▼霜越かほる「高天原なリアル」(霜越かほる/集英社スーパーファンタジー文庫)
 99年のロマン大賞を受賞――なのになぜかコバルトではなくスーパーファンタジーからの発売。
 99年10月発売なもんだから、どこの本屋を探しても見つからなかったんだが、まさか地元の図書館にあるとは思わなんだ。灯台下暗し。
 書き出しが、

「あたしは、
 某女子大付属の女子高に通う二年生。
 名前は毒島(ぶすじま)かれん、十六歳。
 いきなりのけぞったでしょ?
 (後略)」

 女の子の一人称で「あたしは」から始めて自己紹介をするパターンって、新井素子の専売特許だと思っていたのだが……、本家の新井素子も、数年に一作しか新作を発表してないし、本人がこの作風から離れているし若い読者も知らないだろうしで、いつのまにかまかり通ってしまったのかな……と考えてみたり。
 かようにして、本書はあまり活字に親しんでない人、読むのは電撃や朝日ソノラマや富士見ファンタジア(あとコバルトにスーパーファンタジーもか)ぐらいだという人が読んでも突っ込みそうなギミックが多数含まれている。これをやり出すと際限なくなるのでこの辺でとどめて。
 本書の根底にあるのはギャルゲー業界や十八禁ソフト、声優業界、そしてバーチャルアイドル業界の、おじさん側から見れば奇妙としか言いようのない、それでも90年代からミレニアムにかけて確実に現代社会へと根を張った産業をつぶさに見つめている。
 おそらく、ギャルゲーやアニメに親しんでいるならば、この本に書かれている程度の知識を持ち得ている人はごまんといるだろう。(先に挙げたジュブナイル系文庫の読者など特に)本書は同人誌的な空間構成に陥らず、バランスよくまとまったエンターテイメントとして作り上げている。こういうのこそ、「誰にでもできそう」と言われながらなかなかできないんだけどね。 (2000/03/12)
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