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2月11日(祝)
村山由佳「青のフェルマータ」(集英社文庫)読了。
 幼い頃に、両親の不和と、その原因が自分の「声」にあると思いこんで、それ以後に声が出なくなってしまった里緒。彼女はオーストラリアのイルカ研究所でセラピーを続けている……。
 イルカについて題材にすることが、どうしても「癒し」のキーワードをくっつけられた「商品」として見られてしまう昨今、作者としても百も承知であり、「癒し」として扱おうとする姿勢を、色眼鏡でドキュメンタリーを作ろうとするTVスタッフを登場させることによって、「イルカ=癒し」という安易な見方そのものを皮肉っている。作者はあとがきで、「この小説はどうしても書きたかった」と個人的な理由を書き綴っている。
 ただ、高校生ぐらいのナイーブな感性を小説化するのに長けている作者が、もっと大人の人物を題材にすると、そのナイーブさが、「単に自分のことを省みられない、甘い、弱い人物」のそれ以上でも以下でもない扱いになってしまうのが気にかかる。
 そのひとつに、冒頭で里緒をレイプ未遂し、その後で里緒とほぼ同等の傷を負っていた事実が発覚し、里緒にとっても危なっかしく魅力的であるゲイリーの存在。(余談ですが、「ゲイリー」って名前はゲイリー・オールドマンを想起させますなあ)  彼をせっかく出すのなら、彼は結局「暴君」のままの扱いで終わってしまうのは(里緒の一人称でこの小説が進んでいくのであればなおさら)惜しい気がした。彼が救われない(里緒にとって彼の存在が暴君であるまま)であれば、あのレイプ未遂は、この小説を巡って、何の意味もなくなってしまうぞ。
▼6時半に家を出て銀座へ。ずっと「青のフェルマータ」を読んでいて↑のような感想を持ったのでした。

2月12日(土)
「ものがたり降る夜」(鴻上尚史/白水社)/「世界遺産データ・ブック−2000年版−」(シンクタンクせとうち総合研究機構)
聖飢魔U「1999 BLACKLIST 本家極悪集大成盤」
「蝋人形の館99」を聴いて「そういやデーモン小暮の笑い声をみんな物真似するように、ギター小僧がこのリフ真似してたな」と思い出した。
 あくまでリフだけで、この曲自体がどういう展開だったかまったく知らなくても真似だけはできたと。ジャーマンメタル曲のパクリなんだそうだが、筆者はメタルに詳しくないのでよく知りません。
 このアルバム(に限ったことじゃなく聖飢魔Uのアルバム=教典はみんなそうなんだろうけど)「Special Thanks to」ならぬ「We Say GOKURO to」とクレジットされている。
▼夕方から銀座へ。

2月13日(日)
▼風邪を引いて以来、飲んでは寝て飲んでは寝て、という生活が見についてしまいましたなあ。力が入らない。この怠惰な生活がまた風邪を呼んだりしてな。
▼新潟柏崎の監禁事件。本人や家族の事情徴収が始まり、周辺部の聞き込み捜査が活発化してきているのでしょうが、いくら「特定の人物の断片」を集めてきたところで、不可解な事件の全貌が見えてくるわけじゃなし、ってのは、すでに過去の例からも明らかで。にもかかわらずこの手のプロセスは続くのね。
 時事ネタはあまり扱いたくないのですが、疑問に思ったので一筆。
 一応事実誤認がないように、毎日、朝日、新潮、文春の各記事に目を通しました。あとは毎週買っている週プレと。これで現代・ポスト・宝石に自身・セブンまであったら完璧か。
▼これまでの週刊誌の報道は、誰の非であり誰を責めるべきか、に重点を置いている。

@監禁を行った当人の嗜虐性(まあこれは当然として)
A反社会的行為に至るまで当人を放置しておいた母親(これもわかんなくもない)
B母親の訴えにもかかわらず具体的な行動に踏み出さなかった行政――大まかにはこの三つ。

 んで「行政」を責める論調としては、新潟くらいの(田舎だってことか)地域ならまだ地縁が生き残っているのだから、しかるべき処置を行政は取れたのではないか、というのがあった。
……えーと、大都会であろうが田舎だろうが、地縁が崩れているところはいくらでもあるだろうし、新潟県人の気質として「極度の恥ずかしがり」ってのがあるから、そうそう他人の家庭へあからさまに踏み込んではいかないだろう。(そういう意味で田中角栄は珍しいタイプの人物だった)プライバシーの問題もあるし。

2月14日(月)
▼新潟県人は、他県の人からどう思われているか……というと、おそらく新潟の名産物や特色をからめた人間像を想定されてしまうのだろう。
 スキーはボーゲンがやっとで、飲む酒はビール・バーボン・ウィスキー・焼酎で(つまりは日本酒以外)一週間ぐらいパスタばかり食べても平気(つまりは主食が米でなくともOK)な新潟県人がいたっていいではないか、ね。
▼もっとも、新潟以外で生産される日本酒や米が、新潟県出身者にはまずく感じられて食えないというケースはあるが。自分の話じゃないけど、中学時代のクラスメートと飲んだとき、その場のテーブルで日本酒に切り替えても、彼女ひとりだけビールだった。「日本酒は(使用されている)水がまずい」との理由。

2月15日(火)
▼今日の話題は義理チョコ(IMEでも一発変換しますなあ)。つっても義理チョコもらった話ではなくて。
 小林信彦「現代<死語>ノートU」には、現在誰も使わない「死語」以外に、現代では意識して使われることのなくなった「半死半生語」を、発祥した年にピックアップしている。
 その中で「義理チョコ」は1983年としてある。本命チョコの風習がそれよりもう少し前であると。つまり比較的新しい風習なのですね。
▼そういえば、70年代以前の漫画なんかで「バレンタインデー」がネタになっているのを見たことがないような気がする。「巨人の星」で花形満が女の子にチョコをもらいまくっているシーンなんかないし。(たぶん)
 それとも「ガラスの仮面」あたりにあるかなあ。筆者は決して漫画に詳しくないので、昔の漫画で「バレンタインデー」をネタにしているシーンがあるのを知っている方はメールください。

2月16日(水)
▼なぜか、ネット内の日記や掲示板を巡っていると「明日は特別スペシャルデイ」というフレーズを使っているのを7、8件ぐらい見かけた。
かの歌詞の一節は「『特別』と『スペシャル』って同じ意味じゃねーか秋元康」と誰にも突っ込まれることなく浸透してしまっていたわけですね。国生さゆりはアイドルとはほど遠いキャラになってしまったというのに。
 バレンタインをテーマにしたアイドルの曲ってありそうでないのかな。もし「バレンタインデー」をネタにしている有名なアイドルもしくは曲があるのを知っている方はメール……はもういいですか。
 しまった、不覚にもバレンタインネタを二日連続してやってしまった。
▼芝のNEC本社ビルが損失穴埋めのため売却、田町駅前の森永製菓本社ビルも投資のため売却へ――って俺、去年の今ごろ(99年2月〜3月中旬)って、毎日この近辺歩いてたんじゃん。
 NEC本社ビルの前ではいつも、寒いのにかかわらず弁当を売っていたおばさんがいて、「味噌汁つきで500円」につられてよく買っていました――って筆者以外何の関係もないことを思い出しました。企業の不動産関連のリストラ記事だというのに。

2月17日(木)
▼今日も「現代<死語>ノートU」ネタいきます。  平成元年に「おやじギャル」が、平成3年に「ジュリアナ東京」を挙げているなら、「ワンレン・ボディコン」も候補に入れるべきなのじゃないのかね。
 涼風さんところの掲示板で(確かこの方が)前に話題としていたので、よ く覚えているんだけど。
 窪ノ内英策(最近スピリッツ本誌で復活)の「ツルモク独身寮」に白鳥沢レイ子なる人物が出てきて、後ろ姿だけワンレンボディコンの美人、として有名だった。
 このとき私は「ウォータービジネスのお姉さんならまだ生き残っているのでは」と言ったんだが、後からいろいろ観察してみた結果、「服はボディコンに近いけど厳密にはちがい、ワンレンより短髪やパーマを好む」といったところでしょうか。やっぱりちゃんと見てからものを言わんといかんのう。
▼夕方から銀座へ。それにしても(前にも書いたけど)着物姿のウォータービジネス従業員のお姐さん方とすれちがう。新宿や渋谷ではないから、こういう経験は。

2月18日(金)
▼今さらながら東野圭吾「白夜行」
 読了後、いろいろと書評ページを検索してまわったのですが、一様に「レビュー泣かせ」とう意見を挙げていましたな。なにしろ、ちょっとでも何かについて論じると「ネタバレに触れるかもしれない」という恐怖がついてまわるのですから。
 だから年末の慌ただしさの中、いつかレビューを書こうと思ってすっかり忘れていました。今回作でも直木賞を逃されてしまったようで。
 んで、今日になっていきなり思いついたこと。

「フォレストガンプ、に似ている」

 片や犯罪小説、片やロマン、のどこが似ているのか、と言われそうですが、 いやあ、なんとなく、時代の人物や風物詩に、あれだけうまく接しているところが。読んでいるうちは引き込まれているので、それほど感じていなかったのですが……読み終わって何とな不自然でしたよ。これだけ時代を先取りして、世の中を渡っていけるものなのかどうか。
「フォレストガンプ」も同様に、有名人がわんさとCG処理でスクリーンに登場していますが、あんだけ会えるもんなんかって

2月19日(土)
▼銀座へ。ソエダさんと呑み。
 今日のお題は「文体の重さ・軽さ」
 本当はもっと他にもいろいろと話してはいるけれど。
▼「オーストリアにおける自由党の席巻によるネオナチの台頭危機」
と、
「女子高生が好む最新アクセサリーグッズ」
とでは、どちらが選ばれやすいか。(いまどきの女子高生が大嫌いな西欧史専攻の大学生男子27歳、なんてのなら、まあ選ぶ方が決まってるんでしょうが)
 もっとも、村上龍や宮部みゆきみたいに、扱っている題材が、そうたやすく関心を得られないものであるにもかかわらず、幾多の読者を獲得しているケースってのもあるな。
▼自分の書く文章に対する反省もしなきゃいけないので、簡単には結論を出せませんね……。(帰りがけ電車の中、酔った勢いで記す)

2月20日(日)
▼雪が降るぞ、と、まるでお化けが出るかのように、首都圏近郊の人々の間を駆け抜けた予報も外れました。冷え込んだけどね。
 こういうときこそ風邪予防だと思い、栄養をつける。贅肉をつけている、という説もある。

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