▼藤沢周「さだめ」(河出書房新社)
 アダルトビデオのパッケージでお目にかける「こんなかわいい女の子が、あ〜んなことや、こ〜んなすごいことをしちゃう」という文句は、ひと昔かふた昔前の「アイドルはトイレに行かない」という表現の、裏返しの位置にある。
 美人だろうと不美人だろうと、種を保存する機能はほぼ同等にそなわっていると考えられるはずなのに、時代が嗜みから猥雑になって、その猥雑心を駆り立てるフレーズが、交感神経を震わし始めた。
 加えて、「アダルトビデオ」という名の悪趣味なエンターテイメントが、広範囲にわたって成人男性(少年もだけど)の日常に染みわたり、「ちょっとルックスのいい女性」が匿名で仕事に従事できるという「KID A」ならぬ「GIRL A」という背景は、小説に映画に漫画にと、テーマにしやすい素材だろう。
 藤沢周はその素材をどう料理したか。人生のけだるさを一身に背負ったAVスカウトマン寺崎の思惟と、AV女優の素質を時には弱々しく時には強い形で放ち、またAVに出る切実な理由を(実在のAV女優の理由を集約して請け負わされて)持っている斉藤佑子の磁力でもって描き出した。
 寺崎が佑子の面影に向かっての「この世には正気と狂気しかない。狂気を選んだなら狂ってみせろ」という声なき慟哭には、彼もまた狂気の世界に浸れない真人間の意地が垣間見られる。(2000/10/10)
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