものになっている。木部の塗装も前期は明るいオーク色だが、後期には濃い茶色のものが多くなる。

Minimoogの生産が終了したのは1981年、10年以上にも渡るロングセラーだった。最後の25台はウォールナット製のボディに金色の特別プレートが取り付けられ、最後の1台はR.A.モーグ博士に寄贈された。この特別仕様Minimoog、ホイール部分が光るらしい(笑)。


参考文献:Mark Vail著 「VINTAGE SYNTHESIZER」Miller Freeman Books

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