▼藤沢周『ブエノスアイレス午前零時』(河出書房新社)
「雪が三メートルも降る山奥のホテルで、毎朝、温泉卵を源泉で作り、二個ずつ食べているUターンの男。広告代理店に勤めていた」のを辞めての従業員勤めが本人にとって本意かどうかは、まず描写だけ追っていっても想像はつく。
これでなぜ「ブエノスアイレス」なのか「午前零時」かは、この短編の最後の最後まで追っていかないとわからない。イメージを求めて文学の森を迷わなければ、このタイトルの意味はわからない。
意味がわかることがこの小説の目的じゃないし、広告代理店に勤めていたというこの主人公と同じように、ほとんどの読者にとって馴染みのない単語が織りなす世界は、何度も味合わないと本質がわからないのだろうけど。(2002/02/11)
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