日記 index

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10月21日(日)晴れ
綿矢りさ『インストール』(河出書房新社――から出るでしょう、たぶん)
 すでにあちこちのネットの掲示板、あるいは「FLASH」の記事に写真と談話付きで報道されたりして、この作品と作者を取り巻く環境は、あと何日か、穏やかならざる状況が続くのでしょう。
 現役女子高生が書いた小説としていろいろ偏見を持った目で見られることは間違いないし。僕もそのひとりで、すでに何人かの方々が書評を掲載されているのを読んでいるわけで、その部分だけで当作品への向き合い方に変化は出てくるのだし。まったくまっさらに読んだとは断言できない。また、そういう心持ちでしか読めなかったです。では以下、書評。
 デビュー作という冠を与えられるにふさわしい小説であるということ。これも偏見で言ってますが、女性が書く文章は、端々に「自分が女であるということ」への情念が見え隠れしやすいものなんですが、(そういう人、いっぱいいるでしょ。誰とは言わないけど)「日々に悶々とした女子高生」を描いていながら、作者自身が悶々としていると感じられない。つまり主人公と作者がまったく重ならなかった。
 もちろん、僕は綿矢りさという人物に関する情報は、報道された内容以外にまったく持ち合わせていません。ただ、「女子高生として自分がどう見られているか」「マスコミに取り沙汰される女子高生の世代として自分がどう感じているか」などという、書き手としての情念や時代への問いかけなどが出ていたら、途中で読むのをやめたかもしれない。書きたいことがはっきりと伝わっているけど、この人は「何を書くことで書き手の私が存在しているかを訴えかける」より「物語をつくるという作業が好き」なんだろうな、ということが素直に伝わってきました。主人公は言ってみれば「綿矢りさが解釈した女子高生像」でしかないんですね。
 一文一文がわかりやすい文章(チャットとは何か、という質問があったら、マニュアル読ませるよりこの小説を読ませた方がいいくらい)なので、読み手がどこを引用して、どのように解釈するかが非常にやりやすい。ただし、その平易な文章に溺れて本質を見失う危険性もある。
 同様にして、ネカマのエロチャットでアルバイトを薦めた小学生の男子や、彼の不器用な継母など、現実の世界に存在するかどうか、ぎりぎりの位置にいる設定の登場人物も、舞台が(現実世界を模倣した)フィクションに住むことだけで有効になる。
 選者の保坂和志が「『インストール』というタイトルはよくない」と発言したことについて、「小説自体を浅く解釈されてしまう」と僕は勝手に解釈しましたが、これくらいわかりやすいのなら、タイトルだって呼応するように平易でいいのではないかと。

10月22日(月)曇りのち雨
▼月曜だってのに、周りの席が全員休みだ。風邪だということで。
 そういえば今年の冬から春にかけてやたらに風邪ひいてたんだよな。自戒自戒。――などと思っている間に雨が降ってくるし……。

10月23日(火)晴れ
▼今発売されているダ・カーポにて、みうらじゅんと杉作J太郎と三村マサカズが、ローライズと見せパンについて座談会を開いています。「ごっちんは絶対に見せパンなんてはかない」とかなんとか、しょうもない内容なんですが、(そういえば確かに杉作は後藤真希を「ごっちん」と呼んでますね。――●ここ●の10月3日の日記)記事とは関係なしに、「こうやってエロやアイドルを語る専門家として世間に認知されたら気持ちいいだろうなあ」とちょっと思ってしまった。まずはネットでエロを語ることからか。そういえばなぜかReadMe! Japanの上位ランキング者ってエロテキスト系ばっかだしな。手っ取り早いのはやっぱり妄想系なのか、それともオナニー系なのか……って真面目に考えるより書評のひとつでも書いた方が早そうですね、はい。
▼韓国でお仕事中のフジタさん元気ですか。つうかこの書き込みを見ている暇がなかったらここに書いてもしょうがないけど。僕は↑のようなアホな文章を書くぐらいには元気です。見せパンなんつう文章の後に書いてすいません。
 韓国は肉が安くて何よりですね。こちらは相変わらず狂牛病騒ぎで大変です。マクドナルドと価格競争をしていた時だったから、牛丼屋チェーンは大打撃でしょう。松屋は今週ぐらいからカレーが鶏肉に変わりました。今日食べたけど、味は普通でした。

10月24日(水)晴れ
▼会社を出て新宿へ。(42) こちらは一ヶ月ぶり。
「料理、何でも好きな物頼んでいいよ」と言ったら席に着いた相手は「サイコロステーキ」と返してきたので、そのまま何も考えずに頼んでしまった。
 料理が運ばれてくると周囲から、「このご時世にこんなもん頼むなんて度胸あるぜコンチクショウ」と口々に言われてしまった。そういやそうか。頼んだ本人はけろっとして「一緒に狂牛病になりましょうね♪ 乾杯」乾杯、だけど狂牛病になるのは嫌です。サイコロステーキは肉の一切れが大きい上に固くていまいち。
▼これだけ毎日毎日ネットでモー娘。のニュースばかり浴びるように見て、おまけに本気になってモー情報を検索している方々と交流を深めていくにつれ、「それでも俺の周囲でそんなにモー娘。にはまっている人なんていないぞ。みんな隠しているのか。俺みたいにネットやっている人間はやっぱり異端なのか」と頭を抱えたくなりますが、今日はJR新宿駅で、柱に寄りかかって座りながら今週の週刊少年マガジンを読んでいる十代のカップルを見ました。
 彼らは巻頭のモー娘。13人グラビアを見ていたのですが、「やっぱり辻加護かわいいー」だの「後藤真希かっこいいー」だの、そんな戯れな会話を一言もせずに、一ページずつ丹念にめくって一人ずつのグラビアを観察していました。その光景は鬼気迫るものがありました。何故。
 潜在的なモー娘。ウォッチャーは至るところに居る、ということで。
▼後でこのマガジンのメンバー一問一答を読みましたが、「メンバー加入したのはいつ?」なんて設問があるところが、やはり一般人に混乱をきたしている分その辺を解消しなきゃならんのでしょうか。
「好きな本・雑誌」のところで後藤さんが、「作者名を忘れたけど『生きる』ってタイトルの本」と答えていましたが、「生きる」って書名で国会図書館を検索したらこんなにあるんだけど……。

10月25日(木)晴れ
▼給料日、この時期はまっすぐ家に帰ります。はい。あまのじゃくな性格だけでなく、この辺りの日だと、どこの店も客が多いから。
 なのに東武東上線が「線路に不審物があったため」電車遅れ。しばらく芳林堂書店など、池袋西口をぶらつくが――あんな表通りでキャバクラ呼び込みしてるんですね。遣り手の男性従業員もミニスカの女性従業員も関係なく。

10月26日(金)晴れ
シャーベッツ『Vietnam 1964』
 タワーレコードの告知(って今回はあんまり大々的な告知ではなかったけど)では28日発売、って日曜じゃん、と思ってよく見たら広報の小冊子には27日入荷、とある。
 ひょっとしたらそのさらに前日である26日には入荷してないのかな、と今日、ちょっと寄ってみたら、入ってました。フライング購入。
▼6月マキシシングル『SANLIN BUGGY』発売。全3曲。
 8月同『カミソリソング』発売。全3曲。
 10月同『Black Jenny』発売。全2曲。
 そしてアルバムだと来れば少なくとも上記の表題曲ぐらい入っているんだろうと想定していたら、何と上記のシングル収録曲はどれも入らなかった。全10曲新曲のアルバム。大胆な。
 とはいえ、このアルバムがコンセプトアルバムでシングルを入れられないような性質であるとか、そんなもんでもないですね。いつものシャーベッツ。特記するとすれば福士久美子のキーボードが全面に押し出されている。ストリングスになったりピアノになったり変幻自在。ブランキー時代の浅井健一の音楽は、後半になるとサポートのキーボードを全部取っ払った三人だけの音になっていったが、彼の声はキーボードの音にも折り重なっていけると思うよ。ピアノだけのバラードなんて歌ってくれないかな。

10月27日(土)晴れ
永江朗『不良のための小説案内 ブンガクだJ!』(イーハトーヴ)/辻仁成『太陽待ち』(文藝春秋)/『サキ傑作選』(ハルキ文庫)/桐生夏生『ジオラマ』(新潮文庫)
『食品の消費と流通――フードマーケティングの視点から――』(日本フードスペシャリスト編/建帛社)
▼ペペロンチーノ作りました。「ペペロンチーノにチーズかけたっていいだろ!!」と辻希美さん14歳が激昂することでおなじみのペペロンチーノです。作りましたなんて偉そうに言ってますが、ペペロンチーノが何かを知っている人はおわかりの通り、単にオリーブオイル引いたフライパンの上にニンニクと唐辛子を炒めて麺とからめるだけです。
 こないだ新宿で「知らないのか納豆をペペロンチーノにかけるとうまいんだ」(筋肉少女帯『日本の米』の節で歌って下さい、ってこんな古い歌誰も知らないか)と説かれたので、今日試してみたかったのです。「ペペロンチーノに納豆かけたっていいだろ!!」と逆ギレはされませんでしたが、「ほんとほんとほんとほんと、一度試してごらんよ」と観光客相手に商売するアジア人のような軽い口調でした、って海外出たことありませんが。
 ペペロンチーノって単なる辛い麺じゃん、具が入ってないと――という理由で作ってみたことなかったんですが、剥いて袋詰めにされているにんにくと、薬味用唐辛子の袋パックと刻み納豆を買ってきて、作りました。所要時間は麺を茹でる時間とにんにくを炒める時間五分ぐらいでしたが。
 麺と納豆をそれぞれちょっと味見をして、「相性いいだろうな」と確信できたので皿に盛りつけた麺の上から刻み納豆をかけました。食してみて、伝達者が嘘を言ってないことがわかりました。惜しむらくは私が唐辛子を入れすぎてエスニックパスタになってしまったことだけです。
「ペペロンチーノ 納豆」で検索かけると20件ぐらい出てくるので、結構有名なレシピなのかな? こんなのもありました。
▼もう一度辻希美さん14歳の青年の主張(でも少女)のことについて。
 銀座でよく行く店では週代わりでスパゲティを出しているのですが、フォークとスプーンと液唐辛子の瓶とパルメザンチーズの細長い容器を持ってきてくれるのですよ。ペペロンチーノが出たときもチーズ持ってきてたような気がするな。そしてしっかりかけていたような気がするな。だから変だと思ってなかったかも。今度出たとき確かめてみるか。
 そりゃ「ペペロンチーノに唐辛子かけたっていいだろ!!」は明らかに変だろうが。何せ「ペペロンチーノ」は日本の言い方であって本国イタリアでの正式名称は「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」「アーリオ」は“にんにく”、「オーリオ」は“オリーブ油”、そして「ペペロンチーノ」は“唐辛子”のこと。つまりは、「焼きそばにソースかけたっていいだろ!!」つってるようなもんですね。

10月28日(日)雨
▼またしても辻希美さん14歳ネタ。うちもモーヲタサイト化し始めたのか。
 今週に発売された週刊少年マガジンにて辻希美さんは「好きな音楽は?」との問いに「木琴」と答えていました。「好きな楽器」と勘違いしていたのですね。
 んで「好きな洋服ブランド」の問いに「3年2組」と答えていたので、これも何かの勘違いだと思っていたのですが、そういうブランドがちゃんとあったのですね。(情報元:アイドル県
中上健次『軽蔑』(『中上健次全集11』(集英社))
 1991年2月13日から10月17日まで朝日新聞上で連載され、翌年7月1日に単行本として刊行。中上健次はその翌月にこの世を去っているので、結果的には遺作。「結果的には」と言いたくなるのは、中上健次をそれほど読んでいない人間からしても「これが集大成」と思えるような作風じゃなかったからね。
 新宿歌舞伎町トップレスバーの踊り子である真知子に、暴力団幹部とも関係している一彦――カズさんが言い寄ってくる。惹かれ合ったふたりは、真知子が踊り子の仕事を辞めて、カズさんの地元へふたりで戻って、結婚して慎ましく暮らす約束を交わす。しかし実際に戻ってみると、カズさんの実家とは大地主で、親類縁者はもちろんカズさんの周囲も、踊り子上がりの真知子を疎ましい目で見つめる。「自分とカズさんには、男と女、五分五分の関係しかない」と、自らの関係に執着し続ける真知子も、そしてカズさんも、自らの生き方に翻弄され続ける――。
 新聞小説なので、山あり谷ありな展開なんですが、これは新聞小説で細切れに読んでいた方が臨場感あったような気がして。一冊分として読むと途中でだれてきて。せっかくの盛り上がりの部分がすんなりと過ぎていっているような。
 新聞小説だから、なのかも知れませんが、やたらめったら改行が多い。中上健次ってもっと一段落が異様に長かったんじゃなかったでしたっけ、他の作品などは。どんな宿世の恨み言も愛の囁きも、すべて一文で言い切っているような箇所が多くて。

10月29日(月)晴れ
▼昼休みに新宿歌舞伎町の――今度は西武新宿線新宿駅前のビルに火災が発生したニュースを見て、予定してなかったけど新宿に行ってみた。(43)
 PePe沿いに歩いていくと、問題のビルはすぐに見つかる。一階に青いテントがかけられて、周囲を数人の警官が固めていた。野次馬はほとんどいない。前の道を歩くのは通行人のみ。
 こういう言い方も何だが、被害者がそれほど少なかったので大事だと思わない人が多いのか。だけどこうやって感覚が麻痺していくのも怖い。だいたいエステが出火元って……俺のよく行く店も階下がエステなんだけど。
 行きつけの店は普段通りでした。

10月30日(火)曇り
▼失業率の問題に絡んで今日の日記を書いてみたけど、文中に自分の会社などのプライバシーを漏洩していくような内容になったのでお蔵入り。
▼さて、ネタに困ったときには辻希美さん14歳ネタ、正確には3年2組ネタ。
 今日の朝方、最寄り駅で、通学の女子高生のひとりが、3年2組ブランドのバッグを肩に掛けていました。布地のバッグの表面にしっかりと「3年2組」のロゴが。
 もしあれがブランドだとわからなければ、あの女の子が高校三年生で二組だろうと、本気で信じ込んだかもしれない。あんなにでかでかと自分の学年とクラスをバッグに書くかどうか、と考えれば変だと気づくかもしれないが、そこは女子高生なので、「いま、女子高生の間では、バッグに学年とクラスをプリントするのがおっ・しゃ・れ〜」と言われてしまえば信じるかもしれない。誰が言うかは別として。そして知っていたからといって、女子高生と仲良くなれるかもまた別として。

10月31日(水)晴れ
ポイントは揺らぐ手の気色悪さ加減。
仲井戸麗市『PRESENT#1』
 前作である93年2月発売『DADA』から、94年の忌野清志郎とのライブ(Glad All Over)を経て、95年11月1日発表。
 この1995年という年は、西に阪神大震災、東に地下鉄サリン事件と、「陰惨」「殺伐」などという文字が軽んじられるぐらい、人々の心が疲弊する出来事に見舞われていた。
 世相を反映したかどうかわからないが、穏やかで深く染み入る4曲入りミニアルバム。一季ごとに発売された『PRESENT』シリーズの幕開けとなった。
▼話を変えるが、この人が忌野清志郎と共に四十代になった時、音楽評はこぞって「少年の心を忘れない人」というフレーズを枕詞にしていた。そりゃロックは少年の音楽なんだから、少年の心がないと作れないなんて当たり前だろ、と言えるのだが。個人的には、浅井健一や草野正宗が四十代になった時、同じフレーズが多用されるのではないかとにらんでいるのですが。
『PRESENT#1』に収録された4曲は穏やかである、と先に書いた。穏やかであるだけでなく、「少年の心で」というより、「大人の心で」編まれた曲でもある。
 月が青いというだけで回り道して帰る主人公、彼のモットーは「大人の真似ではなくて子どもの振りでもない/誰かの受け売りではなくて誰かの無理強いでもない」(『BLUE MOON』・今月のウィンドウタイトル)。年を取ったために精力が減退して、相手の女性を抱くことができなくなった男の悲哀の歌(と渋谷陽一に評された・『L・O・V・E』)。畳みかけるように散文詩をちぎっては投げるようにささやく歌。(『LIFE』)生きていれば、昼も夜も朝も夏も目覚めも夢も風も、そして明日もいいときがある、と語る歌。(『プレゼント』
 あの年からどれだけいい日があったのか数えてみたことがないけれど、秋になると必ずこのアルバムを聴いてる。

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