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12月1日(金)
室井佑月「熱帯植物園」(新潮文庫)
 うっかりしていると女流作家ってのは、(だいたい「女流作家があって何で男流作家がないのか」と、文章に通じている人なら誰でも揶揄するほど、この言い方自体が変てこ)ビジュアルとライフスタイルが当人の作品という存在を圧倒しているケースが多くないのか。愛に恋に性に貪欲な(この場合は作品や当人を含めて)作家だったら。
 こういう人だと、広告ばかりの女性雑誌の片隅などにエッセイをちょこっと書いているだけで「あの人が書いている」というだけでしか認知されず、書いている内容のダシの深いところまで噛みしめられていないという気がするのだ。当人のファンと名乗っている人は別にして。
 というわけで、若い女流作家ほど損している。そんな気がする。大きなお世話か。
 この本の表題作にしろ、現在の、女子高生から女性に至るまでに周囲を取り巻く小物の単語が、そこかしこに溢れている。その表層だけ切り取られると「現代の女の子の感性をするどく切り取っている。はい終わり」的な書評でくくられてしまうことが多そうだ。もっと深いところでのポテンシャルもいっぱいありそうなのに。
 たとえば、この小説の主人公「由美という本名なのに、リエと名乗ることを要求されて、受け入れた女の子」を男の子に置き換えれば、現代の男の子の生理や感情をそのまま映し出してくれそうだ。この人には、男の子の一人称で書いた文章を期待したいなあ。考え方が「男子より男子っぽい女子」というか。
 ビジュアルが男の子みたいな短髪だから言うのではないが。

12月2日(土)
▼土曜日の池袋パルコ。4階以下は用がないのにスーツ姿で通り過ぎなければならない。ストリート系私服の少年少女の中を通り過ぎるなんてことは日常茶飯事なんだけど。そもそもストリート系の服なんざ似合わないし。
 タワーレコードにてシャーベッツ「AURORA」買う。
▼仕事は休めたけど所用で有楽町へ。その後は銀座へ。「幸せそうに見える女の子はみんな幸せそうなのに、不幸な女の子はみんなそれぞれちがって見える」パクリ文。

12月3日(日)
▼以前に「21世紀になっても風邪という病気も、冬の風物詩としての存在も変わらないだろう」ということを書いたが、日本的な悪習ならびにその存在に対してみんな諦めムードを醸し出しているという点で「選挙の広報カー」と「新聞の訪問販売(サービスは決まって洗剤。なんで洗剤なんだ。提携してるのか)」ってのも残っていそうだ。
 あんまりこの場でこういうことを書きたくないが、腹が立ったので書く。
 やつらは最近、午後5時ごろだの午後7時ごろだの、人が訪ねる時間帯と考えるには微妙なあたりでやってくる。今日もそうだ。午後5時前ぐらいだと外の明かりも絶え絶えになってくるので部屋の電気をつける。つけたら外に「電気をつけている。人が中にいる」ということがわかる。普段なら、宅配でもなければ、だいたい休みの日に訪ねてくるのは決まって訪問販売と宗教なので、相手にしないのだが、この時間帯になってから呼び鈴を押すのが新聞である。
 そして決まって自分が何者か名乗らない。「○○新聞です」と言ったら応答してもらえないのだろうが、それでも名乗るぐらいはしろよ。自分の所在を名乗るのはビジネスの基本だろ。
 彼が言うには「優勝記念セールス」なんだとさ。私はこれで腹が立ちましたね。普段は野球に興味がなくてどこの球団が優勝しようがまるっきり興味ないが、あの球団に勝たしてはいけないと思った。よけいつけあがるから。
 15分ぐらい押し問答して相手が引き下がるまで待った。「こんなに怒鳴りあっては近所迷惑ですから」まで言った。それというも、やつは人の話を聞かない。自分の都合のいいように解釈する。警察呼ぼうかとも思ったよ。こっちが怒鳴るくらいに言い聞かせると「トラブルでもあったんですか」などとしゃあしゃあと言ってきたりするし。
▼うんざりして池袋へ。タワーレコードで昨日のシャーベッツの売場に浅井健一「SHARBETS street」もあったので衝動買い。

12月4日(月)
▼昨日の一件で「警察呼ぼうかと考えてしまった」と書いたが、実際に「警察呼ぶぞ」と怒鳴ったりはしなかった。よかったよかった。この手の発言を、もし相手が録音でもしていたら、逆にこちらが脅迫したことになってしまう。
 とっさの時に「警察呼ぶぞ」と発声しにくいのは、亡き父親が警察官だったせいでもある。
▼昔のごっついウォークマンを携帯していたときには、録音機能でこの手の「とっさの時」に対応はできたはずだった。(そして薄型ウォークマンになって壊れやすくなった。この法則はノートPCにもあてはまると思う)
 よしもとよしともの(だと思うが出典が手元にないので自信がないが)漫画で、同棲している男女の男の方がバンド小僧で、入浴中に曲がひらめいたら、体も拭かずにギターを手にテレコの前にたつ、というのがあった(気がする)。
 作者はあくまでギャグとして描いているが、本職の人によれば、珍しくもなんともないエピソードらしい。
▼今だったら携帯している器具で録音可能なのはモバイルギアとiモードか。どちらも時間が短く、また小音量だけど。

12月5日(火)
▼今月の「日経エンタテイメント!」で倉木麻衣の初インタビューが掲載され、(さすがにパクリ騒動やお父さんの話は出なかったが)、「音楽と人」では浜崎あゆみが巻頭だった。(「バカと言われることについて」など、一般のロックミュージシャンにぶつけるような率直な質問が多かった)
▼雑誌としてのプライドを保ちたいと考えているところほど、「いくら売れているからって、こいつは取り上げない」という姿勢でいることが多かった。今では若干変わってきている。つまり「売れているものをどれだけちがった視点で掘り下げることができるか」と。これはこれで「うちは批評力がある」と宣言することの裏返しなのだろうが、「俺、これ嫌い、おしまい」という投げやりなのよりはいいような。

12月6日(水)
▼鈴木その子の死去、20年前に一億円拾った人の死去、松田聖子の離婚……、これらは全部、他の部所の人間が仕事をしている最中に(ということにしておく)検索エンジンのニュース速報で見たということで、こちらにも知らされた。
 他のどんなメディアよりも早く、このような忘れても損のない情報を次から次へと聞かされる、情報化社会っていったい……と哲学的思慮に苛まれることもなく、目の前の仕事に追われているだけ。
 だからってわけでもないが、下にもっとどうでもいい情報を、世界にばらまく。↓
▼目薬を使いきった。一年一ヶ月前に買った目薬の容量分だけ、最後の一滴まで残らずに。どうだ、すごいだろう、と周りの人に言いたくなったが、誰も褒めてくれないだろうと思ったので黙っていた。しかしこの事実は、今の自分に一週間もものしかかっていた案件が片づいたことよりも深い感慨があった。目の前が曇って見えなくなった、涙ではなく目薬のせいで。

12月7日(木)
▼小規模の居酒屋チェーンだと、ひとつの沿線の各駅付近に点在していることが多いですね。仕事や雑用の帰りがけにふらりと寄ってみると、同じようなメニュー名でありながら中身が微妙にちがっているのがおもしろい。
 最近は銀座に行けなくなっている分、晩飯代わりにそういった店に入ることが多いです。(夜になっているので食べる店がたいてい閉まっているってのもありますが)冬は焼き鳥がおいしい。つくね数本と瓶ビールだけで固まった心身がほぐれてきます。
 この手の店はやはり学生のバイトが多くて、自分が大学ぐらいのときにもっと協調性と楽天性と接客能力があれば(今もないですが)、こういうのもやってみればよかったな、などと思ってみたりもします。思ってみるだけで、学生に戻れるわけではないですが。かと言って、金がないあのころに戻りたいかと問われれば躊躇します。

12月8日(金)
▼明け方の電車というやつは、本数が少なくて、何度か乗り換えるはめになると、各ポイント地点で、立ち往生することになる。寒くはないけど暇だ。帰ったらぐっすり。

12月9日(土)
サニーデイ・サービス「FUTURE KISS」
 メンバー紹介で、全員が「○○お兄さん」と名乗っているのがシュールであれば「そかべです、わかめじゃあまりません」などと、通常のライブで言ったら観客が絶対にひいてしまうようなMCも、ある意味で魅力的であったりする。この場合の観客が幼稚園児だから。ライブ・アット・宝陽幼稚園。
 ラストの「NOW」が圧巻であるわなあ。最後のヴァースで「♪らーらーらららら、ら、ら、ら、ららららら、らららららら」って、相手が歌詞をまったく理解していなくても、この部分だけは残りそうだから。
▼この作品を買って、電車の中で聴きつつ、銀座へ行って戻ってから、ネットにつなぐと、あちこちで「サニーデイ・サービス今月中旬に解散」という言葉を目にすることになる。これが最後のアルバムになってしまったのね。

12月10日(日)
▼「図解でわかるUNIX」(川口直樹/日本実業出版社)/「文庫本を狙え!」(坪内祐三/晶文社)
▼夕方から銀座へ。

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