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(200002)

風の吹くまま
監督・脚本・編集 アッバス・キアロスタミ 出演 ベーザード・ドーラニー/ファザード・ソラビ/シアダレ村、シャプラバード村、カンドゥーレ村の人々


 シアダレ村に車で何人かのTVスタッフと共に乗り込んだベーザード、彼は案内役の少年ファザードに「村のみんなには『宝探しに来ている』と言え」と伝える。ベーザードたちには本当の目的があった。

 ベーザードとファザードとのやり取りの台詞が多少、くさくてお説教がましいところがなくもないんだろうけど、その分あけわかりやすくなってるかな。
 ジグザグ道を抜ける情景に加えて、「転がるもの、回転するもの」のイメージが多い。あぜ道の土を掘り起こしてまで進むタイヤ、上から転がってきた林檎、ひっくり返された亀(亀が起きあがるシーンは100回ぐらい撮ったそうな)これまたジグザグに進むスカラベ。
 これらは、「風の吹くままきままに進み、苔も付けずに転がりゆく」自由の象徴として、キアロスタミ映画の新たな映像のイメージとなるか。(2000/02/06)
(200005)

はつ恋
監督 篠原哲雄
出演 田中麗奈 原田美枝子 平田満 仁科克基 佐藤充 真田広之

 昨年秋から今年の春にかけて、あちこちで「田中麗奈は変わった。「なっちゃん」のままのショートスタイルでいてほしかったのに」という意味の文章を、自らのサイトの日記なり批評なりでけなす文章が、歯に衣着せないネットの切り口で流出していた。
 なんだかなあ、って気がしていた。筆者自身は「ショートの女の子が髪を伸ばして、ボーイッシュから女らしさの片鱗を見せる瞬間」が好き、という、他人に話し聞かせても共感を得られにくい嗜好の持ち主ゆえ、彼らの主張にまったくと言っていいほど同情できなかった。
 本作は、そんな田中”ショートカットなっちゃん”麗奈を見られる最後の映画となる。髪型のみならず十代の清純派としてのビジュアルすべて、そしてひょっとすると、田中麗奈の存在感で描き出される役柄もこれでピリオドになるかもしれない気がしてきた。
 病に倒れた母親の初恋の人を無理矢理探し出し、変わり果てた当人を説き伏せて会わせるように仕向け、ふたり暮らしになった父親のことをまったく省みようとしない……、ヤンキー化ともギャル化とも無縁な、この青春の無軌道加減は、ひねったストーリーに慣れた観客の心にすっと入り込んでくる。田中麗奈という人物(そして脇を固める大人の名優陣)の立ち振る舞いがあって初めて成功している。
 彼女の年齢からして、いつまでもこの無軌道が許される役を演じ続けるかどうか、なんてつまんないことを邪推してしまう。俺もやっぱり「なっちゃん」を求めているのかもね。
 おそらくは、この人について行くごとにこの先何度も裏切られた気持ちになるのかもね。いい裏切りもそうでない裏切りも、全部飲み込むタフネスは必要かもね。(2000/05/05)
(200009)

『紅の拳銃』よ永遠に
監督 及川善弘
出演 中丸シオン 浜田学 上田耕一 余貴美子 布施博 宍戸錠 日活芸術学院の生徒のみなさん

 一平(黒部……名前失念しました)は名画座でバイトをしている調布の高校三年生。夏休みの思い出に、タレント活動をしているクラスメイトの美咲(中丸シオン)に、仲間たちで映画を作りたい、と申し出る。岬は「出てもいいけど条件が二つある」と言う。その条件とは……。

 主人公の男の子を初めとして、出ている俳優のほとんどが日活芸術学院の学生。そして主人公の家の飲み屋のママ(一平の母・余貴美子)の亡き夫、つまり一平の父親は、映画の助監督かシナリオライターという設定で、昔の父親の仲間である映画関係者が飲み屋に出入りしている。それもまた現役の映画スタッフ、という虚構と現実入り交じりな背景。
 主人公が「紅の拳銃」という映画に感動して自分も撮りたい、という一面には古き良き映画への懐古を重ねようとする大人の思惑が見て取れるし、日活芸術学院の学生たちが実際に演技し、「映画を撮る学生」が実際の現場を観て学んでいく姿は、彼らにとっても実際にいい思い出となったようだ。
 ただし、これらの交錯する思い入れは、完成した映画を観る人まで引き寄せるか、というと難しいものがある。「観客を引きつけるような仕掛け」まで認識して作られているかどうか……って自分(旅人)でも難しいことだと思っているんですが。(20000902)

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