藤沢周『奇蹟のようなこと』(幻冬舎)
 舞台は新潟県内野の町から新潟大学周辺を経た新潟市内、そして弥彦、角田の山々。
柔道部員にしてクラシックギターを習っている、明訓高校生のゲン。彼らは仲間のヒロ、ケイジ、タケ、ノンタと一緒につるんでいる。彼の興味といえばセックスのことしかない――はずなのだが、部活動、先生、父親、そして彼を取り巻く茫洋とした世界について、屋上から上を仰ぎ下を眺めては憂鬱になる――。
 藤沢周の小説世界は、どこか設定からして用意周到なのが多い中で、これは珍しく直球で、おそらく彼の高校時代をモチーフにしているのだろうと推測できる。(藤沢周は新潟県出身)会話分はすべて新潟弁。肌の感触と色合いを大事にする作者らしさに、各短編のラストまで引き込まれる。「積もったばかりの雪を他人に踏まれるのが嫌」という一節があるが、誰かに踏まれるのを拒む時期が確かにあったのだと気づかされる一瞬。(2002/02/09)
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