▼佐藤多佳子『神様がくれた指』(新潮社)
出所後のスリ、辻牧夫を出迎えた彼の育ての親である早田のお母ちゃん、電車に乗っている最中、お母ちゃんが少年少女のスリ集団に出会う。同じスリのメンツにかけても主犯の少年に文句を言ってやろうと追いかけたが、逆にあっさり投げられる。辻は肩の関節を外されて路上にうずくまる。病院に連れていったのは、ぱっと見で性別が判断できない容貌を持つ占い師の男、昼間薫。昼間は自分の大家でもある三沢病院に連れていく。それが元で昼間の部屋で奇妙な同居生活を始める。辻は何としてでもあの少年を見つけだしたい。だが、さっぱり手がかりもなく、焦燥の日々が続くばかり……。
前作『しゃべれどもしゃべれども』(新潮文庫)で、年齢も性別も立場の違う人々の、落語を巡る邂逅を鮮やかにまとめた著者が、またしても「スリと占い師」という、一般人にとって馴染みがありながら実体がまったくわからない職種と、そしてやはり年齢も性別も立場の違う男女の人間喜劇を描いた。
著者は赤坂の出身だそうで、昼間が占い師の営業をしているのも赤坂近辺だ。(ちなみに私の会社も赤坂方面です)「下町」「人情」などというキーワードが浮かびそうな登場人物が多いが、辻と昼間のやりとり、そして辻の恋人早田咲も加わって、浮かび上がらせる映像は、なんとなくフランス映画のコメディを連想させた。台詞も人間の距離も「おしゃれ」なのだ。あの絶望と希望がない交ぜのオチも含めて。(2002/01/09)
戻る