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10月21日(木)
▼馳星周「不夜城」
 よく人が死ぬ。そして裏切られる。読者のカタルシスなんてどこ吹く風。
 物語の構造や設定としてはよくできていると思うのだけれど……一読者としては手に取らないだろうな。なにせラストがラストなだけに、読後感がよくなかったんだろうけど。
 んで、昨今のホラーものやこの手の小説がよく売れているのは、現実がそれほど殺伐としすぎていて、ほのぼの感覚の作品が生ぬるいがために、需要拡大しているんではないかと思った次第。

10月22日(金)
▼神保町散策。やはりこの近辺も学園祭モードなのか、いつもの学生たちの浮かれ顔が少々違う。

10月23日(土)
「織田作之助」(大谷晃一/沖積舎)
「大阪学」の著者がこういう本を書いていたとは知らなかった。
「青空文庫」でかなりの織田作之助作品が読めるので嬉しい。
▼山田太一「時にはいっしょに」読了。
シナリオ本、というやつは、小説とちがって、舞台説明とト書きと台詞だけで、その情景を頭の中で構築しなければならんので、面倒でありながら、おもしろい。脳の筋肉が鍛えられる。ましてそれぞれの配役の台詞を、役者の顔を想定しながら読めばなおのこと感触がちがう。たとえば「婚期を逃した中年の玩具店経営の兄弟」なんてのを、矢崎滋と田中健の顔を思い出して読んだりする。(「ひとり暮らしの、少々危なっかしい魅力的な19歳の女の子」に洞口依子で、「ヒロインの姉にちょっかいを出す同級生」に永瀬正敏ってのは、さすがに今の年齢と風貌からするとアレだが、それを考えれば南野陽子の女学生だって……。)
 1987年秋、南野陽子がバリバリのアイドルだった時の作品だというのに、あまり話題にならなかったと記憶している。やっぱり地味だったからか、ガキはこういう作品の渋味がわからなかったせいか。(という俺も中3。立派なガキ)
 大学教授の父、そして母と姉と弟、幸せな中流家庭が、ある日、というかついに、というか、離婚届を出すはめに。姉は父親の元に、弟は母親の元に……と、野島真司だったら絶対にベタベタに書きそうな内容を、淡々とラストまで収束させている。アナザースートリーとして、姉と弟の恋愛物語があるが、白泉社系の少女漫画の短編にでも出てきそうな。(って表現は馬鹿にしているんでないんだけどな〜うまく伝えられん、でもああいう空間を作れるのは、やっぱりすごいことだ)
▼夕方から銀座へ。

10月24日(日)
▼夕方、クリーニング屋へと、駅へ向かう一本道に自転車を走らせる。
 上空に満月が浮かび上がっている。
「いい月だ」と思わずつぶやいた。
▼三日月や半月だって月にはちがいないのに、なぜ満月だけ、「いい月」だと思うのか考えてみた。
 円という図形が醸し出す安心感がそう思わせるのか。
 それとも、明滅する星の中で、いちばん大きくて目立ち、天空における領域を圧倒しているからか。  いずれも個人の考え方ひとつなんだろうけど。

10月25日(月)
▼銀座へ。2時間ほどで丸の内線に乗って池袋タワーレコードでJim Spider「With a Ghost」買う。

10月26日(火)
▼21時に会社を出て銀座へ。

10月27日(水)
▼夕方から大雨。6時で会社を出る。ちょっと雨は治まったかな、と思いきや、ずぶぬれ。それを押しでも銀座へ。

10月28日(木)
▼頭痛に悩まされた日。ってあれだけ飲んでいれば。
UA「turbo」辻仁成「i like you」買う。
 なんだか最近はいままで溜めていた仕事分がまとめて出ているのか辻仁成。こないだは本で、今回は曲で、今度はトヨエツ主演の映画まであるし。
 丸の内線から地上である池袋駅に上り立つと、構内では山の手線の人身事故のお知らせ放送が。こういう時にいつも事故っているJR。乗り合わせてなくてよかったけど。
 んでもって、タワーレコードで上記のCDを買った後そのまま帰宅。CDを聴かずに眠る。眠り続ける。

10月29日(金)
▼ギターのカッティングの音が左のスピーカーから流れ、ドラムの合図でひずんだ重低音ギターが覆い被さってくる。
 一節目。有無を言わさぬ声。終わってギターソロ。
 二節目終わり。シャウト。主旋律をなぞるワウワウギター。
 三節目。そろそろ声が疲れてきたか? エコーがかけられる。シャウト。「君が代〜、君が代〜、きみがよぉぉぉぉぉ」
 終わり部分に「星条旗よ永遠なれ」が入っているらしいが、聞き取りにくい。
 ワウワウギターがからんで、閉め。
 忌野清志郎LittleScreamingRevue(ずっと、間に「&」がつくと思っていましたが、今回ジャケを見たら、なかった)「君が代」
 文章で説明すると、こんな感じか。
▼今週はやたらめったらCDを買っている。他に椎名林檎「本能」買う。

10月30日(土)
「寄り道」(篠田節子/朝日新聞社)/「男の子女の子」(鈴木清剛/河出書房新社)/「東京ゲスト・ハウス」(角田光代/河出書房新社)
「徹底活用『オンライン書店』の誘惑」(津野海太郎/晶文社)/「友だち・深夜にようこそ」(山田太一作品集13/大和書房)/「夢に見た日々」(山田太一作品集19/大和書房)
▼「夢に見た日々」――こりゃすごいな。佐野量子しか考えられない配役だ。佐野量子っていう名前を出す時には解説が必要なのでしょうか。現武豊夫人で、今だったら絶対になごみ系とか癒し系などに区分されそうなバリバリのアイドルで……)
 89年の作品。この話の設定からすると、呑気な時代だったのだな。今なら銀行員が慰謝料で三百万も払うだろうか。

10月31日(日)
▼皆様こんにちは。日曜をいかがお過ごしでしょうか。
 ただいま私はリプトンのシトラスジンジャーハーブティーというやつを飲んでいます。買ったのではなく、タワーレコードの「NATURAL WOMAN COLLECTION」というキャンペーンでいただきました。木曜に買ったUAのアルバムが対象CDになってまして、そのサービス品です。
 紅茶というやつは個人の嗜好とうまく合致したり対立したりして、なかなか葉っぱのくせに気難しいやつです。私はアールグレイが好きです。アップルはそんなに好きではありません。
 シトラスジンジャーのパックに湯を注ぎ、鼻を近づけて芳香する匂いをかいでみたら、強い刺激が。こりゃ合わないか、と一瞬あきらめがよぎりつつ喫すると、「マアソンナホドデモナイカナ」という感じか。味わっていくほどに慣れていきそうか。パックは3つしかないので、今度は金出して買うかどうか知らんけど。
▼んで、UAです。
 UAに限らず、昨今の女性R&B系の人は、声も音作りも独特であり、街中で流れていなければ、なかなか馴染めない音じゃないかと思うのですよ。思うのですよ、としか言えないのは、私自身が馴染めなかっただけかもしれませんが。
 だから、デビュー当時のUAを、「いいね」と言った人は、元々R&Bに傾斜していて慣れた耳を持っていたのではないのでしょうか。個性の強い味のハーブティをたしなめるように。

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