▼北川歩美「僕を殺した女」(新潮文庫)
東野圭吾「秘密」に先駆けること3年、脳外科学や精神医学をからめた、SFでない変身ミステリーの秀作。
朝、目が覚めると女になっていた、(少年誌のラブコメやエロ漫画に頻出していそうなネタ)そして5年の歳月が経過していた――と冒頭からおしいところ獲りな舞台設定。これをSFでなくいかに科学的な論理的裏付けをして結末に持っていくか、がこの手のミステリーに求められている。(もっとも、脳外科学も精神医学も「まだまだ未知数」という言い訳が立つので、リアイティーから離れてもエンターテイメント的な飛躍が可能、という利点もあるが)
しかも主人公のパートナーに「専門研究をしてる大学院生」を持ってきて、
「自分の変身についてこんな仮説をたてたんだけど、どう?」
「そうだな、こんな症例がある……」
と、解説をさせている。例えて言えばNHK教育の「小学校理科○年生」で、セサミストリート系の人形(ヒロイン(?)の篠井有一)が疑問を呈しているのに答える優しいお兄さん(パートナー(?)の宗像久)、といった図式が……って自分で書いといてなんて例えだ。 久の発言が謎解きの深みを出している上に、念入りにも他の作家がひねり出そうとする凡百のアイデアを封じ込めようとしている。(作者はこのぐらいパターンを考え出している、という意志表示ね)大林宣彦「転校生」やダニエル・キイスまで、多くの人々の記憶に残るわかりやすい例まで出して。
あと、これは推理でもなんでもないたわごとですが、作者の北川歩美は詳しいプロフィールを公表してませんが、30〜40代の男性じゃないでしょうか。登場人物に「小林聡美はかわいかった」と言わせているので。(2000/08/17)
戻る